提督。それは異世界から来た高校生   作:屋守 竜

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艦これ秋イベ始まりました。今回も遅れましたね……
攻略の忙しいことと思いますが、立ち寄ってくださったあなたに感謝を


激闘の果てに彼は見据える

輸送艦隊の旗艦大淀は、連合艦隊から高速の第二艦隊が分離するのを見て、キッと唇を噛んだ。通信機からは絶えず偵察機からの電信が届いているが、その殆どが第二艦隊についてだった。

 

ー 速力三十三ノットで鎮守府方面に移動中

重巡、軽巡、駆逐艦計六隻、距離は三千 ー

 

もう距離はほとんど無い。速力がバレている以上、彼女らに逃げる術は残されていない。ただ、逃がすことは出来る。この艦隊を守ることが自分に科せられた使命だと、大淀はそう思っていた。

 

「 響さん……」

 

「 なんだい?」

 

響は手短に答える。ただでさえ差し迫った状況だ。響は元々おしゃべりな方ではないが、普段よりも冷静になろうとしているのが伺えた。それほどに輸送部隊の置かれた状況は苦しいのだ。ここから先は提督の指示にはない。大淀の旗艦としての独断だ。

 

「 このままでは間違いなく追いつかれて速吸さん

が撃破されます。それは何としても防がないと

いけません。私はここに残って、敵の艦隊を

迎え撃ちます。響さんは速吸さんと鎮守府へ

向かって、主力部隊と合流してください。」

 

響は静かに大淀を見つめている。その目にあるのは哀しさの色。この策を支持していないのは明白だった。

 

「 それは……君だけが残るって事かい?」

 

「 そうです。私はこれでも火力は低くありません。

足止めは出来ます。輸送部隊を響さんに頼みたい

のです。」

 

響は静かに目を閉じる。しかし、そこに沈黙を作りうる余裕など無かった。

 

「 私はその策には賛成出来ない。大淀ひとり残し

て私達だけ行くのは許したくない。

せめて私だけでも一緒に居させてくれないか?」

 

「 駄目です。私は響さんに旗艦代理をお願いした

いのです。部隊を任せられるのはあなただけ

です。敵が来る前に、早く行って下さい。」

 

大淀はポン、と響の方に手を置いた。信頼している、任せました、と言うように。その顔は笑顔だったが、その笑顔もまた恐怖で少し引き攣っていた。響はそれを見逃さなかった。大淀も怖いのだ。身動きを取れないまま沈められた過去を持つ彼女は、遥かに数で勝る敵艦隊に身を晒してまで私達を守ろうとしている。

 

「 分かった。ここからは私が預からせてもらう。

速吸を鎮守府に連れていったら、絶対直ぐに

帰ってくるから。やられたらダメだよ。」

 

少しおどけたように笑う響。響は響で、見えない敵と戦っているのだ。

 

「 響さんこそ、航空機の攻撃もあるでしょうか

ら、気を付けて下さいね。」

 

大淀も笑った。そして勢いよく自分に括りつけていたロープを断ち切った。

 

「 ふふっ。不死鳥の名は伊達じゃない。

じゃあ後でね、大淀。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

第二艦隊は重巡、軽巡、駆逐艦で構成された高速艦隊だ。本来は連合艦隊の露払いとして行動するのだが、第一艦隊はほとんど低速の大型艦で構成されているために、輸送艦隊を追撃することが出来なかった。輸送部隊の追撃を任された第二艦隊のつらづらは、意気揚々と輸送艦隊を追っていた。

 

「 速吸を撃破すればこちらの戦略的勝利です。

気を抜いてはいけませんよ!」

 

旗艦の妙高があとに続く夕立達の方を振り向く。と、夕立が鎮守府の方を指しながら叫んだ。

 

「 妙高さんっ!誰か来るっぽい!」

 

妙高が振り向くと、確かにこちらに向かってくる影が一つ。高速でこちらに向かってくる。射程外なのか発砲音はない。打電は一切ない上、味方にあっちに行った艦はいないから敵であることは間違いない。

 

ー足止め……時間稼ぎか……ー

 

妙高はそう捉えた。蒼龍飛龍の艦載機によると、主力部隊が到着するまでにはまだ少しかかるらしい。輸送艦隊を追撃から守るためにここに残ったのだ、と。

 

そうこうしているうちに、敵の姿が見えた。艦影は大きい。主砲も搭載しているが、三連装。間違いなく大淀だ。

 

「 全艦、砲雷撃戦用意!敵艦は一隻ですが高火力

です!全速力で付いてきてください!」

 

「 やってやるぜ!」

 

「 おっおー!島風は速いよー!」

 

「 ぽいっ!」

 

全艦の砲が火を吹き、超音速の砲弾が空を切り裂いた。

 

ーーーーーーーーー

 

敵連合艦隊が輸送艦隊を追っていた頃、主力挟撃部隊は榛名たちに合流していた。これで仮称遊撃部隊が結成、高速戦艦二隻、空母二隻、重巡駆逐艦という事実上の主力艦隊が完成した。

 

「 龍驤、敵の様子はどーデース?」

 

旗艦と言える金剛が後ろに控える龍驤に尋ねる。

 

「 敵さんは艦隊を二つに分けて片っぽに輸送艦隊を

追わせとるみたいやな。主力部隊の方はのんびり

鎮守府の方へ行っとるみたいや。」

 

龍驤は他にも、敵の現在地や速力を報告した。

 

「 このままいくと、主力部隊と輸送部隊が合流

するにはもう少しかかりそうですね……

私達も早く行かないと、挟撃が出来なくなる

かも知れません……」

 

不安そうな声を漏らしたのは榛名だ。敵には長門がいる。戦後長門とともに生き残った彼女は長門の運の良さも強さもよく知っている。こちらの主力では耐えられない可能性も高い。提督の作戦を確実にするためにも、いち早く追いつかねばならない。

 

「 そうですネー。早く行くべきネー!ミナサーン、

全速力でついてきてくださいネー!」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

提督は焦った。響から大淀が自ら時間稼ぎのための囮になったと聞いて、焦ったのだ。彼にとって、この演習は演習以上の意味を持つ。彼の作戦は演習の終わったあとにも続いているのだ。ここで大淀がやられてしまうと、その策にも支障が出ないとも限らない。彼は焦りのままに通信機を手に取った。

 

「 大淀!大淀!応答してくれ!

……ダメだ……くっ!」

 

「響!響!」

 

『こちら響。どうしたの司令官?』

 

「 どうしたのじゃなくて!大淀だ!大淀はどうして

ひとりあそこに残ってるんだ!」

 

「 司令官、落ち着いて。大淀は自分であそこで

時間を稼ぐって言って残ったんだ。今のままじゃ

主力部隊との合流に間に合わないって」

 

提督は唇を噛む。これは自分のミスなのだ。扶桑型の速力や機関の弱さを考慮に入れていなかった。

 

「 そうか……怒鳴って済まなかった響。

足止めされたとなると敵は航空機を使ってくる

可能性が高い。注意してくれ!」

 

『分かったよ。司令官。』

 

提督は通信を切ると、次は金剛に通信をした。

 

「 金剛?!聞こえるか金剛!?」

 

『どうしたんデース?提督。そんなに慌てて?』

 

「 大淀が自分一人囮になって主力部隊の到着まで

の時間を稼いでる!赤城の攻撃隊を発艦させろ!

お前達も急いで行ってくれ!」

『わ、分かったネー!赤城サーン……』

 

天津風は通信機を置く提督の手が白くなるほど握られ、少し震えているのを見た。作戦が失敗しているように見えた時すら動じなかった提督の手が、震えているのだ。天津風は、今の状況が彼にとって最も恐ていたものであると分かった。

 

( きっと演習の勝ち負け以上に大切なことなんだわ……多分大淀さんの事ね……残念だけど……ここにいる私に出来ることはないわ)

 

天津風は悩んだ末に、白く震える提督の手を静かに握った。ハッとして顔を赤く変えた提督が、小さな声で"ありがとう”と言ったことを知っているのは彼女だけだ。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「 くっ!やはり練度が高いですね……回避しても

直ぐに次が当たってしまいますね。」

 

「 やはり大淀さんの回避力は凄いですね……

六隻で砲撃しているのに、未だに小破です」

 

「 私の後ろには駆逐艦しかいませんからね。

響さんたちには手を出させません。」

 

大淀は左に右に身を躱し、敵の砲弾を避けていく。敵の目線、砲塔、あるいは気配。大淀はそういったものを感じ取り、弾を避けているのだ。しかし、全てを避け切ることは出来ない。少しずつ被弾も増えている。撃沈判定が下されるのも時間の問題だ。その上、少しずつ囲まれる形になっている

「 いかに大淀さんと言えどもう持たないはずです。

降参してください。」

 

砲撃しながら語りかける妙高に十五・五センチ砲を向けながらも、肩で息をしながら大淀は笑いかけた。

 

「 私も艦隊を預かっていますしね……

それに私は提督にも無断でここに残っています。

むざむざやられることはできません。

私達のの主力部隊が来るまでは耐えて見せま

すよ。」

 

「 流石最後の連合艦隊旗艦ですね……

でも、もう終です。皆さん、雷撃開始!」

 

妙高の叫びと同時に、木曽、阿賀野、島風、夕立、白露が一斉に雷撃を開始した。二十本の魚雷が取り囲んだ大淀めがけて突き進む。大淀は回避しようと舵を……きれなかった。

 

「 くっ……すべて私を狙うのではなく退路を

無くすように撃ってきている……これは避けられ

ませんね……すみません皆さん、ここまでみたい

です……」

 

網目状に放たれた魚雷が大淀めがけて突き進む。そのうちの一本が大淀の右舷へと向かい、大淀の装甲を……破ることは無かった。いや、当たらなかった。魚雷は大淀の少し手前で爆発し、大淀は破片を受けたのみで、小破判定のままだった。

 

「 信管の誤作動か?!」

 

木曽が叫ぶ。叫びつつも次の魚雷の準備をしているのだ。しかし、それは夕立の悲痛な叫びで途切れてしまった。

 

「 航空機っぽい!あれが魚雷に爆弾を当てて

止めたっぽい!」

 

妙高は考えた。

 

ーー魚雷を航空機からの爆撃で止めるのは至難の技だ。並大抵の練度ではできない。しかしあの航空機はそれをやってのけた。こんな事が出来るのは……

 

「 一航戦……加賀さんか赤城さんですね……」

 

例えそうだとしても、自分の役目は変わらない。ーー

 

「 皆さん、対空戦闘用意!」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

一時は第一航空戦隊によって 盛り返したが、激しい対空砲火や飛龍蒼龍の艦載機による激しい対空戦闘によって攻撃隊は数を減らし、母艦へと帰って行った。それだけならいいのだが、遂に、連合艦隊の主力、第一艦隊がやってきたのだ。長門の四十一センチ砲の発砲音が盛んに聞こえる。水柱も近付いてきた。が、こちらの主力部隊もあと五分ほどで到着するという。まだ希望はある。大淀は長門を見据えた。すると長門は不敵に笑った。

 

「 さぁ決着を付けよう。我々の練度とお前達の

数、どちらが勝つのか。全艦戦闘準備!」

 

ーーーーーーーーーー

 

この演習、我が艦隊の勝利だ。長門はそう信じて疑わなかった。今頃飛龍蒼龍の艦載機が輸送艦隊を襲っていることだろう。主力部隊と大淀も、直ぐにこの四十一センチ砲の餌食となると。

 

しかし、それもこの入電で儚く崩れ去った。

 

「 偵察機より入電!敵主力部隊は六隻、六隻のみ

だそうです!残りの六隻の動向は不明!」

 

「 何っ!」

 

飛龍の艦載機が送ってきた電報によると、敵主力部隊はもうすぐこちらに来るらしい。しかし、六隻のみで、残る六隻の所在は不明、編成すら分からない。

 

「 まさか……」

 

そう口に出した時だった。

 

「 大淀ー!助けに来たデース!

全砲門、ファイヤー!!」

 

「 勝手は榛名が許しません!」

 

ドゴオオオーン!!

 

長門のそばに大きな水柱が立った。間違いなく、金剛と榛名だ。背後からやってきているから、こちらが消えた艦隊だろう。大淀を後回しにして、こちらからやらねば……

 

「 挟まれたな……後ろにも前にも戦艦か……」

 

日向が静かにつぶやく。進めば戦艦重巡の主力、引けば戦艦二隻の急襲部隊。連合艦隊は混乱の渦に巻き込まれた。

 

「 どうするっぽい!?」

 

「 どうしたら……」

 

「 後ろの部隊と編成は?蒼龍!」

 

「はいっ……戦艦二隻、重巡一隻、空母一隻、

駆逐艦二隻の様です!」

 

幸い空母から艦載機は発艦していない。発艦しても飛龍蒼龍の艦載機が撃墜する。戦艦二隻も金剛型。火力で押し切れる。しかし、その見込みは甘かった。

 

「 誰が駆逐艦や!うちはこれでも軽空母の龍驤

や!覚えときいや!」

 

駆逐艦と思われていた一隻は空母だった。巻物のような飛行甲板を展開し、艦載機を発艦させている。

 

「あちらの主力部隊も見えました!空母加賀も

います!既に発艦をしています!」

長門は唇を噛んだ。数で劣っていても練度が高いこの艦隊が負けるとは全く考えもしなかった。しかしどうだ、今は押されている。連合艦隊旗艦を務めた自分が、だ。長門は俄然楽しくなった。自分の力を、主砲を、ここまで使うことになろうとは。思わず笑みが漏れた。

 

「 演習はここからだ。皆落ち着け!前後に別れて

砲撃戦開始!全力で撃ち込めええい!」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

そして十分後、演習終了のサイレンが鳴り響いた。勝利の女神は呉に微笑んだのだった。




ご感想ご要望ありましたらお願いします。これからも頑張っていこうかな!秋イベ!嘘ですこっちです
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