レスタニア解放戦記 (ドラゴンズドグマオンライン外伝)   作:岸本 案

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第20章「廃墟の墓標」

 黄金と化した覚者の亡骸が無造作に打ち捨てられた長い螺旋階段を昇り、エイミーたち一行は雑草が生い茂る広場へ足を踏み入れた。本来なら王宮の庭園であったであろうこの場所は手入れをする者も居なくなり、永い時間放置され荒れ果て、もはや廃墟と表現しても過言ではない状態だった。広場の奥には更に上層へ続く、延び放題の蔦に覆われた円筒型の建物が聳え立ち、来るものを拒む様に建物の手前には幾体ものゴーレムと思われる魔道兵器が格納庫の様に仕切られた空間に膝を折り畳んで鎮座している。だが、ゴーレムに魔力を供給しているであろう管は悉くが外れており、本体は錆び付き電動液が雑草に流れ出し暗褐色の染みを作っていた。この状態であれば、流石に起動して襲って来ることはなさそうと判断できた。

 三百余年前に神殿から隔離された後に一体何人の覚者がここに足を踏み入れる事を許され、そして帰らぬ者となったのかと思うと、辺りを見渡したエイミーは得たいの知れない寒気を覚えた。廃墟と言うより墓場と表現したほうが相応しいと感じ、自らの死体を墓標とする報われる事の無い失われた命を想いエイミー胸の前で十字を切った。

 

「まだわたくしの想定より出力が弱いんですのよね」

 思い詰めたような独り言がリィナの口唇から零れる。先程の戦闘の後から何やら腕を組みながら心ここに有らずの体で思念していたリィナは、まじまじとルルの左手首に填められた籠手を見据えた。

「あれよりも強力な籠手が造れるのかい」

 エイミーが驚いた様な声を上げる。グリフィンアルケミーを手玉に取ってみせたルルの立ち回りはエイミーも良く見ていた。それを上回るとなればいったいどれ程の力を発揮することが出きるのか。リィナはお嬢様気質で見栄っ張りではあるが、それ以前に武器商人であり武器職人だ。武器に関しての見立ては正しいであろうと判断できる。

「それなりの素材が揃えばこのリィナ、皆様の期待を裏切らない籠手を完成させてご覧に入れることができましてよ」

 勝ち誇ったようにリィナは高笑いの声を上げる。メルゴダに着いてからリィナは錬金術の基礎理論を叩き込まれた。古代のメルゴダの叡知と現代レスタニアの技術を融合させれば、想像を越える武器が完成したとしても不思議ではない。それこそ現行の常識を覆すような化物染みた武器が造れる可能性すら否定できない。

「お嬢。また軽はずみにそんな事を言って、ただ単に金ピカの武器を作りたいだけだったら、皆さん赦してくれないでありますよ」

 リィナの華美な装飾を施す武器改造の犠牲者のアンジェリナが釘を刺す。その言葉に思いっきり舌を出してリィナは幼子のように抗議してみせた。長く蒼い巻き毛がメルゴダの風に揺れて童顔のリィナの顔を覆い隠す。アンジェリナは微笑を浮かべてその髪を手櫛で整えて元の形に戻してやった。

「あ、ありがとう」

 何気ない感謝の言葉だが、リィナにとってそれは、アンジェリナと行動を共にするようになって照れ臭いながらも素直に言えるようになった言葉だった。幼い頃から富豪の令嬢として育った彼女は他人への感謝や謝罪と言う感情をどこかに置き忘れて育った。それを正してくれたのが身を守る覚者として雇ったアンジェリナだったのだ。

「どういたしましてであります。で、どんな素材が必要なんでありますか」

 そのアンジェリナの言葉に、仲間の一同が興味の視線を送る。例え自分が遣わなくても、強力な武器を錬成するのにどのような素材や工程が必要であるか興味がない覚者などいない。口では皮肉を言いつつも、手にするロンバルディアの武器としての完成度を誰よりも知っているのは他ならぬアンジェリナなのだ。

「素直にわたくしの腕前を評価すれば宜しいのに、アンジェリナったら素直ではありませんわね」

 再び勝ち誇った笑い声を上げるリィナの目に、嘆息をついて肩を落とすアンジェリナの姿は写っていなかった。

「一つはこの地域で取れる希少鉱物。これは先程のグリフィンの鎧から採取できましたわ。恐らく必要量は確保できでいますわ。餞別としてメルゴダの方にも少し分けて頂きましたし」

 リィナはそう言うと腰の麻袋から鈍く輝く金属の塊を取り出してみせた。

「あー。それボクたちが苦労して集めたダークメタルじゃないか。さてはあの錬金術師、素材を集めさせる振りをして、ボクたちの実力を試していたな。喰えない爺さんだ」

 リィナに負けない程の声を出してエイミーがダークメタルを指差す。数日かけて魔物を討伐して回収した素材が餞別に使われていたとは思ってもいなかったのだ。だが逆に言うと、何の見返りも無しに錬金術と籠手の遣い方を教えてくれたのだとも受けとる事もでき、エイミーは複雑な気持ちになった。

「もう一つは竜の素材ですわ。それもなるだけ強力な竜の血か角があれば尚善しですわ」

 その言葉が運命の女神に届いたか定かではない。だが、リィナの言葉の直後に広場の空気が一気に凝結し四本足の巨大な魔物の靄(もや)を作りあげていく。それは禍々しい翼膜を広げる実体を持たない竜、ミストドラゴンとしてエイミーたちの前に姿を現した。

「未踏の地でグリフィンの後はミストドラゴンと対峙か。こりゃ覚者冥利に尽きる対戦相手だな」

 疲れも見せずにファッツが大剣を構えて戦闘体勢をとる。全員がそれに倣い武器を抜き周りの地形などを視認して戦いに備えたとき、金色の竜が雲の隙間から姿を現し、七色の眩い光を反射させながら王宮の最上部に降り立っていくのが見えた。

「また選択を迫られるか。ホンマ、俺たちは色んな神に試されてるらしいな」

 ディビットは悪態をついて笑ってみせたが、事態はそれほど楽観視できるものではない。今王宮にはゴルゴランが居るのは間違いない。飛び立ってしまったら次いつまた戻ってくるか定かではない。一分一秒も惜しい中、目の前にはミストドラゴンが殺意も顕にエイミーたち一行を睨み付けている。

 判断の遅れは致命傷になる。エイミーはその事を知っていた。

「クック、ファッツ、シェリー、アンジェリナは王宮の最上階を目指す。ボクに着いてきて。残りの四人でミストを倒して可能なら素材を回収すること。指揮はデイビットに託す」

 エイミーにとっては苦渋の決断だった。籠手を強化する為ルルとリィナが留まってミストドラゴンの相手をするのは必然として、残りの二人を最も信頼する二人の腹心を残せば後方の憂いは払拭出来ると判断した。今は少しでも早くゴルゴランの居る王宮に向かうべきで、隊を分けるのもやむを得ない状況であった。

「ここは任せて先に行けってやつやな。必ず追い付くからメインディッシュは取っておいてくれよ」

 空気の渦が視認出来るような特別な回転を産み出す剛弓を放ちながらデイビットはミストドラゴンの側面に回り込む。それに吊られるかのようにミストドラゴンはデイビットを視界の中心に据えようと旋回を始めた。不敵な笑みを浮かべてデイビットは目配せしてエイミーたちの進路を開いた。矢を受けたミストドラゴンは大きな唸り声を上げ、招かれざる王宮の客を焼き払うべく体を強張らせて翼膜を何度もはためかせた。




本文は数日前に書き終わってましたが、サブタイが決まらず更新できなかったと言う罠(@_@)

さて、そろそろwmが始まる。今回はどんな嫌がらせが待っているのか(@_@)どきわく
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