***第76話***
「ここが‥‥‥ウミナリですか。良い所ですね」
「でしょ?優しい街だよ」
今は、ね‥‥‥という言葉は飲み込んだアリシアの髪を、心地よい浜風が撫でていく。この場で敢えて言う程の事でもない。戦場となったのは、もう昔の話。
リニスと契約したその当日の内に動いた。今は午後。月村家にあるゲートを抜けて此方へと渡り、約束の時間まで海鳴公園を散歩している。
「少しばかり緊張しますね」
「大丈夫。リンディは良い人だよ?」
「分かっていますよ」とリニスは笑みを見せる。モニター越しに少し話しただけだが、フェイトが真っ直ぐに育ってくれた事は充分に理解出来たらしい。そんなフェイトを育ててくれたリンディが、悪い人間の筈は無い。そう確信しているのだろう。
「そういう意味では‥‥‥私が伝えたいのは、感謝ですよ、アリシア」
「‥‥‥うん」
ともすれば犯罪者かも知れなかった、そうでなくてもプレシアという犯罪者を母に持つフェイト。そのフェイトとアルフの保護者となり、立派な淑女(‥‥‥?)に育ててくれたリンディの人としての器の大きさは推して知るべし。
そんな、ハラオウン家へ向かうアリシアとリニスの目的は二つ。リニスの顔合わせ込みでこの機会に『実家』に顔を出しておく事と、アルフが宝物でも扱うかのように大切に保管している『リニスの杖』だ。
「それにしても‥‥‥まさかあれから20年近く経っているなんて‥‥‥未だに信じられません」
「不思議な感じだよね?‥‥‥私もそうだった」
リニスが契約を切られ、アリシアに再契約される迄に流れた時間。リニスにとっては文字通りほんの一瞬。信じられないのは尤もだ。オリヴィエとして死んでからアリシアとして生まれ変わった経験があるアリシアにも、その気持ちは分かる。
「それにしても‥‥‥まさか貴女があの『最後のゆりかごの聖王』だったなんて‥‥‥それが一番の驚きですよ」
隣を歩くアリシアに、リニスの視線が重なった。アリシアの格好は、嘗てのなのはのバリアジャケットのようなリボン(緑)が付いた白のブラウスに、薄い茶のキュロット。多少目立つかも知れないが、此方の世界では魔法は存在しないため、眼鏡型デバイスは着けてはいない。リニスはと言えば、流石に普段の格好は此方では目立つので、アリシアのキュロットの色に近いワンピースに白いカーディガンを羽織っている。勿論耳と尻尾は収納済み。アリシアとはある意味お揃いか。
アリシアの家族となったリニスに嘘偽りを教える必要など無い。寧ろ、真実を知っていた方が助かる事も大いだろう。それに、使い魔であるので、当然ながら精神リンクだってしている。アリシアの発言が嘘かどうかくらい分かってしまう。
「記憶も、資質も、レアスキルも継承してるんだけど‥‥‥出力だけはどうにもならないけどね」
ハッキリ言えば最大出力はリニスの方が上だ。もっと言えば、『それだけ』ならばミウラにも負けかねない。元々、今のアリシアの身体には魔法の才能なんてものは無いのだ。その才能の無い身体にオリヴィエの大魔力を内包している。魔力量は膨大でも、防御が幾ら固くても、攻撃の出力の大きさはオリヴィエ時代には遠く及ばない。幼い頃は『成長すれば何とかなるかも』と思ったりもしていたが、期待した程ではない。先日の無限書庫でオリヴィエの姿に戻った時に、それを改めて実感した。オリヴィエの身体ならば、ユーリとももっといい戦いが出来る自信はある。
「大丈夫ですよ。これからは私も居ます。最大限、アリシアの力になりますから」
「そうだね。改めて宜しくね、リニス」
残念ながら、フェイトは仕事の為に来られない。モニター越しに『帰る!今すぐ帰るから!』と涙を浮かべて駄々を捏ねていたフェイトの姿を思い出し、ププッ、噴き出す。
「どうしました?」
「うん、フェイトの事思い出しちゃって」
「ああ‥‥‥」と頷いて苦笑いを見せるリニス。あの時フェイトが居たのは次元船の中。どんなに急いでも、ミッドチルダに戻るには二日かかる距離だ。気持ちは分からなくも無いが‥‥‥。
「けれど‥‥‥そんな思いをさせてしまったのは私の責任ですから」
「そんな事ないよ。あれはママ‥‥‥ううん、違うね。私のせい、だもんね」
プレシアが契約を切ったからリニスは消えた。そのせいでフェイトが悲しむ事になった。だから、そもそもの原因となった、自身の死のせい。誰も悪くない。
‥‥‥が、アリシアの頭にポン、と手が置かれた。見上げてみると、少し膨れた様子のリニス。
「またそんな事を‥‥‥アリシアは自虐的過ぎます。まあ、今回の話の原因は私ですが‥‥‥」
「うん。分かった」
小首を傾げ笑いかけるアリシアに、リニスも笑み。そうして話している間に海岸線を抜けた二人。
アリシアのお腹が、はしたなくグゥ~、と鳴り、リニスの視線が向く。
「‥‥‥アリシア?」
「‥‥‥お腹空いちゃった」
タクシーを拾い、二人が向かったのは翠屋。飛行していけば速いのだろうが、生憎海鳴で人は飛ばない。
そうして、翠屋でケーキと紅茶を注文。店外に設置されたテラスに座り、品物が来るまで暫し呆ける。
「‥‥‥アリシアちゃん?アリシアちゃんよね?」
声をかけてきたのは、すっかり大人の女性に変わってはいたが、神咲那美。蘇生したてのアリシアが世話になった神主だ。アリシアが見たことの無い狐を連れている。ペットだろうか?
「アリシア、この方は?」と疑問の表情のリニス。
「あ、この人は神咲那美。私の命の恩人だよ」とアリシアが伝えると、畏まって挨拶を交わしている。
那美もそんな態度は望んでいないらしく、苦笑いで「そんな大それた事してませんから」と否定してリラッスクを要求。運ばれてきた紅茶とケーキを口にしながら、暫し昔話に花が咲いた。
約束の時間も近付いて、那美と別れた二人。連れていた狐から妙な視線を送られていた気がするし感じた事のある気配だった気もするが、敢えては気にしない。
歩く事数分間。目と鼻の先にあるマンション。ハラオウン家の扉の前に立ち、アリシアがインターホンを押そうとした瞬間。バタンッ、と扉が勢いよく開いて、小さな何かがリニスに向かって飛び出し、抱き着いてきた。
「リニスぅ‥‥‥リニスぅ‥‥‥お゛がえ゛り゛‥‥‥」
「はい‥‥‥ただいま、アルフ」
腕の中で泣きじゃくって、もはや見られた顔ではなくなっているアルフと、それを申し訳なさそうに、しかし嬉しそうに抱き締めるリニス。感動の再会に思わずアリシアの表情が緩む。同時に、アインハルトにもアルフと同じようなこんな思いをさせてしまっていたのだと、心の中に影をつくる。
ハッとして視線を戻すと、アルフを抱き止めたままのリニスが心配そうな視線を向けて来ていた。精神リンクというのは、時に不便なものだ。
《大丈夫。何でもないよ》
《それなら、いいのですけれど》
アルフに気付かれないよう念話を交わした二人は、リンディとエイミィに挨拶をする為に、マンションの中へと入っていく。
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場所は変わり、エルトリア、グランツ研究所。窓の外を眺めるユーリの口元は緩んでいた。
「ユーリよ」
何時の間に後ろに居たのか。ディアーチェが怪訝そうな表情を向けてくる。それでも微かな笑みを隠さないユーリ。
「はい、ディアーチェ。何でしょうか?」
「お主‥‥‥我に何か報告する事があるのではないか?」
一瞬ドキリ、とはしたものの、ユーリは「報告する程の事ではありません」と首を傾げ笑いかける。「‥‥‥まあよい」と口にして、ディアーチェは部屋の外へと繋がる扉に手を掛ける。
不意に振り向くディアーチェ。
「ユーリよ、気は済んだか?」
ポカン、という表情を見せたユーリだが、すぐに「はい」と満面の笑み。ディアーチェはそのまま扉の方に向き直し、顔は見せぬまま話す。
「そうか。では、もう何も聞くまい」
パタン、と扉が閉まり、ディアーチェは出ていく。ディアーチェのその口が微かに緩んでいるのが見えたユーリは、満面の笑みのまま呟いた。
「見逃してくれて‥‥‥ありがとうございます、ディアーチェ」
新章は次回へ。申し訳ありません。神咲さんと狐(?)さんを出したかっただけです。思い付きです。
***
セイン「あー暇だなぁ。アタシらのコーナーまだかなぁ」
イリヤ「エヘヘ‥‥‥お兄ちゃん‥‥‥お兄ちゃん‥‥‥エヘヘ‥‥‥」←前に誕生日に貰ったエ○ヤシ○ウ写真集を熟読中
絹●「超ちっそぱーんち!!」ガシャーン
セイン「うおい!何だよアンタ!扉壊すなっ!」
●旗「何だよ、じゃないです!どうしてこの超超美少女の絹●様が次回主役じゃないんですか!」
セイン「いや、そんなのアタシに言われてもさぁ」
絹●「五月蝿いです!全く、どうしてあんな超貧乳お子様のフレンダが主役に‥‥‥」イライラ
セイン「いや、貧乳お子様って‥‥‥」ジーッ
●旗「?」←貧乳お子様
セイン「ま、いいけどさ。‥‥‥って、イリヤ?おーい、イリヤ?」
イリヤ「エヘヘ‥‥‥お兄ちゃん‥‥‥」←トリップ中