青年士官苦労記 〜帝国陸海軍奮闘ス〜 灼熱のノモンハン編 作:休日ぐーたら暇人
6月27日 0000 ハルハ河西岸 遊撃支隊陣地
「先程、石原次長より出撃命令が出た。『本日夜明けと共に航空隊が出撃、前線並びに補給拠点・飛行場を襲撃。遊撃支隊はこれに乗じ、敵補給梯団等を襲撃せよ』との指示だ。次長は爆撃だけで敵補給物資を全て叩けるとは思っていない。我らは敵にわたる物資を1gでも減らす。以上、命令下達終わり。出撃!!」
松塚からその命令を受けた隊員達が次々に乗車・乗馬していく。
既に勝中尉の騎兵隊からは無線機を持った偵察部隊が出ている。
それを差し引いても3個騎兵小隊を含んだ遊撃部隊はあえてライトを点灯させず、白版を装着するなどして互いの距離感覚を取りながら進んでいた。
「にしても、いきなりだな」
しばらく進んだ後、松平が呟き、松塚がそれに答る。
「航空戦力が揃うのを待っていたみたいだ。なにせ、満州軍、東露軍、挙句に海軍さんからも出してくれ、ってお願いしたみたいだし」
「ほう、やはり、海軍にも声を掛けたのか?」
「あぁ、数日前に直接報告に行った時に話してくれた。海軍さんの陸攻や艦戦も出してくれたそうだ」
「なるほど…面子ばかり語っていても意味は無いしな」
「そう言う事」
……夜が明けぬ大地を遊撃支隊が進んでいく。
6時間後 0610 ソ連軍輸送路
「砲兵隊! 速射砲! 射撃続行!!」
騎兵隊の偵察網に引っ掛かった敵補給梯団に対して松塚は何時も通りに擬装して待機させた速射砲に砲兵隊を待機させて待ち構えた。
そして、先頭を行く装甲車に戦車4輌の警戒部隊を真っ先に潰し、松塚は一挙に遊撃支隊に総攻撃の指示を下した。
98式自走山砲、99式75粍自走砲が弾幕射撃を展開、速射砲は手近の装甲車輌に向け発砲、その間に戦車と機械化歩兵、騎兵隊が突入する。
『既存の戦車ばかりね。少しは骨のある敵はいないのかしら!』
久々に大暴れ出来るからか、ザミーラ中尉はハイテンションである。
『……大丈夫か?』
「大丈夫だろう…どうせ、ウチも一緒だ」
柳田の言葉に松塚は苦笑いを浮かべながら答える。
だが、ザミーラ中尉が狙ったT26戦車が被弾・爆発した瞬間、他の車両に比べて激しく燃え上がった。
「……なにか怪しいぞ。他にT26はないか?」
「松塚! 二時の方向、見ろ!」
松平の言葉に二時の方向に目を向ける。
すると、逃げようとするソ連兵に引き返す事を促すかの様にT26の砲身から炎が吹き出る。
「ちっ、奴ら火炎放射戦車を持ち出していたのか! カクカク! 敵に火炎放射戦車がいる! T26を見付けたら火炎放射型かもしれん! 徹底的に潰せ!!」
松塚の指示に従うかの様に松平はT26を狙うと発砲、撃破する。
ソ連側も抵抗するが速射砲と山砲・野砲の射撃が降り注ぎ、勝中尉の騎兵隊が斬り込み・掻き回す。
また、政治将校は無駄に声を上げる為に容易に捕捉され、守る者もいない為に次の瞬間には屍に変わる。
「で、やっぱり、こうなると」
未だ燃える戦車や装甲車、トラックがいる中、周囲を遊撃支隊の兵隊に囲まれたソ連兵の一団を見ながら松塚が呟いた。
そして、彼らは戦闘の結果、最終的に降伏した者達であった。
「いや〜、残った車両を探ってみるもんだね〜」
無事なトラックの荷台を探っていた柳田が頑丈な木箱を引き出しながら言った。
「柳田、松塚は敵兵器を主に調査しろ、と言った筈だぞ?」
ジト目で柳田を見ながら松平が言った。
「別にいいじゃん、調査する人間はいるし…それより、見ろよ。政治将校か高級将校用の高級ウォッカのケースだぜ。平の兵士には絶対に飲ませたくなかったみたいだな」
ニヤニヤと笑いながら言う柳田に松平は呆れ、松塚は苦笑いを浮かべる。
「松塚大尉、鹵獲品の数を調べてみた結果だが聞くか?」
「あぁ、聞くよ」
調査していたザミーラ中尉がそう言って報告を始める。
「鹵獲したのはM1937 45㎜対戦車砲(53-K)4門、M1939 75㎜野砲(F-22)2門、BT-5が2輌、T-26が1輌、BA-6が1輌、BA-10が3輌、トラック15輌。以上が鹵獲したものだ。どれも無傷だ」
「まあ、ガソリン車だから燃えたよな…で、なにか変わった事は?」
「一部車両…柳田中尉が荷台を触っている物を含めた何台かのトラックは『アメリカ本国で生産』されたものだ。証拠はキリル文字を含めたロシア語ではなく、英語である事だ」
「……中古品である可能性は?」
「部品の摩滅も少ない。部品を交換した、はありえるがシャーシ自体も新しい」
「……頭の痛い事が増えたな。今度はアメリカ人を捕虜にしない事を祈るよ…記者とかならいいけど…兵隊なら次は腹痛だな」
やれやれ…と言いたげな顔で松塚は空に視線を向けた。
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