青年士官苦労記 〜帝国陸海軍奮闘ス〜 灼熱のノモンハン編 作:休日ぐーたら暇人
1939(昭和14)年5月28日 ノモンハン 某所
「あち〜〜、死ぬ〜〜」
戦車の砲塔の屋根に乗りながらだらしなく軍服を開襟してらいる将校が気怠そうに呟く。
「そう簡単に死にはせんわ、馬鹿者」
「うるせい、ハッチ全開でも暑いわ。しかも、この陽気は夏だぞ、夏!」
砲手ハッチから額から流れる汗も気にしない同僚の将校の言葉に反論する。
「暑いのに仲がいいな」
「「うるさい、リア充!!」」
隣の戦車の車長ハッチから煽りとも取れる発言をした同僚将校に対して2人は思いっきり息ピッタリで返す。
何も無い草原地帯、この場にいる部隊員達に漫才でも披露しているのか、と問いたくなる光景である。
「やれやれ、何時もの光景とは言え、飽きないな」
鉄棒を外して苦笑いを浮かべるイケメン同僚将校。
「それより、今日の厄日持ちは誰だ? 出発直前に全部の車両のエンジンがかからないなんて訳の解らない事が発生するんだから、厄日持ちがいるだろう!?」
「知らんよ、そんな事」
こんなクソ暑い時にそんな悪魔の証明みたいな犯人探しに付き合ってられるか…と言わんばかりに開襟した襟をパタパタさせるこの部隊の隊長、松塚隆(まつつかたかし)大尉(21)。
「余り同意したくはないが、環境の変動が原因ではないか? このバカみたいに」
そう言いながら松塚を指差す松塚が車長を務める戦車の砲手を務める松平朱子(まつだいらしゅし)中尉(21)。
「はあ、リア充言われるわ、トップと次席は冷たいわ、三番は辛いよ」
そうボヤくのは松塚・松平の戦車と小隊を組んでいる戦車の車長で、松平に次ぐ指揮継承権のある柳田武司(やなぎだたかし)中尉(21)。
「まあ、リア充の事は事実なんですし」
苦笑いを浮かべながら柳田を諌めるイケメンは歩兵隊を率いる鈴木正司(すずきまさし)中尉(21)である。
「とりあえず、遅れてる事は上に報告してるし、下手に変な事が起きれば上から何か…」
「伝令! 松塚大尉殿はこちらでしょうか!?」
そう松塚が言った時、伝令が走ってきた。
「あぁ、ここだ。どうした?」
「はっ! 本部より『満洲・東露合同部隊』の一隊が定時連絡を絶っている為、状況を確認せよ、と指示が来ました!」
「何処のサボり者に似たのだろうかな?」
ジト目で見てくる松平に松塚は苦笑いを浮かべる。
「ふむ……しかし、定時連絡を絶っているって言っても、天候や地形で拾えてないだけじゃあないのか?」
「ですが、既に最後の定時連絡から2時間経過しているそうです」
それを聞いて誰もが疑問に思った。
30分に1回の定時連絡が4回も行われていない…向こうも返答が無いから場所を移動している筈だが…4回分も拾えないとはおかしい。しかも、この草原地帯で。
「わかった。直ぐ確認しに行こう。混成実験小隊全隊、直ぐに出発するぞ! 念の為、戦闘用意!」
「「「了解!!」」」
その頃 満洲・東露軍合同部隊の一隊
「全部隊後退しろ! 退け!!」
周囲に着弾によって土が数多に巻き上げられ、その中を無傷な者、負傷者を運びながら退く者達が居て、それを護るかの様に一台に戦車が立ち塞がり、その戦車の車長ハッチから隊長らしき将校が声を張り上げていた。
「くそ! 血に飢えた反逆者共の罠に引っ掛かったなど、我が一生の不覚だ!」
首から下げるロシア正教の十字架(ロザリオ)に触れながら苦々しく呟く将校。
しかし、統率が効いている部隊の為、中々崩れてはいない。
「中尉! 奴ら、やっぱり廻り込んでる!」
騎馬隊を率いており、馬に乗ってやって来た満州軍将校が叫ぶ。
見ると、数台の戦車・装甲車が左右に展開している。
「琳中尉! 私の部隊を預けます! 撤退しなさい!!」
「ザミーラ中尉! 貴女は!?」
「殿を務めます! 早く離脱しなさい!!」
国は違えどコサックと満州族、共に馬を好む者達な為かここ数日でツーカーの仲になった同階級者に部隊を預ける為に叫ぶ。
そう叫んだ直後、周りこもうとした左右の先頭の戦車が燃えるスクラップと化した。
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