こんなの常識外れだ!でもそれが「テイルズ学園」   作:シラハネ

8 / 16
第8話

「そういうわけで明日は遠足です」

「どういうわけか詳しく説明してもらおうか」

 

いきなり遠足宣言をしているのは1年3組の担任、ジェイド。

突っ込みを入れているのはルークだ。ちなみに時間帯は放課後です。

 

「仕方がないですね。

では、学園長の部屋に仕掛けておいた監視カメラの昼休みの映像を見てください」

「アンタ何やってんの!?」

 

というわけで学園長室でのやり取りです。

 

「なあジェイド。明日は遠足にしようぜ」

「また突然ですね。なぜそのような考えを?」

「宝くじで3億円当たってよ。この金で生徒にプレゼントってわけだ」

「良いのではないですか。どこに行くかも決めてあるのです?」

「アルタミラだ。金はもうリーガルに払ったぜ」

「残ったお金はどうしたのですか?」

「経理の分は残して後はカジノで使ったぜ~」

 

ジェイドの返答がどうであれ、ピオニー学園長は決行していたに違いない。

それにしても、貯金という考えは学園長にはないのだろうか。

 

「全くない!」

 

そうですか。

 

「なるほど。私を呼んだのは他の先生方への連絡を頼むためですね?」

「よくわかったな」

「長い付き合いですから」

「そういうわけでもう決定だ!」

「では各クラスの担任に伝えに行きます」

「よろしくな~」

 

映像終了。

 

「というわけです」

『……』

「皆さんどうしました?嬉しさの余り、声も出ませんか?」

「ジェイド先生、これって完全に学園長の独断だよな?」

「ええ、困ったものですね~」

 

ロイドの問いにジェイドが答える。口では困ったと言っているが全くそうは見えない。

 

「何やってんだよ!あの学園長!」

「完璧に悪意ありで確信犯じゃないか!」

「職員会議とかしなくていーの!?」

「生徒のこと考えてるように言ってるけど結局は自分が行きたいだけだろ!」

 

上からルーク、ガイ、カイル、ロイドだ。他の生徒も猛反発をする。すると・・・

 

「ミスティック・ケージ♪」

『ぎゃあぁぁ!!!』

 

お約束のジェイド先生の制裁が下される。

 

「こんなに反発があるとは……。皆さんアルタミラに行きたくないのですか?」

「えっ!?い、いや別にそんなことは……」

 

ロイドが口ごもるがそれは当然の反応なのだ。アルタミラは高級リゾート地として有名で、遊園地もある。断る理由などないのだ。

 

「行きたくですか~。まあ、今回は突然決まったということで自由参加ですので

問題ありませんよ?行かない者は教師の監視付きで自習ですが」

『ぜひ行かせていただきまーす!!』

 

自習と聞いた瞬間、皆が一斉に答える。まあ、遠足か自習かと問われたら当然の反応だろう。

 

「では全員参加で。持ち物は自由です。

ですが、遅刻は問答無用で置き去りにします。時間厳守を心掛けて下さい」

「明日はどこに何時集合なんだ?」

「9時までにクラスの番号があるバスに乗っていれば問題ありません」

「わかった」

「質問はもうなさそうですね。では解散してもらって結構です」

ロイド以外に質問がある者はおらず、解散となる。ジェイド先生は教室を出ていく。

 

「ロイド、寝坊するなよ?」

「そういうルークもな」

「2人とも気をつけないとね」

「「お前もな、カイル」」

 

皆、友達と少し話してから寮に戻る。明日の準備をするためだ。

 

そして翌日のバスの中。

 

「いてて……」

「まさか朝っぱらから秘奥義を受けるとなんてな」

「シンク、もう少し優しく起こしてよ」

「寝坊して置き去りにされるのがよかったかい?」

 

3人が寝坊しなかったのはシンクが起こしたかららしい。

 

「それにしたってもう少し別のやり方があっただろ?」

「よりにもよって疾風雷閃舞を使うなんてよ」

「揺すっても叩いても蹴っても布団をどかしても仮面で刺しても魔術をぶつけても

アカシック・トーメントをぶっ放しても起きなかったから仕方ないだろ」

「「「……何か悪かったな」」」

 

シンクの回答を聞いて3人は反省する。

起こし方に少し変なのがあったが気にしてはいけない。

 

「9時となりました。では出発しましょうか」

 

出発して1時間後、バスはアルタミラに到着する。

 

「ジェイド先生、帰りの集合時間は何時だ?」

「8時までにバスの前にいてください。帰りはどのバスでも構いませんが人数確認は

しないといけませんので。あ、夕食もここで食べてくださいね」

「わかった」

「では皆さん、楽しみましょうか。自由行動して構いませんよ」

 

ロイドの問いにジェイド先生が答える。

そして解散となり自由行動になるので皆、友達に声をかけている。

 

「ルーク、シンク、一緒に行こうぜ」

「僕はもちろんいいよ」

「ガイも一緒に行くけどいいだろ?」

「もちろんいいぜ」

「それじゃ一緒に行かせてもらうぜ」

 

ロイド、ルーク、シンク、ガイの4人で行動するらしい。

 

「言っとくが俺は、最初からクライマックスだぜ!!」

「待ってよロニ!」

 

声優ネタでロニが叫んで走り出したのでカイルはそれを追いかけ園内に入る。

その様子を見ていたルークが話し出す。

 

「俺たちも早く行こうぜ!」

「はいはい。何から行くのさ?」

「「「やっぱりジェットコースターだろ!!」」」

「そんな綺麗にハモらなくても……」

 

3人が力強く答えシンクは呆れる。

 

「ガイが即答するとは思ってなかったよ」

「そういえばそうだな。何か理由でもあるのか?」

 

ルークはガイの発言を少し不思議に思い、ロイドも気になったのだろう。

ガイに即答した理由を尋ねる。

 

「ああ。俺の有名な台詞って【ガイ様華麗に参上!】だろ」

「まあそうだな」

「ほら、あの台詞って高い所から飛び降りた時は特にバッチリ決まるだろ?」

「そうか?」

 

ガイとルークの間で奇妙な会話が繰り広げられる。

 

「ガイ、まさかとは思うけどジェットコースターから飛び降りるなんて言わないよね?」

「すごいなシンク!どうして分かったんだ?」

「話の流れで分かった。……ってそうじゃなくて!!何考えてるんだよ!死ぬつもり!?」

「大丈夫だ。俺は死ぬつもりはない」

「死ぬつもりなくてもほぼ確実に死ぬから!」

「その時はその時だ」

「開き直るな!!」

 

シンクすごく正論。

 

「大丈夫だシンク」

「何が大丈夫なんだよ、ルーク」

「ガイは学園の屋上から飛び降りたことがある」

「へー、なら大丈夫だね……。って!だからって大丈夫なわけないだろ!」

「ちなみにガイはそれで腕を骨折した」

「何で腕!?足じゃないの!?」

「雨の日だったから着地の際に滑って腕を折ったんだ」

「失敗してるじゃん!何でそんな悪いコンディションの日にやったんだよ!

いや、グッドコンディションでもするべきじゃないけど!!」

「グッドコンディション、良い発音だったぞシンク」

「どうでもいいよ!」

 

突っ込みに疲れシンクが肩で息をしているとロイドがシンクに話しかける。

 

「大丈夫だってシンク。ガイはそんなことしないさ」

「そう信じたいね」

「もし飛び降りたら俺が翔破蒼天斬を使うから問題ないさ」

「なら安心……って!君も飛び降りてどうするんだよ!!」

「飛び降りるの流行ってんだな。よし!俺も崩襲脚でカッコよく決めてやるぜ!」

「何でルークもやる気になってんのさ!飛び降りなんて全然流行ってないから!!」

 

グダクダになったがとりあえず4人はジェットコースターに向かう。

そして乗る直前ガイがシンクに話しかける。

 

「シンク、頼むから一番前に座ってくれ」

「構わないけど。他の2人も祈るようにしてるし。僕が後ろだと不都合でもあるの?」

「「「仮面が後頭部に刺さったら痛い」」」

「……理由、よく分かったよ」

 

3人がハモったので、少し申し訳なさそうにシンクは先頭に座る。

 

そしてコースターは動き出し4人は楽しむ。ガイが飛び降りたそうにしていたが、

安全バーのせいで飛び降りられず残念にそうにしていたのは余談だ。

 

「本気で飛び降りるつもりだったんだね、ガイ」

「今日ほど安全バーを恨めしく思った日はないぜ」

「安全バーってこういう時のためにあったんだな」

「違うからねロイド」

 

シンクの言う通り違います。普通は飛び降りる人なんていません。

 

「とりあえず、飯にしないか?俺、腹減ってきちまった」

「俺もルークに賛成だ。ロイドとシンクはどうだ?」

「俺は構わないぜ」

「大賛成。まだ1つしか遊んでないけど疲れたから少し休憩したいし」

「「「大丈夫かシンク。何でそんなに疲れたんだ?」」」

「君たちのせいだよ!!」

 

あれだけ突っ込みを入れたら確かに疲れるだろう。4人はレストランに向かう。

そしてレストラン内。

 

「やっぱり混んでるな」

「平日とはいってもやっぱり人気リゾートだけあるな」

「おっ、ちょうど4人座れる所が空いてるぞ」

「早く座りたいんだけど」

 

4人はその空席に向かう。隣の席には先客がいるので一応声を掛ける。

 

「すみません。隣いいですか?」

「ええ。構いませんよ。……って、ロイドじゃない」

「あれ、エミルじゃないか。何でここにいるんだよ?」

「何でって、お腹空いたからだよ」

 

すごくごもっとも。

 

「まさか1人なんてな。エミルは絶対にマルタと行動してると思ってたよ」

「ガイ、言わないであげようよ。きっと振られたんだよ」

「あっ。……エミル、元気出せよ。エミルの良さに気付く人は将来、絶対現れるよ」

「えっ!?何で僕慰められてるの?」

 

ガイが完全に誤解していると、2人の女子生徒、マルタがコレットと現れる。

 

「エミル、お待たせ!」

「ごめんね、席確保するの任せちゃって」

「ううん、気にしなくていいよ」

 

3人が話しているのを見たガイが話しかける。

 

「エミル、やるな。振られたどころか両手に花じゃないか」

「ガイ、感心することじゃないだろ。エミル、二股は良くないぜ」

「ルークの言う通りだね。後々困ったことになるよ?」

「二股なんてしてないから。それに、昼食からはゼロスも一緒に行動するし」

 

エミルの反論を聞いた瞬間、ガイがさらに誤解する。

 

「まさかダブルデートか!?」

「その発想はなかったぜ。悪かったなエミル」

「今回は潔く負けを認めてあげるよ」

「いつから勝ち負けの話だったの!?3人とも少し落ち着こうよ」

「3人とも少し落ち着けって!」

 

今回は唯一まともだったロイドが3人を宥め騒ぎが収まる。

ちなみに女子2人はこの騒ぎを楽しく見守っていた。

 

「要するに、マルタとコレットがお手洗いの間にエミルは席を取って待ってたんだな」

「そういうことは早く言えよ、エミル」

「弁解する前に勝手に誤解したのはそっちでしょ」

「ロイドは誤解してなかったよね。最初から気づいてたの?」

「当たり前だろ。エミルとマルタは超が付くほどのバカップルなんだぜ!」

「ロイド、そんなこと叫ばないでよ。恥ずかしいよ」

「さすがロイド!よく分かってるじゃない!」

 

シンクの問いにロイドは自信満々に答える。2人の反応が対照的なのがまた面白い。

 

「ねえエミル、ゼロスは?昼食からは一緒に過ごすんでしょ?」

「そうなんだけど、まだ来てないんだ」

「そんなに気にするなよシンク。ゼロスのことだ。

どうせナンパでもして警備員に捕まってるだけさ」

「ロイド、冷静に言ってるけどそれ問題行為だから」

「ゼロスならありえそうで怖いんだけど……」

「エミル、携帯に連絡来てないの?」

 

シンクに言われエミルは携帯を見る。すると直後にエミルの顔の色が変わる

 

「エミル、どうしたの?」

「警備員に捕まった。ってゼロスから1時間前にきてたんだけど……」

「……ゼロス、お前のことは忘れないぜ」

「ロイド、別に死んだわけじゃないから」

「同じ赤毛で気が合ってた奴だったのに……!」

「アイツのノリの良さは気に入ってたのに……」

「……エミル、メニュー取ってくれる?」

「えっ!?は、はい。シンク、3人ともほっといていいの?」

「いつまでも突っ込んでくれると思ってたら大間違いだよ」

 

そう言ってからシンクはエミルに渡してもらったメニューを見始める。

放置された3人は少し落ち込んでいたが、すぐに立ち直りメニューを眺める。

そして店員を呼ぶ。すると赤毛の少しチャラチャラした店員が来る。

 

「ご注文をどうぞ~」

「(あれ?この店員誰かに似てるような……)」

「シンク、早く注文してくれよ」

「あっ、ゴメン。えっと、パスタを1つ」

 

ロイドに言われシンクは我に返り注文する。注文が終わるとガイが立ち上がる。

 

「ガイ、どうしたのさ?」

「自分の注文は自分で取りに行こうと思ってな。7人分なんて大変だからな」

「なるほど。(一気に持ってくるわけじゃないけど……。黙っとこう)」

「(自分の料理だってわかるのかな?)」

「(そんなすぐには持ってこないと思うんだけどなぁ)」

 

皆の考えをガイが理解出来るはずがないので、ガイは気にせず料理を取りに向かう。

それから約5分後、先ほどの赤毛の店員が料理を持ってくる。

 

「お待たせしました。パスタを注文のお客様」

『はい』

 

どうやらガイ以外の6人は同じ品を注文したらしい。

 

「なあ、どうする?」

「レディーファーストでいいんじゃないのか?」

「後の方が冷めないから先に僕たち男子勢じゃだめかな」

「それでいいんじゃないの。2人ともそれでいいかい?」

「私はオッケーだよ」

「私もいいよ」

 

エミルの案が採用されシンク、エミル、ルーク、ロイド、コレット、マルタの順で

料理を受け取る。そしてガイも自分の頼んだ品を持って戻って来る。

 

「ガイはカレーを頼んだんだな」

「ああ。ガイ様カレーを持って華麗に参上!ってな」

『……』

「冷める前に食べようぜ」

 

ガイの一発ギャグは皆お気に召さなかったようだ。

 

「おいおい皆待ってくれよ。さすがに冷たすぎるだろ」

「ガイ、さっきのネタのためだけに自分でカレーを取りに行ったのかい?」

「よく分かったなシンク」

「君の考えそうなことだよ。さてと、僕も食べようかな」

「それだけかシンク。決まってたよとかそういう感想はないのか?」

「面白くなかったとだけ言っておくよ」

「……」

 

ガイは暗いオーラを出している。

 

「ガイ、早く食べないと冷めちゃうよ?」

「……ああ」

「大丈夫。ガイは悪くないよ」

「ありがとな、コレット」

「うん。一発ギャグは面白くなかったけどガイは場を盛り上げようとしたんだよね」

「……コレット、わざとか?」

「ん?何のこと?」

「いや……、何でもない……」

 

コレットの一言が完全に止めになったようだ。少し重い空気だったが皆昼食を食べ終わる。

すると赤毛の店員がケーキを持ってやって来る。

 

「誰が頼んだの、このケーキ?」

「これはそこのカップルに当店からのサービスでございます」

「やったねエミル!」

「嬉しいんだけど、何でホールケーキなの……」

「ねえ、何でエミルとマルタがカップルだって知ってるの?」

「(うっ……、やべっ!)ま、まあとりあえず当店からのサービスですよ」

『(コイツ、絶対にゼロスだ)』

 

コレット以外の男4人は店員の正体に気づいたようだ。店員はそそくさと逃げていく。

 

「エミル、とりあえず食べようよ」

「うん。……あれ、何か書いてあるよ?」

「何々。愛を育めよお前ら!お幸せに!!って書いてあるね」

 

シンクの言葉を聞いてエミルの様子が変わる。

瞳の色が緑から赤に変わっている。ご存じ、ラタトスクモードだ。

 

「シンク、さっきの野郎はどこに行った」

「あそこで仕事してるよ」

「俺はちょっと席を外すぞ」

 

そう言ってエミルは先ほどの店員の元に歩いていく。殺気を出しながら……。

 

「おいシンク、良かったのかよ?」

「少しはゼロスも反省すると思うから良いんじゃないの」

「下手したら死ぬぞ」

「たぶん大丈夫だよ。加減はするだろうし」

 

ルークとロイドが心配しているがシンクは特に気にしていない。

 

「エ、エミル君、そんなに殺気を出してどうしたのさ?」

「どうして俺がエミルだって知ってるんだ?」

「感で言ったら当たったんですよ~」

「俺とマルタがカップルだって分かったのはどう説明するんだ?」

「かっ、感ですよ」

「もう1人女子生徒がいたんだが……。よく断定出来たな」

「そっ、それではさようなら~」

「待ちやがれっ!」

 

店員は逃げ出す。そしてエミルも追いかける。直後、エミルは店員を捕まえ

外に出ていく。そして店員の悲鳴が響き渡る。

火柱も上がったように見えたが気のせいということにしておこう。

その後、エミルだけが店内に入って来る。そして席に着く。

 

「エミル、さすがにやりすぎじゃないか……?」

「大丈夫だろ」

「そうだぜガイ、ゼロスの生命力は並大抵じゃないしさ」

「それはそうだが……」

 

さりげなく酷いことを言っているが誰も反論しない。

皆が話をしているとゼロスが店内に入って来る。

 

「エミル君、さすがに酷すぎるんじゃないの~」

「人をおちょくるためだけに嘘ついて約束破った奴よりはマシだ」

「まあ2人とも落ち着けよ」

 

ロイドたちが2人を宥め、数分後ゼロスは機嫌を直し、エミルも落ち着き

ラタトスクモードから元に戻る。ちなみにケーキは全員で仲良く食べました。

 

「そういえばゼロス、何でここにいるんだ。警備員に捕まったんじゃないのか?」

「そもそも、何で捕まったんだよ?」

「よくぞ聞いてくれました!それには深い訳があって……」

「どうせナンパして通報されたんでしょ?」

「シンク君よ~、話は最後まで聞こうって教わらなかった?」

「聞くだけ時間の無駄だよ。どうせナンパが原因なんだから」

「どうしてそうやって決めつけるかねー。話をちゃんと聞いて……」

「ナンパなんだよね?」

「……はい」

 

ゼロスが根負けする。理由を知ったメンバーはやっぱりと呆れ果てている。

 

「で、何でここにいるんだよゼロス。捕まってたんだろ?」

「それはだな……やべっ!」

 

話し出そうとしたゼロスだが、外を見て何かを見つけその場から素早く立ち去る。

残されたメンバーが訳も分からず呆けていると警備員が店内に入って来る。

そしてロイドたちに職務質問をし始める。

 

「君たち、赤い髪をした少しチャラチャラした学生を見なかったかね?」

「……ねえシンク、この人が言ってる人物って……」

「間違いなくゼロスだね」

「どうしよう、ロイド」

「シンク、任せてもいいか?」

「やれるだけやってみるよ」

 

皆が小声で話し意見がまとまる。その様子を見て怪しく思ったのか警備員が尋ねる。

 

「君たち、彼を見たのか?」

「残念だけど僕たちは見ていないです。その人が何かしたんですか?」

「ああ。ナンパの現行犯で逮捕したんだが断空剣で逃げてしまったんだよ。

しかもしっかりと全員をなぎ倒してね」

「そうなんですか。災難でしたね。(完璧に公務執行妨害じゃないか!)」

「とりあえず、彼を見つけたらすぐに教えてくれ」

「わかりました」

 

そう言って警備員は話を終わる。上手く誤魔化したシンクのファインプレーだ。

しかし、少し歩いた後、警備員は戻ってきて再び質問する。

 

「君たち、もう一度質問して悪いんだが火柱を発生させた学生を見たかい?」

「そんな人いたら大問題ですよ」

「そうだよな。目撃したと言う人物がいたので気になったのだがさすがにそれはないよな」

「そうですよ~」

「うん、ありがとうな。アルタミラを満喫していってくれよ!」

 

そう言い残して今度こそ警備員はレストランを出ていく。

 

「ふう……」

「シンクすごいな!」

「今度、ジュースおごるぜ!」

「おかげで助かったよ」

「エミル、今度はもう少し考えて技を使ってね」

 

技を使うことに特に問題はないらしい。

皆が笑っているとロイドの携帯の着メロが鳴り出す。ロイドは携帯を見る。

 

「なあ皆、ゼロスが6時に観覧車前に来てくれって」

「いいんじゃないの?ふざけた用事だったら警備員に突き出すけど」

 

シンクの回答を聞いて皆笑い出す。そして昼食後はコレット、エミル、マルタも

一緒に行動することになり、遊園地の様々なアトラクションで共に遊んだ。

ロイドとコレットはお互いに意識していたのか少し緊張気味だったが。

そして6時少し前になり、一同は観覧車前に移動する。

 

「でひゃひゃひゃ。待ってたぜ~」

「いったい何なんだよゼロス~」

「そうだよ。結局、約束はすっぽすかし」

 

ロイドとエミルが不満そうにゼロスに要件を尋ねる。

 

「エミル君よ~。ここの遊園地の観覧車の伝説知ってる~?」

「いや、知らないけど……」

「マルタちゃんは知ってる~?」

「私も知らないよ」

 

それ以外のメンバーにも尋ねるが知っているのは誰もいない。

 

「ここの観覧車、5時にカップルか結ばれたい人同士で乗ると、カップルは

さらに愛が深まり、結ばれたい人同士は必ず結ばれるって伝説があるのよ~」

「本当に!?エミル乗ろっ!」

「えっ!?ちょっとマルタ!?」

 

ゼロスの話を聞くやすぐに、マルタはエミルを連れていち早く乗る。

その様子を見た皆はさすがに少し呆れていた。

 

「コレット、一緒に乗らないか?」

「う、うん。いいよ」

 

ロイドの誘いにコレットは少し緊張しているものの嬉しそうに答える。

ロイドも緊張しているのだがコレットは気が付かない。他のメンバーは気づいていたが。

 

「やっぱりこうなるよね」

「まあ分かってたことじゃないか」

「なあゼロス、何でこんなことをしたんだ?」

 

ゼロスの意図が分からなかったルークはゼロスに尋ねる。

 

「シンク君とマルタちゃんに頼まれてな。あの2人は絶対に両思いだから引っ付く

きっかけを作ってくれって言われたのよ」

「シンク、いつの間に……」

「まあいいじゃない。あとは2人しだいだ。頑張りなよロイド」

 

ゼロスは自称だが学園の恋愛番長だ。だから2人は彼に頼んだのだ。

それぞれの親友の恋を応援したかったということだろう。

場面は変わり、ロイドとコレットの乗った観覧車。

 

「(一緒に乗ったのはいいけど、こういう時どうしたらいいんだろう)」

「(何か言った方がいいよね)」

「「えっと」」

 

お互いに緊張して上手く話せないようだ。

そんな少し気まずい空気でも観覧車は動き続け一番上まで上がる。

 

「うわぁ……」

「綺麗だな」

 

ちょうど日の入りの時刻になり、海と夕日が重なったのだ。その景色の良さに

2人とも見入っている。だが今の雰囲気はとても良い。ロイドは覚悟を決めたようだ。

 

「コレット、今好きな人いるか?」

「う、うん。いるよ」

「そっか。でも言うぜ。俺はコレットが好きだ」

「えっ!?ロイド今何て?」

「俺はコレットが好きだ。だから付き合ってほしい」

「……うん、いいよ」

「本当か!?でも好きな人がいるんじゃないのか?」

「私の好きな人、それはロイドだよ。だから……よろしくね」

「……おう!よろしくな!」

 

お互いに笑顔で返事をし、コレットはロイドの隣に座る。

そしてしばらくしてから観覧車は地上に戻り、2人は一緒に降りる。

シンクとマルタは結果を聞いて、まるで自分のことのように喜んでいた。

その後はゼロスを含めた全員で夕食を食べ、バスへの道を歩く。

その道中、ロイドがシンクに尋ねる。

 

「なあシンク、レストランからの日程は仕組んでいたのか?」

「うん。ゼロスやマルタとちょっと打ち合わせしてね。ゼロスの公務執行妨害は

予定外だったけど」

「やっぱりそうか。偶然にしては出来すぎてたからな」

「まあいいじゃないか。おかげで晴れてカップルになれたんだから」

「2人とも、遅いと置いてくぞ」

 

しゃべりながら歩いていたので2人は少し歩くペースが遅かったらしい。

 

「シンク」

「何だい?」

「ありがとな」

「どういたしまして。さ、早く行くよ」

「おう!」

 

ロイドが返事をすると同時に2人は早足で歩きだす。

帰りのバスは自由なので、当然ながらロイドとコレットは同じバスに乗る。

そして帰りは2人ともお互いにもたれかかるようにしてすぐに寝てしまったが、

その寝顔はすごく幸せそうだった。

それを見て一緒に行動したメンバーが笑っていたのは言うまでもない。

学園長の気まぐれで決まった遠足だったが、結果的には大成功だったようだ。

 




△アルタミラ
シンフォニア町にあるリゾート施設。リーガル教頭の経営する
レザレノカンパニーが提供している。海水浴場や遊園地、レストランなどがあり、
休日は家族連れが多く来る。
少々入場料は高いが払ったことを後悔する者はいないと言われるほどの評判がある。

△シンフォニア町
アビス町の南に位置しており、主にシンフォニアに登場するキャラが住んでいる。
学園からはバスで約1時間の距離。


ロイド「シンク、慣れないツッコミ役お疲れさん」

シンク「君たちがあんなにボケるとは思ってなかったよ」

ロイド「若気の至りってことにしてくれよ」

シンク「(次からツッコミは他のキャラにさせよう)」

ロイド「シンクのツッコミキャラは中々面白いと思ったのになぁ」

シンク「心を読まないでくれるかな」

ロイド「悪い悪い、ついやっちまった」

シンク「ついで心を読まれたらたまったもんじゃないよ!」

ロイド「早速突っ込んだな」

シンク「ロイド、コレットと結ばれてよかったね」

ロイド「(話題すり替えやがった……)おう!ありがとな!」

シンク「話題すり替えないと面倒だからね」

ロイド「お前も心の中読んでるじゃないか!」

シンク「でも、作者が恋愛を描くのは難しいと言ってるから期待しない方がいいよ」

ロイド「(普通にスルーかよ……)」

シンク「気にしたら負けだよ」

ロイド「(こいつ性格悪っ!)」

シンク「言いたいことは口に出しなよ」

ロイド「それじゃ、次回もよろしくな!」

シンク「1人で終わらせるなんて酷くない?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。