***第4話***
「隊長達全員で、ですか?」
「レリックじゃない可能性も有るんだけど、相手はロストロギアだし。それに、行き先もちょっと……ね」
隊長とフォワード陣だけでなく、ザフィーラを除くヴォルケンリッター、八神部隊長。その出撃メンバーの異様さに思わずなのはに尋ねたスバルに、はやてが答える。
「第97管理外世界。現地惑星名称、地球。その海鳴市。ロストロギアはそこに出現したそうや」
「私とはやてちゃんはそこの出身」
「長期滞在になるし、現地に指令部も必要になるやろうしな」
「隊長達忙しいもんね。たまには里帰りもしたいよね」と素直に納得するスバルとは対照的に、ティアナは天才達を育んだ管理外世界に少し興味があった。ロストロギアが出現するくらいだし、隊長達が住んでいた世界。もしかしたらAAAランクやオーバーSランクがゴロゴロ居るのかも知れない。現状の自分の力に苛立ち、唇を噛む。
「文化レベルB、魔法文化無し、次元移動手段無し…って、魔法文化無いの?」
(魔法文化がないのにどうしてオーバーSランク魔道師が‥‥‥これだから天才は)
ティアナは驚くと同時に更に苛立ちを募らせた。
***
現地に着いた六課メンバーは、なのは達の親友、アリサ・バニングスの別荘に本部を構えると、サーチャーの散布を開始した。広範囲に及ぶため散布には時間が掛かるが、終われば反応に引っ掛かるのを待つだけ。そんな中アルフとエイミィにある相談を受けたフェイトは、1人別行動を取る。
「海鳴公園。‥‥‥懐かしいな」
なのはもよくユーノと魔法の特訓をしていたという海鳴公園。
少しの間1人感慨に浸った後、フェイトは痕跡を探し始める。
(アルフ達の話だとこの付近の筈なんだけど‥‥‥)
フェイトが探していたのは魔力の残滓。魔道師の痕跡である。現在の海鳴にはハラオウン家以外の魔道師は存在しない。つまりここに現れたのは次元漂流者か違法渡航者。どちらにしても身柄を確保し、保護する必要がある。
「ここまでは痕跡がある‥‥‥これ以上の捜査は無理かな。そろそろ行こうか、バルディッシュ」
《Yes,Sir》
この程度の魔力残滓では分かる事にも限界がある。皆と合流して現状を報告する事にしたフェイトは、アルフに念話を送る。
《アルフ?聞こえる?》
《フェイト、どうだった?》
《魔道師がいたのは間違いないみたい。でも現場の残滓だけでは詳しくは分からないかな》
《そっか…気を付けてね、フェイト》
《うん。ありがとう、アルフ》
そうして念話を切ると、丁度なのはから翠屋に迎えに来て、と連絡が入り、フェイトは車を走らせた。
***
湖畔の別荘。現地の協力者であるアリサ、すずかの紹介も済ませ、はやて特製の鉄板焼を頬張りながら、なのはと話すフェイト。
「それでね、ウチのお父さん最近その子と組み手とかしてるんだって。エリオやキャロよりも小さいのにお父さんと互角って凄いよね。会ってみたいな」
「駄目だよ、なのは。その子と模擬戦してみたいとか思ってるでしょ?」
「ちょっと動きを見てみたいだけだよ♪ね、レイジングハート?」
《Yes,master.》
「レイジングハートまで。もうっ」
ワーカホリック気味のなのはの発言に、シグナムじゃあるまいし、と少し呆れて苦笑いを浮かべる。そうして談笑している所に、丁度そのシグナムが歩いてきた。
「テスタロッサ、例の件、どうだった?」
シグナムの問いにフェイトは顔を引き締め、「まだ可能性の段階ですが」と前置きした上で話し始める。なのはもそれに耳を傾けた。
「特には何も。恐らく違法渡航者か次元漂流者だと思いますけど、このタイミングで現れたというのも有りますし、もしかしたらロストロギアを狙った犯罪者かも知れません」
うーんと腕組みをして、「そうか」と考え込むシグナムに、「どちらにしても身柄の確保が先決です」と、捜査の進展を約束したフェイトは、今日の捜査内容を整理するため1人別荘に歩いていく。
「バルディッシュ、補助お願い」
《Yes,Sir》
バルディッシュに補助を頼み、今日確保した魔力残滓をデータベースと照合していく。残念ながらと言うべきか、それとも良かったと言うべきか。犯罪者の中には該当データは発見出来なかった。ふぅっ、と肩を小さく動かして一息ついたフェイトに、なのはから念話が入る。
《フェイトちゃん、今から皆でスーパー銭湯に行くよ。少し休憩して一緒に行こう?》
(スーパー銭湯なんて久しぶりだな。なのはと2人でお風呂に入ろうとしてエイミィに邪魔された時にも行ったっけ)などと昔のことを思い出す。
《うん、行くよ。今準備するね》
***
スーパー銭湯からの帰り道。不意にサーチャーの反応をクラールヴィントが捉える。
「クラールヴィントにロストロギア反応!河川敷辺りみたい。それと、不安定だけどAランクからAAランク相当の魔力反応がひとつ河川敷に向かって進行中です」
シャマルの言葉に全員若干の緊張が走る。攻撃性がない事が分かったロストロギアはともかく、魔力反応があったという事は魔道師が向かっている事を意味している。仮に手練れの犯罪者だとしたら、能力リミッターのある今の状態では何処まで抑えられるか分からない。細心の注意を払い、現場にはフォワード4人に加えヴィータ副隊長で臨む事になった。シャマルは先に河川敷に向かい、結界を展開させる。なのははヴィータに、新人達を任せる。
「よろしくね。ヴィータちゃん」
「おうよ、なのは」
ヴィータは軽く頷き、出撃準備を始める。
《スターズとライトニングの4人はロストロギアの封印と確保。ヴィータ副隊長は所属不明の魔道師の保護。他の隊長陣は不足の事態に備えて待機だよ。さあ、素早く考えて素早く動いて!》
なのははフォワード陣に指示を出す。各自展開し、ロストロギアに迫っていった。
一方アリシアはというと。こちらを見つけるや否やダミーをこれでもかというほど増やしていくスライム型ロストロギアに思いのほか苦戦していた。攻撃性はなく、逃げ回るだけとはいっても、辺り一面スライムの海。オマケにダミーには魔力弾も打撃も効かないため、少しずつ手に負えなくなりつつあった。
(は、早く本体を見つけなければ……)
先程何物かが結界を張った為、市街地に出る事はないかも知れない。だが、その結界を張ったのが何者か分からない以上、早く片付けて撤退する必要がある。こちらに向かってくる魔力反応は1人や2人のものではなく、多数。仮に全てが悪意ある魔道師だったら、厄介な事になりかねない。
やがてアリシアにも視認できる距離まで来た魔道師達は、4人と1人に別れ、その1人がアリシアの前に立ち塞がり、デバイスを構える。
「そこの!時空管理局機動六課、ヴィータ三等空尉だ。抵抗の意志がないなら大人しく保護を受け……」
そこまで発したヴィータは言葉に詰まる。似ているとかソックリとかのレベルではない。幼い少女とは言え、フェイトと同じ顔がそこにあったのだ。「コイツ何者だ」と呟いたヴィータの視線には、一瞬ビクッと反応したが格闘の構えを崩さず、緊張した面持ちの少女の姿が映った。
***
不味い。非常に不味い。アリシアには目の前で対峙する少女の名前とデバイスに覚えがあった。
ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士、ヴィータとグラーフアイゼン。闇の書の守護騎士。オリヴィエだった頃に知識として覚えた記憶がある。(まだそうと決まった訳では。良く似た他人の可能性も)と、自分に言い聞かせる。
「‥‥‥ヴォルケンリッター、鉄槌の騎士、ですね?」
「お前、どこでそれを……!」
そのヴィータの返事を確認し、アリシアは覚悟を決める。あれだけの魔力反応があったのだ。他の騎士も、いや、最悪闇の書の主も来ている可能性もある。今の力では抵抗するどころかねじ伏せられ、あっという間にやられるかも知れない。何とかしてこの場を脱出しなくては。
アリシアは額に汗を浮かべ、緊張を抑え構えた。
今回もフェイトさんに主役を奪われたアリシアさん。話の流れで次回はヴィータさんと対決回、の予定です。原作主役の筈のなのはさんとスバルさんが未だに存在空気です。
駄文ながら、読んで頂いている方、ありがとうございますm(__)m