過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第9話

***第9話***

 

なのはが監修した機動六課自慢の訓練スペース。今もフォワード陣が扱かれているその端の端。アリシアはペタンとその場に座り込んで考えてこんでいた。

 

(拘束されて生体コアにされる、ですか。どうしましょうか‥‥‥)

 

聖王教会でカリムの予言を聞いてからというもの、仮に捕まって『ゆりかご』で生体コアにされた後、どうやったらそこから脱出出来るのかを考えていた。普通に考えたら不可能。そもそも『ゆりかご』という存在は、一度起動すると鍵である生体コアを自らの中に死ぬまで永久に拘束する。脱出するには代わりの生体コアを何処からか連れて来るしかない。オリヴィエが生体コアになったお陰で他に子供の居なかったゼーゲブレヒト家は断絶。ユーノ司書長の調べたところによれば他の聖王連合の各家も子孫は残っていないらしい。

 

(私の、オリヴィエのクローンでも造るしか‥‥‥でも)

 

そうは言ってもそれも不可能だど理解はしている。当然オリヴィエの身体など等の昔に無くなっている。他のアプローチが必用だった。

「うーん」と唸りながら考えてを巡らせていると、訓練をしていたフォワード陣がなのはとヴィータの前に集まる。どうやら模擬戦が始まるようだ。

アリシアは一時思考を止め模擬戦を観戦する事にして、シャーリーの隣に移動する。

 

「お疲れ様、アリシアちゃん。今から模擬戦だね」

 

「うん。お疲れ様、シャーリー。っと、始まった」

 

「Ready、go♪」というなのはの合図を皮切りにフォワード陣は散開。ティアナを司令塔に動き出す。

 

《スバル、クロスシフトA、行くわよ!エリオはフォロー、キャロは2人のサポートお願い!》

 

《《《了解!!》》》

 

「みんな少しずつ動きが良くなって来たね。なのはって、良い先生なんだね」

 

「そうだよ、アリシアちゃん」

 

アリシアの言葉にニコリと笑みを溢しながら同意するシャーリー。「あなたも混ざってみる?」という彼女の言葉に「管理局員じゃないから」と遠慮するアリシア。

 

そうして暫く観戦していたアリシアは、なのはの『ある点』に気付いた。

 

「ねえ、なのはの動きって少し不自然だよね?なんかこう、何かを庇ってるような、何かを堪えて無理な動きをしてるように見えるんだけど」

 

「アリシアちゃんには分かるんだね。普通気が付かないと思うんだけど‥‥‥まぁ、私が言うことじゃないから」

 

意味深な発言のシャーリーに何故かを聞こうとしたアリシアだったが、釘を刺されてしまった。

そうして終わった模擬戦。一通り観戦したアリシアは何かを思い付いたのか、息も絶え絶えに休憩中のフォワード陣の方へパタパタと駆け出した。

 

「ねぇティアナ、幻術を教えて欲しいんだけど、駄目かな?」

 

「……はい??」

 

『ゆりかご』は生体コアと認識した者の生体反応、姿、リンカーコア、聖王核の力、これらを識別して管理している。つまり、幻術なら姿だけなら誤魔化せる。リンカーコアは疑似的に作ろうと思えばなんとかなるし、聖王核の力も付与しようと思えばできる。生体反応は後で考えるしかないが、これならどうにかなるかもしれない。そう考えたアリシアは、幻術使いのティアナに教えを請おうと思ったのだ。

 

「構わないわよ。けど、別に今すぐじゃなくても、これからちゃんと教わる機会とかあるんじゃないの?」

 

ティアナの意見は尤もだった。こんな小さいうちから無理に詰め込むよりも、リンカーコアがある程度安定して基礎も出来てからじっくり教わったほうがいいに決まっている。アリシアが普通の6歳児ならば、だが。

 

「理由は言えない。けど、今じゃなきゃ駄目なの!」

 

「はぁ。まぁいいわ。訓練が終わったら私の部屋に来なさいね?」

 

「ありがとう、ティアナ♪後で行くね」

 

アリシアは満面の笑みで答えた。

 

***

「……これが基礎ね。まぁ、今日はこのくらいにしときましょうか」

 

「うん、ありがとう。ティアナ先生♪」

 

「止めてよ先生なんて。ところで、アリシアってなんでベルカ式なの?『お姉さん』のフェイトさんはミッド式でしょ?お母さんもミッド式らしいじゃない?」

 

「私は‥‥‥フェイトと一緒に生活してなかったし。それに、初めて魔法を教えてくれた人がベルカ式だったから」

 

ティアナの質問に用意していた回答で答えたアリシア。因みに周りにはフェイトの歳の離れた妹、ということになっている。事実を知っているのは隊長、副隊長陣とシャーリーのみ。さらにオリヴィエだと知っているのははやてとシャーリー、ヴォルケンリッターのみである。なのはもフェイトも知らない。

 

「ふーん。しっかし、アリシアとフェイトさんってそっくり。歳が離れてなかったら双子、ってレベルよね?あ、お帰りスバル」

 

「ただいまティア。アリシアちゃんいらっしゃい♪2人とも飲み物買ってきたよ」

 

「ありがとう、スバル。‥‥‥姉妹だもん。私もフェイトも似るよ」

 

スバルから紅茶を受け取るアリシア。ティアナの視線に疑念が混じっている事には気付かない。

 

「明後日は2人とも派遣任務なんだよね?アグスタってホテル、だっけ?」

 

ホテルアグスタ。2日後にはやてを除く六課のメンバーはそこで護衛任務にあたる。シグナムやヴィータ、一部のメンツは前日入りする。

 

「そうだよ、アリシアちゃん。何かオークションがあるみたいで、ロストロギアも出品されるんだって」

 

スバルに貰った紅茶を飲みながら、アリシアは任務の無事な成功を祈っていた。

 

(ロストロギア、ですか。レリックで無ければ良いのですが‥‥‥)

 

***

次の日。アリシアは聖王教会敷地内にいた。六課と教会の移動なら問題ないらしい。目的は、勿論。

 

「覇王流『旋衝破』!」

 

「いっくよ~、アインハルト!」

 

「お願いします!」

 

アリシアは小さな魔力弾を2つ展開すると、合図とともにそれを打ち出す。真っ直ぐアインハルトに向かって行ったそれを、アインハルトは被弾直前で両方の手で受け止めた。

 

「やったね、アインハルト!」

 

「ありがとうございます。でも、まだまだです。弾核も小さいですし、コースも来るタイミングも分かっていないと止められないのでは実践では使えませんし」

 

「それでも1歩は1歩だよ。これからちょっとずつ頑張っていけばいいんだし。ね?」

 

そう言って笑顔を向けるアリシア。

 

「ところで、アリシアさん」

 

「なあに、アインハルト?」

 

アリシアの魔力光。彼女と‥‥‥オリヴィエと同じ虹色の光。先程から気にはなってはいたものの、聞いてはいけない気がして聞く事が出来ず、アインハルトは「な、なんでもありません」と誤魔化して話題を変える。

 

「次はコースを変えてお願いします!」

 

そんなアインハルトに「‥‥‥何だろう?」と首を傾げるアリシア。

それを見てアインハルトは、この人はずるいと思った。笑うときや喋る時の癖、座るしぐさ、歩き方。その一挙手一投足が記憶の中のオリヴィエと重なって見える。もう本人なんじゃないか、そう思えるくらい。仮にアリシアがオリヴィエの癖を知っていたとしても、ここまで自然に真似出来るものではない。そもそも、オリヴィエの癖を知ってる事自体があり得ない。

 

そうして何度も練習を繰り返す2人。

 

「今日はここまでにしましょう。日も落ちてきましたし」

 

「そうだね。ここまでにしようか」

 

ベンチに座る2人。アインハルトは抱いている疑問の1つを口にする。

 

「この間も聞きましたが、アリシアさんはどうして覇王流を知っているのですか?私の練習にも付き合っていただいて」

 

正直アリシアは困っていた。まさか『オリヴィエだった時に一緒に鍛練したから』などとは間違っても言えない。

 

「私の知り合いに覇王流を知ってる人が居て、その人に教えて貰ったの」

 

「そっ、その人は今どこにいらっしゃるのですか?」

 

「その人は、もう……」

 

確かにそれは嘘、という訳ではない。しかしながら、素性や真実を隠し、アインハルトを欺いている事には変わり無い。後ろめたさもあってか、アリシアの表情が少し曇る。

 

「そうですか‥‥‥ご免なさい。辛い事を思い出させてしまって。そう言えば帰りは大丈夫なんですか?」

 

そのアリシアの表情を、勝手に解釈したアインハルト。どうやら上手く誤魔化せたようだ。

 

「うん。この眼鏡方のデバイスに転移魔法を入れてもらったから、住んでる所までならすぐに帰れるよ」

 

「じゃあそろそろ。またね」といって魔法陣を展開するアリシア。「はい、また」というアインハルトに別れ、六課隊舎に転移した。

 

***

同時刻、六課訓練スペース。ティアナは自らの疑問をスバルにぶつけていた。

 

「ねえ、スバル。アリシアってさ、おかしくない?」

 

「何で?可愛くていい子だよ?」

 

「そーゆー事じゃなくて!」

 

相変わらずすっ惚けたスバルの答えにティアナは思わず声をあげる。その表情は、アリシアに対する疑惑に満ちていた。

 

「おかしいじゃない。だって6歳よ?あの子。6歳って普通あんなにしっかりしてないでしょ!それに‥‥‥」

 

「それに‥‥‥何?ティア?」

 

ティアナは決定的な、通常ならば有り得ない矛盾を口にする。

 

「フェイトさんのお母さんが亡くなったのって、『10年前』って言ってなかった?」

 

「うん。アリシアちゃんて今6歳だよね?って、あれ??」

 

スバルはようやく理解した。確かにおかしい、時間的矛盾。

 

「あの子には何かある。フェイトさんの妹ってだけで六課で保護したまま、っていうのも不自然だし。隊長達も何か知ってるみたいだし」

 

「まあ、今考えても仕方ないよ、ティア」

 

「確かに現時点じゃどうしようもない。でも‥‥‥」

 

疑惑は深まっていくばかりだが、明日は出張任務。今日は明日に備えゆっくりすることにした2人は、隊舎に向かう。

 

 

***

次の日。ミッドチルダ首都南東地区。

ヘリで移動する六課の面々。はやてが口を開く。

 

「ほんなら改めてここまでの流れと今日の任務のおさらいや。これまで謎やったガジェットドローンの製作者及びレリックの収集者は現状ではこの男、『ジェイル・スカリエッティ』。この線を中心に捜査を進めるよ」

 

はやての説明に、気を引き締めるフォワード陣。続けて、リインとなのはが話す。

 

「今日向かう先は此処、ホテル・アグスタです!」

 

「骨董美術品オークション会場の警備人員警護。それが今日のお仕事だよ。みんな、頑張ろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 




アグスタ編、突入です。(触りだけ。)
なのはさんの活躍はいつになるのか……

***
ヴィ「ねえ、ママ」
なのは「なあに、ヴィヴィオ」
ヴィ「ママの活躍はまだなの?」
なのは「えっと……」
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