「大淀さん、偵察機からの報告はありますか?」
「 いえ、まだです。もう少しかかると思います」
「 高性能な艦上偵察機があれば私達ももっと高い
精度で索敵ができるのだけれど……
ここはまかせます」
空母機動部隊の旗艦、赤城が大淀の方を振り返る。がしかし、大淀はくびをふった。既に6機の水偵を飛ばしているが、いづれも会敵出来ていない。航空戦において重要不可欠な索敵に十分参加出来ないことを、加賀も、そして赤城も、心苦しくおもっていた。仕方なく艦攻を偵察に向かわせているが、こちらも会敵出来ていない。
今回の作戦に備えて二式艦上偵察機や彩雲の開発を重点的に行っていたのだが、いずれも開発できなかったのだ。そのため、足の速くない艦攻と水偵に索敵を任せているのだ。足が遅いということは、それだけ会敵するのが遅いということを意味する。
流石の赤城も、少し焦りが出てくる。
風になびいていた黒髪が汗で肌に吸い付くほどだ。
彼女の顎から銀の雫が滴り落ちたとき、ようやくその知らせが届いた。
「 偵察機より入電!
目標の敵艦隊と思われる船団を発見!
編成は……戦艦2、空母3、重巡1を中心とした
連合艦隊です!距離およそ25000!
ただ、何れの艦も損している模様!」
大淀が叫ぶ。
それを聞いた赤城は、後ろを走る大淀達にむきなおった。
「 まもなく会敵します。加賀さんは艦攻の収容と
発艦準備、榛名さん、大淀さん、陽炎さん、
不知火さんは対空戦闘の用意を!
……敵の偵察機です!
先手は取れています。
全力で参りましょう!」
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一方その頃、四国沖40キロを東に進む深海棲艦艦隊は大淀の偵察機を発見し、対空射撃をしていた。
「ミツカッタ……ナ」
金色に光るヲ級は、静かに呟いた。彼らもまた偵察機を放ってはいたが、まだ艦娘発見の報は届いていない。
「 サキニミツカッタヨウダナ。コレハフリダナ。
チョクエンキヲオオメニダシテオクカ。」
ヲ級は頭の上から艦戦をわんさか発艦させた。まるで口のようなその構造物から、不気味で無機質な物体が飛び立っていく。
「 ヨウヤクミツケタヨウダ。
空母2、戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦2ノヨウダナ。
アチラノ空母モカナリ大型ダガ、艦載機ノ数
ハ、マケテハイナイダロウ。」
輪形陣の戦闘を進む大型の戦艦、タ級フラッグシップは、静かに笑った。ついに彼女が放った偵察機が艦娘を見つけたのだ。
しかし、ヲ級は顔を顰めた。
「 ドウシタ?ナニカキニナルコトデモアルカ?」
そんなヲ級の顔を、タ級がのぞき込む。
「 オカシイ……コチラノ編成ガアル程度
ワレテイルト考エレバ……
空母主体ノ艦隊二シテハ、主砲満載ノ戦艦
ト雷装ノ駆逐艦ハ砲雷撃戦火力ガ
ツヨスギル。空母機動部隊二シテハ空母ガ
スクナイ……トイウコトハ……
ソレハ主力デハナイ?」
ヲ級は、気づいた。発見された艦娘の艦隊は何故か中途半端な布陣だったのだ。航空戦をするにも、砲雷撃戦をするにも、火力が微妙に足りない。編成の意図が分からなかった。考えられる可能性としては……
「 偵察機ヲモウイチドトバセ。
コウホウニモマンベンナク。」
「 別働隊……カ」
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一方その頃、四国の東か西ら回り込む空母機動部隊と同じく、西後方から深海棲艦艦隊の背後を目指す戦艦艦隊は、大淀から伝えられた深海棲艦の位置を目指し進んでいた。
「Oh!思ったよりも遠いデスネー。
まだまだ射程外ネー。」
旗艦の金剛が唸った。戦艦部隊には扶桑が組み込まれているため、24ノット以上は出せないのだ。
「 ごめんなさい……
私の足が遅いばかりに迷惑かけて……
不幸だわ……」
扶桑が悲しそうに呟く。そんな扶桑の背中を摩耶が叩いた。
「気にすんなって!砲撃戦になったら、一番
頼りになるのはお前なんだからよ!
元気出してこーぜ!」
「おおっ!摩耶さんが優しいですねえ!
これはレアシーンです!青葉、見ちゃいました!」
と、そんな摩耶を茶化すようにカメラのシャッターが切られる。
「 青葉あ!お前また鳥海にアタシの変な写真
渡したりしたらボコボコにしてやっからな!」
「 な、なんのことでしょう?
青葉、記憶にございません」
ドスの効いた声で脅す摩耶に、青葉の額から雫が滴り落ちる。思い当たる節があるらしい。
「那珂ちゃんもー、勝手に撮ったらダメなんだから
ねー!」
と、ここぞとばかりに那珂からも非難の声が。
「あんたらえらい余裕やねえ。
仮にも作戦中やっちゅうのに」
単縦陣の最後尾を進む龍驤が呆れたように言う。
砲雷撃戦のためのこの部隊は対空火力が低い。それをカバーするため、龍驤は艦戦を満載して防空に当たっており、気を張っていたのだ。呆れもする。
「 龍驤には感謝してマース。
ユーがいてくれるから、ワタシ達も安心できる
ンデース。摩耶、青葉、那珂、龍驤に呆れられ
ないように、テートクに褒められるように、
気を引き締めるデース!」
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別働隊の存在を予想したヲ級フラッグシップは自らの艦載機とヲ級エリートの艦載機を半数赤城の艦隊に向けて発艦させた。
赤城と加賀の艦載機は、深海棲艦の艦載機と会敵、交戦した。
赤城と加賀の艦載機は、まだ偵察に出た艦攻が帰ってきていないため、艦爆と艦戦が中心。深海棲艦も凡そ同じだ。
ただし、艦載機の性能では僅かに深海棲艦が勝る。序盤では数の有利を活かして優勢を保ってはいたが、次第に警戒網をくぐり抜けてしまう艦爆も現れた。
「 やはり完全には塞ぎ切れませんでしたか……
敵艦爆、来ます!対空戦闘用意!」
艦隊としての防空能力は高くない。囮部隊として使うには致命的な判断ミスと言える装備だろう。しかし、彼女らは使命の完遂のため、僅かな対空火器の奮戦と、自らの操艦に運命をかけていた。
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