やはり彼は合理的に生きている……はずである。   作:空宮平斗

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今回の話は、中学生の八幡がまだぼっちの道を歩き始めていないという前提で始まります。






中学生時代
プロローグ だから比企谷 八幡 は、友達というものに未練がある。


 

 

 

 

 

季節は秋の終わる頃。

そろそろストーブやミカンとの組み合わせが魅惑の炬燵の出番が近づく一方で、俺の心中はそんな明るくなかった。むしろ沈んでいく一方である。

数々のトラウマ、不幸、恥をかいて…心は傷つくばかり。もっとも全ては自業自得、勘違い、想像の先走りのどれかのことが多いので、誰かを恨むことはない。いや、恨んでいることが多すぎて何を恨んでいたのかすら忘れているだけなのかもしれないが…もはやそんなことはどうでもいい。

 

俺は、ただこの暗黒のような中学校生活に終止符を打ちたい。そればかり望んでいる。

 

時刻は12:56。昼休みだ。

普通であれば楽しい時間。でも俺にとっては苦痛この上ない。

今も机に突っ伏して寝たフリをしているが、そのせいで耳が研ぎ澄まされちょくちょく聞こえてくる。

 

隠そうとしない俺の悪口が。

 

もう慣れてたものだが、それは悪口にではなくアイツらの言動に対してだ。やはり悪口は言われて続けて慣れるものではない。本当に嫌になる。

 

じゃあこの現状を変えるために、俺はどうすればいいか?

 

答えは……変えれないので何もしないが正解だ。

俺を嘲笑う奴らにとって何か行動を起こすのは愚策。言うこと成すこと全てがネタへと変わるだろう。本当にすごい才能だ。もういっそ、その才能をお笑い芸人の才能に変換したら世界はもっと平和になるに違いない。もちろん、この世界とは俺一人のことを指す。

 

そんなずっと寝たフリをしている俺だが、楽しみがないわけでもない。鋼のメンタルを持ってる流石の俺も、楽しみの一つもなければ死んでしまう。

もしそれで死んだら、恨みで悪霊になってアイツらに取り憑いてやろう。そしてアイツらが大きい方のトイレに入るたび紙が足りなくなる呪いをかけてやる。やだ八幡、悪霊になっても雑魚過ぎぃ。しかも紙が無くなるんじゃなくて足りなくなるってのがまた地味だ。流石、俺。

 

いや、そんな自画自賛(?)をしたいわけじゃない。話を戻そう。

 

俺の最近の楽しみというのはライトノベルだ。

一時期は勉強も兼ねて、芥川龍之介やら夏目漱石とか、名だたる小説家の本に手を出していたが、やはり中二病心を持っている俺にとってラノベは戻ってくるべき運命の場所だったようだ。

 

あれ…なんだこのカッコいい言い方!

 

……絶対口に出さないようにしよう。もう黒歴史を増やしたくないし。

 

とにかく、今はアイツらが俺を放っておいてくれるまで待つことに徹する。落ち着け、チャンスは来る。アイツらが教室からいなくなった瞬間、俺は机の中にある『はが○い』に手を伸ばす。そうなればもはや昼休みが終わるまでは俺の独壇場。一度、本を読み始めてしまえばこちらのものだ。

 

え?そんなに読みたいなら早く読めばいいじゃん…とか言う人がいたなら言いたい。甘いぞ。奴らは本を読み始めようとすると、それを周りに宣伝するかのように悪口を言う。そうなればどうなるか?どうでもいい奴らの目線を集めることになる。しかし、本をもう読んでる状態であれば、宣伝悪口を言われる可能性が少なくなるのだ。それに読み始めてしまえば、俺のことを気持ち悪がる奴らは本の中身までは覗きに来ないし。……なんか宣伝悪口って、業界用語でありそうだな。悪口をあえて使って宣伝する。いやないな、手口としてはありそうだけど。

 

なんてどうでもいいこと考えてるうちに、アイツらは教室から出ていったようだ。

 

よし、読むぞー。

にしてもこのラノベの主人公、マジで羨ましい。友達が少ないとか、俺のこと見て言えるかって聞いてやりたくなる。くそぉ、友達よりもハーレム作る方が早いとかおかしいだろ。ふざけんな。

なら、なんで読んでるんだって話になるけど…面白いんだから仕方がない。他にも色々と読んでいるが…そのラノベ語りはネット方でするとしよう。

 

SNS…俺は絶対にやらない思っていたが、妹の小町の言葉をキッカケにやってみることになったのだ。

経緯を語ればそんなに長くならない。

友達マジ欲しーとかボヤいていたら、小町に“ならSNSとかやってみたら?もう現実のほうは高校生まで諦めてるんでしょ?ネットだけでも友達作ってみたら良いじゃん”となかなか痛い所を突くことを言われて、渋々やってみたら意外と俺の性に合っていたのだ。会話を文字だけでするとか気が楽でいいし、俺の話に乗ってくれるヤツは意外と常識人が多かったようで、ちょっとハマり気味である。

もしこれで常識ない奴が話し相手だったら即座にやめていた。

しかし中二病のときに手をつけていなくて本当に良かった。もし手をつけていたら、俺の黒歴史は世界に拡散されていただろう。禁断の書とかあげていたに違いないやりかねないネットって怖い。

 

ちなみに俺がSNSでよく語り合う奴らが何人かいるのだが、剣豪将軍とかいうやつは色々とヤバい。常識はあるのだが、戦国系ラノベの話になるとおかしくなる。文字から伝わるくらいうるさいし、名前の通りかなり中二病気味である。なんか同情して話してあげたくなるレベル。もし現実で出会ったなら友人の一歩手前の関係で止まるに違いない。というか会いたくねぇな。

 

……そろそろ昼休みも終わるか。

 

あと2時間…面倒くさいなぁ。しかも数学とか……はぁ、寝ようかな。それはそれでまたネタにされるんだろうけど。

 

 

「ねぇ聞いた!明日、転校生が来るんだって!」

「え?それって男子?女子?」

「男子!しかもイケメンらしいよ!」

「マジ!?それウケるんだけどぉ〜!」

 

いや声大きいし、ウケ無いから…。

 

ていうかこんな時期に転校とは、大変だな。

 

イケメンと聞いた時点でもう天敵のようなものだけど。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「あ、お兄ちゃん。お帰りぃ〜」

「おう、小町。早かったんだな」

「うん」

 

学校が終われば即帰宅。それが俺の信条である。

そんな俺よりも早く帰宅するとは、5時間授業が多い中一は羨ましい。

 

「それよりお兄ちゃん、勉強しなくて良いの?」

「もちろんやるよ。ただその前にコーヒーを淹れようかと思ってな」

「あ、小町も飲むー」

「了解…」

 

まったく、兄使いの荒い妹である。一応受験生なんだけど。

 

「そういえば、小町のクラスに転校生来るんだって!明日!女の子!」

 

コンボみたいに言うな。

 

「へぇー、そりゃよかったな」

「まあね!友達が増えるチャンスだし!」

 

言ってみたい、そんな台詞!

友達を普通に作れるなんて、本当に俺に似なくてよかった。

 

そういえば…

 

「俺のクラスにも転校生が来るって聞いたな」

「え?そうなの?」

「ああ。確かイケメンの男子ってクラスの女子が…」

「うわぁ、盗み聞きなんて…小町的にポイント低い」

「いや違うから。声が大きくて聞こえてきたんだよ」

 

あといつも思うんだけど、そのポイントはなんなんだ?

 

「えぇー、本当にぃ?」

「本当だ。お兄ちゃんを信じられないか?」

「お兄ちゃんだから信じられないの」

「ひどい」

 

冗談だとわかっていても酷い。これが兄離れか…。

 

「にしてもイケメンさんかぁ…お兄ちゃんに勝てる要素、勉強しかないね」

「そうだな。しかも現代文だけな」

「ああ…認めちゃうんだ…」

「自己認識はしっかりしてるからな」

「うわぁ…卑屈っぽい」

「事実なんだから仕方ないだろ。ほら、コーヒー出来たぞ」

「ありがとぉ〜お兄ちゃん♪やっぱり持つべきものは役に立つ兄だね!」

「そうだな。そんな調子のいいこと言ってる妹に優しく出来る、これ八幡的にポイント高い」

「いやお兄ちゃん何言ってるの?」

なんて冷たい反応。小町の真似しただけなのに…。

 

「でも、お兄ちゃんのクラスと小町のクラス。同時に転校してくるってことは、私たちみたいな兄妹なのかもね」

「そんな偶然……まあ、ありえるかもな」

 

同時なんだからその可能性は高い。

 

「そうだとしたら、お兄ちゃん。そのイケメンさんと頑張って友達になって欲しいなぁ。小町は小町で転校生と友達になるから!」

「無理を言うな。お兄ちゃん、友達出来なくて柄にもなく小町に言われたSNSにハマってるんだぞ」

「え?本当にやり始めたの?気持ち悪い」

「ちょっと…小町ちゃんが言い始めたんでしょ」

「あ〜そうだよね。ごめんね、お兄ちゃん!」

 

わぁ〜すごい。全然謝る気ないこの子。お兄ちゃん、小町ちゃんの将来が心配だよ。

 

いや、もっと心配なのは俺でしたね。

 

「ともかく、俺は受験生だからそんな友達作ってる暇ないんだよ」

「作れないの間違いでしょ?」

 

速攻でツッコむのやめてね?的確で痛いんだから。電光石火かな?

 

「じゃあ、俺。部屋で勉強するから。メシになったら呼んで」

「うん、分かったー」

 

適当な返事を背に、俺はコーヒー片手に部屋へと向かった。

 

 

「友達ねぇ……」

 

小町の言う通り、もし兄妹であったなら…友達になってみたいと思う。同じ兄として気があうかもしれない。

 

「いや…無理だな」

 

だいたいイケメンというステータスがある時点で、住む世界が違う。まあどれほどのイケメンかは知らないが、クラスの女子が騒ぐ程度にはカッコいいのだろう。

あれ?なんで俺こんなこと考えてるの?ホモなの?

 

「勉強しよ……」

 

今は見たこともない奴より、自分のことを優先だ。妹の頼みは、今はお休みとさせてもらおう。

 

だいたい抱えてる問題が多すぎる。それが解決しない限り…今の俺には友達は出来ないだろう。

 

せいぜいネットでラノベの話をする程度が関の山だ。

 

 

はぁ……早く高校生になって、リセットしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時…比企谷 八幡、中学3年生。

 

卒業まであと4ヶ月と少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから比企谷 八幡 は、友達というものに未練がある。

 

 

 

 

 

 

 

 






戻って来やがるのか、奴ら(`・ω・´)

前回の話は結構簡略化して書いたので唐突な所が多かったと思いますが…詳細は高校生の話に入れば色々明らかになってくると思います。気長にお待ちいただきたい。別に書くのが面倒だとかそんなのじゃないですよ?


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