レスタニア解放戦記 (ドラゴンズドグマオンライン外伝) 作:岸本 案
覚者とは心臓を竜に捧げ不老の体を手に入れる代わりに、その尖兵となり戦う者たちのことだ。自ら志願して覚者になる者も居れば、望まずして不老の体を手に入れる者もいる。ただ、どのような経緯で覚者となったかに関わらず、覚者は常に戦いの中に身を置くことを運命付けられる。それは不可避の事実であり、誰にも抗えない真実であった。
覚者が戦う事を拒絶した時、それはレスタニアで生きる権利を放棄する事と同義だと言っても過言ではない。
「どうしてルルがこんな目に合わないといけないの……」
泣きはらした眼を擦りながらクックが呟く。止血は終わったがルルの様態が依然危険な状態であることに変わりはない。暫くは、体から著しく竜の力が失われた「弱化」と言われる症状が続くだろう。軽い弱化であれば宿屋で休んだり、神殿で祈祷すれば回復するが、最悪の場合は前線に戻れない体になることもありえる。不老の体を手に入れた覚者と言えども万能ではない。それが命あるものとしての限界であった。
ただ、大剣を扱う闘士は他の武器を遣う覚者と比較して体の頑丈さが売りだ。そのルルを一撃でここまで傷つけてしまう超大型のサイクロプスの破壊力にクックは肌を粟立たせた。
テルの村の宿屋の二階を借りきってエイミーたち一行はルルの回復を行った。アンジェリナやリィナも加わり回復魔法が使える全員が協力した結果、一命は取り留めたが、未だにルルの意識は戻っていない。
「どうするつもりだ、エイミー」
ディビットが魔力を使い果たして座り込んでいるエイミーに詰め寄る。戦闘が始まる前、確かにディビットはエイミーの作戦に反対していた。ただ、ディビットもその場ですぐ代案を出した訳ではなく、承知の上で戦闘に参加した。だから単純にエイミーを責めたい訳ではないが、責任の所在は確認しなければならない。彼らは命を賭して戦っているのだ。その命を預けるに足る根拠がディビットには欲しかった。
「どうもこうもないよ。ボクの考えているよりサイクロプスが強かった。ボクらは弱かったのさ。そのせいで今、ルルは生死の境をさ迷っている」
あっけなくエイミーは自分の否を認め肩を落とした。エイミーのクランは規模から言えば中堅処で人数は五十人程度だ。クラン法成立と同時期に立ち上がり、その後、先代のクラン長の戦死など解散の危機の紆余曲折を経て、エイミーが三代目のクラン長を引き継いでから、もう半年ほどになる。エイミーが長になった以降にクランに加入した覚者もいれば、エイミーの指揮下の戦闘で戦死した覚者もいる。その度に、エイミーはもう誰一人死なせはしないと心に誓ってきた。それでも予測不能の魔物の進化や不慮の事故で少なからず仲間を失った。
「そんな言葉を聞きたい訳じゃない」
語気を荒げたディビットの言葉に一瞬室内が静まり返る。驚いたエイミーが不安そうな顔をディビットに向ける。戦闘の時には決して見せない表情のエイミーからディビットは顔を逸らせた。己の不安に押し負けて声を荒げてしまった事を恥じたディビットは自己嫌悪から息を大きく吐き出した。
「そのような物言い、無礼であろう」
ジレディーヌが二人の間に割って入りディビットに険しい視線を送る。ディビットとジレディーヌは、共にエイミーがクランに来る以前から主力としてクランを支えてきた覚者だ。全く逆の性格を持った二人を腹心として置いたのは長として経験が浅いエイミーが、自分の考えが偏った方向に行かないように正して欲しいと考えたからだ。
「お主はもう少し分を弁(わきま)えている御仁だと思っていたのだがな。残念だよ」
顔を上げないディビットに背を向けジレディーヌも視線を落とした。
ディビットは知っていたはずだ。この剣豪はただ強いわけじゃない。自分の剣の力で人を生かそうと考えている理想家だ。その理想に惹かれディビットは解散寸前のクランに残った。
この覚者なら腐った神殿の呪縛を解き放ち、違う可能性を見せてくれるのではないかと。
レスタニアは二十万の覚者隊と言う近隣諸国に類を見ない強大な軍事力を手に入れ、戦いには勝ち続け、戦勝国としてこの世の春を謳歌しているように見える。実際覚者となる事を志願する者も次々に訪れ、これからも軍事的発展は続けていくことになるだろう。だが、内実は神殿は権力闘争で荒廃し、覚者の倫理観は地の底に沈んだ。「勝った、勝った」と浮かれる時期はとうに過ぎ、戦力の統制を取らなければならない時期にきているにも関わらず、腐った一部の細胞が体全体を蝕もうとしていることさえ気づかぬまま無為に時間を過ごし、金の亡者が支配する拝金主義の神殿に多くの覚者は見切りをつけてしまった。
その世界を変えてくれる可能性として、ディビットはエイミーの理想に追従したのだ。ただ理想と現実は同じ意味を持ち合わせない。誰かが現実を見据え、エイミーの理想と擦り合わせをしなければならなかった。その役を自分がかって出た筈であったのに……。
「俺たちはお前を信じている。負け戦だろうがどこまでもついていくで。だからそんな顔をしなさんな。長ならもっとしゃんとしてもらわな困るで。でないと、俺の命の賭けようがない」
顔を上げたディビットはエイミーを見据えて言い放った。それは、不器用なディビットができる精いっぱいのエイミーへの信頼の証明であった。
「ディビット……」
知らず流れ出た涙がエイミーの頬を伝い床に落ちる。長い瞬きの後、涙を拭い立ち上がったエイミーは元の姿に戻っていた。
自分は光だ。クランにいる覚者たちを照らし、導かなければならない。エイミーは自分に言い聞かせた。
一介の覚者でしかない自分は世界をすこしでも善くしたいと言う不相応な夢を抱いた。剣一本でそれがどこまで実現できるか分からない。それでも、その想いを受け止めて支えてくれる仲間がいる限り前に進まなければならない。それが今まで自分の下で命を落とした者と、今まで自分が命を奪ってきた者へのせめてもの償いであった。
「すまない。ボクはまだまだ未熟だ。こう言う事があるたびに思い知らされるよ。だからキミたちに助けてほしい」
エイミーの言葉に、アンジェリナとリィナを除く一同が跪いて敬意を表す。どうやら手を貸した覚者たちは、レスタニアから存在が消えかかっている「救い様がないお人好し揃い」だと安心したアンジェリナは安堵の息を漏らした。
「そのご助力に、わたくしたちも加えて頂いてよろしいかしら」
リィナが一歩前に出て申し出る。リィナの家は武器商人だ。良くも悪くも戦争が無くなったら食い扶持がなくなる。だが、同じ戦争なら少しでも世界が善くなる陣営に力を貸したい。それが偽らざるリィナの気持ちだった。それに個人での戦闘では武具の情報収集に時間がかかる。集団で戦闘をこなせる腕の良い覚者と居れば、覚者としても武器商人としても、より多くの発見があるに違いなかった。
「ありがとう。お二人のご助力感謝するよ。ようこそ、我がクランに」
笑顔のエイミーが手を広げて、二人のクラン加入を歓迎した。
英雄と呼ばれる覚者の一行が神殿の命で新大陸に向かうと噂される同時期に、テルの村で新たな仲間を迎えた一つの小さなクランはここから更なる試練に立ち向かうことになる。
先週末に3倍サポを3日間いれて、レベル上げしていたので更新が遅れましたよ(@_@)
どうにか最前線に喰らいつき執筆を続けていますが、更新が遅れることがあるかもしれないことを先にお伝えしておきます。
EM放置での放置レベル上げ、エピタフの無限わきと金箱の「そっ閉じ」システムや低レベル帯でのPPの獲得量、そしてトーチャーBOとゲームとして破綻しつつあるのを危惧しております。PPに関しては意図せぬ獲得量ってお詫びメールに書いてあったけど、不具合ページに載ってないから修正する気がないんだろうね。
運営がこんな状態だから、プレイヤーの質やモラルも下がるのは必然だよね~。コンテンツがないって事もありますが、前より野良で参加することが明らかに減りましたよ。専らクランで固まって行動してます。
がむばれ。運営(@_@)>