本当にすみません!
今回は例の彼が出るはずです!
「ようこそ、『奉仕部』へ。歓迎するわ」
腕を組んだまま、雪ノ下さんはそう言った。
……どうやら僕は、正式に、本格的に、奉仕部に入部することになった…なってしまったらしい。
いろいろあり過ぎてヤケになってきていた僕は、
「…ああ、うん。よろしく」
そう答えた。
……そういえば。
「ところで、この奉仕部って、僕と雪ノ下さん以外の部員っているの?」
「いえ、居ないけれど」
それって部として見れるの?
「……えーと、じゃあ君が部長で、僕は副部長ってことになるのかな?」
「そういうこと…になるのかしらね」
そんなことを話していると、ノックの音が響いた。
雪ノ下さんが返事をしようと口を開けると、返事を待たずにその人は入ってきた。
まあ、平塚先生しかいないんだけど。
「やっぱりノックをしても返してくれないじゃないか」
平塚先生は思った通り、というふうに言った。
そんな平塚先生を見て、雪ノ下さんは眉をひそめて、
「…山田くん」
「え?なんで僕に振るの?」
思わずそう返してしまう。けれど、その目を見ると合点がいった。
ああ、そういうこと。
要するに、雪ノ下さんは『どう思う?』と聞いてきたわけだ。
「雪ノ下さんは、ちゃんと返事を返そうとしていましたよ」
「む、そうか、それは済まなかったな」
全く悪びれずに言う。まあ、ある意味平塚先生らしいと言えばらしいけど。苦労してたんだね。雪ノ下さん。
雪ノ下さんと平塚先生が話している間に、ドアのそばで所在なさげに立っている男子生徒を見つけた。
雪ノ下さんも、気まずそうに頭を掻いている生徒に気がついたようで、
「……ところで平塚先生。そのぬぼーっとした人は?」
いや『ぬぼーっ』って…言い方ってモンがあるでしょーが……否定できないし、する気もないけど。
平塚先生は、あぁ、とさも今思い出したかのような声を出し、
「彼は山田と同じく入部希望者だ」
「二年F組、
……ああ、僕と同じってそこもなのね。
「君には、舐めくさったレポートの罰として、ここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口ごたえ、その他諸々は一切認めない。ちなみにそこにいる山田も、全く同じ理由で今日入部した。」
「したっていうかさせられたんですけどね」
僕が思わずそう零すと、平塚先生は人を殺せそうな目で、
「何か言ったか?」
「何でもないでーす」
こんな教師がいていいの?かなりの頻度でそう思う。
平塚先生は雪ノ下さんの方に向き直り、
「というわけで見ればわかると思うが、彼はこの腐った目と同様根性も腐っている。そのせいでいつも孤独な憐れむべきやつだ」
ズバズバ言うな…もうちょっとオブラートに包もうよ。僕は包む気ゼロだけど。
平塚先生は続ける。
「この部で彼の捻くれた孤独体質を更生する。それが私のもう一つの依頼だ」
雪ノ下さんは一言。
「お断りします」
……こんなとこまで僕と同じなのか。正直ビックリした。
雪ノ下さんは、まるで痴漢にあったかのような目をして体を捩り、
「そこの男の下心に満ちた下卑た目を見ていると身の危険を感じます」
あ、ちょっと変わった。
あぁ、その事なら、と平塚先生。
「安心したまえ。この男のリスクリターンの計算と自己保身に関してだけは、山田と張り合えるレベルだ。刑事罰に問われるようなマネは決してしない。彼の小悪党ぶりは信用してくれていい」
…嬉しくないなあ。褒めてるの?貶してるの?どっちにしても傷付くけど。
「いや常識的な判断が出来るって言って欲しいんですが…」
なんか彼にはシンパシーを感じる。これが共感覚性ですか。僕はいつの間に幻想御手を使ったんだろう。え?違う?知ってる。
「小悪党……なるほど……」
比企谷くん。君は今『聞いてないうえに納得しちゃったしよ…』とか思ってるだろ?だって僕も全く同じシチュエーションだったもん。若干違うけど。
「まあ、山田くんの例もありますし、今更一人増えた所で変わりません。その依頼、引き受けましょう」
平塚先生は、また同じように、ふっと小さく笑い、
「頼んだぞ、雪ノ下」
これまた同じように、手を振って出ていった。
......................................................
カチ、カチと、時計の針が音を立てる。
逆に言えば、それがハッキリと聞こえるくらい、今のこの教室、もしくは部室は、とても静かだった。
正直、寝てしまおうかと思ったけれど、一応は、これからこのよくわからない部活をする仲間だ。僕達がどう思うかは別として。
だから、今にも眠ってしまいそうな頭を、降りてしまいそうな瞼を必死に起こしながら、部活動終了時刻を待とうとした。
その時。
ずっと壁の方に体を向け、俯いていた比企谷くんが、突如、その死んだ魚のような、あるいはゾンビのように腐った目を雪ノ下さんの方に体ごと向け、そして睨み、まるでネコ科の動物が威嚇をするように唸る。
それを感じた雪ノ下さんはというと。
《ギン》と、
まるでマンガの擬音でもつきそうなくらいの鋭さ、冷たさで睨み返した。
これにはさすがの比企谷くんも体を仰け反らせ、後ずさる。
…………どうやら、猫は猫でも、飼い慣らされた猫だったようだ。
「突っ立ってないで座ったら?」
「ぇ、あ、はい…すいません…」
…情けないね。まあ僕もそうなるだろうけど。しないけどね。
で、比企谷くんはというと。
とりあえずその辺の椅子を選んで座ったはいいものの、視線はキョロキョロと……というか僕と雪ノ下さんを見ていた。
さすがに雪ノ下さんも鬱陶しくなってきたようで、
「何か?」
「あぁ、いや、その、色々把握出来てなくて…まずここ何部なんだ?」
まあ、そこだよね。でもそれじゃあうちの部長は…
「当ててみたら?」
…やっぱりね。
「ちなみにそこの山田くんは正解しているわ」
「なんで僕を引き合いに出したのさ」
「なんとなく、よ」
…そうですか。
僕達が話している間に比企谷くんは考えて、
「文芸部だろ」
と答えた。
「その心は?」
「この部屋の中に特殊な環境、特別な機器が存在していない。加えてあんたは本を読んでいる」
「あら、山田くんは読んでいないわよ?」
「まあ、山田は今日入部したらしいしな。何も持ってなくても不思議じゃない」
雪ノ下さんは顎に手を当てて、
「はずれ」
「じゃあ何部なんだよ」
「そうね…」
雪ノ下さんは少し考え、
「山田くん」
「…なに?」
「ヒントをあげてくれないかしら」
「なんで僕が?」
「あら、何か問題が?」
「いやまあ、別にないけど…」
ヒント、ねえ…ヒント、ヒント。
あ、あった。
僕は右手の人差し指だけを伸ばす。
「一つめ。君が平塚先生に呼ばれた時から今までの会話の中に、おそらくヒントがある」
中指も伸ばす。
「二つめ。名前は三文字」
そう。僕が答えたときのヒントだ。
比企谷くんは考える。
「……」
「……」
「…………降参だ。さっぱり分からん」
と言った。
そして雪ノ下さんがいきなり、
「そういえば比企谷くん、女の子と話したのは何年ぶり?」
と聞いた。
なんでまたいきなり…と思ったけれど、
(もしかして…これが奉仕部の活動?)
僕のそこそこ回転の速い頭脳はそう判断した。
話は進む。
「持つものが持たざる者に慈悲の心をもってこれを与える。……人はそれをボランティアと呼ぶの」
雪ノ下さんが立ち上がり、比企谷くんに近づく。
「困っている人に救いの手を差し伸べる。それがこの部の活動よ」
いつの間にか僕の前を通り過ぎ、腕組みをする。
僕も立ち上がり、雪ノ下さんの隣に立つ。
「部長は雪ノ下さん。副部長はこの僕だ」
雪ノ下さんと僕の髪を、風が撫であげる。
「ようこそ、『奉仕部』へ」
「……歓迎するわ」
副部長になったのは、なりゆきなんだけどね?
……あのですね、実はこの三怠惰目、一回消えてるんですよ。だからなんだって話なんですけどね。
はい、というわけで、「怠惰系主人公の青春(ラブ)コメディ 三怠惰目」でした。
今回山田くんが副部長となっていますが、やっぱり順番的にそうかなと。あとは単純に僕のイメージですね。部長がいれば副部長がいるっていう…そんなかんじの。
次回こそガハマさんを出したいと思います(出すとは言ってない)
……冗談ですよ?本気で出したいと思っています。
それはそうと、活動報告、初めて書いてみたんですよ。ちょっと聞きたいこともあるので、よかったら覗いて見てください。
では、恒例の……っていうほどやってないですけどね。
これを見てくれているあなたに。
幸運を。