過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第43話

***第43話***

 

「アリシア、少し良いかい?」

 

「何でしょう?」

 

ベッドに横になっているアリシア。今は部屋でユーノと二人だけ。

 

「アリシア、君の魔力光の事なんだけど」

 

アリシアの表情には、動揺の色が見える。ユーノはそれを見逃さずに続ける。

 

「君の虹色の魔力光‥‥‥それから、その瞳。ねえ、アリシア。君は、聖王とはどんな関係なんだい?」

 

「偶々です‥‥‥と言いたい所ですけど、もう見当はついてるんですよね?」

 

答えたアリシアは、ユーノとは目を合わせず扉の方を見ている。その表情は憂いを帯び、微かに笑みを湛えている。

 

「やっぱりか。君は‥‥‥君が、聖王女オリヴィエだね?」

 

確信を突いたユーノの言葉。状況が状況なだけに、隠し通せるとは思っていなかったが、流石はユーノ。あっという間に真実に辿り着いた。‥‥‥とは言っても、アインハルトの記憶が強く関わっているクラウスなら兎も角、アリシアだけが闇の欠片として顕現せず、聖王女オリヴィエが欠片として現れているのだから、尤も言えば尤もなのだが。

 

「‥‥‥今更否定する理由もありません。それで‥‥‥私をどうするつもりですか?」

 

何時か六課時代のはやてにもしたその質問に、ユーノは疑問の表情を浮かべながら答える。

 

「どうもしないよ?別に君を拘束したりなんてしない。それに、もしも神様がいたら感謝したいくらいだ。正直、僕達だけであのU-Dに対抗するのは厳しいと思っていたからね」

 

やはり状況が変わっても、彼らは変わらない。こんな特殊な自分を普通に扱ってくれる事に感謝しながら、オリヴィエ・ゼーゲブレヒト‥‥‥アリシアは笑顔を向ける。

 

「フフっ。時を越えてもやっぱり、貴殿方は変わりませんね」

 

そんな、微笑むアリシアと、少し顔を紅くして視線を外すユーノ。改めてアリシアと向き合い、恥ずかしそうに口を開く。

 

「ねえ、アリシア。未来を知ることは良くないっていうのは分かってるんだけど‥‥‥その‥‥‥」

 

ユーノは頬が紅いまま口籠る。それだけでも充分に意図を理解したアリシアは、「フフっ」と吹き出して悪戯な笑みを溢す。

 

「本当は、良くないんですけど。アミタさんが記憶を封鎖してくれるでしょうから、少しだけ教えてあげます。仲、良いですよ?端から見ていて焦れったい位には。もう少し、勇気を出すべきだと思いますよ?」

 

ユーノは「そっか」とだけ答えて、頬を染めたまま立ち上がる。「それじゃ、お大事に」と言葉を残して部屋を出るユーノを、「ありがとう」と静かに見送るアリシア。

 

(私も‥‥‥向き合わないと。‥‥‥目を反らせて来た、オリヴィエとしての過去に)

 

***

 

自分に合う義手は、そうそう簡単に見付かるものではない。アリシアはベッドの上で、失った右手の肩口を見ながら物思いに耽る。

 

(オリヴィエだった頃は両方無かったし‥‥‥今はまだ利き腕があるから‥‥‥)

 

左手を天井に翳しながら、昔を思い出す。

 

(今も、右腕は失ったけど、後悔はない。そう、後悔は‥‥‥‥‥‥)

 

ブリッジでアインハルトと会話しているであろうクラウスを思いながら、無くなった右腕の肩を掴む。

 

何かを決意して、アリシアはベッドから降りる。まだふらつきながらも壁を伝いながら、ブリッジを目指し歩く。

 

《‥‥‥クラウス、何処ですか?》

 

その念話に、《近くですよ、オリヴィエ》と答えが帰ってくる。丁度戻ってアリシアの病室へと向かっていた最中だったようで、すぐにその姿が視界に入る。

 

「どうしました?オリヴィエ」

 

「クラウス、私は‥‥‥」

 

アリシアが口を開いた途端、クラウスの姿は光に包まれて、その像が透けてぼやけていく。「どうやら、時間のようですね」と静かに話すクラウスによろめきながら駆け寄り、まだ殆んど回復していない魔力を目一杯使ってアリシアは変身魔法を‥‥‥オリヴィエの姿に変わる。

 

「愛しています、クラウス」

 

あの時と‥‥‥オリヴィエだった頃の最後の別れの時と、同じ笑顔。ただ、違っていたのは、当時はその後隠れ号泣していた表情を、今回は隠さずに見せた事。

 

「僕もです、オリヴィエ。けれど‥‥‥今の僕は言わば偽者です。時を越える事が出来るのなら、その言葉は、本当の僕に‥‥‥」

 

段々と薄くなっていくクラウスの像。「待って、まだ、伝えたい事が!」と縋り泣き崩れるアリシアを抱き締めながら、クラウスは続ける。

 

「ですから、オリヴィエ。その時まで‥‥‥」

 

二人の唇が重なった瞬間、クラウスは光となって完全に消えた。

前方へ体勢が崩れて、床にへたり込んだアリシアの変身魔法が解ける。その場で座り込んだまま涙を流すアリシアを、アインハルトは密かに物陰に隠れ心配そうに見つめていた。

 

***

 

やがて立ち上がり、どうにか部屋まで戻ったアリシア。ベッドに座り暫く俯いていた彼女のもとへ、訪問者が一人。他でもない、アインハルト。

 

「‥‥‥アリシアさん」

 

「あのね、アインハルト」

 

アインハルトは静かに、「はい」と返事を返す。背中越しのアリシアの表情は、彼女からは見えない。

 

「クラウスがね、消えちゃったの」

 

「‥‥‥はい」

 

アリシアは先程よりもその声が重く、肩が震えている。アインハルトは尚も静かに返すだけ。

 

「私ね、何も伝えられなかった」

 

「‥‥‥はい」

 

空気が重く、暗い。アインハルトにも分かる位に、アリシアの声は震えている。

 

「オリヴィエの記憶なんて‥‥‥戻らなければ良かった‥‥‥生まれ変わらなければ、良かった‥‥‥」

 

今度はアインハルトの方に振り向く。アリシアの瞳からは、ポロポロと涙がこぼれ、その表情は深い悲しみを湛えている。

 

「そんな事は、ありません」

 

少しばかり迷い、躊躇した後に、アインハルトが口を開く。ゆっくりとアリシアに近付いて、遠慮気味に手を伸ばして、そっと抱き寄せる。

 

「私は、嬉しかった。貴女に会えた事も、貴女がオリヴィエだという事も、『ゆりかご』から生きて帰って来てくれた事も、こうして一緒に居られる事も。だから‥‥‥そんな悲しい事は、言わないで下さい」

 

何とか抑えていたアリシアの感情の箍が外れて、止めどなく溢れてくる涙。アインハルトに抱き着いて、声をあげて号泣する。

 

「アリシアさん。私は、いつでも傍に居ます。頼りないかも知れませんが、私はいつでも貴女の力になります。いつでも、貴女を守る‥‥‥‥‥‥クラウスに誓って」

 

今度は強く、確りと抱き締めるアインハルト。声に出来ずにコクン、コクンと首を小さく縦に振ったアリシア。尚も泣き止まないアリシアを一層強く抱きながら、アインハルトは心に誓う。

 

(必ず‥‥‥貴女を護ります。‥‥‥その心も、必ず)

 

***

 

泣き止み、落ち着いたアリシアは、アインハルトと共に部屋を出て、会議室へと向かう。どうやら、クロノがU-Dの対抗策を見付けて来たらしい。

 

部屋へと入ると、クロノ、はやて、なのは、フェイト、アルフ、ユーノ、それにトーマとリリィ。アミタも居る。どうやら、アリシア達が最後だったようだ。揃ったのを確認したクロノが、話し始める。

 

「これで全員だな。これから、対システムU-Dの概要を説明する。シュテル、頼む」

 

モニターが開き、なのはそっくりの、ショートカットの少女が写し出される。どうやら、彼女がシュテルのようだ。

 

《‥‥‥貴女とは初対面ですね。初めまして、聖王。シュテルと申します。以後、お見知りおきを》

 

「初めまして。‥‥‥アリシアです」

 

もう隠す必要も無い。シュテルに素直に答えたアリシア。先程の、泣きじゃくっていた時とはまるで別人のような、凛々しい表情。何時までも泣いている訳にはいかない。U-Dを止めて、未来に戻らなくては。クラウスへの思いは心の奥に留めて、今は目の前に集中する。

 

《では、説明させて頂きます》

 

シュテルによれば、先ずはU-Dの防御機能を麻痺させる必要があるらしい。その機能麻痺用のウィルスプログラムを撃ち込み、その上で各々のデバイスに専用のプログラム走らせた状態にして、漸く攻撃が通る、らしい。

 

「シュテル、私やアインハルトは?」

 

基本的にカートリッジに走らせるタイプのプログラム。カートリッジシステム未対応のライゼ、それにデバイス自体を持っていないアインハルトは?アリシアは真剣な眼差し。

 

《聖王の方は、その猫型デバイスに対応出来るようプログラムに手を加えておきます。覇王の方はプログラムに対応させるのは無理です。ですが、何が起こるか分からない以上、戦力は多いに越した事は有りません。参戦を願います》

 

「分かりました」

 

アインハルトは静かに、しかし力強く頷く。(例え攻撃は通らなくとも、アリシアさんだけは、守ってみせる)という決意を秘めて。

 

アリシアも、ゆっくりと頷く。

 

(せめて‥‥‥せめて、アインハルトだけは守ってみせます。クラウス。貴方の‥‥‥私の愛しい人の子孫だけは)

 

 




クラウス×アリシア編でした。

そして、U-D戦へ。裏側のなのは達サイドでは、お話はもう終盤。アリシアがクラウスとイチャイチャしてる間に、クロノ君がレヴィと接触してました。

***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
セイン・イリヤ「突撃インタビュー!」
セイン「イリヤ、久し振り。‥‥‥つーかさ、ウェンディは?」
イリヤ「あ、それなら、『パパりんがケーキバイキング連れてってくれるっていうから、あとヨロシクっす』って」
セイン「あのヤロウ‥‥‥」
ルビー「嫌ですねぇ、セインさん。私も居るんですから、無視しないで下さいよ!」
セイン「なぁ、イリヤ。こいつホントにお前の相棒なの?」
イリヤ「不本意ながら‥‥‥」
ルビー「酷いですよ、イリヤさん!折角イリヤさんの出番が増えるように作者に交渉して出してもらったのに!」
セイン「‥‥‥本音は?」
ルビー「イリヤさんを辱しめるチャンスは多いに越した事は有りませんからね!」
イリヤ「嫌ぁぁぁ!」
ルビー「ホラホラ、今回はアリシアさんに『歳上の殿方の落とし方』を習いに来たんですから!」
セイン「そうなの?」
イリヤ「ちっ、ちっ、違うから!お兄ちゃんの落とし方なんて、別に習いに来た訳じゃ‥‥‥」
ルビー「おやおやぁ?イリヤさん、私は『歳上の殿方』としか言ってませんよぉ?」
イリヤ「‥‥‥‥うわぁぁぁん!!」
セイン「‥‥‥また、来月お会いしましょう」
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