第二艦隊の猛攻に耐え、輸送部隊を守り抜いた大淀に、勝利の女神は微笑んだのだった。挟撃部隊の到着と輸送部隊と主力部隊の連合艦隊の到着が間に合ったのだ。高速の輸送艦隊は飛龍蒼龍の航空隊の攻撃を耐え抜き、速吸の護衛として残った電と雷を除いた響、暁が大淀の元へ駆けつけた。第二艦隊は主力部隊の砲撃で壊滅、第一艦隊も挟撃部隊の金剛、榛名の高速戦艦姉妹からの砲撃で壊滅した。迎え撃った飛龍蒼龍の航空隊も赤城と龍驤の制空隊に撃ち落とされたのだった。しかし、長門や日向、妙高たちとの練度の差は大きかった。混乱していても、こちらの艦娘を的確に捉え、戦闘不能にしていった。結果として佐世保側は全艦が戦闘不能という判定だったが、こちらも大淀、金剛、榛名が大破判定、加賀、扶桑、熊野が中破判定。ほかの艦もほとんど小破判定だった。受けたのはあくまでも模擬弾だったが、疲れもあるだろう、ということで全艦入居となった。夜には交流会が行われることなっている。そのために彼は今、バベルの塔の如く高く積み上がった書類の前でペンを握っているのだった。今回の演習の終了報告、地元住民への説明、反省などその種類は多岐に渡る。特に反省については非常に細かい記入が求められている。演習終了直後の簡易ミーティングでは、『作戦が良かった』という声も多かったのだが、それよりも、大淀の『練度の差を感じました』という言葉が重くのしかかった。
ー練度上げは必須だー
皆そう感じた。
書類を片付けていた俺は、艦娘からのアンケートを読んでため息をついた。多くは作戦を褒める言葉ばかりだ。大淀のように練度に関することに触れているものは少ない。だが、ゼロでは無かった。
練度を考慮しきれて無かったな……
今回は上手くいったが……運もよかったってことだな。そう思って目の前の一文を消そうとペンを握り直す。
「 何言ってるのよ。あなたの作戦がよかったから
練度の差が埋められたんじゃない!
どんなにいい作戦でも被害は出るものよ。
だからその文を消すのはダメよ。」
「 考えてること当てるとか天津風お前エスパー
かよ!」
「 何言ってるのよ。さっき思いっきり口に出して
たじゃない。」
どうやら俺は思っていただけじゃなく、口にも出していたらしい。口と心が直結しているようだ。ともあれ、そう言われるとこの文を消すのは気が引けてくる。しょうがない、残しておくか……俺はそう自分に言い訳をしてその文を残した。しかし、間違いなく俺は練度の差という物を甘くみていた。状況が圧倒的に不利であっても、長門のようにその状況をひっくり返さんばかりに当ててくる艦もいる。日向がも妙高もそうだった。これこそが練度の差、すなわち場数の違いなのだ。それを考えずに立てた策は、決して良いとは言えないのではないか。
「 練度の差を埋め切って勝ちに導いたのはあなたの
策でしよ。私達だって覚悟してる。
戦えば傷ついて、勝てば笑う。そこまでやられた
ことを言われると、私達信頼されてないみたいじゃ
ない!もう少し、そうね……自信を持って!」
天津風がフワッと笑った。銀色に輝くその長髪と同じくらい美しい笑顔だ。開け放たれた窓から、ふわりと暖かい風が吹いた気がした。
「 ありがとな。信頼することも責任だな……
ほんとにありがとう、天津風」
「 いいのよ、あなた。でも、大淀さんに何か用が
あるんじゃなかった?もうすぐ夕方よ」
そんなバカな!俺はサッと窓へ目を向けた。
確かに日は西に傾いてきて、時計の針もおやつの時間を告げている。俺は鎮守府内放送で大淀さんを呼び、再びバベルの塔へと向き直った。
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