***第79話***
丁度、ルーフェンの空港に着いた時だった。次元船が入港し、眠っていたアリシアはイクスに身体を揺らされ眼を覚ます。
「‥‥‥‥‥‥ヴィエ、オリヴィエ、着きましたよ?」
ゆっくりと瞳を開くと、急な眩しい光。思わず顔を背け、左手で目を隠す。
「‥‥‥眩しい」
まだ回らない思考ながらも、どうやら目的地に着いた事は理解できた。シートから立ち上り右足を踏み出したところで、眩暈に襲われ倒れそうになる。
「‥‥‥っ、大丈夫ですか?」
幸い直ぐにイクスに抱き止められ、倒れるのは防げた。お蔭で覚醒したアリシアは、とある事に気付き‥‥‥愕然とした。
(‥‥‥右足)
右足首から先に、力が入らない。気付かれまいとして左足に重心をかけ、外部操作で右足のバランスを取る。不自然では無かった筈。イクスに心配を掛けまいと笑顔を見せたアリシアだが、直後再び眩暈。気分が悪くなり思わずその場に座り込んだ。
(気持ち‥‥‥悪い‥‥‥)
口元を押え、吐気に耐える。イクスやジークが何かを叫んでいる声が聞こえる気がするが、耳には入ってこない。
‥‥‥結局、そのまま気を失ったアリシアが目を覚ましたのは半日後。やっと瞳を開いたアリシアの視界に入ってきたのは、聖王教会の天井だった。
「あれ‥‥‥?」
ベッドからゆっくりと身体を起こしてみると、椅子に座り左手を握ったまま眠っているイクスの姿。どうやら気を失っていたらしい事に漸く気付いて、ベッドから降りようと右膝を立てて‥‥‥。
(‥‥‥あ)
時間切れ。その言葉だけが頭に浮かんだ。前までならこれだけ時間が経てば動くようになっていたものが‥‥‥右足首から先は、脳からの信号を受け付けてくれない‥‥‥動かない。
(まだ‥‥‥まだ駄目です。あと半年‥‥‥ううん、せめてあと3年。お願い、もう少しだけ)
まだ。まだ消える訳にはいかない。コロナに教えられた技術はまだ入口程度。アインハルトにも、イクスにも、クロにも、フェイトにも。ヴィヴィオにも、まだ渡していないものが沢山ある。
「アリシア」
気付いて顔をあげると、部屋の隅にリニスが立っていた。話を聞いて急ぎ駆け付けたのだろう。恐らくはイクスかシャマル辺りから話を聞いたのだろう。その表情は、辛そうだった。
「ごめんね、リニス。みんなに、この事は?」
「アリシアの意思を尊重します。私は、貴女の使い魔ですから」
少しだけ胸を撫で下ろし、瞳を閉じた。他のみんなには、出来るだけ心配は掛けたくない。あのメンバーなら、事実を知ればどれだけ悲しむ事か。それこそプレシアと同じ事をしようとする者だって出るかも知れない。気付かれずに過ごせるなら、それに越した事はない。
「他のみんなには‥‥‥まだ。受け入れられる位になったら」
勿論、『みんな』にはフェイトも含まれる。フェイトの事だ。事実を知れば間違いなく態度に出る。その様子からヴィヴィオにも洩れて、結局全員が知る事になるだろう。
「ですが‥‥‥本当にそれでいいのですか?」
下から声が聞こえた。声の主はイクス。目を覚ましたようだ。
知らせてあげるべきだというイクスの言い分も分かる。しかし、事実を知るには‥‥‥まだ幼すぎる。特に、アリシアを支えにしているであろうヴィヴィオ、アインハルト、クロの3人。
「時期が来たら、ちゃんと私が話します。ですから、今はまだ。私なら、まだ大丈夫です。直ぐに死んだりはしませんから‥‥‥」
っと、その直後。扉の向こうで『ガシャン』と何かが床に落ちたら音が響いた。慌ててリニスが扉を開くと、ファビアが絶望にも似た表情で立っていた。足元には洗面器と、それに入っていたであろう水、それとタオルが散乱している。
「クロ‥‥‥?」
ファビアはそのアリシアの声に反応するようにフラフラとベッドへ。そのまま抱き着いてきた。アリシアの胸に顔を埋め、啜り泣きながら言葉を絞り出す。
「やだよ‥‥‥オリヴィエ‥‥‥死んじゃ‥‥‥やだよ」
「‥‥‥ごめん、なさい」
先程迄よりも、明らかにトーンの低いアリシアの声。よりにもよって、最も脆いファビアに知られてしまった。左の掌をじっと見たあと、それを静かにファビアの頭に乗せる。
「ごめんなさい。けれど、クロ。人は何時かは死ぬ。私の場合、それが少し早いだけで‥‥‥」
アリシアの言葉を遮り、ファビアが「嫌だ!」と精一杯声を張る。今唯一できるであろう抵抗。遂に声をあげて盛大に泣き出してしまったファビアを、アリシアは抱き締めてやる事しか出来なかった。
******
リオ達には『少し風邪を拗らせただけ』としか伝えなかった。合宿の邪魔はしたくなかったからだ。勿論みんなに心配された。特にアインハルトの寂しそうな表情に心苦しさがあった。
ヴィヴィオやコロナからはその日の出来事を聞かせて貰った。試煉という名の稽古をつけてもらったとか、ピクニックに行ったとか、温泉に入ったとか。
それから数日経っても、アリシアの右足は動かなかった。仕方無く外部操作で誤魔化してはいるが、果たして何処までみんなを欺けるか。それから、何時悪化するかも分からない不安。
「‥‥‥ママ達の戦技披露会に?」
「そうだよ、ヴィヴィオ」
そんな折。話しているのはヴィヴィオとなのは。航空教導隊が毎年公開している戦技披露会。2ヶ月程先のそれに、第5班のチーフであるなのはの娘とサブリーダーであるヴィータの愛弟子、つまりはヴィヴィオとミウラも参加しないかという誘いだった。確かにDSAAのお蔭でヴィヴィオもミウラも知名度はあるし、万年人手不足の管理局としても悪くない話だ。そこで催しの一つとしてヴィヴィオとミウラが対戦するというもの。
「ねーママ、その試合でさ、ちょっと要望とか出せたりするかな?」
ヴィヴィオの要望は極めてシンプルだった。
『ミウラに勝ったら、なのはと対戦したい』。部屋の隅で本を読んでいたアリシアにも当然それは聞こえていた。アリシアは少し考えたあと、ヴィヴィオに密かに念話を送る。
《ヴィヴィ、後で部屋に来てくれるかな?》
もしかしたら、これが最後かも知れない。アリシアからの、ヴィヴィオへの最後の指導になるかも知れない。
《うん、お姉ちゃん!》
恐らく、指導してくれるというのは理解しているのだろう。ヴィヴィオの念話は、アリシアの心とは裏腹に何時にも増して弾んでいた。
セイン「おいコラ」
漣「はい!綾波型9番艦の漣です!あー、今日は作者改めご主人様の代理で来ましたがー‥‥‥」
セイン「いや、ご主人様って何だよ!?」
漣「ご主人様はご主人様ですヨ?日本語も知らないんですか?┐(´д`)┌ヤレヤレ」
セイン「」イラッ
漣「ご主人様は忙しいのです!だから漣が代わりに言い分‥‥‥もとい更新遅れた理由の説明に」
セイン「おい、今『言い分け』って‥‥‥」
漣「やだなぁ、そんな事言ってませんよ(´ 3`)ご主人様はちょーっと仕事が忙しかっただけですから」
セイン(こいつメンドくさい)
漣「言っときますけど‥‥‥『基地航空隊強すぎワロタ』とか思ってませんでしたからね?」
セイン「ネタ使い回すな‥‥‥で?他には?」
漣「夕立ちゃんマジぽいぽい」
セイン「よし、歯ぁ食いしばれ!そして謝れ!」
漣「(´・ω・`)」
セイン「そんな顔しても駄目」
漣「(゜ロ゜)」
セイン(もうやだこの人)
イリヤ「代理の代理でお詫び申し上げます。更新遅くなりまして大変申し訳ありませんでした‥‥‥ルーフェン編で散々悩んだのが一番の原因です。これは本当ですm(__)m」