***第42話***
「‥‥‥さん!アリシアさん!」
「‥‥‥‥‥‥アイン‥‥‥ハルト‥‥‥?」
アリシアが漸く目を覚ますと、大人モードのアインハルトに抱かれていた。まだ朦朧としているアリシアは、そのまま海岸に寝かされる。
「どうして‥‥‥私はここに‥‥‥?」
「確りしてください、アリシアさん。今は休んでいてください」
「‥‥‥はい。何だか身体が重くって。少し、休みます‥‥‥」
弱々しく答え、再び瞳を閉じて眠るアリシア。アインハルトは唇を噛み締めて彼女を見た後、U-Dが居る海上へと戻っていく。
アインハルトが戻ると、U-Dとトーマが対峙していた。
《トーマ、行けるよ!》
「行くぞ、リリィ!うおぉぉぉ!」
U-Dのシールドにトーマの剣先がぶつかる。トリプルブレイカー並みのアミタのオーバーブラストを食らってもビクともしなかったU-Dのそのシールドにヒビが入る。
『これは‥‥‥!』
驚くU-Dに、更にトーマが押し込む。
「うぉぉぉ!!」
『出力‥‥‥45%!』
もうすぐ剣が通る、という直前でU-Dのシールドに魔力が送り込まれ、その剣を弾く。「クソッ」と声をあげたトーマに、U-Dの魄翼が迫る。
「ぐぉっ‥‥‥重い‥‥‥」
《トーマ、左!》
右から迫るU-Dの左の魄翼を何とか受け止めたトーマだが、先程迄とは違ってその一撃が重く、受け止めるのが精一杯。右翼が迫るがそれに対応出来ない。
魄翼がトーマを捉える寸前、ヴィータが飛び込んできてトーマを後方へと引っ張りその場を脱する。
「あっ、ありがとうございます」
「馬鹿野郎!無闇に突っ込んでんじゃねえ!それより構えろ、来るぞ!」
ヴィータに凄まれ慌てて構えるトーマ。だが、U-Dは追って来ない。急に頭を抱えて苦しみ出す。
『う゛あ゛あ゛あ゛!』
U-Dは姿を消し、辺りは再び静寂を取り戻す。
「また居なくなったわ。ところでお兄さん、すごいんやね?U-Dのシールドにヒビが入るの、初めて見たわ」
ユニゾンを解除し、リインフォースと共にトーマの元へと飛んできたはやて。感嘆しているはやてとは違い、怪訝そうな表情のリインフォース。
「砕け得ぬ闇の魔力を弱体化させているように見えたが‥‥‥お前は何者だ?」
過去の小さなはやてとリインフォースに会って、こちらも困惑気味のリリィとトーマ。質問の意図を理解しかね、リインフォースにどう返して良いか悩む。
《リイン師匠と似てるけど違う人みたい‥‥‥?》
「そうだな‥‥‥八神司令も本物みたいだけど、やっぱりちっちゃいし‥‥‥」
トーマの呟きが聞こえたようで、ヴィータは「はやてにちっちゃいとか言いやがって!」と激怒している。
「すいません、八神司令。ここは、97管理外世界でいいんですよね?一体何が起きてるんですか?」
アインハルト達と同じようにはやてを『八神司令』と呼んだトーマを見て状況を察したリインフォース。クラウスに抱かれている(文字通りお姫様だっこ)アリシアに一瞬視線をやって、口を開いた。
「そうか。お前も未来から来たのか」
理解できずに「へっ‥‥‥‥‥‥?」と声をあげ固まるトーマ。《未来からって‥‥‥?》と同じく思考停止したリリィと共に、状況説明の為にアースラへと案内される事になった。
***
「重ね重ね、申し訳ありませんっ!!」
病室に響く、アミタの声。ベッドに寝たままで頭を下げたアミタの説明を聞いて、「過去にタイムスリップって‥‥‥不幸だ‥‥‥」とガックリと項垂れるトーマ。
「トーマ、そんな言い方したら駄目だよ。アミタさんだって態とじゃないんだし」
リリィがフォローをしても、トーマは脱力したまま。「本当に、本当に申し訳ありませんっ!」とアミタが只菅謝る。
「アミタさんのせいではありません。何とか戻れるように、キリエさんを探しましょう」
そんなアミタをフォローするように話すアインハルト。その彼女の言葉に反応して、トーマが顔を上げる。
「そっ、そうだよな。アインハルトの言う通りだよな」
言いながら、トーマは彼の時代よりも幼いアインハルトを見て、口許を緩ませる。それに気付いたリリィが、トーマの右足の甲を踏みつける。
「痛ってえ!リリィ、何するんだよ!」
「私の話は聞かなかったのにアインハルトの話は聞いちゃうなんて!」
不機嫌極まりないリリィを理解出来ないトーマは「そんな事ないだろ!全く、リリィも今のアインハルトくらい可愛ければなぁ‥‥‥」と全くもってデリカシーの欠片も見当たらない発言をしている。
「トーマのバカっ!もう知らないっ!」
「何だよ、全く‥‥‥」
そんな痴話喧嘩をしている二人を見て、思わず吹き出すアミタ。
「御二人供、仲が良いですね。ね、アインハルトさん‥‥‥アインハルトさん?」
「‥‥‥‥‥‥へっ?はっ、はい‥‥‥」
話を振られたアインハルトは生返事を返す。『可愛いい』と言われた事が恥ずかしいらしく、その頬が紅い。
「アインハルトさん?」
「なっ、何でもありません。ちょっと考え事をしていたもので‥‥‥」
そんな和やか(?)な病室に、フェイトが飛び込んで来る。
アリシアは、アミタの隣で眠ったまま。勿論治療は施したが、あれだけの攻撃を食らいながらも休めば復帰出来る位に無事。やはり直前に展開していた『聖王の鎧』の効果が効いていたようだ。
「姉さん!姉さんは何処!?」
「此方です、フェイトさん」
アミタの隣に眠るアリシアの手を心配そうに握り、涙を流すフェイト。
「姉さん‥‥‥姉さん‥‥‥」
(どうしてだろう。フェイトさんの事は何とも思わないのに‥‥‥クラウスがアリシアさんを抱いていた時は‥‥‥)
フェイトがアリシアと仲良くしているのをこうして見ていても、特に何とも思わない。だが、先程クラウスがアリシアを抱いていた時は、胸に閊えるものがあると言うか、こう‥‥‥おもしろくない。そうして、アインハルトが密かに見守っている中、アリシアが漸く目を覚ます。
「う‥‥‥ん‥‥‥」
「姉さん!良かった、姉さん‥‥‥」
抱き着いて涙を流しているフェイトに、まだ起き上がれないアリシアが力無く、囁くように声を出す。
「フェイト‥‥‥クラウスは?」
「あの人なら、クロノ達と話をしてるよ」
「‥‥‥そっか」
まだクラウスが消えていない事に安堵し、アリシアは笑みを浮かべている。それはアインハルトが今まで見てきたアリシアのどんな笑顔よりも、穏やかな笑顔。
(アリシアさんの笑顔‥‥‥クラウスが、羨ましい‥‥‥‥‥‥‥‥‥羨ましい?)
自身の思考にハッとしたアインハルト。やはり嫉妬という感情で間違い無いようだ。しかし、その意味する所を認めるべきか否か。
(クラウスが、羨ましい?アリシアさんに‥‥‥好かれているから?私も‥‥‥好かれたい?クラウスと同じように‥‥‥?)
そうしてアインハルトは漸く気付いた。自身の、クラウスの記憶のせいだとばかり思っていた想いに。
(私は‥‥‥アリシアさんの事が‥‥‥)
瞳を閉じ、一度気を落ち着かせて、ベッドに近付くアインハルト。「アリシアさん、大丈夫ですか?」と声を掛けたその表情には、もう迷いは無い。
「大丈夫だよ。ありがとう、アインハルト」
フェイトにしたように、アインハルトにも笑顔を向けてくれるアリシア。アインハルトは決意を新たに、アリシアのその左手を握る。
「アリシアさん。次は必ず、必ず貴女を守ってみせます」
「うん、ありがとう」
頭を少し傾げて、素直に笑みを溢すアリシア。アインハルトはその表情を見て鼓動が高鳴り、紅かった頬を更に紅く染めて強く頷いた。
(この先も必ず、その笑顔を守ってみせます。‥‥‥‥‥‥私の、大好きなアリシアさん)
遂に自身の気持ちに素直になったアインハルトの回。
漸くトーマ、リリィがアースラに合流。これで残るは紫天一家とU-Dのみ。
‥‥‥あれ?マテ娘達まだ出てないや‥‥‥