過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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第6話

***第6話***

 

 

フェイトはリニスの杖に残っていた映像データを確認していく。どれもこれも自分に残されているアリシアの記憶にある風景ばかり。そして最後に残った映像を見たフェイトは驚き、狼狽した。それは、今朝、海鳴に出向する前に見た夢そのものであった。過去の出来事を思い出して、様々な思いが巡る。

 

(やっぱりあの子、アリシア‥‥‥姉さんなんだ)

 

フェイトが何とも言えない難しい顔をしているのを見たフェイトの補佐官シャリオ・フィニーノは、心配して声を掛ける。

 

「フェイトさん?映像データどうでした?‥‥‥って、どうかしましたか?」

 

「えっ、あ、な、何でもないよ、シャーリー。どれもこれもアリシアの記録で間違いないよ」

 

シャーリーは内心では(フェイトさんまた無理してるんだなぁ)と思いつつも、「そうですか。間違いないんですか」と話を進める。

 

「どう見るべきでしょうか。いくらなんでも人が生き返るなんてことあるんでしょうか?」

 

「普通ならないと思うけど、これは事実だから‥‥‥。どう報告したらいいんだろう」

 

フェイトは正直、出来るなら上層部には報告したくはなかった。死んだ人間が生き返るなんて、上に知れたらどうなるか。下手をすれば研究所で永久にモルモット、なんて可能性だって有りうる。そんな奴等にアリシアを、自分の大切な姉を渡すわけにはいかない。

 

「報告せんでええ。私の責任でこの件は預かるよ」

 

音も無く、後ろから突然現れたはやて。その心中に秘めた思いは表には出さず、少し笑みを溢しながら口を開いた。

 

「シャーリーもこの件はまだ内密にしてや。フェイトちゃんはアリシアちゃんに面会に行って来たらええよ。それからシャーリーはなのはちゃんと前回の検分と報告頼むわ」

 

シャーリーは「分かりました、部隊長」と答え、再びモニターに視線を落とした。

 

***

これから自分はどうなるんだろうか、と思考を巡らせながら、部屋を見渡すアリシア。ベッドのそばにモニター。小さなテーブルと椅子が1つづつ。

 

(監禁、されたのでしょうか。でも‥‥‥)

 

‥‥‥と、目の前の扉が開く。

 

「おはよう、アリシアちゃん。起きた?私は医療担当のシャマルです。結構色々検査しちゃってごめんなさいね」

 

「闇の書の守護騎士‥‥‥。私をどうするつもりでしょうか?」

 

入って来たシャマルに対し、アリシアは出来る限り冷静に問いかけた。シャマルは笑顔を崩さずに、言葉を続ける。

 

「どうもしないわよ。ヴィータちゃんも言ったと思うけど、私達は過去の罪を償って生きる。それにここは管理局よ。私達はあなたを保護しただけよ」

 

確かに管理局のようだし、妹と思われるフェイトもいる。だが現状を理解するにはまだファクターが足りない。

 

「保護、ですか」

 

未だ納得のいかないアリシアの疑問に答えるべく執務官が入ってきた。

 

「えっと、ね、姉さん?姉さんの疑問はある程度解消出来ると思うんだけど、かなり辛い事実を知ることになると思う。それでも聞きたい?」

 

戸惑いながら話すフェイトに、アリシアは少し迷った。虚数空間に落ちるほどのことが起きたのだ。想像以上のことがあったのかも知れない。が、現状を知る必要はある。目を覚ましてから、理解し難いことが多すぎる。闇の書の事や、妹のこと。自分の前世や力のこと。

 

(目を覚ましてから‥‥‥?そう言えばどこか違和感が‥‥‥何故でしょう。長い間眠っていたような‥‥‥)

 

あれこれ悩んだ挙げ句「お願い」と答えたアリシアに、フェイトはモニターを交え、丁寧に説明を始めた。プレシアが主任を務めた次元エネルギー駆動装置「ヒュードラ」の暴走で命を落とした事。プレシアがアリシアのクローンであるフェイトを生み出した事。PT事件の事。闇の書事件の事。そして、今。

 

(そう‥‥‥でしたか。あの時、私は一度死んだのですね)

 

瞳を閉じて、物憂げに想いに耽るアリシアに、フェイトは出来る限り優しく、囁くように話す。

 

「姉さんは今、確かに生きてる。プレシア母さんは居ないかもしれないけど、姉さんは独りじゃないから。私が、傍に居るから」

 

フェイトはアリシアの小さな手をそっと握る。温かい、母プレシアを思い出させる、手。

 

「姉さん、私と一緒に住むのは駄目かな?」

 

「‥‥‥フェイトの力になれるかは分からないけど」

 

「そんな事関係ないよ。姉妹、だから」

 

「うん。ありがとう、フェイト」

 

微笑むフェイトに、アリシアは笑顔を返した。

 

***

はやては無限書庫に来ていた。ユーノ・スクライア司書長に会い、ある事を確認するため。

 

「はやてちゃん!ただいまです~!」

 

「お帰り、リイン。どうやった?」

 

「それがですね、アリシアちゃんには魔法の才能は殆どない、筈なんです。記録では魔力量もEからFって所だったそうですよ」

 

(やっぱりや)

 

リインにも調査を依頼していたはやては、明らかに違和感のあるアリシアの力に疑問を持っていた。どうにも聖王と無関係とは思えなかったのだ。それに‥‥‥。

 

話している2人の所へ、懐かしい顔が現れた。ユーノ司書長だ。

 

「はやて、お疲れ様。直接会うのは久し振りだね。元気だったかい?」

 

「ユーノ君、久し振りやね。仕事押し付けてもうてゴメンな」

 

「別にいいよ。どこかの提督の注文に比べたら大した物でもないしね」

 

そう言って笑うユーノの目の下には、うっすらと隈ができていた。

 

「全くクロノ君は人使い荒いんやから。無理はせんといてな?」

 

「アハハ、程々にしておくよ。それよりはやて、例の資料のデータだよ」

 

ユーノははやてに頼まれていたデータを渡す。

 

「おおきに、ユーノ君。後でなのはちゃんに無理矢理有給取らせるからな。デートとか誘ったらどうや?」

 

「な、何でそこでなのはが出てくるんだよ!」

 

「ユーノ司書長、そうだったんですか!」

 

「リインまで全く……」

 

そんなやりとりをしながらも、はやては受け取ったデータを鋭い眼差しで見ていた。

 

***

ユーノから受け取ったデータ。聖王家の家系。それと、プレシア・テスタロッサの先祖の家系。

 

(やっぱり繋がらんなぁ。本当にただの偶然なんやろか。でもそれやとアリシアの魔力が説明できんし、あの子、どう考えても6歳児の思考やないし。そもそも人が生き返っとる訳やし。それに、あの子とは何処かで会うたような気がするし)

 

考えを巡らすものの、イマイチ答えに辿り着かない。まだピースが足りない。「んーー」と伸びをして思考を切り替える。

 

(アカンわ。考えてても仕方ない。これは直接行くしかないな)

 

はやては疑問の本拠地、アリシアの部屋へ足を運ぶ。部屋に着くと一通りの説明を終えたフェイトが丁度退室する所であった。

 

「あ、フェイトちゃん、もうエエんか?」

 

「うん、はやて。アリシア姉さんももう大丈夫だよ」

 

「それなら、アリシアちゃんの事ちょう借りるよ」

 

ヒラヒラとフェイトに手を振り、はやては部屋に入る。中にはまだシャマルもいたので、退室してもらう。そうして2人きりとなったはやては、アリシアに切り出す。

 

「アリシアちゃん、こんにちは。機動六課課長、八神はやてです」

 

「闇の書の……いや、夜天の主、ですね。さっきフェイトに説明してもらいました。守護騎士への失礼、申し訳ありませんでした」

 

「謝罪とかなら別にええよ。そんなに畏まらんで。もっと仲良くしてくれたら嬉しいよ」

 

「そう言ってもらえると助かります」

 

「しかしアリシアちゃんは確りしとる。6歳とは思えんね」

 

「そんな事、ありません‥‥‥」

 

はやては核心に迫るための切欠を探し、アリシアははやての何かを仕掛けようとしている雰囲気を察し、微妙なやり取りが続く。

 

「アリシアちゃんはどうするん?やっぱりフェイトちゃんと暮らすんかな?」

 

「そうですね。フェイトとは一緒に暮らしたいんですけど。そうすると私が今お世話になっている方にちゃんとお話しないといけませんし。フェイトの今の家族の方に……どうやって説明すればいいですかね」

 

(ありえへん。な、なんやこの子は。やっぱり6歳児の思考やない。何かある。間違いない)

 

はやてはそう思っていた。

 

「まあ、フェイトちゃんの家族なら大丈夫や。多分真実を話しても受け入れてくれると思うよ。ところでアリシアちゃん、いつからそうなんや?」

 

はやては核心に触れ始める。アリシアは内心ギクリとする。

 

「いつから、とは?」

 

「アリシアちゃんが大人びた態度になったのが、やな。もっと言うとどうしてそうなったのかも聞きたいんやけど。言い方悪いかも知れへんけど、それ異常、やで?」

 

しまった、とアリシアは思った。確かにこの歳でここまで思考出来る子供はいないだろう。幼い子供の演技でもしておけばよかった、と。

 

「えっと、その……」

 

アリシアが動揺しているのを見て、はやての口がほんの少しだけ緩む。

 

「シュトゥラでクラウス陛下と住んでた頃からだったんか?オリヴィエ妃殿下?」

 

「あっ、あの頃は確かに帝王学の時間とかもありましたけど、歳相応で、クラウスにもよく『ヴィヴィはまだまだ子供だな』なんて言われたり……はっ!?」

 

はやてはニヤリとしてアリシアを見る。一方の、失言してしまったアリシアは狼狽して、目が泳いでいる。

 

「言質取ったで、アリシアちゃん。いや、オリヴィエ聖王妃殿下。詳しく説明してくれたら嬉しいよ♪フェイトちゃんには内緒にするしな」

 

「‥‥‥話しますけれど、そんなに大それた話では有りませんよ」

 

アリシアははやてに今までの経緯を話す。オリヴィエだった前世。命の終わりの間際ジュエルシードに託した願い。生き返ってその記憶をジュエルシードから受け取った事。

 

「何というか、点がようやく線に繋がったわ。まぁ信じがたい所もあるけど、納得は出来るよ」

 

「自分でも信じられない話だと思います」

 

「で」とアリシアは続ける。自分の境遇がどうなるのかくらいは聞いておきたかった。

 

「管理局は、私をどうするつもりなんでしょうか?」

 

「保護、は六課でするけど、基本的にはどうもせんよ。管理局の上層部には報告せんし。安心していいよ」

 

理由の分からないアリシアは、はやてに「何故?」と問いかける。

 

「アリシアちゃんはフェイトちゃんの『家族』やろ?管理局の上には非人道的な人間も多いからな。何の罪もないアリシアちゃんをそんな輩には任せられへんから。まあ、他にもあるんやけど‥‥‥」

 

「ありがとう、ございます」

 

「ほな、明日にでも海鳴に挨拶に行こうな?」

 

アリシアは「分かりました」と答え、「また明日な、アリシアちゃん」と言って部屋を出ようと立ち上がるはやて。

 

「あぁ、もうひとつだけエエかな?」

 

部屋を出ようとしたはやては扉の前で立ち止まり、振り向いた。

 

「何でしょうか?」

 

「なあ、アリシアちゃん。前に会った事あらへん?」

 

不思議そうに「今回が初めての筈ですが?」と答えたアリシアに、「そうか」とだけ呟いて、はやては部屋を後にした。

 

***

《……と言う訳やから明日海鳴で合流、でええな?クロノ君?》

 

《カリムには報告の必要があるだろうな。では明日、はやて》

 

予言が進行しつつあるのか。対策を練らなくては。クロノは艦長室でコーヒを飲みながら考えを巡らせていた。

 

(アリシア、か)




少々強引でしたが、はやてさんが核心を突いた回。
ようやくリインが登場(ちょい役…)
テスタロッサ姉妹の間には甘い空気が漂っている模様。

ちょっと思いましたが、STS編って登場人物多すぎる。


***
PI、Pi、Pi、←アリシアさん闇の書事件学習中
ア「ねぇフェイト。」
フ「どうしたの?アリシア。」
ア「このなのはとの合体魔法って?」
フ「中距離殲滅コンビネーション ブラスト・カラミティのこと?」
ア「…殲滅?」
フ「うん。」
ア「災厄の……暴風?」
フ「うん。それがどうしたの?」
ア「……」
フ「?」
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