俺、踏み台転生者にされました 作:サクサクフェイはや幻想入り
「マスター」
「わかってる」
次の瞬間、景色が変わる。 封鎖結界、範囲を探るとこの海鳴の街を丸々一つ分覆うほどだった。 まぁ、この街で魔力反応出たからなんだろうが、随分大雑把に範囲指定したこと。 俺はベットから起き上がり、ペイルを首にかける。 下に行くとハサンを除いた三人が、俺のほうを向く
「マスター、分かっていると思いますが」
「あぁ、結界だろう? 玉藻はもしものことがあるといけないからな、家で待機だ。 マシュとリリィは霊体化して俺についてきてくれ、イレギュラーがあったら対応してもらう」
「わかりました」
「マスター、お気を付けください」
「・・・・・・あぁ」
心配そうな玉藻に見送られ、俺は家を出る。 どうにも嫌な予感がするのだ、何もなければいいのだが。 身隠しの布を被り、建物を飛び移っていく。 派手な光や戦闘痕、ハサンから連絡がないからまだ始まってはいないのだろうが、時間の問題だろう
『マスター殿』
『ハサンか』
『戦闘が始まりました』
噂をすればなんとやら、どうやら戦闘が始まったようだ。 ハサンから教えてもらい、その場所まで急ぐ。 近くまで来たのでひときわ高いビルに上り、戦闘の様子を見る。 どうやらシューターを当て敵の動きを止め、その隙に砲撃をしたようだ。 だが避けられてしまい、帽子を焦がされた少女は怒ったようだ
『アレがカートリッジシステムか』
『はい、予め魔力を込めたカートリッジをデバイス内で炸裂させ、瞬間的に爆発的な魔力を得るシステム。 素人が使えばただの自爆装置になりますが、彼女らのような騎士、それも闇の書の騎士ですからね、恐らく今の騎士たちと比べ物にならないほど強いです』
『・・・・・・』
実際、カートリッジを使用した攻撃は強力で、紅い少女のデバイスは変形し、ブースター付きハンマーの一撃は高町なのはのプロテクションを破り、レイジングハートにまで攻撃を与えていた。 ハンマーの一撃で高町なのはは吹き飛ばされ、ビルのガラスに激突し、そのまま中に入っていった。 それを追いかける紅い少女、主人公君はまだ登場しない
『マスター......』
マシュの心配そうな念話に俺はハッとする。 どうやら知らず知らずのうちに、手が白くなるほど握っていたようだ。 ゆっくりと手から力を抜く。 今回俺は介入する気はない。 クロノから話が来た時から介入するのは遅くはないし、それでいいと自分でも納得している。 いや、納得していたはずだった。 だが目の前で高町なのはが、いやなのはが傷ついている。 あれだけボロボロになって力も出ないはずなのにレイジングハートを紅い少女に向け、それでも可能性をつなごうとしている。 だが俺はどうだ? のうのうと安全圏から戦いを見て、イレギュラーがなければ介入するつもりもない。 アレだけのことをしでかして、アレだけのことをしておいてだ。 俺は
「俺は......」
不意に思い出したのはあの英雄王の言葉
『そして一番面白いのが、絶望を知って救いがないとわかっているのに、まだあの娘たちのために道化を演じるつもりか?』
道化を演じる。 たぶん英雄王はこの状況になるのを知っていた、そしてこれから俺がしようとしていることも。 ならいいさ、始めようじゃないか、哀れでくそったれな道化の劇、第二幕の始まりだ。 それまで頭の中をぐるぐる回っていたくだらない考えはきれいさっぱりなくなり、思考がクリアになる。 高町なのは達がいる階の外に身を躍らせれば、フェイト・テスタロッサが高町なのはと紅い少女の間に入っており、デバイスごと紅い少女を弾き飛ばしていた。 その足元に俺は、王の財宝から剣を数本射出する。 弾速は遅いから避けるのは楽ちんだが、全員がこっちを見て驚いていた
「おいそこの、プログラム風情が嫁に何をする」
これを今の時点で言ったら駄目なのだが、この達者な口は言ってしまうらしい。 そもそも、フェイト・テスタロッサの時もそうだったな。 俺が部屋の中に降り立つと、フェイト・テスタロッサは紅い少女を警戒しながら俺を警戒している。 そんなフェイト・テスタロッサを一瞬見ただけで、俺は紅い少女に向き直る
「聞いているのかプログラム」
「・・・・・・」
こちらを睨みつけてくる紅い少女を俺も睨みつける。 こんな状況になってしまったのだ、マシュとリリィに謝っておくことにした
『マシュ、リリィ、すまん』
『私は...... マスターのしたいようにすればいいと思います、その判断に私はついていきますから』
『気にしないでください。 こうなった以上、私とマシュは全力を尽くしマスターを守りますから』
『・・・・・・ありがとう』
俺が勝手に飛び出してったにもかかわらず、その判断を尊重してくれたマシュ。 俺を守ることを約束してくれたリリィ。 本当にいい家族を持った。 さて、そろそろこの硬直状態を終わりにしようか
「聞いているのかと、言っている!!」
王の財宝を展開、即射出すると驚いたようだったが、すぐに俺が作っておいた射撃の穴から外に逃げ出す紅い少女
「ぬっ!待たぬか!!」
それを追うように王の財宝を射出しながら追いかける。 正直言って、こういう使い方ってぶれるからあんまり使わないのだが、ここから紅い少女を離れさせるためにやっている。 窓から飛び出し、波紋の上に立ち剣を射出し続ける。 まぁ正面しか射出してないし、見切りやすいらしく、こっちに攻撃が飛んでくる
「うぉっ!?」
それをしゃがむことで回避する。 別にプロテクションや普通に飛んで避けてもいいのだが、そもそもそっち系の魔法はこいつらの前ではからっきしということになっている。 なのでこうしているわけなのだが。 するとようやくフェイト・テスタロッサが中から飛び出してきた。 すれ違いざまに邪魔しないでと言われたが...... 中を見るとユーノが高町なのはを治療していた。 接近戦をしているフェイト・テスタロッサがいるため王の財宝を撃つのをやめたが、どうも違和感を感じる。 フェイト・テスタロッサやアルフの連携がうまいのは分かるが、どうも実力を出し切れていない感じがする。 闇の書の騎士たちの目的は魔力の蒐集、そのためには殺しては意味がないのは分かるが...... それならカートリッジを使用して一気に勝負をつければいいだけだ。 まさか、カートリッジの残りが少ないのか? そんなことを考えている間に、紅い少女は捕まる。 捕まるのだが、嫌な予感は消えない
「ふっはっはっは!とどめを刺してやる!」
「ちょ、アンタ何やってるんだ!」
「っ!!」
剣先はつぶしてあるため当たったら気絶くらいはするかもしれない剣を射出する。 当然射線にはアルフやフェイト・テスタロッサもおり、俺の攻撃を避けなければならない。 避けた次の瞬間、フェイト・テスタロッサのいたところには剣が振り下ろされ、アルフがいたところには拳が振り下ろされた。 やはり増援。 その場にずっといるのは狙撃などの危険性があるから動かすために撃ったのだが、それが功を奏するとは思わなかった。 ついでに言うと、俺が射出した剣は紅い少女に届く前に新手によって叩き落とされた
「プログラム風情が、我の剣を叩き落とすな!」
「ふぅ、大丈夫か?」
俺の言葉を無視し、新手の剣を持った女性は紅い少女の拘束を解いていく。 もう一人の新手の男は、その前に立ちはだかる
「さっきから貴様らは、この我を無視しおって...... そんなに死にたいか?」
王の財宝をかなりの数展開し、いつでも撃てるようにする。 流石にこの数には驚いたようだが、剣を持った女性は冷静だった
「レヴァンティン」
カートリッジがロードされ魔力が高まる。 剣からは炎が噴き出し、剣を覆っていく。 どうやらこの騎士は炎の魔力変換質を持っているようだ
「プログラム風情がぁぁ!!」
「紫電、一閃!!」
剣を射出すると、剣を持った女性は大部分を叩き落し、男はプロテクションでガードしていた。 カートリッジシステムを使っていないのに固いが、質量の前には勝てないのか徐々にひび割れていく。 そこにフォローに入ったのが紅い少女だ。 カートリッジをロードし、耐えている。 この隙に動き出したのはフェイト・テスタロッサで剣を持った女性に向かい、バルディッシュを振るう。 だが、弾き飛ばされてしまう。 だが、この場から離すことは成功したようだ。 さっきユーノから全員に念話が来たのだ。 高町なのはを安全そうな場所に移動し、転送準備を始めると。 なので、この場から離そうとしている。 アルフは男に向かい、この場に残ったのは俺と紅い少女だけだ。 さて、どうするか
『こっちは何とか大丈夫そうだ、神木、今援護に』
「ええぃ、早くこんかフェレットもどき!」
移動はどうやら終わったようだが、俺的には絶体絶命だ。 今までも結構そうだったが、今回はやばい。 バリアジャケットを貫通する相手の相手にバリアジャケットを着ていない俺だ、今回は割とマジで絶体絶命だ。 ユーノが補佐してくれているおかげで空は飛べるが、それでも防御系は王の財宝から引っ張り出すしかない。 宝具の原点で通じはするだろうが、どの攻撃にどのぐらいのランクを当てればいいかわからない。 それをミスしようものなら死が待っている
「さーて、今までさんざんコケにしてくれたからな、ぶっ飛ばしてやる!!」
「ほざけ、プログラム風情が!」
鉄球を飛ばしてくる紅い少女に剣を射出し応戦する。 正直言って縛りプレイをして勝てるほど楽な相手じゃないが、それでもやるしかない。 だが現実は甘くなく、剣の射出は回避され、鉄球は俺に迫る。 着弾するかに思われた鉄球はユーノのプロテクションによって防がれるが、その後に続く紅い少女のハンマーの一撃までは防げず、俺は王の財宝から盾を取り出す。 ガード自体は成功したが、魔法で強化された一撃に俺は耐えられず、吹き飛ばされてしまう。 後ろの建物にぶつかる瞬間プロテクションを展開したが、衝撃を全部回収しきれずに血を吐く
『神木!』
『我のことはいい!!結界は!』
思わず念話で返してしまったが、結界は破れないようだ。 追撃と言わんばかりにハンマーで迫ってくるが、二度も連続で受けてやる気はない。 その場からすぐに離れ、ほんのわずかな時間差で攻撃。 見る人が見れば、全部同時にやってるようにしか見えないが。 どっちにしろ射線には穴があり、そこから接近されてしまう。 俺は剣を取り出し切りつけるが、勢いに押されまた吹き飛ばされる
『ユーノ君、アルフさん、フェイトちゃん、神木君、私が結界を、スターライトブレイカーで破ります』
確かに結界を破れるだろうが、そんなことをすれば居場所がばれてしまう。 現に発射するために貯めた魔力は、目視できてしまう。 使いたくはなかったが、追尾式の剣を選び紅い少女に射出する。 いつものように避けて高町なのはの方に行こうとするが、追尾式の剣はそうさせず、やむなく迎撃を選んだようだ。 俺はその隙に高町なのはの方に飛ぶ。 大きい高町なのはの魔力に交じって、ごくわずかだが知らない魔力反応がした。 ようやく高町なのはの姿が見えるが、鉄球が迫ってくる。 スピードを落とすわけにはいかないし、ユーノの援護も期待できない。 俺は後ろに王の財宝を展開し、迫ってくる鉄球をことごとく撃ち落とした
「神木君!?」
俺が来たことにびっくりしたのだろうが、構ってる暇はない。 高町なのはのすぐ後ろに何かが展開され、そこから手が出始めていた。 たぶん命とかに別状はないのだろうが、魔力を抜き取るつもりだろう。 高町なのはを抱え、そのまま飛ぶ
「か、神木君」
「もう撃てるんだろ!早く撃て!!」
こんな状況で何を言ってるんだとも思うが、時間はないのは確かだ。 フェイト・テスタロッサが抑えられなかったのか、剣を持つ女性はこっちに向かってきているし、見覚えのない狼もこちらに向かってきていた。 件の手はなくなっていたが、展開されているものはそのままで、何があるかわからない。 この状況が分かったのか、高町なのははスターライトブレイカーを発射する
「スターライト、ブレイカー!!」
解放された大魔力は空に向かい何かにぶつかるがそれも一瞬で、何かを突き破り空まで向かっていく。 これで終わりか、そう思っていたが悪寒がした
『リリィ、マシュ、高町なのはを頼む!』
「きゃ!?」
高町なのはを放り投げ、後はリリィとマシュに任せる。 俺はそれどころではない。 俺の胸から腕が生えているからだ。 途端に息苦しくなるが、その腕をつかむ。 血が出てないところを見ると、多分そういう魔法なんだろうがその手のひらには小さな光が。 そして俺は理解する、これが自分のリンカーコアだと
「ふむ、こんなものしかないのか」
「誰だ、貴様は」
後ろから声がする。 おそらく俺がつかんでいる腕の男なのだろうが、返事はない。 後ろを確認しようとするが確認することはできなかった
「ガハッ」
腹に衝撃が走り見てみると、腹から腕が生えている。 正面を見ると仮面をした男が立っていた
「今ここで殺してもいいが、それをあのお方は望んでいない」
「だからせいぜい苦しめ」
「せいぜいあのお方を楽しませろ」
「「だって、お前はもう少しで死ぬのだから」」
両方の腕が同時に引き抜かれる。 倒れる俺の体、見上げれば同じ背格好で仮面をつけた二人の男。 どこかで見たことがある。 そう思いながら俺の意識は闇に沈んでいった