銀色に憑依した悪逆皇帝   作:甲斐太郎

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06.【ナリタ攻防戦・序】

□ライ□

 

藤堂たちが協力者から『無頼・改』を引き渡される現場に運よく辿り着けた俺と扇はゼロからの伝言という体で、コーネリア率いるブリタニア軍のナリタ連山への攻撃日程と戦力についての情報を渡す。情報の整合性を怪しむ四聖剣を余所に、俺は藤堂に話しかけた。

 

「ふーん、貴方が噂の藤堂か。見た感じ、堅物の軍人っていう感じしかしないのだけれどな」

 

態と軽い口調で藤堂に話しかける。傍に控えていた千葉の眉がきりりと吊りあがり、一歩踏み出そうとするのを手で制し立ち上がった藤堂がまっすぐ俺の目の前にやってくる。鷹の様に鋭く冷たい眼差し、一文字に結んだ口元。黙して騙らず、を実行する武人。そんな藤堂が俺を見下ろし睨みつけながら口を開く。

 

「……君は?」

 

「俺はライ・ランペルージ。ブリタニア人の父と日本人の母を持つハーフだ。縁あって黒の騎士団にいる」

 

嘘は言っていない。

 

確かに父親は神聖ブリタニア帝国の礎を築いた『リカルド・ヴァン・ブリタニア』で、俺自身の肉体は『狂王』と呼ばれた第2代ブリタニア皇帝であるが、今ここにいて俺として存在しているのはルルーシュが名付けてくれた『ライ』だ。藤堂による値踏みが行われているが、悪逆皇帝として世界中から憎悪の視線を向けられた経験を持つ俺は今更個人の視線程度でたじろぐことも無い。

 

むしろ、武器を持ってここにいる解放戦線のメンバー全員に襲いかかられても、扇を護りながらの不利な状況でも1人で制圧できそうなほど神経が研ぎ澄まされていくのを自ら感じ取れる。身体の重心を少しずらして、いつでも戦闘態勢に移れるようにしようとした瞬間、

 

「……。ゼロに『貴重な情報、感謝する』と伝えてくれ。朝比奈、卜部、トレーラーに機体を積み込め、搭載完了したらすぐにここを発つ」

 

「「はっ!」」

 

踵を返して去っていく藤堂の後を追う様に初老の男性軍人の仙波と四聖剣の紅一点である千葉も遠ざかっていく。俺は頬を掻きながら深く溜め息をついている背後にいる扇に話しかける。

 

「緊張しすぎですって、扇さん」

 

「彼らの殺気を混ぜ込んだ視線が君に集まった時は生きた心地がしなかったよ、ライくん」

 

「手を出してきたら、その場で返り討ちにしてやろうと思ったのですけれど、藤堂に“見抜かれて”制されてしまいました」

 

俺が指の骨をポキポキと鳴らしながらそう言うと扇は乾いた笑いを零し後ずさっていた。

 

「ゼロが俺をライくんと組ませたのって、君がリスクを考えず突っ走る可能性があったからなのか?」

 

「さて、どうでしょうね。ゼロとの合流はナリタになると思うので、その時に聞いてみてはいかがです」

 

笑顔でそう告げると扇は「確信犯だろ」と眉と目尻を下げた情けない表情を浮かべながら天を仰ぐように見上げたのだった。

 

 

 

□藤堂□

 

キョウトより受け取った『無頼・改』を積み込んだトレーラーが日本解放戦線の本拠地があるナリタ連山に向かって2台連なって走っている。

 

私はトレーラーの中で先ほど出会った黒の騎士団に所属しているという銀髪の少年のことを思い浮かべていた。私に対し挑発的な態度と言葉を発し、その場にいた部下たちの殺すぞと言わんばかりの視線を集めたのにも関わらず、不遜な表情はそのままに私の前に立ち続けた少年。

 

彼の背後に立っていた黒の騎士団のナンバー2だという扇という青年もふらつきはしたものの、朝比奈や千葉から発せられる殺気に耐えた。仮面で素顔を隠した男が率いる黒の騎士団など烏合の衆だと考えていたが、中核にあのような者たちがいるということは一概に侮れないということだろう。

 

「黒の騎士団から齎された情報が正しければ、ブリタニア軍との戦いは避けられない。今のうちに機体の整備を行っておくようにするんだ」

 

「藤堂さんは彼らの言うことが本当だと信じているのですか?」

 

「東北各地に展開していた反政府勢力がコーネリアによって殲滅された。その矛先がナリタに向くのも時間の問題だった。黒の騎士団が我々に嘘の情報を流して彼らに何の得がある」

 

「それは……」

 

朝比奈が私の問いに対して言い淀む。

 

日本解放戦線の中には草壁中佐が起こした河口湖での事件で、彼らを制して登場した黒の騎士団に対して恨みに似た感情を抱く者たちがいる。私は草壁中佐にあの計画を見せられた時、協力することも、計画を止めるように諌めることもしなかった。彼は彼なりにこの国を思い行動を起こした。

 

しかし、銃を持たず戦う立場にいない一般市民を盾にしてしまったことで、ゲットーに住む日本人からの求心力も減衰してきている。代わりに民衆の心を掴む者たちが現れたからだ。

 

「少なくとも秘密裏に進められていた私たちがキョウトとの協力者と接触する場に現れ、啖呵を切ってきたライくんと扇くんのことは信頼に値する。あの時、千葉が斬りかかっていたらライくんに返り討ちにされていただろう。あの佇まいと私の眼光に怯まぬ精神、彼もまた只者ではない」

 

「……藤堂さん。嬉しそうですね」

 

トレーラーを運転する朝比奈の言葉に私は、自分自身が自然と笑みを浮かべていることに気付いた。

 

そういえば、ライくんは一度も私のことを『奇跡の藤堂』とは口にしなかった。あろうことか『堅物の軍人』と称される日が来ようとはな。

 

私はトレーラーの窓から見える朽ち果てていくしかない街並みを眺める。恐らくナリタには黒の騎士団たちも現れることだろう。それが我々の加勢なのか、それとも我々を囮にしコーネリアを狙うつもりなのか、彼らの考えは理解できないがブリタニアにとっては良くないことが起こる事は間違いない。私は朝比奈の問いに答えず、トレーラーが進む方角に聳える日本解放戦線の本拠地であるナリタ連山を見据えるのだった。

 

 

□ルルーシュ□

 

日本解放戦線の本拠地がある山の頂上へカレンと共に来た俺は作戦に使う掘削機を計算された位置に打ち込んでいく。ライと扇の2人は山の麓に潜伏しており、ブリタニア軍の動きを見て行動することになっている。

 

ちなみにライたちと連絡を取った際に攻撃プランと撤退ルートに関して話し合いをしたのだが、ライと扇が藤堂たちとの会見を終えた後に考えたという計画と俺とカレンが考えた計画はほぼほぼ一致。

 

撤退のルートに関してだけは地元の人間しか知らない情報を得てきた2人の方が多かったほどだ。

 

「ルルーシュ、確認するけれど今回の目的は私の紅蓮とライの月下の力をブリタニア軍に見せつけるだけなのよね?」

 

「ああ。コーネリア自ら先陣を切って戦場を闊歩するだろうから、時機を見て“人為的な土砂崩れ”を起こし親衛隊とその他の兵力を分断する。コーネリアと親衛隊だけになったところで俺とカレンが頂上から一気に駆け下りて奇襲を掛ける。恐らくコーネリアは嬉々として俺を狙ってくるだろうから、カレンには親衛隊の処理を頼むことになるが」

 

「任せておいて、私と紅蓮にとっての初陣。必ず白星を上げるわ」

 

「頼もしいよ、カレン。だが、慢心するなよ。ライからの報告で、『白兜』を擁する特派のトレーラーも戦場に来ている。どのタイミングで戦場に投入されるか分からない、場合によっては『白兜』の接近を察した段階で撤退しなければならないかもしれん。そのことは頭の隅にでも置いておいてくれ」

 

「『白兜』の怖さはシンジュクで戦って直に体験している。撤退に関しては了解したわ。……ルルーシュ、空気が変わった」

 

遠くの方から銃撃や爆発音が聞こえてくる。リークされた情報どおり、コーネリア軍の日本解放戦線に向けての攻撃が始まったようだ。俺は手の指に引っ掛けていたゼロの仮面を持ち上げる。カレンもそれを見て、両手で頬をパチンと叩いて気合を入れる。

 

「では、日本解放戦線のお手並み拝見と行こうか」

 

俺はゼロの仮面をつけると無頼のコックピットに乗り込む。モニターに光が灯り、カメラを通して映し出された画面にはバイクに跨るように紅蓮のコックピットに乗り込むカレンの姿。

 

まさか、たった4人でコーネリア率いる後方支援部隊も含めてではあるが4万の兵力に戦争を吹っかける事態になるとはな。しかし、玉城や南といった扇グループをはじめとした理念も覚悟も持たない連中がいくらいようが、今この場にいるカレン・扇・ライの3人にはどうやっても勝てないだろう。

 

『新しい黒の騎士団の旗揚げとなる大事な初戦だ。心して掛かるぞ、カレン』

 

「はいっ!」

 

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