***第67話***
静まりかえっていた会場。やがて響めきが起り、それが歓声に変わっていく。それはそうだ。ヴィクター達は勿論の事、観客達も(不戦敗以外)無敗のチャンピオン、ジークが地面に両膝を着いた姿など初めて見たのだから。
「アインハルトさん、凄いっ!」
思わずガッツポーズを見せて興奮している様子のヴィヴィオ。リオもヴィヴィオに抱き着いて喜びを隠せていない。
ヴィクターはと言えば、一見動じてはいないようだが、その瞳には驚愕の色が浮かんでいる。
「まさか‥‥‥本当にジークからダウンを奪うとは‥‥‥やはり覇王、侮れませんわね」
「そうだね、これほど綺麗に入るなんて」
アインハルトの作戦は知っていたであろうミカヤは、笑みを浮かべながらも冷や汗。あの神髄状態のジークに手も足も出なかったミカヤとしては、複雑な思いなのだろう。
「コロナさん、貴女達一体どうやってあんな作戦を?」
ヴィクターの疑問も尤もだろう。断空拳でイレイサーを逸らせたり、ジークが神髄状態から素に戻る一瞬を突いたり。エレミアの性質をある程度知っていないと立てられない作戦である。
ジークが本気を出す事など滅多に無いので、過去の映像を振り返ってもそうそう分かるものでもない。ましてや神髄状態から戻る時に隙が出来る事など、普通に戦っていても分かるものではないし、その状態の時にジークの傍に立っていられた者が居ない以上、隙が出来る事自体気付かれる筈が無い。
しかし、現に目の前で起きている事は事実。ジーク‥‥‥エレミアを知っていて、コロナにその技を教え、アインハルトに対策を授けた人物。ヴィクターとしてもこれ以上は放っておく訳にはいかない。
コロナは少しだけ悩み、イクスに視線を送る。イクスがコクン、と笑顔で頷くのを確認し「それは‥‥‥アリシ‥‥‥」とアリシアの名を出そうとして、やっと気が付いた。
「アリシア‥‥‥?アリシアは?」
コロナはキョロキョロと周りを確認するが、アリシアの姿が見えない。気付いたイクスも《‥‥‥オリヴィエ?》と念話で語り掛けながら辺りを見回す。
《念の為、シャマルを呼んでください!》
やっとアリシアから返事が返って来た。だが、その言葉からは焦りが感じられる。それに『シャマル』を‥‥‥。意味を理解出来ずに、イクスは思わず「え?‥‥‥オリヴィエ?」と言葉を漏らす。
「イクス、アリシアは?」
「コロナ、それが‥‥‥シャマルを呼んで、と」
「へっ?シャマル先生を?どうして?」
二人仲良く首を傾げる。顔を見合わせて、お腹でも痛くなってトイレに行ったのだろうか?と比較的呑気な事を想像していたコロナとイクスの耳に、「不味いっ!」というヴィクターの叫びが聞こえてくる。
「早く覇王を!手遅れになる前に試合を止めさせなさい!」
そう声を張り上げ身を乗り出したヴィクター。その普通でない様子に、ヴィヴィオ達や周りの観客の視線が集まる。試合のリングに目を向けているのはヴィクターの他にはイクスだけ。イクスは(オリヴィエ‥‥‥)と心の中で祈るようにリングを見つめる。
***
そのリング。膝を着いていたジークがゆっくりと立ち上がり構える。その不気味なオーラに当てられ、動きの止まるアインハルト。
(なっ‥‥‥これは‥‥‥殺気‥‥‥?)
瞬間。アインハルトの腹部に激痛。ジークの拳が鳩尾にめり込み、両足が宙に浮く。
「あ‥‥‥が‥‥‥」
息が出来ずにその場に踞ったアインハルトは、回し蹴りをまともに食らってリング上を転がる。
(い‥‥‥息が‥‥‥ハッ!?)
気付いた時には既に遅く、アインハルトの左腕に衝撃が走る。
「ア゛ア゛ぁぁあ゛っ」と思わず声をあげて左腕を押える。イレイサーが直撃した左腕からは血が流れ、動かす事が出来ない。
「くっ‥‥‥」
歯を食い縛りなんとか立ち上がったアインハルトの視界に、自身めがけて走ってくるイレイサーが映る。
(駄目だ‥‥‥避けられない‥‥‥アリシアさん‥‥‥)
唇を噛んで瞳を閉じたアインハルト。直後、轟音が耳に届くが、衝撃は一向に襲ってこない。恐る恐る開けた瞳に映ったのは、左手を前に出してシールドを展開しているコロナの姿。
(え‥‥‥コロナさん?)
‥‥‥が、その足元に展開されている魔法陣はエンシェントベルカ。魔力光は虹色で、コロナ本人では有り得ない魔力の大きさ。よくよく見てみれば、その右腕は義手であり、両腕にはコロナの岩石の籠手とは違う、鉄腕。
「あ‥‥‥アリシア‥‥‥さん?」
アインハルトの言葉に振り向いたその瞳は、やはり紅と碧の虹彩異色。その視線はアインハルトの左腕を辛そうに見ている。
「ごめんね、アインハルト。少しだけ待ってて」
その瞳を涙に濡らしながら、コロナの姿のアリシアが構え、走り出す。向かってくるイレイサーを片手で造作もなく防ぎながら、ジークの懐へと潜り込む。
「目を覚まして!」
叫んだアリシアに、ジークの拳が降り下ろされる。しかしその瞬間アリシアの姿が消えて真後ろに現れて、ジークを羽交締めにする。
「起きて!起きてください、エレミア!」
やっと我に返ったジークが、声のほうに振り向き「へっ?コロナちゃん?」と驚いた表情を見せる。アリシアはニコリ、と微笑んで、抑えていた手を離す。
「あ‥‥‥え‥‥‥?ウチ、また‥‥‥」
アインハルトの状態に気付いて、ジークは悲しそうに俯く。アリシアは少し間を置いた後に、「ごめんなさい」と謝った。
「コロナちゃんのせいやないやんか。またウチの力が‥‥‥エレミアの力が暴走したせいで‥‥‥」
「いいえ。貴女の力が暴走するように仕向けてしまったのは私の責任です、ごめんなさい」
「せやけど、コロナちゃん」とジークが口にしたところで、自身が変身魔法を使っていた事をやっと思い出したアリシア。「それと、私はコロナじゃないんです」と微かに微笑む。
「私自身の姿で目立つ訳にはいかないんです。詳しい事は、此処から離れた後で。試合ならとっくに終了していますから」
実は試合自体は、アインハルトが左腕に直撃を受けた時点でノーヴェがタオルを投げてジークの勝ちで終わっている。それ以降の事は、完全なる暴走。アリシアが聖王教会に掛け合ってもらい、ジークとコロナ(本当はアリシア)は厳重注意処分だけで済む事になる。
アリシア(コロナの姿のまま)とジークは、立っているのも辛そうなアインハルトの方へと駆け寄る。ジークに支えられ、アリシアに応急処置を受けながら、アインハルトはゆっくりと退場していく。観客席からはその健闘を称える拍手。
***
観客席のヴィヴィオ達はと言えば‥‥‥。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛‥‥‥」
コロナは頭を抱えて、涙目になって唸っていた。隣でヴィヴィオが「そのぶん強くなれば良いんだよ!ね?大丈夫だから!」と励ましてはいるが、余り効果はみられない。
「うぅ‥‥‥アリシア‥‥‥酷いよ‥‥‥」
ヴィヴィオだって、泣きそうなコロナの気持ちも分からなくはない。この大観衆の中、アリシアはコロナと全く同じ外見、同じ格闘スタイルで。イレイサーを難なく防いだ揚げ句、エレミアをいとも簡単に捩じ伏せて見せている。事情を知っているヴィヴィオ達なら兎も角、観客の目にはどう見てもコロナがやったようにしか見えない。つまりは‥‥‥次回の大会からコロナへのマークが異常にキツくなる事はもう規定路線。
「確かにお姉ちゃんもやり過ぎだったかもだけど‥‥‥アインハルトさんを助ける為だったんだし。ね?」
尚も宥めるヴィヴィオに、コロナが顔を上げて「うん‥‥‥」と答えたのと同時。
「そう!そうですわ!あれは一体どういう事ですの!?」
近付いて叫ぶヴィクターに睨まれて「あ、それは、その‥‥‥」と、しどろもどろしているヴィヴィオ。ヴィクターは更に食って掛かる。
「そうですわ。アリシア・テスタロッサ・ハラオウン‥‥‥彼女は一体『何』なのですか!エレミアとはどんな関係なのです!?何故エレミアと同じ技を?」
「まっ、まあまあ」とその間に割って入るミカヤに、尚も「あれだけの事をしておいて‥‥‥ハラオウン執務官の妹、だけでは無いのでしょう!いい加減教えなさい!」と食い下がっている。そんなひと騒動起こしている所へ、ある人物が近寄ってくる。興奮しているヴィクターに後ろからトントン、と肩を叩く。
「何ですの!?今取り込み中ですのよ?」
「いや、その事に関してなんやけどな」
その声にヴィクターが振り向くと、立っていたのは八神はやて海上司令。
「やっ、八神司令!?申し訳ありません。ワタクシとしたことが、とんだ御無礼を」
「別にかまへんよ。みんなもちょっとエエかな?この後暇かな?良かったら夕飯一緒に食べへんか?話しておきたい事もあるし。な?」
ジークの勝利で幕。
コロナちゃん、心中お察しします。
刻を越え、世代を越え。遂に交わった聖王、覇王、エレミアの3人、の回。
***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
セイン・イリヤ「「突撃インタビュー!」」
セイン「あれ?これ何で一行空いてるの?」
イリヤ「あ、それは作者が『見づらいから』だって」
セイン「あ、そう‥‥‥。で、何でまたアンタいるの?」
アリス・マーガトロイド「良いじゃない。魔理沙が主役の予定だったボツになった話のあらすじくらい説明させてよ」
イリヤ「なんか‥‥‥このコーナーって自由だなぁ」
アリス「でね?霊夢の存在が不安定になるっていう異変が起きるの。それを解決する為に魔理沙が紫に結界の外に出されてね?」
セイン「いやいやいや、発言許可してないから!」
アリス「それで、リリカルなのはとのクロスの話だったんだけど、実は霊夢は元々高町なのはと一つの人間で、高町なのはの身に命の危険が迫ってるせいで霊夢が不安定になってるから、その元凶であるジュエルシードを魔理沙が‥‥‥て予定だったの!」
イリヤ「あ、無視して話進めてるし‥‥‥ってこれ、もしかして次回のゲストって御坂妹さんなのかな?」