***第34話***
「あの子が、フェイトちゃんのお姉さんなんですか?」
「はい。アリシアと言います」
夜、月村邸にて。大抵の事には動じないメイド長、ノエルに通され、テーブルを挟んで紅茶を飲みながら話す、すずかとリニス。
「貴女はフェイトちゃんの言ってた家庭教師さんなんですよね?こんな事聞くのはどうかと思うんですけど、リニスさんってずっと昔に‥‥‥」
そこまで言いかけて、すずかは言い淀む。流石に『死んだ筈』とは口に出せなかったようだ。リニスはその質問に困惑しながら答えた。
「ええ。その筈だったのですが。私は何故かこうして存在しています。アリシアやアインハルトも本来ここには存在しない筈なんです。一体何が起きているのか、私達も把握出来ていません」
難しい顔をして悩むリニス。
リニスは再び紅茶に口を付けてから口を開く。
「それから、‥‥‥フェイトとアルフに会えないでしょうか?」
「アリシアちゃんの事は伏せて‥‥‥ですか?」
「はい」
すずかも迷っていた。フェイトの事だ。当然リニスに会いたいに決まっている。しかしそれは、アリシアに対しても同じ筈。すずかだって、もし忍とずっと会えなかったら、辛い。悩んだ挙げ句、引き受ける事にした。
「わかりました。連絡、取ってみます」
「ありがとうございます。それから、もう1つお願いがあります。あの子達が帰る方法を見つける迄の間、ここに置いてもらえないでしょうか?私の事は構いませんから、せめてあの子達だけでも」
***
こうしてすずかの計らいで寝床を確保した3人。来客用の部屋を1つ貸してもらえた。ベッドでスヤスヤと眠るアリシアと、その隣で(アリシアさんと同じベッド‥‥‥)と紅くなって緊張し、なかなか寝付けないアインハルト。それから、ソファに座りあれこれと考えているリニス。
「アインハルト、少し良いでしょうか?」
「はい」
まだ寝付けないアインハルトに、リニスは話し掛ける。
「アリシアが起きたらもう一度話しますが、やはり‥‥‥貴女達は管理局を頼るべきです。私達だけでは限界があります。管理局なら、貴女達が飛ばされて来た理由も分かるかも知れませんし」
「ですが‥‥‥」と困惑しているアインハルト。‥‥‥‥‥‥その隣で眠っている筈のアリシアが、瞳を閉じたままで口を開いた。
「それは、ダメ。今の私や、ヴィヴィオ‥‥‥妹みたいな存在の子なんだけど‥‥‥私もあの子も、偶然と奇跡が重なって存在してるの。この時代に干渉してしまったら、私達は消えてしまうかも知れない。私はどうなっても、ヴィヴィは、せめてあの子だけは‥‥‥だから‥‥‥」
その言葉に、アインハルトは何も言わずにアリシアの左手を握り締めた。リニスは一言、「そう、ですか」と答えた後は黙り、再び考えを巡らせ始めた。
***
「‥‥‥アリシア、見付からないねぇ」
「そうだね。丘の方も探して見ようか、アルフ」
アルフとフェイトは姉であるアリシアを探していた。闇の欠片ではない、生身のアリシアを。
希望、好奇心、感謝、家族愛、不安、寂しさ。フェイトには様々な感情が渦巻いていた。闇の書の見せた夢ではない現実の、アリシア。フェイトは話してみたかった。母プレシアの事とか、今までどうして出てきてくれなかったのかとか‥‥‥こんな自分を妹として受け入れてもらえるのかとか。
「そう言えば、この場所でなのはとぶつかって、ジュエルシードが暴走して‥‥‥あの時はごめんね、バルディッシュ」
《No problem.》
かつてジュエルシードを強制発動させてバルディッシュが破損した場所。フェイトとアルフが立っているその場所は、奇しくもアリシア達が数時間迄居たビルの屋上だった。
「あのさぁ、フェイト。‥‥‥ここ匂うんだけど」
不意にアルフが口を開く。「えっ‥‥‥そんなに、匂うのかな?そう言えばずっと動きっぱなしだし、お風呂入りに戻った方がいいかな?」と見当違いの返事をしているフェイトに今度は正確に答える。
「そうじゃなくってさ、匂いがするんだよ。リニスの匂いが」
フェイトは固まった。普段ならば『そんなわけ、ないよ』とか、若しくは『リニスも闇の欠片で‥‥‥』と返している場面なのだろう。だが、今は状況が違う。
死者蘇生は不可能、という常識を覆したアリシアという存在を目の当たりにしている。否応なしにも、期待してしまう。
(リニスが‥‥‥生きてる!)
フェイトにとって、家庭教師であり、家族も同然のリニス。その彼女迄もが生き返ったのだとしたら。
「一緒なんだ‥‥‥きっと姉さんと。アルフ、もっと良く探してみよう?まだ近くに居るかも知れない」
バルディッシュを握る手に力が籠る。フェイトはサーチャーを散布して、辺りを慎重に探し始めた。
(リニス‥‥‥‥‥‥リニス‥‥‥‥‥‥!)
***
アインハルトがお風呂に行っているその間。
ベッドから飛び起きてフォーク片手に、ノエルが運んで来たチーズケーキを紅茶で流し込むように食べているアリシア。
「駄目ですよ、アリシア。もっと行儀良く食べなくては。仮にもあの『聖王女』と謳われたオリヴィエ・ゼーゲブレヒトなのでしょう?」
「いいの‥‥‥モグモグ‥‥‥王女だって‥‥‥モグ‥‥‥いつもおしとやか‥‥‥モグモグ‥‥‥って訳じゃな‥‥‥モグモグ‥‥‥いもん」
食べながら話すアリシアは紅茶でチーズケーキを無理矢理流し入れ、ゴクンと飲み込んで一息付き、「それにお腹、空いてたし」と続ける。
「ですからっ!口にものを入れたまま喋ってはいけません!全く、貴女の教育係の顔が見てみたいですよ‥‥‥」
ハァ、と溜め息を漏らすリニス。それらしからぬ行動を見せるアリシアにご立腹。『だって、姉さんがやってるから‥‥‥』とフェイトにまで影響があっては堪らない、と決意を新たにしていた。
「私と居る間はお行儀良くしてもらいますから、そのつもりで居てくださいね!」
「全く、少しはフェイトを見習って欲しい所です」と愚痴を溢しているリニスに苦笑いのアリシアは、食べ終えると「お風呂行ってくるね!」と逃げるようにして部屋を出た。
脱衣室で服を脱ぎ終え、「お邪魔します♪」となのはの真似をして浴室へと侵入するアリシア。
驚いて「ファ、ファい」と良く分からない返事になってしまった、頭を洗っているアインハルトの隣に座ると、その背中を流し始めた。
「アッ、アッ、アリシアさん!?」
「背中流してあげるね?‥‥‥‥‥‥アインハルト、顔紅いよ?大丈夫?」
顔を真っ赤にして、動揺を隠せないアインハルトはシャワーで強引に泡を流して浴槽に避難する。
「だっ、大丈夫です」
「それなら、いいけど‥‥‥そう言えば、アインハルトとお風呂一緒って初めてだよね?」
「一緒に‥‥‥お風呂‥‥‥」
今度は耳まで真っ赤になって、口の辺りまでお湯に浸かってブクブクと泡を吹き出しているアインハルト。疑問符の浮いているアリシアの今の姿を見て、更に紅くなる。
(アリシアさんと一緒にお風呂‥‥‥裸のアリシアさんと一緒に‥‥‥)
意識が遠退き、グルン、と白目を剥いてお湯に沈んでいくアインハルトを見て、アリシアは慌てて駆け寄った。
「アインハルト!?大丈夫!?確りして!アインハルト!」
‥‥‥‥‥‥こうして、二人の時間遡行1日目は、リニス、すずかを巻き込み過ぎていった。
アインハルト回。緊張感のない展開のため、暴走しております。
セイン「セインと!」
ルビー「ステキでプリティなステッキ☆ルビーの!」キラキラ
セイン・ルビー「「突撃インタビュー!」」
セイン「って、もうヤダ‥‥‥ウェンディの方がマシだよ」ゲンナリ
ルビー「嫌ですねぇ、セインさん。イリヤさんも居ない事ですし、今日はイリヤさんの秘密ぶっちゃけトークで行きますよ!」
セイン「いや、イリヤ居るから。目の前に縛られて
イリヤ「んーっ、んっーー!」ジタバタ
ルビー「大丈夫ですよ、ちゃんと猿轡もしましたし!それにしてもお風呂回ですか。あざといですねぇ。やっぱり魔法少女はローティーンがベストマッチですねぇ」
セイン(危ねぇ、コイツ危ねぇ)
ルビー「それでは!イリヤさんが喋れないうちに大発表ですよ!イリヤさんがいまLoveしちゃってる殿方は‥‥‥!」
イリヤ「‥‥‥‥うわぁーー!」
セイン「あ、脱出した」