過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第53話

***第53話***

 

「失礼します、実は見て頂きた‥‥‥」

 

「もう見ていますわよ」

 

控室。次の試合を直近に控え、精神を落ち着けていた筈の、ヴィクトーリア。執事のエドガーの言葉を遮り答える。目の前には、大会の様子を映したモニター。

 

「エドガー、あの子は何者ですの?」

 

ヴィクトーリアの視線は意識していた筈の覇王アインハルトを通り越して、その対戦相手に向けられている。只のゴーレムマイスター、新人にしては見所がある、という程度に見ていた筈だった少女。

 

「何故‥‥‥あの子はジークと同じエレミアの技を?物真似と言うには基礎も確りし過ぎていますし‥‥‥」

 

ジークとは7年来の付き合いになる。10歳の頃からエレミアの技を見てきたヴィクトーリアには、猿真似かそうでないかくらいは分かる。

 

「はい、まだ覇王や聖王陛下のチームメイトとしか‥‥‥」

 

確かに、その技は荒削りな部分も多い。だがモニターを見る限り、アインハルトと互角の勝負を繰り広げている。

 

(あの子に会えば‥‥‥ジークについて何か分かるかも知れませんわね)

 

自身の試合にはまだ時間もある。ヴィクトーリアはそのコロナという少女に、淡い期待の眼差しを向ける。この子なら、ジークを過去、先祖から受け継がれた束縛から解放出来るかも知れない、と。

 

***

 

場外にまで吹き飛ばされたものの、何とか断空拳を堪えきったコロナ。当然かなりライフは削られたが、彼女は後悔はしていない。

「もうっ、無茶するんだから」というアリシアに、「ごめん。でも‥‥‥」と真剣な表情で答えて、リングへと戻る。

 

「いきますよ、アインハルトさん」

 

「負けません‥‥‥貴女にだけは、決して!」

 

叫び再び向かってくるアインハルトを、コロナは構え直し迎え撃つ。

コロナの顔面目掛け飛んできたアインハルトの魔力の籠った右拳を、左手で滑らせるように払い、踏み込んで体勢を落として懐に入るコロナ。そのまま身体を起こすのと同時に、右アッパーをアインハルトの顎目掛けて振り上げる。

 

「!!」

 

咄嗟に上体を反らしてそれを避けるアインハルト。コロナの拳が空を切り、身体が伸びきって無防備になる。

 

「はぁぁ!」

 

今度は右拳が、コロナの脇腹を襲う。完全に捉えたと思われたその右よりも速く、コロナの左がアインハルトの顔面に入る。

 

「ガハッ‥‥‥」

 

体勢を崩し、大きくよろけるアインハルト。追撃をしようと踏み込んできたコロナに、気力で左拳を出して距離を取る。

 

「今のは‥‥‥?有り得ない反応速度‥‥‥」

 

確かにコロナは、反応時間0でカウンターを放った。ただ、アインハルトが思考を回復する前に、コロナが走り攻めに行く。

 

「アインハルトさんっ!」

 

アインハルトの瞳には、嘗ての『ゆりかご』に向かう直前のアリシアとコロナの姿がダブる。

 

コロナは魔力を掻き集めた両拳で、アインハルトにラッシュを見舞う。只、嘗てのアリシア‥‥‥オリヴィエのそれにはまだまだ及ばず、徐々に慣れてきたアインハルトは冷静にそれを凌ぐ。

 

(不味い‥‥‥アインハルトさんに合わせられてる‥‥‥!)

 

‥‥‥と、隙を突いたアインハルトの左拳が、コロナに向かってくる。オートカウンターが反応してコロナの右拳がアインハルトの顎目掛け繰り出される。

 

「ハァァあ!!」

 

アインハルトの左拳は伸びる事無く途中で止まり、コロナのアッパーは虚しく空を切る。「しまっ‥‥‥」と途中まで口にした所で、アインハルトの右がコロナの鳩尾を捉えた。

 

「がっ‥‥‥」

 

その一撃をまともにくらい、コロナはその場で膝をつく。「コロナっ!」というアリシアの声が聞こえた所で、第1ラウンド終了のゴングが鳴る。

 

(あっ‥‥‥危なかった‥‥‥)

 

そのまま続いていたら、危なかったかも知れない。ゴングに救われた形となったコロナは、腹部を押さえコーナーへと戻る。

 

「コロナ、大丈夫?」

 

「‥‥‥うん、何とか。やっぱりアインハルトさんは強いね」

 

肩で息をしながら、アインハルトを見据えているコロナ。アリシアがコロナの汗を拭いながら、次の指示を出す。

 

「コロナ、良い?第2段階。次で決めるよ?」

 

アインハルトはやはり、コロナ本人のスピードには着いてこれる。それに、オートカウンターも読んできた。となれば、コロナに残された道は一つしかない。

 

「分かったよ、アリシア。次で‥‥‥決めてみせる!」

 

アリシアの言葉の意味するところは、一つ。五体の完全外部操作。それはコロナ本人の力を何倍にも引き上げる代わりに、その選手生命を破壊するのと紙一重。故にアリシアは、今はコロナには1ラウンドの間のみに使用を限定させている。詰まる所、次のラウンドがコロナにとって最後のラウンド。

 

***

 

「はぁ、はぁ、はぁ。何とか間に合いました」

 

観客席。イクスは走ってきて息を切らせながら、空いていたティアナの隣に座る。

 

「ああ、イクス。間に合って良かった。これから第2ラウンドよ」

 

「どちらが優勢ですか?」

 

急ぐ余り内容を把握していないイクスに、ティアナが先程迄の流れを説明。

 

「‥‥‥第1ラウンドはそんな感じよ。アインハルトが少し優勢かしらね」

 

「そうですか‥‥‥では、次のラウンドが本領ですね」

 

一人笑みを浮かべるイクスに、ティアナは不思議そうな顔を見せている。コロナは劣勢。まだ奥の手があるのを、イクスは知っているらしい。

 

「ちょっと、一人で納得してないで説明してくれないかしら?」

 

「‥‥‥あ、はい。ごめんなさい。えっとですね‥‥‥」

 

周りの観客に知られないよう、イクスは念話で伝える。その内容に思わず「ええっ!?うそっ!」と声をあげるティアナ。

 

「はい。ですから、まだコロナに勝機はありますよ」

 

ニッコリと微笑むイクス。第2ラウンド開始のゴングが鳴り響き、二人は視線をリングへと戻した。

 

***

 

構えたコロナを見るアインハルトの表情が険しくなる。コロナが外部操作に切り替えた事に気付いたようだ。

 

「コロナさん‥‥‥」

 

アインハルトが走り、今度はコロナにラッシュを見舞う。だが、コロナは岩石の籠手でガードし、攻撃を受け付けない。

 

「‥‥‥クッ」

 

攻勢をかけている筈の、アインハルトの顔が苦痛に歪む。ガードしているコロナの拳が、アインハルトにダメージをもたらしている。さながら、エレミアの鉄腕。

 

体勢を立て直そうと距離を取ったアインハルトに、今度はコロナが向かっていく。

 

確かにガードはしている。にも関わらず、コロナの攻撃はそのガードの上からアインハルトにダメージを与えている。ゴーレムの拳を動かす程の力も加わっているし流石は鉄腕の再現といった所。

 

「グッ‥‥‥くっ‥‥‥」

 

声を洩らし、アインハルトが苦痛に顔を歪める。ガードしているので甚大なダメージと迄はいかないが、このまま食らい続ければアインハルトと言えども危険。

 

「力を借ります、ティオ!」

 

《ニャア!》

 

ティオが一鳴き。危険域だったライフを仄かに回復させつつ、防御補助をしてもらいながら、端に追い詰められていた現状をどうにか脱する。

 

リングの端と端で体勢を立て直す二人。冷や汗を拭い構えたアインハルトを見据え、コロナは全身に力を込める。

 

「この距離なら‥‥‥ガイスト‥‥‥」

 

コロナの身体が揺らめいたかと思った瞬間。一瞬で距離を詰め、そのスピードのままアインハルトに突撃する。

その手はどうも読んでいたようで、アインハルトはそれをガードしながら受け流し、ダメージを最小限に留めた。

 

「‥‥‥やはり、高速突撃ですか‥‥‥‥‥‥ティオ!」

 

「読まれた‥‥‥なら、もう一度!」

 

再度突撃したコロナを、ティオの補助も借り今度は正面から受け止めたアインハルト。待ち構えていたように右拳に力を集め、コロナの鳩尾目掛けて振り上げた。

 

「『覇王・断空拳!』」

 

***

 

大きく吹き飛ばされたコロナを、祈るような思いで見つめるアインハルト。その膝はガクガクと震え、身体は思うようには動かない。

 

(あと‥‥‥一振りが限界でしょうか‥‥‥‥‥‥コロナさん、強かった)

 

肩で息をしながら何とか立っているアインハルトの視界に、岩石が集まっていくのが見える。僅か数秒で再創造されたゴライアスの拳が、目前に迫ってくる。

 

「『破城槌っ!』」

 

自らを奮い立たせて、ゴライアスを粉砕。セオリー通りにその影からアインハルトを狙っていたコロナに向けて、力を振り絞って右拳を放つ。

 

「『断空拳っ!!』」

 

だが。断空拳がコロナを当に捉える瞬間。その姿が霞のように消える。「なっ!?」と声をあげ驚き、事態を理解できずアインハルトの動きが止まる。

 

「『ガイスト・ダイブ!』」

 

アインハルトの真後ろから、コロナが高速突撃してくる。気付いた時には既に遅し。もうガードできるだけのライフも残っていないし、避けようにも身体は言うことを聞かず、足が動かない。

 

(そうか、幻影‥‥‥!もう、間に合わない‥‥‥此処まで‥‥‥ですか‥‥‥)

 

アインハルトは自らの敗けを覚悟し、「アインハルトさんっ!!」と叫び真っ直ぐ自分の顎目掛け向かってくるコロナの拳を唯々見つめる事しか出来なかった。

 

***

 

今当に、コロナの止めの一撃がアインハルトを捉えるその瞬間。コロナの視界、拳の先から、アインハルトの姿が消える。

 

「えっ!?」

 

否、それは正しい表現ではない。起きた事象を正しく言うのなら、それはコロナにも、勿論アリシアにも、当のアインハルトにすら予想出来なかった事態。

 

コロナの拳が当たる当に直前。アインハルトの右膝は限界を迎え、カクン、と力無く綺麗に折れた。当然アインハルトの身体は右に倒れるように下がり、意図せずにコロナのそれを避ける。

 

先に我に返ったアインハルトが右膝を気力で踏ん張り、最後の力を振り絞りって魔力を掻き集めた右拳を振り上げる。コロナはまともに顎にそれをもらって場外まで飛ばされ壁に打ち付けられて、そのまま気を失う事となった。

 

 




さて、決着。奥の手フェイク・シルエットまで使ったコロナでしたが、不運にも敗戦となりました。勝ちを拾ったのはアインハルトでした。

***
セイン「なあイリヤ。霊夢とレミリアどこ行ったの?」
イリヤ「あ、何か『あの金髪、たかが人形使いの癖に!退治してやるわ!』とか、『人形使い風情がこのレミリアを差し置いてやってくれたわね』とか言いながら幻想郷に帰りましたよ?なんか凄く恐い形相で」
セイン「あ‥‥‥そう。まぁいっか。そいじゃ、サクッと‥‥‥セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
セイン・イリヤ「「突撃インタビュー!」」
セイン「なんだか久々に普通に出来そうだね
イリヤ「今回のゲストさん、どうぞ」
ヴィクター「このコーナーは何なのですか?」
セイン「いや、作者の気まぐれコーナーって言いますか‥‥‥」
イリヤ「そうなんです」
ヴィクター「作者??」
イリヤ「いや、そこはスルーの方向で‥‥‥」
ヴィクター「そう言えば、貴女は見ない顔ですわね?出身はどちら?」
イリヤ「あ、私リリカルなのはのキャラじゃないんです」
ヴィクター「???」
セイン「まあ、そうなるよね‥‥‥」



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