提督。それは異世界から来た高校生   作:屋守 竜

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前回からだいぶ経ってしまいました……すみません。もっとコンスタントに投稿したいのですが……ホントすみません。


海を守る、ために
佐世保の艦娘は彼に興味があるようです


鎮守府に戻ると、既に6時半を回っていた。交流会(という名のバーティ、あるいはお疲れ様会)は七時開始の予定になっていたから、早く支度をしないと間に合わないかもしれない。なんと俺は開始の音頭を取らなくてはならないらしく、俺の遅れは全体の遅れにも繋がるのだ。俺は自分の出せる最大の速度でクローゼットの中身と提督の制服を着替えると、食堂へと向かった。

 

「 この度は遠路はるばるありがとうございました。

今回の演習が皆さんの健闘と無事に繋がることを

願っています。それでは、乾杯!」

 

「 乾杯!!」

 

俺がグラスを掲げると、それに倣うように艦娘達も一斉にグラスを掲げ、周りの娘たちと乾杯を交わした。呉の娘も佐世保の娘も楽しげだ。今回の演習で艦娘の間に軋轢ができたりしないかと少しばかり不安だったのだが杞憂だったようだ。海を守り、海を取り返す。この目的のために命を賭けて戦ってくれている子達なのだ。こんなことで絆が崩れることは無いということだ。

 

乾杯が終わると、各自自由にどうぞつてことになった。赤城さんと加賀さんはものすごいスピードで食べ物を取りに行って、それこそエベレストのように盛り上がったカレーを食べ始めた。隣には長門がいるようだ。これまた同じような……いや!赤城さんと加賀さんのものよりも少し大きい山に登っている……あの食材は一体どこに消えていくのだろうか?

 

「 あなたも楽しそうね」

 

そう言ったのは秘書艦の天津風だ。律儀にも俺の隣にいてくれている。天津風にも陽炎や不知火、雪風、陽炎型の仲間がいるはずなのに、こちらを優先してくれているのだ。……今度なにか奢ってやろう。

 

「 まあな。みんなが楽しそうでなによりだよ。

天津風も行ってきたらどうだい?話をしたい娘も

いるだろう?」

 

「 えっ?でもあたしが行ったらあなた一人になる

かもしれないわよ。このムードの中で一人って

寂しくない?」

 

天津風は優しい目で見あげてくる。そんな顔でいわれるとこう、じゃあいてもらおうか、なんて言いそうになる。

 

「 雪風達だってお前と話したいだろうしな。

俺がいたら艦娘の娘は話かけにくいだろうし、

行っておいで。」

 

天津風は少し悩んでいるようだったが、ちょっとすると顔を明るくしてにっこり笑った。

 

「 ありがとう。じゃあお言葉に甘えて行ってくる

わね。」

 

そう言って彼女は雪風たちのところに早歩きで行った。その歩みが軽くスキップしていたのは、黙っておいてあげよう。

 

天津風が行ってしまうと、俺は本当に一人になった。まあわざわざパーティで上司に話しかけに行くようなことはしないか……ひとり寂しく酒に見立てたラムネとチーズを頂くとしよう。未成年だからな。

 

「 秘書艦との話は終わったようだな。少しいいか?」

 

とても凛々しい、つい背筋を伸ばしてしまいそうな声が背後から聞こえた。自信と威厳、張りのある声だ。しかし、俺は聞かなかったことにする。これで反応して振り向き、お前じゃない、なるのはゴメンだからだ。

 

「 呉の提督よ。お前に声をかけたつもりだった

のだが。」

 

声の主はさっきと同じだが、幾分か怒気の含まれた声音が俺に刺さった。

 

「 ああ、すみません。俺に声をかけたものとは

思いませんでしたから。」

 

声の主は、スラリと高い背にツノのような艤装を付けた艦娘だった。連合艦隊旗艦の名が似合う武人然とした艦娘。長門だ。長門が顔を少ししかめて立っている。

 

「 なんだ?そんなにへりくだって……

所属が違うとはいえお前は提督、我々の上官だ。

もう少し堂々としていてもいいのではないか?」

 

「 上官と言っても艦娘のみんながいて初めて

必要になる職ですから。それ相応の態度という

ものがあるのではと思いまして。」

 

長門は少し困ったようだった。確かに上官から敬語で話されて、理由もきちんとしていれば断るのも難しいだろう。

 

「 そうか……では私には敬意を込めて対等に

話して欲しい。その方が私も話しやすい。それに

お前は今回見事な指揮で提督としての手腕を

示したじゃないか。もう少し堂々としてはどうだ。」

 

そう言われれば……そうか。機転の良さはさすが連合艦隊旗艦と言ったところ。

 

「 分かったよ。長門。ところで話ってなんだ?」

 

努めてフランクに話しかけたからか、長門は満足そうにうなづいた。

 

「 うむ。実はな、この演習の前に我々の提督から

呉の提督は民間から選出された人物だと聞いて

いてな。私の知る民間出の大湊の提督は兵法は

ほとんど知らなかった。民間から提督を選出する

試験にも兵法は含まれていなかったはずだ。

一体どこでお前は兵法を学んだのだ?」

 

実はその試験、受けてすらないので詳しいことは分かりません。てか兵法の試験ないのかよ。そんなものも知らない奴に国防を任せるとかどうなってんだよ。

 

「 あー、俺は特に兵法を学んだことは無いな。

ただ昔から本が好きで、その中で知識が培われた

って事なんだと思う。」

 

長門がなるほどって感じの表情でうなづく。

 

「 確かに、書を読むことは大切だな。私も暇が

作れれば読もう。」

 

「 それなら三国志をおすすめするよ。

参考になる戦法や考え方が多くあるからな。

旗艦を任されることが多い長門にはぜひ読んで

欲しい。」

 

「 そうか、三国志か……早速取り寄せよう。

すまないな、提督よ。声をかけておきたい艦娘も

まだいるのでな。失礼させて貰う。

ではな提督。また遠くないうちに会うことだろう。

その時はまた話そうではないか。」

 

長門はそう言うと、またパーティの雑踏の中に戻って行った。最後まで堂々とした後姿は、頼もしさと同時に誇りが感じられるものだった。……俺もこの鎮守府で仕事をしていけば、あんなふうに歩けるだろうか?

長門が言ってしまうと俺はまた一人になった。まだ未成年なので酒は飲めない。戦艦や空母、重巡クラスの艦娘は呑んでいる娘も多いようだが、俺はお慰み程度にラムネとチーズが法的に精一杯だ。しかし、こうやって見ると、軽巡や駆逐艦の娘は殆どが高校生ないし小中学生くらいに見える。艦歴が長い軽巡でさえその容姿なのはなぜだろうか。ほら、この娘みたいに可愛らしい大きさ(身長)の娘もいるわけで……

 

「 提督、こんばんは」

 

声をかけてくれたのは、濃紺のセーラー服に、赤いリボンが眩しいおさげの艦娘だった。可愛らしくも端正にまとまった顔立ちは見る人に誠実さや大人しさを感じさせる。しかし、この鎮守府の娘ではないのだろう。見覚えはない。

 

「 ああ、こんばんは。ええと……」

 

「 ボクは白露型駆逐艦の時雨。よろしくね、呉の

提督さん。」

 

と、濃紺セーラーの艦娘、時雨はにっこりわらいかけて

くれた。ボクっ娘か……

 

「 そうか、よろしく時雨。それで何か用かな?」

 

「 いや、特に用があったってわけじゃないんだ。

ただ、どんな人なのかなって気になったんだ。」

 

「 思ったより頼りなさそうでガッカリしたんじゃ

ないか?いつも加賀さんに怒られてるし、

何より少し前まで民間人だったんだから。」

 

「 ふふっ」

 

俺の言葉を聞いた時雨は可笑しそうに笑った。元々可愛らしい顔がさらに可愛いものになる。正直、少しドキリとした。

 

「 君は少し自己評価が厳しいみたいだね。

思った通りの人だよ。誰も犠牲にすることなく

確実に勝利を収める策を立てられる人だよ。」

 

嘘偽りのない純粋な、真剣な目で時雨は言う。しっかりとこちらを見つめてくるものだから、俺は気恥ずかしさで思わず目をそらした。

 

「お褒めにあずかって光栄だよ。やはり一番大切

なものは戦ってくれている君たちだからな。

それに、俺が戦っていかなきゃならないのは

深海棲艦だけじゃないみたいだしな。」

俺は大淀の方を見ながら言った。着任した時よりも明るい表情を見せるようになってくれた大淀。心なしかほかの艦娘と話す時、心から楽しんでいるように見える。艦娘のみんなには、この時でしかできないことをして欲しいのだ。過去に縛られるのではなく、今を見つめて欲しい。

 

そうおもって大淀を見つめる俺を時雨は懐かしそうに見ていた。

 

「 ふふっ、そうだね。きみならできるよ。きっと。」

 

一体何を思い出しているのやら。

 

「 あ、ごめんね提督。そろそろ行くよ。

扶桑にも話しておきたいことがあるんだ。」

 

時計を見た時雨はぴょこんと頭を下げる。

 

「 そっか。いや、今日はありがとな。

わざわざ話し掛けてくれてありがとうな。

また何かあったらよろしくな。」

 

「 それなら僕の方こそ、ありがとう。

じゃあ失礼するよ。」

 

時雨は可愛らしい敬礼をピシッと決めて、扶桑の方へと歩いていった。




冬イベも終わり、西村艦隊は無事レイテ突入を果たしたした!これからも皆さんが艦これの世界を楽しんで下さることを心からお祈りします。そして今年もよろしくお願いします!
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