過去と現在と魔法少女と   作:アイリスさん

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それは、小さな願い。けれど、とても遠い願い。
何気無い日常、何気無い幸せ。それから、愛する人達との‥‥‥。
そう、もう一度。もう一度だけ、貴方に‥‥‥。

―――アリシア・テスタロッサ・ハラオウン―――

魔法少女リリカルなのはVivid、始まります。


終章 小さな、願い
第78話


***第78話***

 

話は少し遡り‥‥‥DASSの予選の少し前。

 

「ん‥‥‥」

 

夜中、ふと目が覚めた。アリシアは左手で開きかけの瞼を擦り、上半身を起こす。

 

(‥‥‥といれ)

 

尿意を感じ、洗面所へ行こうと寝惚けたまま左足をあげて、立ち上がる為に右足を動かそうとした‥‥‥が。

 

(あれ‥‥‥‥‥‥?)

 

動かない。感覚はあるのだが、脳からの信号に全く反応しない。右足だけ金縛りになっているのか?

右足を擦る。やはり触れられている感覚はある。状況が飲み込めず、表情には焦りが滲んでくる。

‥‥‥と、何の前触れもなく、いつも通り動かせるようになった。やはり金縛りの一種だったのだろうか‥‥‥。

一先ずトイレを済ませ、ベッドに戻った。朝起きてまた動かなくなっていたらどうしようかと不安になりつつも、瞳を閉じて眠りに就いた。

 

そして、翌朝。アリシアは恐る恐る右足を触り、膝を立ててみた。問題なく動く事にホッと息をつく。心配はなさそうだ。やはり、偶々部分的に金縛りになっただけだったようだと結論付けて、何事も無かったように日常へと戻った。

 

***

 

それから時間は流れ、現在。深夜、隣に眠るリニスを起こさないようアリシアは起きた。迷惑を承知で、静かに通信を繋ぐ。相手は‥‥‥シャマル。

 

《‥‥‥アリシアちゃん?こんな時間にどうしたの?》

 

意外にも、シャマルには直ぐに繋がった。どうやらまだ仕事が終わっていないらしい。

 

「こんな夜中にごめんなさい。少し話したい事があって」

 

上半身を起し、ベッドに下半身を埋めたままの体勢で話す。アリシアの左手は、毛布の下の右足を擦っている。触られている感触はあるものの、右足は動かない。其れ処か左足首から先も今日は動いてくれない。最初に金縛りにあってからというもの、その周期は少しずつ短くなっている気がする。今はまだ夜中だけだが、僅かずつではあるが悪化している。

 

シャマルに会う約束を取り付けた。周期的に、恐らく次に金縛りになるであろう日に‥‥‥金縛りではないかも知れない。嫌な予感がする。もしかしたら‥‥‥。

 

そうして、その日。丁度リオの故郷にみんなでお邪魔する前々日の深夜。場所は、八神家。『古代ベルカと聖王教会について、はやてと話をしないといけない事がある』と誤魔化して泊まりに来た。勿論ヴィヴィオやフェイトには気付かれていない。なのはには‥‥‥感付かれたようだが。

 

「アリシアちゃん?」

 

シャマルの問いにアリシアは首を横に振る。やはり、右足は動かない。

 

「今は動かせません。左足首から先も。どうなんですか?」

 

診ていた、困った様子のシャマルの表情に暗い影。何となくそんな気はしていた。原因は一つしか思い浮かばない。

 

「‥‥‥シャマル先生。本当の事教えてください。『ガタが来た』って事ですよね?」

 

アリシアの言葉に、シャマルの瞳孔が開いた。それで充分理解できた。予想は‥‥‥当たっていた。

 

「アリシアちゃん、いつ頃から?」

 

「数ヶ月前、くらいです」

 

少しずつ。本当に少しずつではあるものの、アリシアの身体を確実に蝕み始めていたそれは、宿命とも言うべきものだ。アリシアの身体は‥‥‥限界に近付いていたのだ。命の限界に。

 

「どのくらい保つんですか?」

 

シャマルは暫し悩み「分からないわ」とだけ答えてくれた。それから「出来るなら、今すぐ入院して」とも言われた。今はまだ大事には至っていないが、近い将来、アリシアの身体は確実に動かなくなる。やがて限界が来て、その生命活動を維持出来なくなる。それは、死んだ筈の身体で無理矢理蘇ったアリシアの宿命。既にその身体にはあちこちに綻びが現れ始めていたのだ。何時まで維持出来るかは、分からない。

 

入院は許否した。最後の瞬間まで、みんなの傍に居たい。それにまだ、何も渡せていない。ヴィヴィオにも、フェイトにも、コロナにも、アインハルトにも。

 

帰り際にシャマルには「急激に悪化する前に必ず言ってね?無理だと判断したらその時は入院させるから」と言われた。理屈は分かるが、それはきっと出来ない。今度こそ、悔いの無いよう生きると決めた。前回は出来なかったから。愛しい人の手を振り払い背を向けた前回は出来なかったからこそ、今度は‥‥‥。

 

******

 

リオの故郷、ルーフェンに向かう次元船の中。随行しているエドガー、ジークは前列の席。エドガーは兎も角、ジークは爆睡中。その後ろの席の通路側にアリシア、窓側にイクスが座る。

 

「そう、ですか‥‥‥」

 

どう反応していいか分からない、困った様子のイクス。アリシアは、イクスにだけは真実を話した。それはイクスが、アリシアと同じ古代ベルカの当事者だからだ。

 

「例え‥‥‥例え私が明日居なくなったとしても‥‥‥イクスはもう独りではありません。ヴィヴィ達や教会のみんな、それにはやて達も居ます。ですから、そんな顔をしないでください」

 

イクスとは対照的、笑顔で話す。当然イクスの言いたい事も分かる。「そうではなくって、オリヴィエ自身の事なのですよ?」と肩を掴まれたが、アリシアの表情は変わらない。

 

「やり残した事が無い、と言えば嘘になります。けれど、私は此処まで生きられた事に満足しています。ですから、大丈夫です」

 

小首を傾げ「ね?」とアリシアは微笑む。イクスは「ですが‥‥‥」と言い掛けるものの、それ以上は言葉にしなかった。

 

アリシアはイクスの肩をそっと抱き寄せる。「まだ道程は長いですし、少し眠っておきましょう」と促して、仲良く肩を寄せて眠りに就く。起きる頃にはルーフェンにも着いている事だろう。

 

******

 

その頃のミッドチルダ。場所は、高町家に近い公園。ベンチに並び座っているのは、なのはとリニス。

 

「リニスさん、アリシアちゃんの事‥‥‥なんですけど」

 

言い難そうに切り出したなのは。リニスは表情を微かに歪める。

 

「‥‥‥やはり、気付かれましたか」

 

リニスも、アリシアに真実を聞いた訳ではない。ただ、微かな魔力の乱れ、感情の変化。僅かな体幹のブレ。そういった微妙な変化から、アリシアの異変に気付いた。流石は使い魔だ。

 

「あの子‥‥‥アリシアの事です。きっと、皆さんに心配を掛けまいと黙っているのでしょう。使い魔としては少し寂しいですが、アリシアが真実を教えてくれるまで待ってみようと思います。けれど」

 

リニスはそこで一度言葉を区切る。なのはの方に視線を向け、今度は悲しそうな表情を見せた。

 

「‥‥‥けれど、今度の事は何だかとても‥‥‥とても嫌な感じがするんです。何かとても悪い事が起きるような‥‥‥なのはさん」

 

 




短いですが、78話。漸くルーフェンへ出発。
え?違う?そんな話じゃない?
さあ?何の事でしょうね。

***

セイン「言いたい事はいっぱいあるんだけどさ、アタシからは一言だけかな」

イリヤ「なんでしょう?」

セイン「このSSも思えば長かったな‥‥‥‥‥‥なんて言うと思ったか!この駄目作者!」

イリヤ「あ、ほら、でもこのSS終わったら次は予告通りの例の禁書SSなんじゃ」

セイン「いーや、アタシは知ってる。次は同時進行で呉鎮の夕立篇を描こうとしてるのを!」




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