***第77話***
「いきますよ」
ミッド式魔法陣を足元に展開させ、リニスが杖を構える。周りに数十個の魔力弾を展開、エレミアと同じ構えを見せるコロナに向けて放つ。
コロナも魔法陣を展開。瞬間、自身の籠手と同じ程度の大きさの岩石の腕が10個程出現。コロナの魔力を纏ったそれがまるで意思を持っているかのようにバラバラに動き、リニスの放った魔力弾を迎撃していく。
コロナが地面を蹴って後方へと跳ぶ。新たに上から降ってきたリニスの魔力弾四発を岩石の籠手を纏った両腕で殴り潰し、地面に落ちていた岩を操り最後の二発にぶつけ、終了。空中で一回転して着地。
側で見ていたアリシアが立ち上り「今日はこのくらいにしよっか」と笑顔で近付く。
今日は何時ものように特訓‥‥‥という程はやらない。テストを終えたばかりのアリシアとコロナが今しなくてはいけない事は他にある。
「コロナが受けるのは分かる。うん、分かるんだけど。どうして私もなの?」
「だって、アリシアは私の師匠だよ?操作系だって得意だし」
アリシアの義手、右腕を触りながらコロナが笑顔を向けてきた。
アリシアとしてはのんびりと回りたかった。今年はリニスも居る。まさか学院祭でクラスイベントに付きっきりになるかも知れないとは思ってもいなかった。
「大丈夫ですよ、アリシア。ヴィヴィオ達が案内してくれるそうですから」
そう微笑むリニスにアリシアは「うーん」と唸った後、苦笑い。本当はリニスとイクス、こういったイベントを経験したことが無いであろう二人を連れて案内したかったのだが。
アリシアとコロナ、二人が担当するのが計50体。他の操作系が得意な子が一人当りせいぜい人形2~3体を担当な事を考えてみても、どうにも割に合わない。少なくともどちらかは教室に居なければクラスの演し物は成り立たない計算だ。
全国的に放映されたDASSであれだけ目立った活躍を見せたコロナは兎も角、アリシアはセコンドに付いただけ‥‥‥のつもりだったのだが。
コロナ、リニスと共に移動。大量の人形を抱え、教会の一室へ。そこから一時間程、演し物の練習をしてから別れた。
その帰り道。
「悪くありませんね」
「‥‥‥コロナの事?」
「ええ」とリニスが頷き、「でしょ?」とそれにアリシアが笑顔で答える。時刻は既に夕方。空は赤く染まり、二人の影が長く後方に延びている。周りには、あちこちに帰宅を急ぐ人々。
「アリシアが目を掛けるのも分かる気がします。フェイトの時とは別の意味で才能を感じますね‥‥‥ですが、危うい」
嘗て、リニスがまだプレシアの使い魔‥‥‥フェイトの家庭教師だった頃にフェイトに感じた空戦魔導師の才能とは全く別の類いのもの。ただ、やはりリニスもその危うさには気付いているようだ。
「だからアリシアが?」
少しだけ間を置き「うん」と頷いたアリシア。
そんな二人に‥‥‥いや、アリシアに向かって小さくだが遠くから手を振る人物が見えた。アインハルトだ。
駆け寄ってきたアインハルトからは微かにだが嬉しそうな表情を見てとれる。
「アインハルト?今帰り?」
「はい、アリシアさん。それから、えっと‥‥‥」
アインハルトの視線はやっと隣のリニスへ。ニコリと笑みを作ったリニスが「はじめまして」と丁寧に頭を下げた。
「アリシアの使い魔のリニスと申します。貴女の事は聞いていますよ、アインハルト」
「あ、はい。アインハルト・ストラトスと申します。お久し振りです‥‥‥‥‥‥?」
自分の発言の違和感に気付いたのだろう。アインハルトはしきりに首を傾げている。過去に行った事自体は記憶封鎖で思い出せないが、そこでリニス(闇の欠片だが)と会った事はイメージにはあるのだろう。
「初めまして、だと思いますが?」と答えたリニスにアインハルトは慌てて「あ、はいっ」と答えるのが精一杯だったらしい。その二人の様子を、アリシアがクスッと笑って見つめる。
「アッ、アリシアさん!?」
「何でもないよ、アインハルト」
因みに。アインハルトのクラスはスポーツカフェらしい。スポーツで勝負して勝ったら飲物タダ、と。
これまたDASSで目立ってしまったアインハルトの担当はアームレスリング。ちょっと可哀想だ‥‥‥勿論、お客さんが。
そんな話をしながら帰り、無事帰宅。「ただいま~」と扉を開けると、小走りで出迎えたのはフェイトだった。
「おかえりなさい、二人とも」
本人は記憶封鎖で覚えていないだろうが、フェイトにとってはアリシア、リニスと共に生活するのは悲願だった筈だ。あの時の、闇の欠片とは言えリニスを失い、アリシアと別れる事になったフェイトの辛そうな顔は覚えている。何気ない平和な日常を過ごせるという事が如何に幸せな事か。
「そうだ、お風呂入ろっか?私と、フェイトと、リニスと3人で」
それからお風呂に入り、なのは、ヴィヴィオと5人で夕食。一人ベッドに入ったアリシアは、静かに瞳を閉じた。
(どんなに平凡でも構わない。出来るなら‥‥‥貴方と一緒に居たかった‥‥‥クラウス)
自身の時間は戻せない。今が恵まれていればいるほど、後悔が大きくなる。
フルフル、と首を左右に振り、後ろ向きな想いを無理矢理払う。もう二度と後悔しない為に。今度こそ、大切な人達を悲しませない為に。
***
翌朝。アリシアは聖王教会に居た。仕事‥‥‥ではなく、今回は私用だ。ファビアに会いに。
「ですからファビア。是非見に来てくださいね?」
「‥‥‥うん」
庭のベンチに並んで座る。イクスと共に中を案内する約束を交わしている最中だ。
笑顔は見せないものの、頬を染め頷いたファビアに満足気に微笑む。それが更に恥ずかしかったらしいファビアはプイ、と視線を背けるも、繋いだ手は離さない。
「ファビアは、学校には通わないのですか?もし通う気があるなら、一緒に‥‥‥」
ファビアは俯いているため表情は見えないが、手は先程よりも強く握っている。ただ、『一緒に学校に』という提案は否定された。恥ずかしいだけなのか、それとも別の理由なのかはイマイチ分からない。
「それなら‥‥‥私の仕事を手伝ってもらえませんか?ファビアの暇な時で構いませんから。勿論お礼もします」
「‥‥‥うん」
今度はファビアが顔をあげた。一見、表情は先程迄とさほど変わらないようにも見えるが、口元が微かに緩んでいる。
「それじゃあ、宜しくお願いしますね?」
ニコリとし、満足気なアリシアに思わず抱き着いてきたファビア。
(今度は‥‥‥今度こそは、誰も失わせない。誰も不幸になんてさせない。だからクラウス、見守っていてください。何時か私が貴方の傍に行くその時まで)
短め77話でした。章間の話です。学院祭とかあったんですよね。リオの話はもう少し先です。
アインハルトvs.ファビアのアリシア争奪戦の行方は如何に?
***
セイン「セインと!」
イリヤ「イリヤの!」
フレンダ「ちっくしょぉぉぉぉお!!」
セイン「何さ、久しぶりのコーナーだったのに。邪魔しないで欲しいんだけど」
フレンダ「おかしいっ!おかしいっ!絶対おかしいって訳よ!」
イリヤ「あー、聞かなくても何となく分かるんだけど‥‥‥一応聞きますね?何で?」
フレンダ「あんの馬鹿作者!このフレンダ様を差し置いて別のSS書きやがった訳よ!しかも冥土帰しとか第一位とかシレッと出てるんですけど!?私いつまで待たされる訳!?」
セイン「あー‥‥‥」
イリヤ「作者によると『短編だからセーフ』なんだって」
フレンダ「納得できるかぁぁあ!!あのクソ作者爆破してやるって訳よぉぉお!!」
イリヤ(言えない‥‥‥作者は次も短編書こうとしてるなんて言えない)