青年士官苦労記 〜帝国陸海軍奮闘ス〜 灼熱のノモンハン編   作:休日ぐーたら暇人

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救出後から、部隊拡大まで。


3 一夜明けて

翌日 将軍廟 演習総司令部 一角

 

 

「どうかね、よく眠れたかね?」

 

 

「帰ってそうそう、各国記者団にワンサカ囲まれた挙句に質問攻めにされたんですよ? 疲れて寝れましたけど、寝足りませんよ」

 

 

そう言ってジト目で上司に文句を言う松塚。

そして、文句を聞いている上司とは…石原莞爾参謀次長である。

 

 

「だが、君の部隊が行ってくれて良かった。別の部隊なら今頃屍の山を築いているところだ」

 

 

「そこです。そこに関してソ連・モンゴル政府はなんと言っているんですか? まさか、知らぬ存ぜぬではありますまいに」

 

 

「それを上はソ連大使館に問い詰めたそうだが…大使館は知らんから問い合わせる、と返答したそうだ」

 

 

「嘘吐け、と言っていいですよね?」

 

 

「まあ、仕方あるまい。まさか、証拠・証言ならともかく、生放送をやられるとはスターリンも思わんよ」

 

ニヤニヤと笑いながら答える石原次長。

生放送とは前作最初に松塚が通信解放のまま戦闘に入った事に始まる。

あの時点で松塚は演習総司令部に対し発見と戦闘開始を通達しており、総司令部では騒動になっていた。

しかし、演習視察名目で来ていた石原次長は演習取材の為に来ていた欧米諸国を含めた各国記者団へ簡単に状況を伝え、そのまま無線を通して聞こえてくる戦闘騒音を含めた戦闘状況を記者団の前で堂々と『生放送』していたのだった。

つまり、襲われてるところを生で公開した為に『自分達は不当に襲われた被害者である』と言うの印象付けたのだった。

 

 

「宣伝戦・広報戦としては先手を取りましたね」

 

 

「だからこそ、スターリンも何も言わんのだろう。まあ、ここだけで無く、関係国の首都で記者会見が開かれている。既に我々が被害者である事は紛れも無い事実だから、後手のソ連が自分達が被害者だ、と言っても聞く耳など誰も持たん。今頃、どう言えば有利になるか文面を考えている頃だろう」

 

 

「でしょうね……問題はこれが批判合戦で終わるかどうかですが…」

 

 

「終わると思うかね? あのスターリンが、ソ連がわざわざ部隊を動かした事だぞ?」

 

 

「ですよね…演習が実戦って何処の三文芝居かと思いますが…」

 

 

「現物とはそんな物だよ。対ソ連を意識した日満東露三國共同演習にちょっかいを掛けてきた訳だからね。なお、この現状の為、混成実験小隊は予定を前倒しして増強する」

 

 

「……長期化・紛争化に備えてですか?」

 

 

「あぁ、さっきも言ったが、君の部隊だからこそ、あの状況下でも友軍部隊を救出し、敵を撃退出来たと言っていい。今後、とりあえず中隊規模、場合によっては大隊から連隊規模に拡大する」

 

 

「大隊ならマシも、連隊となると指揮官は佐官になりますが…」

 

 

「それは此方が何とかする問題だ。なお、本日中に新たに配備される中隊構成部隊の隊長ら数名が来るからな。出迎えを頼むよ」

 

 

「……石原次長、まさか今回の襲撃、読んでいたんですか?」

 

 

「なに、イザと言う時の為に構成要員を選別・待機させていただけだ。そもそも、今回の演習が終わったら中隊に格上げする予定だったのだからね」

 

 

「….左様で」

 

若干疑いながらも納得する松塚だった。

 

 

 

午後 混成実験小隊天幕

 

 

「砲兵科の水谷勘太郎(みずやかんたろう)中尉です」

 

 

「工兵科、篠川貴樹(ささがわたかき)中尉です」

 

 

「通信科の根岸智文(ねぎしともふみ)少尉です」

 

 

「隊長の松塚大尉だ。にしても、ほぼ同年代の集合体だな」

 

自分達既存メンバーと3人を見て松塚は苦笑いを浮かべる。

 

 

「水谷中尉、砲兵隊はどれくらいくる予定だ?」

 

 

「山砲二門、野砲二門、弾薬車四輌、その他数輌。人員は自分を含めた本部・観測員ら40名です」

 

 

「工兵隊は4個分隊40名と本部10名の50名です」

 

 

「通信科は私を含めた25名です」

 

 

「つまり、計115名の増員か」

 

柳田の言葉に松塚が顔を横に振った。

 

 

「いや、実は歩兵と戦車も増強される。歩兵は今と同じ編成の一個小隊。戦車はチハ二輌に軽戦車二輌。戦車の人員は既存と合わせて28名だ」

 

 

「……ねえ、総数って幾ら?」

 

 

「歩兵が一個分隊12名の五個分隊に本部5名、これの×2だから総数130名。これに今までの数字を足すと273名になるね。車両数も出そうか?」

 

 

「いいや、遠慮しておく」

 

松平の質問に鈴木が苦笑いを浮かべながら答え、それを聞いてゲンナリする松平。

 

 

「って、中隊の規模超えてないか?」

 

 

「人員数的な表現だと、一個中隊半になりますね」

 

柳田の言葉に根岸が答える。

 

 

「仕方ない。何せ、混成実験部隊だからな。中隊の名を借りた別物だよ」

 

松塚のその言葉に居並ぶ面々は苦笑を浮かべるしかなかった。

 

 

 

一週間後 6月5日 司令部の一角

 

 

「……それ、本当の話ですか?」

 

 

「あぁ、冗談でこんな話はせんよ」

 

石原次長の言葉にゲンナリとする松塚。

その理由は満州帝国軍と東ロシア帝国軍から一部隊づつ『混成実験中隊』に付ける、と言うものだった。

 

 

「ようやく昨日、増員の機材・物資・人員が到着・掌握したばかりなのに、次は友軍部隊ですか!?」

 

 

「うん。そもそも、実験部隊に配備したものは最終的に満州軍や東露軍も使用する物だからだ。何も間違っていないぞ」

 

 

「……は、はぁ…」

 

筋が通っている故にそれ以上何も言えない松塚。

 

 

「なに、大丈夫だ。双方の将校は顔見知りだ。部隊は満州軍が騎兵一個中隊。東露軍が中戦車二輌に歩兵一個小隊だ」

 

 

「……東露軍は置いとい、満州軍の一個中隊だから…160…いや、本部要員込みで170人…頭、痛い…と言いますか、もう、実験部隊とか、中隊とかの範囲を越えているような…」

 

 

「それは此方の仕事だ。まあ、名目だ、編成だ、は此方がなんとかする。後は君が纏めて部隊として動かしてくれ」

 

 

「一介の元騎兵科大尉…しかも、お膳立てでなった身には重責過ぎるんですがね」

 

 

「大丈夫だ。頑張れ」

 

 

「……わかりました」

 

 

 

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