俺、踏み台転生者にされました 作:サクサクフェイはや幻想入り
学校に到着して教室内を見回すが、高町なのは達の姿はない。 まぁ、何時ものことなのだが。 距離は遠いにしても、余裕を持って家を出ているためバス通学の者たちより早いのだ。 適当にクラスメイトに挨拶を交わし、自席につく。 そこからは空を見上げボーっとしていた。 この頃は学校に来れば大体そうだった。 踏み台をしなくて良くなったせいか、よく言えば気が抜けた、悪く言えば腑抜けたためか、空を見上げボーっとしていることが多くなった。 まぁ、そもそも二回目の小学校だ、目新しいことでもない限りこんな反応にもなるだろう。 そういう意味では周りの奴らが羨ましい。 歳相応にはしゃいでいるのだから。 まぁ、そんなこと言ったら俺も歳相応になるのか。 くだらない自己問答をしていると、入り口のほうから声が聞こえる
「おはよー」
アリサ・バニングスの声ということは、どうやら一団が来たようだ。 視線をそちらに向ければ、俺の思った通りアリサ・バニングスに月村すずか、高町なのはにフェイト・テスタロッサともう一人がいた。 相変わらず高町なのはは元気がないようだ。 これで元気になってくれていれば、俺が出る幕もないのになとも思うが、それは逃げか。 席を立ち、アリサ・バニングスたち一行の方に向かう。 教室内が騒がしくなってきたが、相変わらずのようだ。 なんというか、歳相応にゲスというか
「あら神木じゃない、おはよう」
「あぁ、おはよう。 高町なのは、話がある。 放課後、時間取れるか?」
「え...... あの、その......」
横でアリサ・バニングスがアチャーみたいな顔をしているが、気にしないことにする。 俺が高町なのはに声をかけたことによって教室内がまた少し騒がしくなったが、気にしないことにした。 高町なのはは俺に急に話しかけられたためか、視線が忙しなく動き、泣きそうな顔を俯かせてしまった。 ため息をつきたくなるが、それをぐっとこらえる。 こういうネガティブになっているときにため息をつこうものなら、確実に自分を責めるからな、辛抱強く待つことにする
「「・・・・・・」」
辛抱強く待ってはいるものの、一向に何かを言ってくる気配のない高町なのは。 返事を聞かないことには話を進めようがないのだが..... この状況を見かねたのか、アリサ・バニングスが間に入ってくれるようだった
「・・・・・・なのは、どうなの? 放課後は予定空いてるの?」
「あい、てる......」
「らしいわよ?」
「わかった。 詳しい話は後にしよう、もう先生が来る。 アリサ・バニングスもすまない」
「良いわよ別に」
そう言って席につこうとするアリサ・バニングス。 俺も席につこうと歩き始めると、高町なのはからか細い声がした。 振り返れば、手をこちらに出している。 反射的になった、そんな表情をしていた
「・・・・・・話は後だ。 心配しなくても、今度はちゃんと話をするつもりだ」
俺がそう言うと、教室の扉が開く音がする。 そちらを横目で見ると、担任が扉を開けて入ってくるところだった。 それを確認した俺は、さっさと席につくことにした
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放課後の屋上、俺は高町なのはを待っていた。 まぁ来ない、ということはないだろうが心の準備ができてないのか、はたまた別の要因なのか放課後になってから結構な時間が過ぎていた。 屋上だから風がよく吹くため、少し寒い。 と言っても、身体強化の応用で体を温めているので風邪をひくような心配はない。 連絡はもちろん念話だ。 クラスメイトに聞かれれば、話を見ようとするに決まってるからな。 念話をした時、ピクリと体を震わせたので聞いているとは思うが
『ペイル、今何時だ?』
『もう最終下校時間近くになります』
意外にも時間が経っていたらしい。 学校が閉められるかもしれないが、そこは空を飛んで帰ればいい話だ。 魔法を気軽に使うな、何てクロノに怒られそうだが。 まぁ、ばれなきゃ犯罪じゃないのだ。 たぶん、大丈夫だろう。 落下防止の柵に体を預けながら、夕日を見ていた。 すると、屋上に通じる扉を開くような音がする。 ゆっくり振り返れば、高町なのはがこちらを見て呆然としていた
「何をそんなに驚いてるんだ?」
「だって、時間...... それに......」
「時間は特に指定してなかったしな、待つぐらいするさ。 それに、今度はちゃんと話をするつもりだ、そう言っただろ?」
そう言いながら、柵から体を離し、ちゃんと高町なのはに向き直る。 顔を合わせると、高町なのははうつむいてしまった。 まぁ、今回は気にせずに話をさせてもらうけどな。 ここに来たということは、話す気があるとうけとる
「今回呼んだのは記憶のことに関してだ、本当にすまなかった」
頭を下げ、言葉を続ける
「前にも言ったが、謝ってすむ問題じゃないのは重々承知だ。 高町なのは、君が何と言おうと俺は君の気持ちを踏みにじって利用した、それは事実だ。 君が何と言ったとしても。 だから責任を感じる必要はない」
「・・・・・・勝手なこと、言わないでよ。 勝手なこと言わないでよ!!」
「・・・・・・」
その言葉に、思わす下げていた頭を上げる。 ここ数日沈んだ顔しか見ていなかったが、高町なのはは怒っていた
「責任を感じる必要はないって、そんなことあるはずがない!!いくら薬を使われたからって言っても、忘れていい記憶じゃないかった!」
「・・・・・・薬の効果が効きすぎるのは当たり前だ。 アレははるか昔に作られたものだ、俺たちが抵抗できるはずがない」
「それでも!私は貰ったものを返せずに、それを仇で返すような真似をした...... 私は、それが......」
「何度も言ってるように、忘れていたのは仕方ないことだ。 お前は優しすぎるんだよ、なのは...... いっそのこと、責めてくれればどれだけ楽か......」
「それは理樹君もだよぉ...... 理樹君の状況じゃ、ああするしかなかったんだよ。 それなのに全部自分で背負いこんで、自分のせいだって、そんなのおかしいよ......」
「違う!それは違う...... 俺は逃げたんだ、お前から。 死にたくないって、それで......」
話は平行線だ。 俺は自分を許せない、高町なのはも自分が許せない。 それは分かっているが、感情を上手く制御できない
「「・・・・・・」」
無言の時間が続く。 高町なのはは泣きじゃくり、俺はそれを見ているだけ。 だって、俺にはその涙をぬぐってあげる資格はない。 何度も高町なのは、いや...... なのはから逃げたのだ、今更。 いや、これすらも逃げなのか。 なら俺のとる行動は一つなのだが、本当にいいのだろうか? そんな考えがぐるぐる頭の中を支配する。 でも、目の前でなのはが泣いているのは、嫌なのだ。 なら
「・・・・・・」
「え?」
無言でなのはを抱き寄せる。 まだ、俺は自分を許せないが
「まだ、俺は自分を許せない。 だがな、今目の前でなのはが泣いているのは嫌なんだ」
「理樹君......」
ぎゅっと抱きついてくるなのは。 胸がじんわりと暖かくなるが、上を見上げる。 もう夕日もほぼ沈み、空は星が見え始めていた。 なのはは俺の胸の中で、静かに泣いていた。 俺はそれを、泣き止むまで背中を叩いてあやしていた