***第68話***
「見た目程重傷ではないけれど、2、3日は安静にしてね?アリシアちゃんの処置が早かったお陰よ」
「はい。ありがとうございます、シャマル先生」
医務室のベッドに横になっているアインハルト。今はシャマルに左腕の状態を看てもらったところ。アリシアの応急措置が早かった事もあり、直ぐに復帰できそうである。
「私の力が足りなかったせいで‥‥‥皆さんに迷惑を掛けてしまって‥‥‥アリシアさんにも」
悲しそうに顔を背けたアインハルト。その右肩にポンッと手を乗せて、シャマルが笑顔を向ける。
「誰も迷惑だなんて思ってないわよ。それに、アリシアちゃんは何時も貴女の事心配してるわ。過去に‥‥‥オリヴィエに拘るのも分かるけど、もう少し未来に目を向けても良いんじゃないかしら?」
アインハルトは顔をあげる。シャマルの言葉には、社交辞令的な上辺だけでない重さを感じられる。
「未来を‥‥‥ですか」
「そうよ。私にも経験があるの。過去の出来事は確かに忘れちゃいけない事なんだけど、前を向かなきゃ」
アインハルトは答えない。急に言われても、ハイそうですかと切り替えられる程、割り切れる事ではない。辛うじて「そう‥‥‥なのでしょうか」とだけ口にして、再び顔を背けた。
「ゆっくり考えれば良いんじゃないかしら?」
ニコリ、と笑って見せたシャマル。「私は‥‥‥」とアインハルトが言い掛けたタイミングで、コンコン、とノック音。
「失礼します」と入ってきたのは、アリシア。
「アインハルト、具合はどう?」
「はい。アリシアさんのお陰で何とか」
アインハルトよりも、アリシアの方が辛そうにしている。自身の立てた作戦のせいでアインハルトが怪我する事になった、と自責の念に駆られているのだろう。アインハルトは右手でアリシアの左の掌を握る。
「2、3日すれば大丈夫だそうですので、心配要りません。それに、アリシアさんのせいではありませんから」
「でも‥‥‥ごめんね、アインハルト」
アインハルトの心臓の鼓動が高鳴る。上体を起こし、勇気を出して、俯くアリシアを抱き締める。
「アリシアさん、わっ、私は‥‥‥貴女の事が‥‥‥」
言い終わらないうちにアリシアが「あ、そうだ」と話を遮る。誤魔化すように別の話を切り出す。
「そうそう。この後時間取れるかな?はやてがね、『みんなに話があるから晩ご飯一緒に』って」
折角勇気を出して告白しようとしたのに話を折られて、少し切なそうなアインハルト。まだ恥ずかしくて紅い顔のまま「‥‥‥はい」と静かに頷く。アリシアは満足気にコクリ、と頷いて、「じゃあ、また後で」と席を立つ。
「もう少ししたら迎えに来るから。それまでゆっくり休んでね、アインハルト」
「はい‥‥‥アリシアさん」
アリシアが部屋から出ていった後。残されたアインハルトは「はぁ‥‥‥」と小さく溜め息をつく。
(アリシアさん‥‥‥)
‥‥‥と、ポンッと肩を叩かれて、ビクッと驚くアインハルト。振り返った視線の先には、当然シャマルが居る。その顔は、ニコニコ‥‥‥否、ニヤニヤと言った方が適切だろう。
「アインハルトちゃん、私も居るのに大胆ねぇ。私‥‥‥応援しちゃうわ!」
「あ‥‥‥あ‥‥‥あ‥‥‥」
シャマルが居たのをすっかり失念。全身真っ赤になって茹で蛸状態になっているアインハルトは、アリシアが戻ってくるまでそのまま思考停止している事になる。
***
「良かったのですか?」
「ええ、イクス。今は答えを出す巾では無いと思いますから」
二人並んで通路を歩くイクスとアリシア。イクスはアリシアがアインハルトと話している間、部屋の外で待っていた。二人に(主にアインハルト)考慮しての行動。故に中での話が聞こえてしまい、アインハルトが告白寸前だったのも分かってしまっていた。
「『今は』、ですか。その時が来たらどうするつもりですか?」
イクスの問いに「そうですね‥‥‥」と少し間を置き「フフッ」と悪戯に笑うアリシア。
「思い切ってお付き合いするのも悪くないかも知れませんね」
「オリヴィエ、真面目に答え‥‥‥」と少しばかり呆れ話すイクスの言葉は、アリシアに途中で遮られる。
「私が‥‥‥クラウスを忘れられたら、ですけれど」
昔を思い出し、遠くを見るようなアリシアの表情。イクスは「オリヴィエ‥‥‥」と発したまま、それ以上言葉を続けられなかった。
***
その日の夕刻。とあるホテルの一室(スイートルーム)に、昼間のメンバーが集まっていた。アインハルトやヴィヴィオ達チームナカジマの面々、ヴィクターにミカヤ、ハリー、それに勿論ジークも。それと、古代ベルカの王が二人。
部屋には料理(勿論豪華の部類に入る)が並べられ、各々が思い思いに夕食を摂っている。
その一角。アインハルトは椅子に座り、無事な右手でグラスを持ったまま、テーブルに置かれた料理の皿を前にして固まり戸惑っている。
「えっ、あっ、その‥‥‥」
「はい、アインハルト、ア~ン」
隣に座ったアリシアに、口の前にスープの乗ったスプーンをつき出されている。
「あっ、あのっ、アリシアさんっ、右手は使えますから、そこまでして頂かなくても‥‥‥」
恥ずかしいので止めようとはしてみるものの、アリシアは満面の笑みを湛え「ア~ン!」と更にスプーンを主張してくる。頬を真っ赤にしてパクリ、とスプーンを口にしたアインハルトだが、羞恥心で味など分かったものではない。
「どう?美味しい?」と小首を傾げ聞いてきたアリシアに暫し見とれてしまったアインハルトだが、やっと質問されている事に気付いて慌てて返事をした。
「えっ?‥‥‥はっ、はい!とても美味しいです!」
「そっか。良かった」
ニコリ、と笑い掛けてくれたアリシアと目を合わせられず、アインハルトは思わず視線を逸らせる。
(アリシアさんがこんなに近く‥‥‥アリシアさんが‥‥‥‥‥‥ハッ!?)
全く周りの見えていないアインハルトだったが、ヴィヴィオ達に生暖かい目で見られていた事に気付く。湯気が出たかと思うほど顔が火照ってしまったアインハルトはその空気に耐えきれなくなって、思わず立ち上がる。
「あれ?アインハルト、どうしたの?」
「えっと、ちょっと飲み物を取りに行ってきます!」
アリシアの隣に座り、苦笑いで二人の様子を見ていたイクス。アインハルトが席を立った事で、やっとアリシアに声を掛ける。
「オリヴィエ‥‥‥そういう行動は勘違いの元ですよ?」
「‥‥‥はい?」
イクスの言っている事に全く合点の行っていない様子のアリシア。先程の自身の言動がアインハルトにどういう風に見えていたか全く分かっていないらしい。
「ですから、さっきの行動は‥‥‥」
「何処かおかしかったでしょうか?」
アリシアにしてみれば、怪我して上手く食事出来ない娘か妹の面倒を見ているような感覚だったのだろう。イクスも呆れはしたものの、流石にこのまま、という訳にもいかない。
「いいですか、オリヴィエ。さっきのお二人、まるで恋人同士のように見えましたよ?自身の行動には少し気を付ける巾ですよ?」
「ええと‥‥‥はい」
言われてやっと理解したらしいアリシア。少しだが恥ずかしそうに頬を染めて誤魔化すように笑みを見せる。
そんなタイミングを見計らっていたのか、はやてが場の全員に向かい声を上げる。
「みんな食べながらでエエから、ちょう聞いて。まあ、最初はちょっとした忠告から、やね。こうして集まってもらった此処には、古代ベルカの関係者が多いんよ。ベルカの王の末裔も居る。局としても警戒はしとるけど、何か良からぬ連中が悪巧みをしとるかも知れへんし、みんなも充分気を付けて欲しい」
はやての言葉で、全員の表情が少し険しくなる。場の雰囲気を変えようと、はやてが慌てて続ける。
「今はそんな兆候が有るわけやないから、もう少しリラックスしてくれてエエよ。そうやな‥‥‥それじゃ、みんな改めて自己紹介でもしとこうか。じゃあ先ずは、私からやね」
近場の椅子に座り、コホン、と態とらしく咳をして見せるはやて。
「まあ、知っとる人も居るやろうけど。八神はやて。今は管理局の海上司令や。前みたいな特別捜査官よりはマシやけど、相変わらず局は私の扱いには困っとるみたいやね。私も古代ベルカの関係者なんよ。最後の夜天の主‥‥‥ここだけの話やけど、所謂『闇の書』って呼ばれてた物やね」
ヴィヴィオやアリシア、イクスなど、知っている者は兎も角。その名を聞いて声をあげて驚いたのはヴィクター。
「闇の書!?闇の書ですって!?」
「うん。まあ、話すと長くなるんやけどね」
会食と昔話の始まりです。今回は只管アリシアとアインハルトがイチャイチャするだけの回となりました。自覚が無いって怖いですね。
ヴィクターさんはこのあと何度も驚く事になります。
***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
御坂妹「突撃インタビュー!とミサカは決めゼリフを奪いほくそ笑みます」
イリヤ「やっぱりだよ‥‥‥」
セイン「で、アンタも未練がましく話するの?」
御坂妹「とんでもない!単にお二人を応援しに来ただけです、とミサカは本当はこのコーナー乗っ取りに来た事を隠してニヤリ、と悪い笑みを見せます」
イリヤ「うわー!黒いホンネがぁ!」
セイン「その口調って不便だよね」
御坂妹「良いのです。もう開き直ってボツネタのあらすじを語りますから、とミサカは‥‥‥」
セイン「あ、長いからその口調取り敢えず止められる?」
御坂妹「ミサカのアイデンティティを全否定するとは‥‥‥良いでしょう。とミサカは書くのが面倒だとかいう作者のホンネは隠しつつ、話を進めます。そう、ミサカの手から逃げていったssは、頭脳はミサカ、身体は御姉様、とどこぞの少年探偵のような設定だった事を明かします。そしてこのミサカが御姉様として表に裏に活躍し、あの少年とイチャコラする予定だったのに‥‥‥!あのロリ金髪貧乳のせいで!」ギリギリ
セイン「あー、分かった分かった。ほら、今度のそのssの後書きコーナーに出ればいいんじゃないの?」
御坂妹「!その手があった!」
イリヤ「あ、もう口調忘れてるし」
セイン(まっ、そっちの後書きにもアタシは出るつもりなんだけどね)