やはり彼は合理的に生きている……はずである。   作:空宮平斗

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お久しぶりです。
やっと投稿できました。色々吟味しまくってたらかなり時間かかりました。感想、評価、お気に入りもいつもありがとうございます。お気に入り2000いってめっちゃ驚きました。

中学編の細かな全体像がだいたい出来たので、これからはもう少し早く出せたらいいなと思います。




寒空の下で重なる出来事に、誰もが振り返る。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

朝の始まりを告げるかのように鳥たちの鳴き声が辺りに響き、いつもの日常が始まる。曇りではあるものの、陽の光は雲から溢れていた。天気としては最高と言えよう。

 

そんな上手くもない日常の始まりを脳内で語る、俺、比企谷 八幡は……

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

完璧なまでに寝坊した。

 

ただいま全力疾走中である。

 

「最悪だ……」

 

最高の天気とは真逆の心境を無意識に口にしてしまう。

別に夜更かししたとかそういった理由で寝坊したわけじゃない。全ての原因は寒さだ。なんと本日の千葉の気温はマイナス5度。雪が降ってないのが不思議なくらいの寒さだ。こんだけ寒いんだから、ベッドから出られず二度寝してしまった俺は悪くない。悪いのは暖房が効いてない俺の部屋。でも寒いからって重装備で来るんじゃなかったな。走るって分かってたはずのに…汗かいてきた。

 

今日は転校生が来る面倒なイベントがある日。そんな中で遅刻なんてしたら、悪目立ちにもほどがある。

 

「休みてぇ……」

 

ポロっと本音をこぼすが足を止めるわけはいかない。

もし休んでしまえば、後日、俺は転校生から「昨日いなかったよね?」みたいに少なからず注目されるだろう。それだけは避けたい。

 

それに小町との理不尽な約束もある。まあ、守れる訳ないんだが。

 

「友達……か…」

 

かつては憧れ、今は諦めたもの。

 

でも、もしかしたら……。

 

 

「はっ…ねぇな…」

 

 

脳裏をよぎる微かな希望を戯言と笑って、俺は足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

あ……チャリ使えば良かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの千葉の空気だ。

 

 

今日は寒波が来ているらしく、冷え込んでいる。もっとも伊達に北海道に住んでいたわけではない。この程度の寒さなら制服だけでも余裕だ。

 

 

 

 

いや、ウソ。制服だけだと流石にキツい。マフラーは欲しい。

 

たしかに北国と比べればなんのそのって寒さだが、肌感的にはこちらの方が乾燥しているためか刺さるような寒さを感じるのだ。というか気温マイナスいってる時点で普通に寒い。

 

つまり結論、寒い。

 

……じゃあなんで寒さに慣れた感だしたんだ俺。

 

しかし、両親にも困ったものだ。せめて中学卒業まであっちにいられれば楽だったのに、仕事のせいでまたこんな中途半端な時期に転校する羽目になるとは。ま、両親がすげー謝ってたし、別に良いけどな。

 

でもなぁ、中学って人間関係ホント面倒だからなぁ。

 

少し憂鬱だ。

これからの数ヶ月と、そして今もだ。

 

「鎌ヶ谷くんって、前はこっちにいたんだね」

「あ、はい。そうです」

「今、住んでる場所は前住んでた場所と変わらないんだって?」

「はい、そうです」

「なら環境の変化も少なくていいね」

「そうですね」

 

慣れない緊張感のある職員室にて、俺は担任の言葉を流すように返事する。はぁ…職業面接じゃないんだから、履歴書見ながら質問するのやめてほしい。

 

「そっかそっかぁ。なら、うちの学校に顔見知りがいるといいね」

「…っ…あ…はい。そうですね」

 

一瞬、息が詰まったが、なんでもないように振る舞う。先生は社交辞令の感覚で言ったんだろうが、俺にとっては心臓に悪い一言だ。

 

まったく、後悔先に立たずってのはこのことか。

 

「よし。そろそろ時間だし、教室へ行こうか。自己紹介は簡単でいいから」

「分かりました」

 

そう答えて、俺は先生の後に続いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

先生と教室へ入ると、生徒らは欠席なく全員着席していた。

 

多少騒ついてはいるものの、特に変わりない普通の印象を受けるクラスだ。

 

「はーい。知っている人もいると思うけど、今日からクラスメートが1人増えまーす。それじゃ、自己紹介よろしくね」

 

言われて俺は壇上からクラスをまじまじと見渡す。

 

…とりあえず知ってる奴はいないようだ。

 

「鎌ヶ谷 研です。よろしく」

 

簡潔に自己紹介を済ませる。

どうせ数ヶ月の付き合いだ。邪険にされなければそれでいい。

 

そう考えている最中、視界の隅で女子の何人かが小さくざわついていた。

 

何故だろうか…嫌な予感がする。

 

「やっぱり!あの鎌ヶ谷くんよ!」

「昔よりも良い感じになってる!」

「あらあら大きくなって…」

 

どうやら俺のことを知っている奴らがいたらしい。嫌な予感的中だ。てか結構いるな…それと最後の親戚目線やめてね。

 

「おや、知ってるヤツがいたのか。なら席もあの子達の近くにしてあげようか」

 

おやじゃねぇよ何言ってんだ親しくないし面倒なので御免被る…

 

「「「キャーッ!キタコレ!」」」

 

…こう、むる。

 

「マジですか先生ナイスぅ!」

「アタシ信じてましたよ!」

「話せば分かるじゃないか」

「お、おお、君らテンション急に高くなったね。とは言っても本人の希望次第だけど。鎌ヶ谷くん、どうする?」

 

………は、フリーズしてた。

えっと、どうするって何が?生徒にとって席の場所って結構重要だと思うんだけどそんな簡単に替えられるの?ていうかあの三人なんだよ誰だよ。まったく覚えが……ありました。

 

「いえ、全力で遠慮します」

 

さてはテメーら、アンチだな。あのアンチクラブだな。

そっか…昔、冗談混じりでそんなこと考えた記憶があったけど、お前らのことだったか。あぶねぇ、思い出せて良かった。ていうか実在してたのか。

 

「そうか。というわけだ、三人とも。いいかい?」

 

「クッ…悲しい…でも鎌ヶ谷くんが言うのであれば…」

「だけどあの言いよう、言葉の切れ味は健在どころか増してるようね」

「加えてあの目つき、やっぱりたまらない……そうか!なら結果的に来なくて良かったと言える!」

「「確かに…!」」

 

「「「先生、こちらは問題ありません」」」

 

「そ、そう?なんか軍隊にいるような返事だけど。納得したならよかった」

 

いや良いけど良くないでしょあの三人!ヒソヒソ言っててほとんど聞き取れなかったけど、なんか「そうか!来なくて良かった!」とか言ってたよ!?誘っておいてその言い分はヤバいだろ、どんなトラップだ!謎の団結力半端ねぇな!冗談抜きでアイツら何者よ!?オレなにかしたったけ!?

 

「じゃあ、鎌ヶ谷くん。君の席だけど…」

 

先生は話を戻して、左奥を指差した。

いや、俺まだ三人のこと消化しきれないんですが…。

 

「あの子達とは反対の…あそこ。あの後ろの席だから」

「…分かりました」

 

あのアンチ共とは反対側の後ろの席か。ドアがすぐ近くなので寒いが、あの三人の近くよりかはマシか。ホント、関わらないようにしよあの三人。

 

さてと、ちゃっちゃと席につこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

一時間目の授業が終わった後の10分休み。いわゆる中休みだ。

 

クラスに居場所がない俺にとって、この時間は苦痛だ。本を読むには短い時間だし、トイレに行けば、戻って来た時には誰かに座られてる。しかもチャイムが鳴ったと思えば「うわ、ここ比企谷菌ついる席じゃん!最悪!」みたいな捨て台詞を吐いていくのだからタチが悪い。あれ、昨日も似たようなこと考えた気が…まあいい。

 

であれば、この状況において俺に残された選択肢はただ一つなわけで、本を読むくらいしかすることがないのだ。宿題も無いし、予習とかするのも嫌だし。

 

 

 

 

そう……つまり……だから…。

 

 

 

 

 

 

「「「鎌ヶ谷くーん!」」」

 

俺の後ろの席に転校生が座ってしまいその周りに人だかりが出来るなんてそんなシュチュエーションはまったくもって嬉しくない。むしろふざけんな神様と大声で血反吐吐きながら叫びたいまである。しかもなんだよ、噂通りクソイケメンじゃねえか。

 

あーあ、後ろいなくてすげぇ気が楽だったのに。

だがそんな心情の俺をよそに、後ろでは女子三人組が転校生の囲んでいる。

 

チッ、イケメンが…砕け散れ。

因みにその女子三人は、けっこう可愛い部類に入るやつらで、学年内では有名な仲良し三人組だったりする。なるほど、これがイケメンのなせる技か砕け散れ。まあ、知り合いだったぽいし、イケメンはあまり関係ないかもしれないけど砕け散れいいから砕け散れ。

 

「久しぶりだね、元気だった?」

 

有名人の一人から元気いっぱいの挨拶。これでもかとばかりに輝く笑顔だ。

 

ふっ…そんな顔向けられたら、俺なら余裕でキョドるね。(ドヤッ)

 

さて、転校生の反応はいかに。

 

「あのさ…君ら、だれ?」

 

「………」

「………」

「………」

 

 

 

 

……その返答に、全俺が驚愕した。

友好的な挨拶を一言で一刀両断…しかも声に温かみがまるでない。やばいだろ…流石のイケメンと言えどその反応はやばいだろ。ていうか三人のこと覚えてなくても、あんな公に色々言われたら、ちょっとは覚えてるフリしません?俺ですらそれくらいの気遣い分かるよ?分かるだけで出来ないんだけどさ!あーあ、これはもうぼっちの世界へようこそしちゃうだろうな。

 

「大丈夫!そうだろうと思ったから!全然気にしないよ!」

「それでこそ鎌ヶ谷くんだしね!」

 

ほら見ろ、それでこそって笑って…それでこそってなに!?それになんで笑顔なの!?あれか、イケメンに対する贔屓か?怖いわぁ…ある意味狂気じゃん。

 

「…………」

 

ん?イケメンさんドン引きしてる?

 

…もしかしてあの三人と関わりたくないのか?

 

「ごめん。色々と忙しいから、もういいかな?」

 

どうやらそうみたいデスネ。

あー、イケメンの余裕って贅沢だなぁ。ていうか会話断る理由が雑っ。まだそれぞれ一言しか話してないのに、そんなんで三人が分かってくれるわけないだろ。

 

「「「分かったよ!」」」

 

……はーい、そうなるかもって薄々気づいてました。流れで分かってました。しかもあの三人笑って席に戻っていったんですけど。

 

御三方はそんなぞんざいな扱いでいいの?

 

「やった!鎌ヶ谷くんと話せたね!」

「うん、小学生の頃なんてほぼ無視だっし!」

「会話成立しなかったし!」

「でも今回は…」

「うん。あの鎌ヶ谷くんが会話を終わらせてくれた!」

「断ち切るんじゃなくて、会話として終わらせてくれたんだ!」

「「「これはもう勝ちと言っても過言じゃないよね!」」」

 

過言です。そしてぞんざいな扱いで充分なようです。

ていうかテンション上がって声大きいんですけど御三方さん。

俺にまで声届いてるよ?クラス全員に聞かれてるよ?話の中心のイケメンさんは本読んでて聞いてないようだけども……。

 

あれ…その本って…。

 

「はーい、授業始めるぞー」

 

お?そうこうしているうちにチャイムが鳴ったようだ。先生も同時に到着か。よかった、やっと落ち着ける。授業が始まってこんなに安心したの初めてだわ。はぁ…無駄に疲れた。

 

 

 

 

 

 

なあ小町。お兄ちゃん分かったよ。

 

多分この転校生、絶対に友達になれないわ。

 

だって明らかに難易度MAXだもん。魔界村の難易度と一緒だもん。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「それで…そのまま帰ってきたと」

「あの、小町さん…なんで俺説教されてるみたいになってるの?お兄ちゃん、ただでさえ学校行くの億劫なのに今日は朝の全力疾走からの転校生イベントのせいで身体精神ともに疲労困憊なんだけど」

「シャラップ!今のお兄ちゃんに弁解の余地はないの!」

「…さ、さいですか」

 

おかしい。この扱いはおかしい。

帰った途端、俺は小町に数十分かけて今日の経緯を語らさせられ…そして今に至るほらおかしい。

経緯を言うのだって疲れるのに、その後に追い打ちをかけるように説教されるなんておかしい。だいたい兄が妹に説教されること自体おかしい。全部おかしい世の中おかしい。

 

「おかしいのはお兄ちゃんだよ」

「…ねえ?ナチュラルに心読むのやめてくれない?」

「いや、声に出てたから」

 

どうやら疲れで心の扉全開だったようだ。

 

「今のお兄ちゃんの話を聞く限り、そのイケメン転校生さんが少し気難しいのは分かったよ」

 

いや、少しどころじゃないけどね。

 

「でもさ、明らかに話すキッカケあったよね?」

「はぁ?そんなの無かったぞ」

「いやいや、兄ちゃんと同じ本読んでたんでしょ?なんだっけ…ライトノベルだっけ?明らかに話しかけるキッカケじゃん」

 

いや、まあ確かにそうなんだけど。同じ「はが○い」だったけども。

 

「小町。お前は初対面でラノベを話題として出せばどうなるか分かってない。ラノベはいわゆるオタク趣味、女の子にキャーキャー言われてるイケメンにオタク話で近づくなんて無謀もいいところだ」

 

しかも今読んでるラノベ的にさらに無謀度が上がる。

 

「でもお兄ちゃん、それより無謀なことたくさんしてきたでしょ?」

「うぐっ…胸が痛い」

 

兄のトラウマを「いつものことでしょ?」みたいに抉るのやめないか、妹よ。

 

「ならさ、今更ちょっっっと話しかけるくらい訳ないじゃん。まだイケメンさんだってクラスに馴染めてない今しかないんだよ、このチャンスは!大丈夫!『いきなり話しかけないでくれる?』なんて言われないから!」

 

いや、言いそう。すっごく言いそう。

 

「だからさ、お兄ちゃん。明日また…」

 

……明日また、ねぇ?

 

「…あのなあ小町。なんでそう俺に構うんだよ。ハッキリ言って迷惑だし、そこまで無理強いされると文句の一つも言いたくなる。だいたい、明日は今日とは違う。もうアイツにだって友人の一人や二人出来ているかもしれないし、それに既に知り合いがいるんだ。もし俺みたいなヤツがあんな勝ち組と友達になれたとしたら、それはもう…施しみたいなもんだろ。俺は、そんな関係なら無い方がマシだ」

 

そうだ。アイツのような奴とは相容れない。住む世界が違う。

…だというのに友達になれだと?小町は分かってない。俺だって友達を作る努力をしていた時期が確かにあったのだ。だが報われなかった。何が間違っていたのかは俺には分からない。だがこれだけは言える。

 

俺は諦めたくて諦めた訳じゃない。可能性が全て消えたから、今は身を引いたのだ。逃げだと言われてもいい。逃げてなにが悪い。無謀を繰り返すことほど哀れで無様なことはない。

 

無意味に傷つくことに、価値などありはしないのだから。

 

 

「…小町のクラスに転校してきた子。鎌ヶ谷 玲那ちゃんって言うんだ」

 

鎌ヶ谷って…それは…。

 

「そうだよ。小町の読み通り、やっぱり兄妹だったんだ。だから知ってた。お兄ちゃんのクラスに玲那ちゃんのお兄さんが転校したことと、そのお兄さんがどういう人なのかも」

「だったらなんなんだ?」

「だから小町が…小町と玲那ちゃんが保証するよ。お兄ちゃんなら、玲那ちゃんのお兄さんと友達になれるって」

 

保証って…。

 

「いや、俺の話聞いてなかったのかよ。その玲那ちゃんとかが口裏合わせれば、確かにあの転校生も表面上じゃ仲良くしてくれるだろうよ。だけどそれじゃあただの偽善。一方的な施しだ。そんなの友達じゃない」

「そんなことしないよ」

「じゃあ、どう仲良くなるって言うだよ」

「それこそ言ったでしょ。話しかけてみればいいんだよ。それだけでいいの」

「いいのって……なあ、さっきからなにが言いたいんだよ」

 

小町がここまでしつこいのは初めてだった。

しかも内容は俺に友達を作って欲しいなんて小町にはまったく関係のない話。俺には小町の真意が理解出来なかった。

 

そんな俺を見てだろうか、小町は先ほどより柔らかい口調で言った。

 

「お兄ちゃんは言ってくれないけど…小町は少しだけ知ってるんだ。お兄ちゃんが…毎日学校で辛い思いをして過ごしてるの。

だから、お節介だって分かってるけど、やっぱり友達は誰にだって必要だから、お兄ちゃんには一人でいいから友達を作って欲しい。

確かにお兄ちゃんは無愛想で捻くれてるけど、でも誰よりも優しくて他人を想ってあげられる人だから。玲那ちゃんにお兄ちゃんのこと相談したら、言ってくれたよ。そんな人なら、私の兄さんと仲良くなれるって…だから…」

「だから話しかけてみろって?」

「うん」

「それがたとえ施しでも?」

「うん。だって初めは薄っぺらい関係だとしても、分かりあおうとするだけで、そんな関係はいくらでも変わるよ?」

「………そういうものか?」

「そういうものだって。それに、分からないなら分かるために近づいてみるのだって、小町はアリだと思うよ?」

「そっか…そういうもの、か」

 

もしかしたら、そもそも俺は間違っていなかったのかもしれない。

 

結果だけ見れば間違いと言われよう。でも目指そうとした行動は間違いじゃなかった。友達が欲しいと足掻いたのは間違いじゃなかった。

なら、その心を否定するのは今まで積み重ねた俺自身を殺すことになる。

 

小町の言葉がなければ、俺は繰り返したはずだ。この心の屈折を。

 

なら小町から、そしてまだ会ったこともない彼女の言葉を無駄にしないためにも…俺はもう一度、無謀に挑むとしよう。

 

それが間違いだとしても…俺はもう一度だけ他者を信じる。

 

「妹に諭されるなんて、お兄ちゃん失格だな。おまけに学校の苦労まで知られてよ」

「大丈夫!そんなお兄ちゃんでも、小町は変わらず妹としていてあげるし!それに…さっき言ったことの半分は玲那ちゃんの受け売りだしね」

「マジか…最近の中一は、下手な中三より大人だな」

「ホント、玲那ちゃん大人だよ…あ、言い忘れてだけど、今日家に遊びに来るから♪」

「へぇ、そうか遊びに……」

 

は……?

 

「え、なにそれ、俺超恥ずかしいじゃん。俺の恥晒しを知ってるんだろ、その玲那ちゃんって子。嘘だろ、俺今から死んだほうが楽なんじゃないか?」

「なに馬鹿言ってるの、お兄ちゃん。大丈夫だよ。それに玲那ちゃん、お兄ちゃんの話聞いて、カッコよくて可愛い人ですねって褒めてたんだから」

「なに馬鹿言ってるの、小町ちゃん。カッコイイは建前で、可愛いってのが嘲笑い混じりの本音なんだよ。あー、もうダメだ。明日学校休もうかなぁ」

「そんなことしたら、小町…もう一生、お兄ちゃんと口聞かないから♪」

「……前言撤回」

「よろしい!」

 

そう小町が傍若無人を発揮した時、家のインターホンが鳴り響いた。

 

「あ、来たっぽい!小町の描いてあげた地図で無事辿り着けたみたい!」

「スマホあるのになんで原始回帰してんだよ。住所教えてやれば…」

「お兄ちゃん、さっきからうるさいよ?」

「ひどくね?さっきから酷くね?」

「ごめんごめん。ほら、一緒に出迎えしよ?」

「えー…って言っても俺に選択肢は無いんですよね?」

「うん。だって玲那ちゃんの言葉のおかげでお兄ちゃんも気分晴れたでしょ?」

「いや、まあ…あながち間違いじゃないけど色々間違ってると思うんだよなぁ…」

「いいから、ほら!お礼も兼ねて、一緒に行こ!」

 

そうして小町に半ば強引に腕を引っ張られ玄関へと顔を出す。

 

「待ってねー、いま開けるから!」

 

小町がドアを開くと、静かに彼女が入ってきた。

 

「お邪魔致します」

 

鎌ヶ谷 玲那。

一目見て思ったことは『無駄がない』という言葉の体現したような女の子ということだ。可愛いよりも綺麗が先に出る容姿。艶のある黒髪ロングに凛とした瞳。ふと思い出したのはあの転校生だ。なるほど、確かに兄妹だ。容姿のレベルが完璧に受け継がれている。

加えて中一にしては色々と発育がいい。制服でなければ大人に見えても不思議はない。嫉妬なんておこがましく感じる。多分、理想の妹像を描くとすればこんな感じになるはずだ。

 

無論、俺にとっての理想の妹は小町から揺らがないけど。

 

「小町さん、誘ってくれてありがとうございます。そちらが、小町さんのお兄さんですか?はじめまして、鎌ヶ谷 玲那です」

 

さて、ここで問題です。

 

こんなラノベから出てきたような美少女が、とても輝かしい笑顔で俺に話しかけてくれました。この後の俺がとる行動は何でしょうか?

 

正解は……。

 

 

「あ、え…と、その、はい……小町の兄…です」

 

 

ふっ…そんな顔向けられたら、俺なら余裕でキョドるね。(ドヤッ)

 

 

…でした。はぁ…黒歴史また増えたなぁ…。

 

「もう、お兄ちゃん…」

「仕方ないだろ。こんな美人だと、緊張するんだよ」

「私が美人ですか?ふふっ、ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです」

「あ…そ、そうですか?」

 

ってなに敬語使っちゃってんの?

いや仕方ないんだよ。だって俺の観察眼を持ってしても嫌味とかなく言ってるって見えたんだもん。めっちゃ性格良いんだもん。仮面とかないだもん。ここまで完璧だともはや神に見えてくる。因みに天使枠はもちろん小町。

 

「はい。そう言われるということは、私の憧れの人に近づけてるって証ですから、とても嬉しいです」

 

憧れ?こんな完璧な子に憧れられる人がいるのか?

 

「まあまあ、話すなら中に入ってもらお?ささ、玲那ちゃん。どうぞ中へ」

「ありがとうございます。では失礼して…」

 

 

この流れだと、話の輪に加えられそうだなぁ。

 

ため息が呼吸のように出ていく…これはもう深呼吸の扱いになるんじゃないか?

 

 

 

……………もう、色々とねぇわ。

 

 

 

小町よ、お前のコミュ力をオラに少し分けてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

………………………

 

……………

 

 

 

 

 

 

 

 

寒空の下で重なる出来事に、誰もが振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま…」

 

学校から帰宅した途端、真っ先に俺を襲ったのは憂鬱感だった。

 

本当に、初日から幸先が思い悩まれる。まさかクラスに俺を覚えている奴がいるなんて…しかも俺のことよく思ってないアンチクラブだし。

いや、そもそもアンチクラブってなんだよ。そんなのただのいじめ集団だろ。

…ってことはなに、俺いじめられてたの!?嘘だろそんな感じまったく…無かったとは言えないわ。

 

くそ…ただでさえ“あの二人”のことで頭がいっぱいなのに、悩み多過ぎだろ俺。

 

はぁ…また千葉に帰ってくるって分かってたならもっと違う行動したのにな。

 

「ん……?」

 

この靴、玲那のじゃない。

いや、鍵は開いていた。今日は両親も絶対に早く帰ってくることはないはずだ。

 

なら、誰が?

 

「まさか…」

 

こんなことをする奴に、俺は一人だけ覚えがあった。

 

でもありえない。引っ越して来たばかりで、しかも月日が経っているんだ。もし逆の立場なら俺のことなど忘れているはずだ。いや、俺は“そうなってほしい”と願っていた。そうなるような行動をしたはずだ。

 

なのに……。

 

「ひ・さ・し・ぶ・り♪約4年ぶりかしら?随分とカッコよくなったわね、研」

 

いつもの天使のような笑顔で、いつもの軽口でそう冗談を言ってきたのは…。

 

「ハル……」

 

 

俺の目を通せば悪魔にしか見えない、雪ノ下 陽乃だった。

 

 

「やっと会えた。…この時を、ずっと待ってたのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






妹有能説が生まれた原因はだいたい小町だと思えてくるこの頃(`・ω・´)

この話考えてたら、頭が八幡と小町のことばかりになったせいで、オリ主とオリ妹の名前をド忘れしました。別に期間が空いたから忘れたわけじゃない……はず。

今回の話でなんとか八幡に友人ゲットフラグっぽいもの建てられたかな?ぽいものだけど。

てかフラグなげーよ。


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