俺、踏み台転生者にされました 作:サクサクフェイはや幻想入り
「まったく、こんな夜中に呼び出すのはやめてくれクロノ」
「・・・・・・」
夜中、クロノに呼び出され、俺はアースラクルーの仮拠点であるマンションに来ていた。 もちろん、結界は常に覆っているため問題はない。 基本、家にいる間は監視はついていないがな。 ともかく、呼び出した張本人であるクロノは口をつぐんだままだ。 まぁ、昨日いきなり恩師を警戒しろ、なんて言われたら付き合いの短い俺を警戒するのは当たり前か
「ごめんなさいね、こんな時間に。 エイミィがさっきようやく寝たから、こんな時間になってしまったの」
「なるほど。 まぁ、仕方ないですね。 でもこういうことは控えてくださいね、一応俺も学生ですから」
「善処はするけど、貴方と作戦会議するとなるとこんな時間しか取れないのも事実よ」
存外に一応は努力するけど、改める気はないってことですよねそれ。 まぁ、俺との時間がこんな時間しか取れないというのも事実なので特に何も言うことはない。 それまでの軽い空気はどこに行ったのか、リンディさんは姿勢を正しこちらに尋ねてくる
「グレアム提督を警戒しろとはどういうことかしら」
「・・・・・・」
やはり来たか。 ここでたとえ馬鹿正直に言っても信じてもらえるはずもなく、証拠が必要だ。 ここはいつもの通り、のらりくらりと交わすしかない。 交わせれば、の話だが
「一応、予知夢に関しては信頼を置いているわ。 前回の事件、それでスマートに対応できたのも事実です。 でも、それとこれとは話が別よ。 前回の事件、不審な点もいくつかあった。 でも、それには目をつぶったけど、今回のこれはそんな次元じゃない、それは分かるわよね?」
「まぁ、そうですね。 と言っても所詮は予知夢、信じるも信じないも貴女たち次第では?」
「そうね、だからここで話してもらえないかしら、貴方が予知しているこの闇の書関連の事件のことを」
まぁ、疑われている、ということは分かっていたつもりだが、ここまで不信感があったとは。 たぶん、ここで全部話したとしても話半分くらいしかリンディさんは聞かないだろう。 クロノを見るが、こちらを真剣に見るだけだった。 クロノは何を考えているかはわからないが、リンディさんは指揮官として当然のことだ。 まぁ、一応正史が変わらない程度に情報は教えるが
「まずクロノにも言いましたが、夜天の書。 これは何処で聞いたかはわかりませんが、この事件に深くかかわります。 調べておいて損はないと思います。 そして次に、高町なのは、フェイト・テスタロッサ両名の魔力、つまりリンカーコアは奪われてました。 詳細までは分かりませんが、これは確実です」
「待って頂戴。 夜天の書と言うものは置いておくとして、なのはさんとフェイトさんのリンカーコアが奪われるっていうのは本当なの?」
待ったをかけるリンディさん。 この両名に関しては驚きだったのだろう。 だが、高町なのはに関してはすでに奪われていそうになっており、フェイト・テスタロッサの方もカートリッジシステムがなければ危ういのは確かだ。 不確定要素として、プレシアさんがいるからどうなるかはわからないが
「事実です。 大規模な戦闘時、高町なのは、フェイト・テスタロッサ両名の魔法の使用が闇の書から確認できましたから」
「それはあなたの夢、予知夢からってこと?」
「そうです。 付け加えるなら、高町なのははたぶん今回の襲撃で奪われていたんじゃないでしょうか? 断片的なものしか見れないので、それと今回の状況を照らし合わせて、ですが」
「「・・・・・・」」
事の重大さに気が付いて黙り込む二人。 クロノは何かを考えているのか、目を閉じ、リンディさんはこちらの嘘を見抜こうとこちらをじっと見ていた。 まぁ、どうでもいいがな
「これからなのは達が襲われる可能性は?」
「そんなもの聞かなくてもわかっているんだろうクロノ。 それに襲われようが襲われまいが関係ない、この事件にアースラが担当になった以上出撃してもらわねばならない状況が必ず出てくるだろう?」
「・・・・・・」
それっきりまた黙り込むクロノ。 正直言って、たぶん闇の書の魔力蒐集的には高町なのはやフェイト・テスタロッサの蒐集出来ないのは痛いだろうが、それよりも
「やっぱり、CVK-792の搭載、完成を急がせる必要があるわね」
無意識につぶやいたのだろうが、ばっちり聞こえていた。 でも、CVK-792って何だったか。 ペイルに聞いてみることにした
『ペイル』
『CVK-792ですね? CVK-792、ベルカ式カートリッジシステムのことです。 今回、レイジングハートとバルディッシュは自分たちの無力さに心を痛め、主たちの力になれるようにと望んだのです』
『その結果がベルカ式カートリッジシステムか?』
『フレーム強化でも十分ですが、やはり出力差はどうしても埋められないですからね』
とのことらしい
『お前にも組み込めるのか?』
『どうするおつもりなのですか?』
『一応、な。 俺は少しでも可能性があるほうにかける』
『・・・・・・なるほど。 技師の問題がありますが、搭載自体は可能です。 身近に一人いますが、その人に頼めば可能かと』
『・・・・・・考えておく』
短い念話を終え、改めてリンディさんたちを見る。 二人とも何かを考えているようだが、どうするのやら。 クロノの方は考えがまとまったのか、俺に話しかけてくる
「君にお願いがある。 高町なのは、フェイト・テスタロッサのデバイスの修復が完了するまで、二人の護衛についてほしい。 虫のいい話だというのは分かっているつもりだ」
「何故俺に頼む? 雑種でもいいだろう?」
俺がそう言うと、クロノは呆れた表情で俺を見てくる
「今の彼にそれが務まると思うのかい? 魔力もない彼に」
「あー、そういえば無様にリンカーコア抜かれたんだっけか。 それなら条件は俺も同じだと思うんだが?」
「君にはレアスキルがある。 アレは魔力に依存しないんだろ? それに藤森はこの際置いておくとして、高町なのは、フェイト・テスタロッサ両名と一緒に居る時間も多いだろう?」
「まぁ、それはな」
実際、帰りや家を除けば、踏み台の仕事をしている俺だ。 一緒に居る時間が多いのは確かだ。 クロノもそこら辺を考えてのことだろう
「・・・・・・頼めないだろうか?」
「デバイスが直るまでの間。 それと学校にいる間だけ、と言う条件なら受けるしかないだろう?」
どちらにしろ雑種やフェイト・テスタロッサに邪魔されるだろうが、デバイスは持ってないのだ、守るしかないだろう
「すまない。 僕たちも自由に動ければいいんだが」
「動けないものは仕方ないだろう? どっちにしろ俺以外にも局員数名とユーノ、アルフ、プレシアさんあたりもつけるんだろ?」
「あぁ。 流石に君一人にすべてをカバーさせるわけにはいかないからな、そうするつもりだ」
どうも申し訳が抜けなさそうなクロノだが、何だろうな。 時計を見れば、深夜と言っても過言ではない時間。 そろそろ帰りたい
「リンディさん、そろそろ」
「あ、あぁ、そうね。 それじゃあ、後の事は追々」
「えぇ」
俺は踵を返し、マンションから出ようとする。 だが、その背中に声がかかる
「神木!」
「なんだ?」
クロノに呼び止められたが、俺は振り返らずに答える
「何故今回の話を受けたんだ、僕や艦長が君を信じていないことは君のことだ、分かってるんだろう?」
「・・・・・・お前たちには借りがある、ただそれだけだ」
そう短く答え、俺はマンションから出た