暖かな春の陽気の中で降り注ぐ淡い桃色の花弁を縁側から眺める僕にお茶を出す、4対8枚もある純白の翼を背中から覗かせてる、最近家に居座り始めた天使のミカエラさん。
何故″天使″が居候を始めたのかというと、一ヶ月前まで遡らなくてはいけない。
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絹のように白く柔らかい肌に黒い長髪を持つ、美少女とも言えるほどの容姿が整っている少女が、ベージュ色の髪を前髪を額が隠れるほどの短さにして、後ろ髪でうなじが隠れるほどの長さで一房に纏めた、赤縁眼鏡を掛けた少女の真正面で正座をして怒られている。
……これが客観的に見た僕の現状である。
「聞 い て る ? 麗慈君が神様らしき存在と契約したことはこの際どうでもいい。
それより、麗慈君の抱えていた衝動について私は言ってるんだよ!」
……やっぱり、そんな物騒な存在とは誰も縁を持ちかはない。
僕だって、突き放して無関係になることは考えたよ。けど、萩野の両親と萩野自身と縁を切るのは、自分勝手だけど嫌だったんだよ………。
13歳で世界最強の一角を倒して、世界最強の一角になった僕に対して、そんな存在としてではなく僕個人を視てくれたし、何よりも独りは辛いし、寂しいから。
「………ごめんなさい。
もう関わりたくなくなったよね。……ボクは化け物だから。
今までありが───
「………馬鹿。麗慈君は化け物じゃないよ。君は人間だ。只、ちょっと他より丈夫で、力があって、才能があるだけの、優しいの人間だよ。
知ってるかい? 化け物には、知性はあっても、理性はないんだよ。だから、好き勝手に行動するんだ。けどね、理性が生まれたなら、どんな化け物だって人間になれるんだ。何故なら、理性と知性があるのが、人間なんだから。
だから、君が自分のことを誰が何を言おうが、私や父さん、母さんは君のことを人間だと思ってるし、命の恩人であり、家族なんだ。だから、悩みがあるなら相談してよ
それに、そう簡単に私たちを拒絶されたら、こっちが困るよ」
…………あり、がとぅ。」
嬉しくて、幸せで、暖かくて、満たされて、安心できる。
………だから、萩野の腕の中で、生まれてから始めて子供みたいに泣き叫んだ。
子供の頃、早々に親が死んで一人になってから、確りしなくてはと決意して、子供ながらに武術や家事をやり始めた。
けど、早々に両親を奪った
……それでも、自分と同じような人生を送る人を存在するのが嫌だから、樫原一家を助けた。
そんな自己満足を満たした結果だったから、萩野たちにお世話されるのが嫌だった。自分の人生を送ってほしかった。
だけど、今までの孤独を埋められるかもしれないって、家族ができたようで嬉しかった。
だから、萩野に言えなかった。
僕のことを否定してほしくなかった。
孤独は嫌いだけど、親しい人に否定されて、何処かへ離れてしまうかもしれないから、僕は親しい人に否定されるのが一番嫌い。置いていかれるのが恐い。捨てられるのが恐い。否定されるのが恐い。
だから、萩野に相談できなかった。できる筈がなかった。
臆病者で、寂しがり屋で、怖がりだから。
「……眠りなよ。私が側に居るから」
ありがとう。
…………ありが……とう。
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私は勘違いをしていたんだと思う。
麗慈君は、いつも確りしていて、何かあれば支えてくれる、頼りになる男の子だと思ってた。
……けど、本当は誰よりも孤独が苦痛で、親しい人が居なくなるのが心の底から恐怖を感じる、自分よりも他人を優先してしまう優しい男の子だった。……今は女の子だけど。
それに加えて、精神的に脆くて、親しい人が……私たちが居なくなったら、壊れてしまうんじゃいかって思うほど儚くて幼い心を持ってる。
たぶん、早くに親を亡くしたから、心に蓋をして、独りで努力したからだと思う。
「寝てるときまで泣かなくても良いのに、君はやっぱり、私が側に居た方が良いんだろうね。
それに、麗慈君は麗慈君だ。例え女の子となったとしても、私が好きなのは麗慈君だからね。
そう考えると、神様? に頼んでヤるときだけども男の子に戻してもらわないとね」
「………おかあさん、おとうさん。
……ひとりにしないで、おいていかないでよ。
ぼくもいっしょにつれていって、ひとりでいきるのはつらいよ………」
つらい、か。
今まで生きることに対して、そんな風に思っていんだ。
だけどね、麗慈君。君は独りじゃないんだよ。私が居る。父さんが居る。母さんが居る。それに、学校の皆だって君のことを大切に思っているんだ。
だから、君は独りじゃないんだよ、麗慈君。
「大丈夫。私が居る。だから、君は安心して眠るといい」
「………おかあさん、ありがとう」
「そうだよ。今の私は君のお母さんだ」
そう言って、優しく手を両手で包み込むと、強張っていた顔が緩んで、荒かった呼吸が安定し始めた。
運命とはどうなるかわからないものだね。
命の恩人である麗慈君の、一時とはいえ母親になるとは、神様でもわかっていなかったんじゃないだろうか?
それに、麗慈君が抱えていた重荷も少しとはいえ下ろせたと思う。破綻する前に気づけてよかった。君が壊れる前に支えられてよかった。
今はそれだけで十分だから、麗慈君の重荷を気づかせてくれた神様?には感謝したい。
ありがとう。本当にありがとう。
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暖かくて、柔らかい。
そんな感触が頭部に触れている。
それに、髪を撫でられてる感触があるし、体には毛布を掛けられているような感触もある。
昔、本当に昔にお母さんに膝枕してもらったときの感触に似ている。
だから、きっとこう言ってしまったのは悪くはないはずだ。『おかあさん』と。
「寝惚けてるのかな? まあ、麗慈君は精神的に疲れてるみたいだから、仕方ないけど、そろそろ起きてもらえると嬉しいよ。お昼御飯を作らないといけないからね」
「あ・・え、ぅ………~~~~~~ッ!!」
「恥ずかしがらないでも良いんじゃないかな? 君が寝てる間なんて、私のことを『おかあさん』って呼んで甘えてきたんだから
なんなら、そのときの映像でも見る?」
「見ない!絶対に見ないよ!! 早く消してね!?
………恥ずかしくて死んじゃうよぉ」
「恥ずかしがってるのは可愛いから良いけど、動画は消さないよ」
僕はもうダメだ。
恥ずかしい。お嫁にいけない。
「ダイジョウブ、大丈夫。もし、貰い手が居なかったら私が貰うから。………まあ、居ても渡さないけどね」
「………ありがとう。でも、それとこれとは別問題だよ! 動画は必ず消して貰うからね!!」
「じゃあ、賭けをしましょうか? 罰ゲーム有りのやつ」
「え、遠慮しておきます」
こんなやり取りができるなんて、昨日までは思わなかった。自身を受け入れてもらえて、見てもてもらえて、なによりも、側に居てくれる。そんな存在が見つかるなんて思わなかった。
今でも、萩野が居なくなるかもしれないって考えると恐いけど、それでも、萩野なら大丈夫って思えるようになった。
だから、恐くない。死にたいなんて思わなくなった。
生きたいって、萩野たちと一緒に生きたいって心の底から思うよ。
だから、側に居てね、萩野。それと、僕が守るよ。
萩野も、学校の皆も、僕たちが生きる世界も、すべて守るよ。
だから、寂しくなったら側に寄らせてね。
独りで月を観るなんてもう嫌だから。
一人の夜は、もう嫌だから。
だから、寂しくなったら、一緒に月を観上げよう。
寂しい夜は、一緒に居てね。側でずっと笑って居てね。
お父さん、お母さん。
だから、昔言ってたように月で兎と馬鹿みたいに騒いで待っててください。
いつか、神様になって迎えにいきます。