魔法少女リリカルなのは、始まります。
第1話
***第1話***
夢、を見ていた。
自分の利き腕である左の掌には、ジュエルシード。目の前には、笑みを湛えた会った事のない筈の女性。紅と翠の綺麗な虹彩異色の瞳。ただ、両腕が、ない。それに、アリシアは彼女を何処かで見たような気がしていた。
「あなたは、だあれ?」
アリシアが質問すると、その女性は『私は、あなたですよ』と何とも分からない返事を返してきた。意味がまるでわからないアリシアは、さらに語りかける。
「あなたは、私なの?」
『すぐにわかりますよ。その手の中のシリアルⅩⅣが教えてくれます』とその女性は答えるが、なぜこの石が知っているのか全く分からない。それも聞こうとしたが、『それも教えてくれます』とまたしても曖昧極まりない返事。
「そういえばあなたは初めて会った気がしないね。会った事、ある?」
『それはですね』と言いかけて、女性の姿は急に遠ざかって行く。『あぁ、夢が覚めるようですよ。辛い記憶かもしれませんが、自分をしっかり持ってくださいね?』と女性は言い残し、アリシアは目を覚ました。
***
「今のは、夢?何だったんだろう?確かジュエルシードが教えてくれるって……」
そこまで考えて、ふと我に返ったアリシアは、自分が知らない部屋にいる事に気がついた。
そういえば転移する前は服を着ていなかったのだが、いつの間にかパジャマを着て、布団に横になっていた。何だか家の感じもミッドチルダとは違う感じだし、まずはここがどこか確認しなくてはならない。いつもより良く回転する自身の頭脳に違和感を感じつつも、周囲を探索していく。外に見えるのは神殿、だろうか。その全てが木製。建物はかなり古い感じで、100年以上建っている、気がする。
(見たことない建物だなぁ。これは……門?でも門しかないし、扉ついてないし??)
庭に足を運んだ彼女が見たものは正しく鳥居で、先程の建物は神社の本殿であったのだが、管理外世界になど来たことのないアリシアには理解できる訳はなかった。ましてやプレシアが自分を地球に転移させた、など想像できる筈もなく、その場に立って鳥居を暫くボーッと眺めていると、後ろから声をかけられた。
「あら、起きたのね。体の具合はどう?大丈夫?どこ痛んだりしてない? えーっと、言葉、分かる?」
その言葉にはっとして後ろを振り向き、咄嗟に構える。そうして構えてから自分のその違和感に気づいた。何故格闘戦の構え?反射的に構えたその型は、まるで昔からそうであったかのようにシックリくる。(格闘戦なんてママから教わった覚えないのに‥‥‥どうして?)と、自分に起こっている事態をイマイチ飲み込めないアリシアに、さらに目の前の女性は語りかけてきた。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。って言葉通じてるかな?」
「あ、えっと、大丈夫、わかります。ごめんなさい」
彼女に言葉が通じる事に少し安堵したアリシアは、まずは自分がどこにいるのか確認すべく尋ねた。
「ここは、どこですか?」
その質問に一瞬呆気にとられたその女性は、優しく、丁寧に、答えてくれた。
「ここは日本の海鳴市よ。ここは私の家。家、神社なの。日本の文化とか習った事ある?」
神咲那美と名乗ったその女性は、聞いたことのない地名を口にした。
「ニホン?ウ……ミナ………???」
これは困った事態かも、とアリシアは不安を覚えた。もしかしたら物凄く遠いところに来たのかも知れない。「お名前は?」とか「どこから来たの?」 とか「お父さんかお母さんは?」とか「虹彩異色?変わった目の色ね?」とか矢継ぎ早に質問してくる那美をよそに、そんな事を考えていたアリシアだったが、このまま無視するのも悪いと思い、「名前は、アリシア」と最初の質問にだけ答えた。
***
那美の両親は離れて生活しているらしく、どうやら彼女がこの家の当主らしい。
「私が神主なんだよ、まだ未熟だけどね」
と照れながら語る彼女の横で、「そんな事ない」と話す少女は、久遠。居候兼巫女、だそうだ。
神主はよく分からないが、巫女がいるということは神聖儀式とかそういう事をするところなのだろう。自分も居候させて貰う身としては、手伝いとかした方がいいんだろうかと思案する。
故郷の場所も分からず、両親はおろか身寄りもいないアリシアに家族が見つかる迄一緒に住もう、と那美は話をトントン拍子に進める。かといって手がかりは有りそうもなく、お世話になることにした。
「倒れていたところを助けて貰ったうえに何もしないんじゃ悪いですし、何か手伝わせてください」
そう言ったアリシアに、
「子供は気にしなくてもいいの。でももうすぐ12月だし、大晦日は手伝ってもらおうかしら」
那美はそう楽しそうに答える。「ハイ、ガンバリマス」とやや固くなって返事をする小さな居候に、彼女は微笑ましいものを感じていた。
思わず原作キャラ登場させちゃいました。名前だけですが。アリシア住まい確保のご都合回。