***第51話***
「全く、今まで何処で生活していたのですか?食事は確り取っていまして?」
「あはは‥‥‥お腹空いとるかも‥‥‥いや、ちょっと、ほんのちょっとだけやけどな?」
「グゥ‥‥‥」とジークのお腹が鳴り、「はぁ」と溜め息をついたヴィクトーリアが持っていた紙袋を手渡す。
「どうせそんな事だろうと思っていましたわ。ほら、これを」
ジークは開けるまでも無く、それが食べ物だと理解。「ありがとうな」と笑顔を見せる。
「去年のように不戦敗になっては困りますもの。今年は大会が終わる迄は私の屋敷に泊まる事。良いですわね?」
昨年の大会は、ジークは体調不良を理由に途中で不戦敗となっている。無論、本当に調子が悪かった訳ではなく、空腹で動けなかったのが理由(周りの人間には黙っていた)。
「うん。そんなら、お言葉に甘えるわ‥‥‥ん?」
「ジーク、どうしました?」
会場の試合の様子を眺めていたジークが何かを見つけたらしい。その視線の先を辿ると、とあるルーキーの試合。
「ああ、あのゴーレムマイスターの子ですか?今年の新人ですわ。まあ、悪くはありませんわね」
「うん、それもそうなんやけど‥‥‥サンドイッチくれた子や」
「‥‥‥はい?」
紙袋の中のサンドイッチで思い出したのか、ゴーレムマイスターの少女を懐かしげに見つめるジーク。
「ウチがお腹空いて動けなくなっとった時にな?『良かったら』ってくれたんよ?」
「ジーク、貴女はまた‥‥‥ハァ‥‥‥」
今度こそ盛大に呆れて大きく溜め息をつくヴィクトーリア。勝利した新人の少女を眺めながら、「今度お礼を言いに行きませんとね」とジークの背中をポンッ、と軽く押す。
「わっと」と少しビックリしつつ「そうやね」と笑みを溢すジークに、何やら思い出したヴィクトーリアが語りかける。
「ああ、そう言えば八神海上司令が『会いたい』と仰っていましたわよ?」
「ヤガミ‥‥‥って、誰やったっけ?」
「ミッドチルダを救った英雄部隊、機動六課の元部隊長ですわよ‥‥‥貴女という人は‥‥‥」
今日は溜め息の良く出る日である。ヴィクトーリアは三度目の溜め息を「はぁ」とついて、ゴーレムマイスターの方を眺め、ふとそのセコンドに目を止める。
(おや?あのセコンドの子確か‥‥‥ハラオウン執務官の妹さん‥‥‥?)
***
「悪くないよ」
「ありがとう、アリシア」
パチンッ、とハイタッチして健闘を讃えるアリシアと、笑顔のコロナ。
「此処までで見せたのはゴーレム創成だけ。うん、予定通りだね。アインハルト戦までは他の手は何とか温存して」
「うん。分かった」と決意も新たに頷いたコロナ。ニコリと首を少し傾げて見せたアリシアと共にみんなの元へと戻ろうとすると、向こうから少女が走ってくるのが見えた。
「コロナ~、オリヴィエ~!」
叫びながら、走ると言ってもかなりゆっくりめにイクスが向かってくる。
「イクス!」と思わず声に出して走り寄っていくアリシアの後を、コロナが慌てて追っていく。
「ごめんなさいオリヴィエ。遅くなってしまいました。コロナは勝ちましたか?」
「はい、無事に勝ちました。所でイクス、他のみんなは?」
「それでしたら‥‥‥」と話し込み始めた二人の間に割って入り、コロナは二人の手を引き急ぎその場から逃げ始める。
「コロナ、どうしたの?そんなに引っ張らなくても‥‥‥」
「駄目だよ!二人共、目立っちゃってる!」
アリシアの疑問に、小声で返すコロナ。その言葉で我に返ったアリシアとイクスが、漸く周りの視線を集めていたのに気付いた。
「‥‥‥目立って‥‥‥る‥‥‥?」
イクスに至っては、「何か注目を集めるような事をしたんでしょうか?」と自分達の発言が原因である事を全く理解していない。
「もうっ!二人共、此処は教会じゃないんだから!『オリヴィエ』とか『イクス』とか呼びあったら目立つに決まってるでしょ!」
「‥‥‥ああ、そっか。フフフッ」
「クスクスッ、そうですね」
思わず顔を見合わせて吹き出すアリシアとイクス。例の眼鏡型デバイスをしている為にアリシアの両目は虹彩異色ではなく両目とも紅色に見えるし、イクスが今の時代に生きている、という事を知る者は極少数。さっきの発言で二人の素性がバレる、という事はまず無いだろうが、何が起こるかは分からない。一応用心するに越した事はない訳で、呑気にも笑いあっている古代ベルカの二人の王を、「もーうっ!」と膨れながら引っ張り走るコロナだった。
***
他のメンバーと合流した三人。ヴィヴィオ、アインハルト、リオ共に初戦は突破。これで全員二回戦に進んだ。
「よし、お前ら。良いか?くれぐれも油断はするなよ。2回戦も全力でぶつかってこい!」
ノーヴェの言葉に「はい!」と声を揃える四人。そんなチームナカジマの様子を少し離れ見ているアリシアとイクス。
「そう言えば、オリヴィエは出なくて良かったんですか?」
「はい。私は‥‥‥」
ヴィヴィオと同じ虹色の魔力光。眼鏡型デバイスだって、安全面を考えれば相手によっては外す必要があるかも知れない。そうなればヴィヴィオとの関係を勘ぐられるし、オリヴィエ関連の話を持ち出してくる輩も必ず居る。もう『聖王のクローン』として一部には知られているヴィヴィオとは立場がまるで違う。
「これ以上私の事でみんなに迷惑を掛けたくありませんから」
少し憂いを含んだ笑みを見せたアリシア。隣に座るイクスは蒼く澄んだ空を見上げる。
「私には『迷惑なんて思わない』と言っておいて、ですか?」
「はい」と迷い無く答えるアリシアを「貴女らしいですね」とクスクスと笑うイクス。
「‥‥‥彼女も心配しているようですし。オリヴィエ、そろそろ私達も行きませんか?」
そう言ったイクスの視線の先。此方をチラチラと見ていアインハルトが、イクスと視線が合い、真っ赤に頬を染めて顔を背ける。
「そうですね。行きましょうか」
立ち上がり、二人並んでノーヴェ達の方へと歩く。そんな仲良さげなアリシアとイクスを羨ましそうに見ているアインハルトに気付いたのはヴィヴィオだけ。
コーチ兼イクス護衛のノーヴェと共に、一行は帰路に就く。無事教会にイクスを送り届け、アリシアは先に高町家へ帰り、チームナカジマの四人で軽く流して走り終えた後の事。
「あの‥‥‥アインハルトさん?」
「何でしょうか?」
帰り道。話し込み先を歩くリオとコロナの少し後方で、ヴィヴィオが遠慮がちに、しかしながら核心を突いてくる。
「アインハルトさんって‥‥‥お姉ちゃんの事好き、ですよね?」
「なっ、なっ、なっ‥‥‥」
恥ずかしさと驚きの余り言葉に詰まったアインハルトに、ニッコリと笑顔を向けて話すヴィヴィオ。
「いえ、あの‥‥‥なのはママを見てる時のフェイトママと、今のアインハルトさんがソックリだから」
耳まで真っ赤になって停止しているアインハルト。「大丈夫ですよ、誰にも言いませんから!」というヴィヴィオのフォローで、漸く一言絞り出す。
「‥‥‥‥‥‥はい‥‥‥」
「アインハルトさんは、お姉ちゃんの事が心配なんですよね?」
俯いていたアインハルトは蒼い空を見上げる。昔を思い出し話すアインハルトの瞳は、心なしか潤んでいるように見える。
「私は‥‥‥アリシアさんに笑っていて欲しいだけなんです。最後の別れの時のオリヴィエのような張り付けた笑顔ではなく、本心からの笑顔で。傍でその笑顔さえ見られるなら‥‥‥」
「駄目です!」
突然声を張り上げたヴィヴィオに驚くアインハルト。リオとコロナも何事かと後ろを振り向いた為、ヴィヴィオは「あっ、ごめん。何でもないから」と誤魔化す。
「あの‥‥‥ヴィヴィオさん?」
「駄目です。それじゃあアインハルトさんがちっとも幸せじゃありませんから。お姉ちゃんは何時も言ってるんです。『みんなにはいつも笑って幸せになって欲しい』って。だから‥‥‥」
一呼吸置いたヴィヴィオに、再度「ヴィヴィオさん‥‥‥?」と訊ねるアインハルト。次の言葉を何となく予想しているのか、もう全身真っ赤になっている。
「だから‥‥‥絶対告白してくださいね!私、アインハルトさんの事応援してますから」
「あっ、あっ、あのっ、ヴィヴィオさんっ」
何と返していいか分からずにシドロモドロとなるアインハルト。
そうして各々想いを抱えながら、2回戦へと駒を進める。
アインハルトを応援するヴィヴィオの回。いよいよ思いが隠せなくなってきたアインハルト。
ジークさんは相変わらず。
***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
ウェンディ「言わせないっスよ!」
セイン「チッ‥‥‥お前なんで居るんだよ?今日収録って教えてないだろ?」
ウェンディ「ある筋からの情報っス!アタシ無しでやろうなんてズルいっスよ!」
イリヤ「あのっ‥‥‥とりあえずゲストさんを」
セイン「‥‥‥だね。今日はこの人、どうぞ」
リオ「あっ、もう喋って良いの?」
セイン「リオ‥‥‥頑張れ」ポンッ
リオ「チームナカジマで私が一番影薄いんだよね‥‥‥」ズーン
イリヤ「あ、それは‥‥‥作者が『キャラ掴み難いから』って」
ウェンディ「災難っスね。別アニメのキャラのイリヤにすら負けるなんて」
リオ「言わないで‥‥‥」ズーン