俺、踏み台転生者にされました   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第五十九話 朝の一幕

件の話が合った次の日、と言うよりもその日の朝、俺は微妙にボーっとする頭を振りながら通学路を歩いていた。 任務に行っていた時はきっちり睡眠をとってはいたが、学校に行くとなると夜中に呼び出されると睡眠をきっちりとれないから辛い。 眠い、シャレにならないくらい眠い。 玉藻たちも言っていたが、学校休めばよかったかも。 クロノと約束した手前、休むなんて出来るはずもなかった。 そんな俺の内心とは裏腹に、クラスメイトに挨拶をする俺。 ・・・・・・外側は何とかなってるみたいだし、大丈夫そうだな。 心配に思っていた学校だったが、何とかなりそうだった、そう、この時までは。 学校につき、教室に入ると事件は起こった

 

「おはよー」

 

俺が教室に入ると、高町なのはが()()()()()きたのだ。 何も言わず、無言で。 突然のことに頭は真っ白になる。 周りが黄色い声をあげるが、俺はそれを気にしている余裕はなかった。 いつもの軽口も、出てこなかった。 アリサ・バニングスと月村すずかと言えば、いきなりのことで状況についていけないようだ。 いや、俺だってついていけないのだが。 時間にすれば短いと思うが、俺には数十分抱きしめられているような感覚だった。 俺の金縛りが解けたのは、この状況を作り出した高町なのはだった

 

「グスッ......」

 

「・・・・・・」

 

鼻をすするような音が聞こえた。 それに、制服もかすかに濡れているような気がする。 たぶん心配したのだろう、こいつは昔から責任感が強いから。 自分のせいで俺が死にそうになった、そう考えているのだろう。 実際、俺はこいつを助けない選択肢もあったし、その場合でも結局同じことになっていたような気がする。 それに、俺は未来を知っていながら傍観者を気取っていたのだ、こいつに心配される資格はない。 そう考えると思考はクリアになり、いつものような軽口も戻ってくる

 

「ははは!ようやく嫁も我の魅力に気が付いたか!だが少し待て、これから先生が来る。 厄介ごとになるのは明白だ、別に我は構わんがな。 なぁ、アリサにすずかよ」

 

ここで話を振れば、多分この二人も動き出す。 ここで抱きしめ返して優しい言葉でも言えればよかったのだろうが、俺にはその資格はない。 ほんと、なんでお前は俺をそんなに気にするんだ...... いっそのこと、アリサ・バニングスや月村すずかのように嫌っていてくれれば、こんなことを思わずに済むのに。 内心俺は、高町なのはを俺から引きはがすアリサ・バニングスと月村すずかを見ながら、自嘲気味にそんなことを思っていた。 すると、教室の後ろのほうが別の意味で騒がしくなる。 そちらを見れば、拳を俺に振るっている雑種の姿が。 俺はそれに対してリアクションをせず、そのまま殴られる。 軽い拳だな、そんなことを思いながら机を巻き込み倒れる。 そんな俺に、雑種は容赦なく襟を持ち起こす。 少し首元が締まって苦しいが、まぁいい。 それよりも、目の前で怒っている雑種をどうにかしないとな

 

「何のつもりだ、雑種」

 

俺は静かに問うが、雑種はそれを全く不自然に思わず、怒りに染まった瞳でこちらを睨みつけてくる

 

「もう一度言うぞ雑種、どういうつもりだ!!」

 

「お前こそどういうつもりだ!なのはを泣かせて、抱き着かせて。 お前は一体、何をしたいんだ!!」

 

「ちょっと、やめなさい織!!」

 

「そうだよ藤森君!」

 

さっきとは別の意味で盛り上がる教室、流石にこの状況は見逃せないのかアリサ・バニングスと月村すずかは雑種を俺から引きはがそうとしていた。 だが雑種は止まらず、拳を俺に振り上げたままだった。 さて、こいつは俺が高町なのはに何かしたと思っているようだが、実際俺は何もしていない。 そもそもだ、こいつがあの時無様にリンカーコアを抜かれてさえいなければ、こんな状況にならなかったはずなのだが?  自分のことを棚に上げて、俺を殴るとはどういう了見なのだろうか? 泣かせて、抱き着かせてと言ったが、俺がニコポかナデポでも使ったと思われているのだろうか? そんなものあるなら、とっくに使ってると思うが? 意味のない思考ばかり流れるが、本格的に何とかしないとな。 時計を見れば、もう先生がいつ来てもおかしくない時間だ

 

「何をしたいんだ、だと? はははははは、ついに頭がわいたか雑種!我と嫁は愛し合っている、抱き合うのは当然だろう? それに泣かせたというが、うれし涙だ。 そんなこともわからないのか?」

 

「お前は!お前は!」

 

凄いな。 アリサ・バニングスと月村すずかの拘束を解き、俺を殴ってくる雑種。 すごいと思ったが、月村すずかはともかく、アリサ・バニングスの力は一般的な女子小学生のそれだ、無理やり振りほどくこともできるか。 またも吹っ飛ばされ、容赦なく俺に追撃をくらわせようと迫ってくる雑種。 殴られるのは癪だが、これも踏み台ゆえだ。 雑種が殴ってくるのは本当に癪だが、俺も誰かに殴られてい気分だったのだ、甘んじて受けようとするが、俺の目の前に立つ影が一人。 高町なのはだった

 

「やめて!!」

 

「なのは...... でもこいつは、お前を泣かせて、あまつさえ抱き着かせたんだぞ!!」

 

「勝手なこと言わないで!!神木君は私のせいで!」

 

「嫁よ、それ以上は言うな。 雑種、俺を殴るのは構わないが時間ぐらい見ろ、もう先生が来る」

 

これ以上言わせるのはまずいと判断した俺は、横の机に手をつき、かろうじて立ち上がっているようなふりをする。 正直言ってかなり軽い拳だ、全然ダメージは入っていないが効いているというポーズはとっておかないとな

 

「それとすまないが、みなは机を直すのを手伝ってくれ」

 

「こんなの、そいつにやらせればいいだろ!」

 

「そうよ!もとはと言えば、藤森君が勘違いして殴り掛かったんだから!」

 

口の端が切れたのか、血をハンカチで拭いながらクラスメイトに言うと、当然反論が飛んでくる。 まぁ事情を知らないとしても、今回のは言いがかりだからな、みんな俺の味方をするのは当たり前だ。 まぁ、雑種は自分が正しいと思い込んでいるからな、それを受けても謝る気はないようだ。 本当の歳は知らないが仮にも転生者だろうに、ここは上っ面だけでも謝っておけば周りは納得するだろうに。 俺は内心、かなり大きなため息をついたが面には出さず、みんなに声をかける

 

「まぁ、みなの言いたいことは分かるが、こんなことで先生に怒られるのは癪だ。 それと先生にも申し訳ないだろう? 頼めぬか」

 

そう言ってみんなに頭を下げれば、渋々机を直すのを手伝ってくれた。 まぁ、雑種はお察しの通りだ。 机を戻さず見てるだけ。 これでクラスとの溝が深まったのは言うまでもない。 机を直し終われば先生が来て、出欠をとる。 その際青くなり始めた頬や切れた口元などを聞かれたが、朝思いっきりぶつけたといったらその場は収まった。 まぁ、多分後で誰かがさっきのことを言うだろうが。 それに、先生も納得していない様子だったし。 先生も気を取り直し、次に移る

 

「はい、それじゃあ今日は皆さんに嬉しいお知らせです!なんと、今日から新しいお友達がやってきます。 海外からの留学生さんです。 フェイトさん、どうぞ」

 

「失礼します」

 

か細い声が聞こえたと思ったら、入ってきたのはフェイト・テスタロッサだ。 まぁ、分かりきっていたことなので特に俺は反応はしない。 周りの奴らはさっきのことも忘れ、転校生であるフェイト・テスタロッサを迎えるため拍手で忙しい。 自己紹介も終わり、休み時間に入り、フェイト・テスタロッサの周りにはあっという間に人だかりができる。 切り替えが早いね、子供は。 俺はどこか他人事のように思いながら、窓の外を見ていた

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