俺、踏み台転生者にされました   作:サクサクフェイはや幻想入り

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第六十一話 裏での取引

インターホンを押せば

 

「はいはーい!ちょっと待ってくださーい!」

 

と元気な声が聞こえ、ドアが開けられる。 一つ言いたいが、そんなに不用心でいいのか。 呆れる反面、少し警戒する。 中から聞こえてきたのは元気のいい少女の声だったが、もしもということもある。 俺はすぐに逃げられる準備をしつつ、その少女と対面する

 

「あ、理樹!久しぶり!!」

 

「おい、いきなり抱きつくなよ」

 

いきなり熱い抱擁を受ける。 そう、応対したのはアリシア・テスタロッサ。 俺が警戒したのはフェイト・テスタロッサだったが、アリシアだったようだ。 いつまでも玄関にいるわけにはいかず、俺は部屋に通される。 いやまぁ、隣の部屋がハラオウン家なのでそっちに見つかってもまずいのだが。 中に入れば、アルフの姿はなくプレシアさんだけのようだ

 

「あら、久しぶりね」

 

「お久しぶりです、プレシアさん」

 

腰掛けるように言われたのでソファーに腰掛ければ、隣にアリシアが座る。 それを見てプレシアさんは笑顔だが、額には青筋が浮かんでいた。 いやプレシアさん、俺のせいじゃないので笑顔で威圧するのはやめてください。 内心そんなことを思ったが、言っても無駄なことは分かっているので言わない。 それにフェイト・テスタロッサがいつ帰ってくるかわからないのだ、用件は早く済ませるに限る

 

「時間がないので簡潔に。 今回の事件についての警告と、事件とは別件ですがお願いが」

 

「聞きましょう」

 

それまでの温和な雰囲気はどこへやら、プレシアさんは真面目な表情だ。 それを受け、アリシアもほんわかした雰囲気から真面目な表情になる

 

「すでにハラオウン家から聞いていると思いますが、今回の事件、その中核をなすのは闇の書。 プレシアさんが狙われる状況が多々出ると思います、ですのでその警告を。 と言っても、言うまでもないと思いますが」

 

「えぇ、リンディから聞いているわ。 わざわざありがとう。 それで、お願いと言うのは?」

 

本当はウチのサーヴァントに警備をつけているが、そこまで言う必要はないだろう。 言って状況をわざわざややこしくする必要はないし、手札をさらす意味はない

 

「お願いは、俺のデバイスにカートリッジシステムの導入をお願いしたいんです」

 

「・・・・・・」

 

プレシアさんは無言で俺を見る。 俺のデバイス、ペイルライダーは一般的に使えないということで通っている。 使える事実を知っているのはクロノ、リンディさん。 そして、プレシアさんとアリシアだ。 アリシアはものの流れだが、プレシアさんは使うところをもろに見ている。 プレシアさんの目を見れば、そこまでの敵なのかと訴えかけてきている

 

「敵はそこまでではありませんよ、俺が本気を出せば。 まぁ、出せるかどうかは別として。 酷なことを言うようですが、高町なのは、フェイト・テスタロッサにはカートリッジシステムがなければ荷が重い相手でしょうけど」

 

「おぉ、理樹も大きく出たね」

 

俺がそう言えば、プレシアさんの表情は厳しくなる。 まぁ、娘が貶されたのだ、そう思う気持ちもわかるが。 アリシアはアリシアで、俺の言ったことに感心していた。 そもそも、俺はアレ(クソ野郎)の監視もあり、誰の前でも本気を出したことがない。 俺の本気を知っているやつらと言えば、アイツ等(サーヴァント)ぐらいだし

 

「っ!・・・・・・まぁ、そうね。 でも、この間怪我したみたいだけど?」

 

「・・・・・・」

 

今度は俺が黙る番だった。 この間、つい数日前の事だが、俺は腹に穴をあけられている。 原因はあのイレギュラー(仮面の男たち)だ。 改めて言われれば、その通りだ。 油断、慢心、そんなものはしていないつもりだったが、事実怪我はしているのだ。 言い訳にはなるが、一応事情は説明しておく。 俺のレアスキルに未来視があり、それではあんな敵が現れることがなかったことを

 

「イレギュラー、ね...... それに対応するために、っていうことかしら?」

 

「そうなります。 カートリッジシステム導入、お願いできますか?」

 

「・・・・・・」

 

黙るプレシアさん。 たぶん、これからのことを考えているのだろう。 俺がここに来たということは、管理局には知られずに秘密裏に事を進めたい。 そう言うのが分かっているからだろう。 ひとしきり考えたのか、口を開く

 

「・・・・・・なぜ、管理局を頼らないの?」

 

「ハラオウン家は個人的に信用していますが、管理局に闇の書側の人間がいないとも限らない。 事実、俺の未来視には一人の名前が挙がった。 無関係とはいかないでしょう? それに、俺のデバイスが使用できるのは一般的には知られていない、これが大きな理由です。 だから、貴女のところに来たんですプレシアさん」

 

「・・・・・・」

 

その言葉を受け、プレシアさんは瞳を閉じて考え始めた。 その間にアリシアが話しかけてくる

 

「ねぇねぇ、理樹」

 

「なんだ?」

 

「ちょっと気になることがあるの」

 

真面目な表情のアリシアに、俺は体を向きなおす。 アリシアが気になることと言うのは皆目見当がつかないが、真面目に聞くことにする

 

「私、フェイトと違ってリンカーコアがないから魔法は使えないはずなんだけど、なんか不思議な力があるような気がするの」

 

「不思議な力?」

 

「うん」

 

話を聞けば、アリシアを蘇生したあの日から、不思議な力が備わっていたという。 念じれば風や火が起こったりするようで、それについて心当たりがないかと言うものだった。 心当たりがないかどころか、ありまくる。 アリシアに断って、アリシアを調査してみれば魔力を感じた。 その魔力は、魔術側の魔力だった。 それは検査しても出ないはずだ。 俺も管理局のデータベースには、魔力ランクは低いもので登録されている。 原因として考えられるものがあるとすれば、蘇生の時にあの量の魔力を注ぎ込んだのだ。 使えるようになってもい不思議ではない

 

「・・・・・・その力は早急に制御する必要がある。 管理局にバレたら厄介だし」

 

「だよね。 お願いできる?」

 

「キャスターにコーチの話をしておく」

 

「うん、ありがとう」

 

「話は終わったかしら」

 

アリシアと話していれば、プレシアさんは待っていたのか呆れた表情で見ていた。 俺とアリシアは向き直り謝れば、プレシアさんは許してくれたようだった

 

「それで改造の件だけど」

 

「はい」

 

「受けてもいいわ」

 

「ありがとうございます」

 

「ただし!アリシアの力の制御、ちゃんとやってあげて頂戴」

 

「はい」

 

これにて契約は成立した。 二、三言話すと、これ以上とどまって、アルフやフェイト・テスタロッサと鉢合わせしたら大変だということで、俺は立ち上がる

 

「それじゃあそろそろ」

 

「一つ言い忘れていたことがあったわ」

 

その声に後ろを向けば

 

「アリシアの事、生き返らせてくれてありがとう」

 

頭を下げる母親がいた。 それに俺は

 

「契約のうちでしたから」

 

そう言ってテスタロッサ家を出たのだった

 

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~なのは視点~

 

神木君を見つけて、いろいろな気持ちがごちゃ混ぜになって抱き着いてしまった日の放課後、私とフェイトちゃんは私の部屋で話をしていた。 さっきまではアリサちゃんとすずかちゃんもいたけど、アリサちゃんはお稽古事、すずかちゃんは図書館に用事があるということで帰ってしまった。 話すのは、襲われた時の事

 

「ねぇ、なのははあの人たちの事どう思う?」

 

「あの人たちって闇の書のだよね? 私は急に襲われてすぐ倒されちゃったからあまり話しできなかったけど、フェイトちゃんはあの騎士の人と話をしてたよね?」

 

自分で言った言葉だったけど、胸が痛かった。 あの時私がすぐにやられず足を引っ張らなければ、神木君はあんな風に...... 知らず知らずのうちに体が震えるけど、フェイトちゃんは気が付いてないみたいで、気にせず話し続ける

 

「うん、でも不思議な感じだった。 うまく言えないけど、悪意みたいなものを全然感じなかったんだ」

 

「そっか。 闇の書の完成を目指している理由とか、そういうお話が聞ければいいんだけど、話ができる雰囲気じゃなかったもんね」

 

フェイトちゃんの言葉に、あの時のことを思い出す。 何度も話を聞こうとしたけど、私が帽子を撃っちゃったからか、怒って話を聞いてくれるような雰囲気じゃなかった。 不意に、フェイトちゃんが独り言のように言葉を漏らす

 

「強い意志で自分を固めちゃうと、周りの言葉ってなかなか入ってこないから。 私も、そうだったしね......」

 

悲しそうに、そして後悔しているようにつぶやくフェイトちゃん。 たぶんフェイトちゃんと私が出会った事件、ジュエルシードの時を思い出しているんだと思う。 フェイトちゃんの独白は続く

 

「私は母さんのためだったけど、傷つけられても間違ってるかもって思っても、疑っても絶対に間違ってないって。 信じてた時は、ううん...... 間違ってないって信じようとしてた時は、誰の言葉も入ってこなかった」

 

その言葉に私はフェイトちゃんを見る。 そして、フェイトちゃんも私を。 そんな私を見てか、フェイトちゃんは慌てたように言葉を紡ぐ

 

「あ、でも、言葉をかけるのは、言葉を伝えるのは絶対無駄じゃない。 母さんのためだとか、自分のためだとか、あんなに信じようとしてた私もなのはの言葉で何度も揺れたから。 言葉を伝えるのに、戦って勝つのが必要なら。 それなら、迷いなく戦うことができると思うんだ」

 

よかった。 私の言葉が無駄じゃなかったってわかって

 

「フェイトちゃん......」

 

「なのはが教えてくれたんだよ? そんな、強い心を」

 

「そ、そんなことないと思うけど......」

 

そう、そんなことないのだ。 私はそんなに強くない、でも

 

「だから強くなろう、想いを貫くために」

 

「そう、だね。 私ももっと強くなる。 誰も怪我をさせないように、泣かないために。 だから頑張ろう、フェイトちゃん」

 

「うん、頑張ろう、なのは」

 

私は、ううん、私たちは新たな誓いをした

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