俺、踏み台転生者にされました 作:サクサクフェイはや幻想入り
違和感は...... 元々感じていた。 あの戦い、アレを斬ってからどこか自分の心が分からなくなっていたのを。 いや、元々俺の心はすり減っていたのだ。 あのクソ神に両親を消されてから。 それに気が付かないふりして、修行に没頭して、学校では踏み台を演じて。 元々限界だったところに、今回の
「・・・・・・」
やることが決まったのなら、後は進むだけだ。 目の前の鉄格子を、王の財宝から剣を出し破壊する。 監視員が何か騒いでいるようだが、一瞬で近づき気絶させる。 元々していた準備の関係もあり、死体を残すと厄介だ。 少し遅かったのか、艦内は警報が鳴り始める。 それとアナウンスも。 まぁ、俺には関係ないがな。 久しぶりに身隠しの布を出し、それを頭からかぶる。 どうやらロックされているのか、扉は開かない。 これも破壊し、通路に出る。 局員を用意しているのか、それとも対応が遅いだけなのか通路には人がいない。 罠の可能性も考え、魔術的に調べてみたが何も出なかった。 厳重な割に、内部からの攻撃は脆いな。 それだけ俺が信用されていたのか、もはや俺にはどうでもいいことだった。 通路を歩いていると、無能な局員は俺の横をとりすぎる。流石は身隠しの布と言った所か。 一旦は明るいところに出たが、またも薄暗い通路に逆戻り。 それもそうだろう、俺が目指しているのは船の中枢。 エンジンルームではなく、船の脳ともいえるコントロールルーム。 ある程度歩けばそこが見えてきたのだが
「・・・・・・居るんだろう、神木」
身隠しの布で姿は見えないはずなのだが、クロノはまっすぐにこちらを見ていた。 流石執務官と言った所か。 俺は被っていた身隠しの布を脱ぎ王の財宝に回収する
「どうしてわかったんだ、無能な奴らは俺の横を通り過ぎて行ったぞ?」
「ただの勘さ。 本当は勘に頼るのはいけないんだがね」
そう言って苦笑するクロノだが、雰囲気が変わる
「お喋りはここまでだ、神木。 船の設備の破壊、これは君でも看過できるものではない。 ・・・・・・なぜこんな行動を?」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけクロノは悲しそうな顔をした。 だが、一瞬だ。 すぐに執務官の顔に戻る。 この隙にもクロノは設置型のバインドなどを設置し、俺の無効化を図っているようだ。 それは分かっているが、ここは乗るとしよう
「何故、か。 もう何もかもどうでもよくなってな。 一人で、静かに生きたいと思ってな」
「確かに今回の事は申し訳なく思う、同じ局員として許せない行為ではあるが
「違う、違うよクロノ」
クロノの言葉を遮り、俺はクロノを見る。 やはり、クロノと言えど、分かっていなかったようだ
「そんな理由じゃない。 お上に腐った連中がいる、そんなのは分かりきって入ったことだ。 そこじゃない、そこじゃないんだよ。 もう、俺はお前の知っている神木理樹じゃなくなったんだ。 だから」
「なっ!?」
そう言って俺は歩き始める。 もちろんバインドに掛かるが、すり抜ける。 クロノは驚いたようだが、それもそのはず。 幻影魔法。 それに驚くクロノだが、その一瞬があれば俺はクロノに届く。 鳩尾に一発をいれ、身体をくの字に曲げたクロノに肘鉄をお見舞いし、地面にたたきつける
「かみ、き」
「こんなことだってできるんだよ、クロノ」
意識を失っていなかったのは驚いたが、俺はクロノの横を通り過ぎる。 過ぎようとしたが、出来なかった。 クロノに足をつかまれているからだ。 クロノを見れば、必死に歯を食いしばってこちらを見ている。 その瞳は真剣そのものだが、俺の心には届かない。 徐々にクロノの力が弱まっていくのを感じながら、俺は足を進める。 クロノは気絶したのか、その手を離してしまう。 俺はそれを気にも留めず、コントロールルームの中に入る。 こういう時ペイルがいればいいのだが、生憎ペイルはいない。 気にせずに、中央のコンソールをいじり俺の保存されていたデータを引っ張り出す。 もしもと思って用意をしておいた俺のデータや、これまでの履歴などを全削除するデータだ。 俺はそれを何のためらいもなく起動させる、直後船の電源が落ちる。 だが、すぐに復旧し始める。 さて、ここに居たら面倒なのに乗り込まれるだろう。 そうなる前にどこか、人が来なそうなところに。 そう思い、館内を歩き始める。 騒がしい艦内だが、意外と空き部屋がある。 俺はその一室に入り、魔術を使う。 さて、これで船の方は終わりだ。 後は、地球か。 魔法が艦内で発動したということでさらに混乱する艦内を尻目に、俺は転送ルームまで行き、装置を起動させる。 もちろん、行先は決まっている。 俺の故郷でもある地球だ
「もう、何もかも終わらせる。 そして......」
俺のそんなつぶやきは誰にも届かず、地球に転送されたのだった