青年士官苦労記 〜帝国陸海軍奮闘ス〜 灼熱のノモンハン編   作:休日ぐーたら暇人

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スターリン(ソ連)の言い訳をお聞きください。


4 出撃

3日後 6月8日 将軍廟 演習総司令部の一角

 

 

 

「……つまり、向こうの言い分は『演習を偵察していた部隊が道に迷って越境し、演習地帯の中に入り、遭遇した演習部隊が誰何せずに攻撃してきたから応戦して、戦闘になった』と?」

 

 

「うむ、そうだ」

 

ようやく返答されたソ連側の『理由』を聞いた松塚は盛大に溜息を吐いてから……。

 

 

「んなふざけた理由があるか! 演習を偵察していて迷ったは百歩譲ってあったとしても、ハルハ河をはじめとした河川である程度位置は解るでしょうに!! と言うか、『偵察部隊』が多砲塔戦車を含めた多数の戦車を持ってきてる時点でそれが嘘に決まってるではありませんか!!」

 

外も気にせず盛大に心中の文句を吐く松塚。

 

 

「無論、苦しい言い訳だと我々も解っている。だが、スターリンはこの『言い訳』を盾に謝罪を要求して来た。つまり、謝る気は無いと言う事だ」

 

 

「でしょうね。なにせ、明らかに部隊を殲滅する気の戦力で来てましたからね」

 

 

「ふむ…更に最近、モンゴルの駐留部隊と航空部隊にも動きがあるそうだ。東露軍の情報によるとスペイン内戦に介入した際に指揮を執っていた将官とベテラン達がウランバートルに派遣されたらしい」

 

 

「つまり、紛争する気満々と」

 

 

「だな。多分、数日以内に顕著な動きがある筈だ。いつでも出れる様に準備しておいてくれ」

 

 

「わかりました」

 

 

 

混成実験中隊天幕

 

 

 

「なによ、それ!!」

 

 

「反逆者共め!! 我らを虐殺者と言うか!!」

 

天幕に戻った松塚は先の事を松平達ら実験中隊の幹部将校達と満州軍・東ロシア帝国軍から派遣された琳中尉とザミーラ中尉に言うと……当事者2人は当然の反応を示した。

 

 

「で、やっぱり、やるのか?」

 

 

「やっぱりも何も無いだろう。そもそも、ここで演習をする事になったのも隣国のモンゴルが共産国で、ハルハ河を基点に国境線問題がある場所だからだ。まあ、モンゴル側に配慮して、モンゴルが主張する国境線を防衛ラインにしての演習だけどな」

 

 

「ふん、相手から喧嘩を仕掛けてきたんだ。我らは何の迷いも無く前と同様に殴り倒せばいいだけだ」

 

柳田の言葉に松塚が答え、それに威勢よく松平が返すが松塚は首を左右に振る。

 

 

「今度はソ連お得意の人海・物量戦術に自慢の砲兵隊、更に航空戦力が加わる。前の時みたいに襲撃に来たのを叩き潰すのとは訳が違うぞ」

 

 

「砲兵と言えば水谷、ソ連軍の砲兵ってどうなんだ?」

 

柳田が水谷に砲兵について訊く。

 

 

「もともと、ソ連軍は帝政ロシア軍同様、火砲信者ですから野砲、野戦重砲の数は揃えていますし、射程も長めです。ですが、どうも間接照準射撃、つまり、観測射撃は苦手で直接照準射撃を多用すると聞いて居ます。また、自走砲の類も最近開発・配備されていますが、どうやらまだ牽引火砲が多いみたいですね」

 

 

「それはそれで厄介だな」

 

 

「つまり、此方の利点はあまり無いと」

 

 

「いえ、そうも言えないです」

 

鈴木の言葉を否定したのは篠川だった。

 

 

「同期に聞きましたが、ここ将軍廟まで満鉄が鉄道を敷いています。更に今回はウチの工兵と鉄道連隊、満鉄、満州軍工兵隊と東露軍工兵隊・鉄道連隊で前線後方まで軽便鉄道の敷設演習もやる予定だったそうです。だだ、それが中止したとは聞かないので多分、そのまま敷設するのではないかと思います。対してソ連軍のシベリア鉄道ですが、モンゴル側・ソ連側、どちらからみてもノモンハンから遠く、我々には有利です」

 

 

「軽便とは言え、鉄道輸送か可能になるのは確かに有利だし、後方拠点から前線後方までの距離が短いのも有利だ…しかも、鉄道を敷くから負担も軽くなる。だが、距離の問題は向こうも解っているからな…何か手を打ってくるだろう。まあ、シベリア鉄道を延長すると言うのは無理かもしれないがな…まあ、俺達が出来るのは命令内で出来る事をやるだけだ」

 

そう言って松塚は話を閉めた。

 

 

 

5日後 6月13日 ハルハ河

 

 

 

「……いよいよか」

 

2日前の11日にソ連側が部隊を出して来た、と情報が入り、その翌日の12日に出動命令が下った。

そして、いま、松塚達はハルハ河に居た。

 

 

「篠川、仮設橋は出来そうか?」

 

 

「ここが最も浅い所と聞いたので心配しましたが、この程度なら大丈夫です。それに本土の河川で訓練しましたので、架橋は大丈夫です」

 

 

「そうか…にしても、技術の進歩と発想って怖いわ」

 

視線を向けると篠川指揮の工兵隊が仮設橋を作っていた。

 

 

「半装軌車やトラックで運べるサイズの機材で戦車まで渡れる仮設橋を短時間で設置出来るんだからな」

 

 

「これだって工兵隊単独って訳でもないですよ。船舶連隊が重量物も積み下ろし出来る仮設桟橋を開発する過程で出来た品物です。実際、民間企業や海軍さんも噛んでますし」

 

 

「縄張り争いしてる暇は無いって事か」

 

 

「ところで、なぜ勝中尉の騎兵隊を仮設橋が出来る前に自力渡河させたんですか?」

 

 

「周囲偵察だ。中尉達なら少し変装すれば遠目で見てモンゴル騎兵にすり替われる。それに日本の戦車が居たらおかしいが、騎兵なら怪しくないし、そもそも中尉達にとっては庭みたいなものだしな」

 

 

「なるほど」

 

 

「まあ、これからはこんな機材を多用していく事になるんだ。工兵も工兵で大変だと思うが頑張ってくれ。ただ、要望なりなんなりがあるんだったら遠慮なく言ってくれ。上に上申するのも仕事だしな」

 

 

「えぇ、最新の工兵機材があるなら、最優先に回してもらう様にこれから要望する事になりますからね」

 

 

「あはは、まあ、さっそく聞いたから帰ったら上申してみるよ」

 

 

 

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