あの後、逃げ惑う青葉を捕まえてしっかりと指導した。青葉にはそこそこの罰走を課しておいたが、喋る気がする……
「 青葉さんは捕まえられましたか?」
榛名がクスクスと笑う。
「 ああ、何とかな……あのさぁ榛名……」
「 何でしょう、提督?」
俺はさっき、青葉からとても大切なことを聞いた。そう、金剛と榛名が思い描いている、願い。
「 榛名は比叡と霧島に会いたい、同んなじ
艦隊で戦いたいって言ってたらしいな」
「 えっ!何で提督ご存知何なんですか?!
もしかしてお昼の話が聞こえてましたか?」
俺にしていないはずの姉妹の話をされて榛名は驚いた様だった。てか昼にその話してたのか……
「 まぁ青葉から聞いたんだがな……これ聴いてさ、
ちょっと決めたんだ。これからどうするか。」
「 加賀さんに聞いたんだけどな、攻略する海域
によって主となる鎮守府が決まるらしいんだけど
呉は西方海域と南方海域の時らしいんだよ。
今はまだ南西海域の攻略に取り掛かろうとしてる
とこらしいからまだまだ先になると思うけど……
早く海域の攻略に取り掛かるために、南西海域の
攻略に参加しようと思うんだ。皆には負担を
かけることになると思うけど、頑張ってくれるか?」
榛名は俯いたまましばらく顔を上げなかった。ちょっとして、いや結構経ったのか……顔を上げた。
「 提督……ありがとうございます!!榛名、
ご期待に添えることができるように、頑張ります!」
榛名は今日一番の笑顔で俺の手を取った。その目には涙が煌めいていたが、それは紛れも無く感動の成すものだった。
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提督との話のあと、 榛名は寮へと続く廊下を一人出歩いていた。普段は一人で歩くと寂しいとしか思えない暗い廊下も、提督との談話のあとではそんな気はしなかった。榛名の心には提督の言葉が優しく響いていた。姉妹四人で居たい。そんな自分勝手な願いを提督は聞き入れてくれた。榛名が提督を信じるには、それで十分だった。
ー提督は榛名を信じて、願いを叶えてくれると約束してくれました……榛名はこの期待に答えなければならないですね……ー
榛名は歩きながら考えた。
ー提督の期待に答えるためには、もっと力が要ります。その力はきっと、榛名だけでは掴めないもので……そう、金剛お姉様。お姉様と一緒に頑張っていきましょう。いつか、いや、榛名たちが頑張った先にこそそれがあるんですー
やはり廊下は暗く静かだが、寂しくはない。目の前にある目標が榛名の道を明るく照らす。その道を提督が共に歩んでくれる。その先に、みんながいる。そんな幸せな気分の中、早くも廊下は終わり、部屋についた。
もう電気が消えてる……金剛お姉様はもうお休みなんですね……
榛名が自分のベッドの上のベッドを覗くと、案の定金剛は眠っていた。榛名は顔を近づけると、優しく笑いかけた
「 お姉様、私たちの夢、必ず、叶えましょうね……
みんなで」
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鎮守府の朝は早い。マルゴーマルマルを過ぎたぐらいから艦娘達はトレーニングを開始する。中には夜になってから活発化する者もいるようだが……
この鎮守府の提督も朝が早い。これは彼の昔からの習性なのだが、それは別の話。
艦娘に負けじと支給品のジャージに袖を通し、鎮守府のランニングコース(実際は艦娘達がそう呼んでいるだけなのだが)を走っているのだった。
吸う吸う吐く吐くの長距離走の基本リズムに合わせて全身に潮風が染み渡る。十分走った頃には毛穴という毛穴から汗が吹き出していた。
執務室前のベンチに腰を下ろし、タオルと果汁百パーセントのオレンジジュースを取る。グビッグビッとそれを煽る。オレンジのフレッシュな香りが、豊かな酸味が、甘みが口の中な広がる。
「 やっぱこれだわな……それにしても……
走れねえ……体力落ちてるなこりゃ……」
オレンジジュースと共に中学生のころから続けているランニングだがこんなに走るのが辛いと思ったことはないんじゃないかと言うほど走れなかった。
「 これから戻してくしかないか……っと」
「 あーっ提督じゃん!おはよぉー」
「 ごきげんよう、提督。」
グラウンドから上がって来たのは二人や艦娘だった。一人は蒼い髪を長く伸ばした、なんと言うか……JK然とした少女。もう一人は綺麗な栗色の髪ををポニーテールにまとめたお嬢様然とした娘だった。
「 ええと……ごめん、誰だっけ?」
恐らく初対面の娘だ。いいやそんなことはいい。とにかくやばい。確かに金剛や榛名、加賀さんに大淀さん、みんな美人だったけど、この二人は同じくらいの年に見える。しかもとびきり可愛い。よって、かなり緊張する。
「あー、初対面だっけ……重巡鈴谷だよ!
よろしく!」
「 同じく熊野ですわ。ごきげんよう、提督」
鈴谷はキャピッと敬礼を、熊野は丁寧に頭を下げる。どちらも最上型のはずだが姉妹でも大分違う性格をしているようだ。
「あ、ああ、こちらこそこれからよろしく頼む。
色々と迷惑をかけるかと思うけど、頑張って
いこう」
俺は緊張を隠すために熊野よりも更にビシッと敬礼した(正しい敬礼というものは知らないんだが)。すると鈴谷はプッと笑った。なんだか熊野も少し笑っているように見える。
「提督ー、そんなにキチッとしなくても良いよ。
私もその方が楽だしい、こっちもやりにくいしさ」
「 何を言ってるんですの鈴谷。提督は正しい振る
舞いをしているだけですわ。もっと交流を重ねて
仲を深めてからでお願いしますわ提督」
二人から相反するお願いをされるとこまるんだが…… ここまで可愛い娘達と話すことなんてなかったもんだからより一層どうすればいいか分からない。
そんな俺の葛藤を壊したのは鈴谷だった。
「 提督ー、それ何飲んでんの?」
「 私も気になりますわ。」
鈴谷がしれっと俺の横に腰掛けると、それを観て熊野までもが隣に座る。瞬く間に俺は両手に花状態になってしまった。恐らく俺の顔もバラの花びらに負けないくらいの真紅に染まっていることだろう。鼓動が少しずつ早くなってきていることも分かるほどには。
「 あ、ああこれか。た、ただのオレンジジュース
だけど……」
俺のカチコチの返事を聞いた鈴谷はニヤリと悪魔的に笑う。
「 ちょっとそれ貰うね」
呆気に取られて動けなかった(とは言うが実際は緊張が一番の理由)俺の手から鈴谷はオレンジジュースの入ったボトルを奪い取った。
グビッグビッ
俺は思考停止して横目で鈴谷が飲むのを見る事しか出来なかった。
「す、鈴谷!それは少しは、はしたないです
わよッ!」
俺が正気に戻ると熊野が鈴谷をゆさゆさしていた。冷静に考えればこれはヤバイのではないだろうか。
「 はいっ!ありがとう。今度からは3人分お願い
ねー。」
「ちょっと鈴谷あ……」
鈴谷はそんな熊野の叱咤をものともせず俺にその唇の触れたボトルを返し、そのままグラウンドへと帰って行った。熊野もそれを追ったために、ベンチにはボトルを握った俺だけが残されてしまった。
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