軽巡洋艦大淀は1943年に竣工した潜水艦隊の旗艦としての能力を持つ艦である。その外見的特徴はなんと言ってもその巨大なカタパルトである。この二式一号10型カタパルトは、実に44メートルに及ぶもので、大淀の船体の四分の一以上を占めていた。また、排水量についても、日本の軽巡洋艦では最大であり、潜水艦隊の目としての活躍が期待されていた。しかし、彼女の竣工はミッドウェーの後であった。既に戦局は悪しており、ついぞ潜水艦隊を指揮することは無かった。
しかし、戦艦を前線に出して戦わせる必要が生まれた大戦中期から、大淀は連合艦隊旗艦となった。その大きな格納庫を司令施設に改装することで十分な旗艦設備を整得ることが出来、司令部が本土へと移るまで、その任を務めた。レイテ沖海戦の後、日向、伊勢、榛名などと共に呉港に繋留された。大戦終盤、呉はアメリカ軍による大空襲を受けた。大淀もまた、空襲の被害を受け大破転覆。生まれ故郷である呉海軍工廠のドックまで回航され、解体された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「 ふぅ……」
ここまで語った所で、榛名は一息付いた。
「 榛名の知っている大淀さんの話は、このくらいです」
榛名は俺の知らないところまで詳細に語ってくれた。思うに、やっぱり大淀さんは過去の自分の肩書きと経歴の差に悩んでいると見るべきだろうな。金持ちは没落しても贅沢を忘れられないと言うが、それに近いものだろうか。ともあれ、自分に縛られている。俺はそう考えた。
「 榛名、ありがとう。とても参考になったよ」
「いえいえ、榛名で良いならいつでもお相手しましょ
う!」
榛名は俺の手を取って、いや、握り締めてブンブン。してきた。何コレ……手小さい柔らかい……
俺が何考えてるのか分かったのか、榛名はあわてて手を離す。
「 あっっ、す、すみません……」
榛名は耳まで真っ赤にしてアタフタしている。昼間はなんだか大学生くらいの見た目にそぐわず落ち着いた大人な雰囲気の娘だなと思ったが、女の子らしいリアクションを見ていると、なんだか微笑ましくなる。
「 あははっ……良いんだよ榛名……ああそうだ、
いいお茶が有るから、飲んでいってよ。」
「 そんなっ提督!榛名がお入れいたします!」
「 良いんだよ。お礼だと思ってくれ。ああー、
ハーブティーしかないけどいいかな?」
「 はいっ!榛名は大丈夫です!ありがとう
ございます!」
榛名の元気な返事を聴いて俺は執務室に備え付けられたキッチンの棚を開けた。
テーブルの向かいでは榛名が優雅かつ上品にカップを傾けている。手の大きさ似合わせて少し小さめのものを選んだカップから湯気が立ち、その雰囲気をより掻き立てる。
「 はああぁ、とても落ちつく香りですね……
普段飲んでいる紅茶と違って味が優しいです」
「 紅茶とちがって発酵がほとんどされてない
からなあ……味は薄いって言うか……淡白?
なんだよ。香りもきつくない。
今いれたのはカモミールって言って、心を
落ち着ける効果があるんだ。」
「そうなんですか……金剛お姉様にも飲ませて
あげたいです……」
「 茶葉持っていくか?
金剛はそそっかしそうだからピッタリかもな 」
「 え?」
榛名は首を傾げる。
「 提督……榛名は金剛お姉様がそそっかしいって
言ってるのではなくて、ただ美味しいから飲んで
欲しいだけです……」
………………………………………
俺は無言で土下座した。
「 榛名様、どうか金剛には内密に……」
榛名はわざわざしゃがんで肩に手を載せてくれた。
「 提督、次はありませんよ。金剛お姉様の前で
言わないようにしてくださいね」
「 はい……」
「 くれぐれも、そこにいる青葉さんに広められ
ないようにして下さいね。」
榛名はそう囁いて執務室のドアを指す。
まさか、な……そっとドアに耳を当てる。
「 やばいです!これはスクープです!
明日のネタはこれでと……」
「 青葉ああああああああぁぁぁ!!!」
翌日、鎮守府のグラウンドでは、盗撮魔と書かれたハチマキを巻かれた青葉がヒーヒー言いながら走っていた。
誤字脱字、感想等ありましたらお願いします。最近寒くなってきましたから、体調に気をつけて下さいね