青年士官苦労記 〜帝国陸海軍奮闘ス〜 灼熱のノモンハン編   作:休日ぐーたら暇人

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チマチマと打たれるってのも中々ウザいものです。


10 消耗

7月7日 深夜 ソ連軍陣地付近

 

 

「撤収しながら火をつけなさい! 焼き払え!!」

 

自らモーゼルミリタリー大型拳銃を撃ちながら琳中尉は指揮下の騎兵に指示を下す。

パトロールのモンゴル騎兵になりすまして接近し、一気に夜襲に出た満州軍騎兵隊は夜襲による混乱で右往左往するソ連兵達を脇目に手榴弾や火炎瓶、放火により火を付けて素早く引き上げていく。

この混乱は暫く続き、混乱が収まり、組織的消火を行おうとした時には既に燃えるに任せるしか出来ない状況だった。

 

 

 

暫くして ソ連軍砲兵陣地

 

 

 

「よし、充分だ! 全隊撤収!!」

 

指揮下の砲兵部隊を使い、ソ連軍砲兵部隊を襲撃した水谷率いる砲兵隊。

夜間の砲兵による陣地後方からの射撃であった為か一切反撃してこず、あちこちから火の手が上がっていく。

 

 

「あー、ありゃあ、大変だな…だが、今夜から寝かさず燃やさしてもらうぜ」

 

ニヤリと笑いながら火災によって明るいソ連軍砲兵陣地を見ながら水谷は呟き、砲兵隊と共に夜の闇に姿を消していった。

 

 

 

翌8日 将軍廟 三ヶ国軍司令部

 

 

「さすが、遊撃部隊、と言ってもいいですな」

 

 

「まったくだ」

 

石原次長・トハチェスキー大将の前に並べられた数枚の写真…昨夜、遊撃部隊が襲撃したソ連軍陣地の航空偵察写真…を見ながら2人は頷きあう。

流石のソ連軍も被害を隠し切れず、バッチリと被害の模様が写っていた。

 

 

「こうなると、後は我々の得意技を繰り返していくだけですが…これが中々に単純ながらもソ連兵には辛いでしょうな」

 

 

「うむ、遊撃部隊指揮官のマツツカ大尉は若いながら自らの役目をしっかりと自覚しておりますな」

 

 

「だから言ったでしょう。『英雄の子だから、と言う訳ではない』と」

 

ニヤリと笑う石原次長につられる様にトハチェスキー大将もニヤリと笑う。

 

 

「さて、向こうはどうなりますかな…これを続けられると」

 

 

「トップは冷静になろうとするが、現場や中堅がどう思うか…また、トップがそれを抑える事が出来るか…ですな」

 

その意味有りげな2人の言葉の意味は直ぐに解る事になる。

 

 

 

 

1週間後 7月14日 ウランバートル ソ連軍本部

 

 

ジューコフ以下、ソ連軍幕僚達は重苦しい空気を醸し出していた。

それもその筈、連日連夜に行われる敵部隊による夜襲攻撃により、前線部隊が徐々に消耗しているからだ。

必ず一夜に複数箇所、時間もバラバラで襲撃方法も様々、此方の罠に嵌らず、反対に一度追撃した部隊が逆襲に遭い、散々な目に遭う程だ。

よって、武器・弾薬の消耗は当然の事、人員も睡眠時間を削られ、明らかに弱っていた。

 

 

「……昨夜は夜間空襲もあったそうだな?」

 

 

「はい…照明弾や榴弾による火災を目標に敵爆撃機が爆撃を仕掛け、弾薬や食糧などが焼かれました。また、これに合わせて夜襲も行われ、夜間空襲に気を奪われた隙を突かれ、被害が拡大しました」

 

 

「…そうか」

 

ジューコフの質問に幕僚の1人が答え、その返答にジューコフは額に手をあてる。

無論、ジューコフも襲撃者が『潜入している日本・満州・東露軍部隊』である事はわかっている。

しかし、わかっていても虎の様に飛び出して暴れ、鼠の様に隠れる敵部隊に対処しようにも出来なかった。

 

 

「前線では夜になると誰も寝れず、更に火が爆ぜる音で皆が反応する程に敏感になっています。これにより、休む事も出来ない兵達のストレスも溜まっている状況です」

 

 

「ううむ…」

 

幕僚からの話にジューコフは唸る。

しかし、根本的な解決は……今日も出なかった。

 

 

 

その頃 遊撃部隊陣地

 

 

「敵さんキツイだろうな〜」

 

 

「寝れない、ってのが1番キツイだろうな」

 

報告書を書く松塚、その隣で嫁宛ての手紙を書く柳田。

 

 

「敵さん焦るかね?」

 

 

「困惑はしてるだろうな」

 

 

「困惑な…困惑と言えば、あのパイロットはどうすんだ?」

 

 

「このまま…ってのは不味いな。環境的に」

 

 

「だよな…まあ、対処出来る人間がいてよかったが…居なかったらヤバかった」

 

 

「……確かにな」

 

互いに頷きあう2人。

あの時、歩兵隊が捕まえに行ったパイロット…機体に接近したら威嚇発砲され、ロシア語で投降を呼びかけても威嚇発砲、最終的にザミーラ中尉が説得するとあっさり威嚇発砲を止めたのである…が、今はこうして保護していた。

そして、いまの最大の問題は……そのパイロットが女性である事だった。

 

 

「で、どうするんだ?」

 

 

「まあ、数日後には後方に下げるよ。まあ、それまでが大変だがな」

 

 

「そっか…つーか、ソ連のパイロットなんてどうするんだ? 制空権はウチらが握ってるし、パイロットが高度な機密を持ってると思えないがな」

 

 

「まあ、俺も空の事には詳しくないが…『パイロット自身』が大事なんだとさ」

 

 

「……解るような、解らないような…」

 

 

「どう活用するかは上と航空隊が決める事さ。素人があれこれ言っても仕方ないよ。それより、向こうさんが我慢の限界に来てそうだからな…対処出来る様にしないとな」

 

 

「そうだな。ここまでしておいて転けるってのも嫌な話だからな」

 

 

「まったくだ…あぁ〜、この紛争が終わったら、暫く休暇でもとってゆっくりしたいね、ホントに」

 

 

 

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