過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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あの日彼に誓った、世界の平和と平穏な日々。数多の刻が過ぎても続く、戦いの日々。
いつか必ず終わらせてみせる。その結果自分の行き着く先が何であっても、きっと。
ーーアリシア・テスタロッサーー

魔法少女リリカルなのは、始まります。


プロローグ

***プロローグ***

 

耳障りな警報は相変わらず鳴り響いたまま。モニターに表示されたリミットは既に5分を切っている。

 

《急いでくれ、アリシア!もうあまり時間がないぞ!!》

 

モニター越しにクロノ提督の焦る声が聞こえるが、未だ他に打開策は浮かばない。

 

「‥‥‥もしも、もしもです。このまま脱出出来なかった時は‥‥‥フェイトに謝っておいてもらえますか?『最後まで一緒にいれなくてごめんなさい』と」

 

アリシアは小さく「ごめんなさい」とクロノに謝り強制的に通信を切る。クロノが何か叫んだ、ようだったが、その言葉はアリシアには届かなかった。

 

 

***

「艦長!!」と呼ばれたことで我に返ったクロノは、通信を切られて何も映らなくなったモニターに背を向けると、

 

「カウント0で予定通り一斉砲撃を行う。『ゆりかご』を落とす……」

 

とクルーに告げる。世界はいつだってこんなはずじゃなかった事ばかりだ。まさか自分もグレアム提督と同じ決断をしなければならないとは。提督になった所で、権力が増したところで、大切な家族1人救えない。何も出来ない自分に苛立ちながら、クロノは1人祈った。

 

「アリシア‥‥‥頼む。うまく脱出してくれよ」

 

 

***

その頃アリシアは未だに躊躇していた。今自分のいるこの『ゆりかご』を落とすべく砲撃が始まるまでもう時間は少ない。フェイトの事を思うと気が重いが、最早他の方法を考えている余裕はない。

 

(『オリヴィエだった』頃に比べたら、まだマシ……ですね、きっと)

 

自らにそう言い聞かせる。せっかくティアナに教わった幻術も、ここで使わなければ意味がない。両手をじっと見てから一つ大きく深呼吸をする。アリシアはようやく意を決し両腕を外部操作に切り替えると左手に目一杯の魔力を纏わせた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

プレシア・テスタロッサは光を感じて弱々しく目を開く。

辺り一帯はさっきまでと変わらず、何もない次元の狭間。アルハザードには届かなかった。普通ならば発狂しかねないこの空間の底で、それでもまだ平静を保っていられるのは、もうすぐ迎えるであろう『死』という平穏が待っているからか。それともその胸に抱いているアリシアのお陰か。

 

「私のアリシア。ごめんなさい。せめて死ぬ時は‥‥‥こうして一緒に」

 

そう言って腕の中のアリシアを見たプレシアは、小さな手の中に小さな輝きを見つける。

 

「ジュエルシード……?」

 

アリシアの手の中で一瞬強く青白く輝いたそれは、光を失うと同時にある事をもたらした。

 

「アリ‥‥‥シア?」

 

アリシアが、死んでいるはずの体が、暖かいのだ。気のせいでなければ、寝息をたてているように見える。

 

「そんな‥‥‥まさか‥‥‥アリシアが生き」

 

と、そこまで言いかけてプレシアは言葉を失った。なぜなら。

 

「おは、よう、ママ。 ママ?」

 

と、事態をまるで理解していないアリシアが寝ぼけながらも話かけてきたのだ。彼女はジュエルシードが願望器であることを今さらながら思いだす。

 

「なんてこと。嗚呼、私の可愛いアリシア」

 

恐らく頭の上に『?』が浮かんでいるであろう愛娘の首をかしげた愛らしい仕草を見ながら、自身に残されているであろう僅かな時間を驚くほど冷静に分析したプレシアは、震える腕に鞭を打ってデバイスを構える。

 

「いい?アリシア。良く聞いて。今からあなたを地上に転送するわ。そうしたら、あなたの妹のフェイトを探しなさい。フェイト・テスタロッサとその友達の白い魔道師。この2人を頼るの。私の名前とこの杖を渡せば信用してくれるわ。管理局は頼っては駄目よ。いいわね?」

 

妹。見方を変えればフェイトは確かにアリシアの妹だったのかも知れない。だがそれも気づくのが遅すぎた。どこで道を間違えたのか。もっと違う結末があったのかも知れない。だがしかし、もう。

 

「時間がないわ。分かった?アリシア」

 

「ママは、一緒じゃないの?一緒がいいよ」

 

そんなアリシアの一言に身を引き裂かれる思いのプレシアにはしかし、もう他の選択肢は残っていない。自らの命もいつ切れるか分からないのだ。仮にここで自分の寿命が終わってしまえば、それはアリシアの未来も終わってしまうのとイコールだ。なんとしてでもアリシアだけは、救ってみせる。

 

「ママ!嫌だよ!一緒に‥‥‥」

 

プレシア胸の痛みに耐えきれずゲホゲホと辛そうに咳をする。隠したつもりだったが、どうやら血を吐いた所も見られてしまったようだ。

 

「ママはね。まだちょっと用事があるのよ。だからあとから行くから。それまでは寂しいかも知れないけどがんばるのよ?アリシアはいい子だからできるわね?」

 

目を潤ませて「うん、分かった、頑張るね」と返事をする愛娘の姿に後ろ髪を引かれながらも、意を決したプレシアはジュエルシードを起動し、禁異術式を展開する。これなら何とか1回くらいならば転移できるだろう。自らの命が削れていくのと引き換えに、転移魔法陣はアリシアを転移させ、消えた。




作者は豆腐メンタルです。ナニブンにも処女作品ですので、折れて復帰不可能にならない程度の批評をお待ちしておりマスm(__)m
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