伝霊士   作:星ほたる

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第1話

 僕は結(ゆう)城(き)ミズハ。

 女の子みたいな名前だけど本名だ。

 そして、僕は死者。

 つまりすでに死んでいる。言うなれば幽霊だ。

 この世界に本来なら拒絶されているはずの僕がなぜ存在できているのか、それは僕自身にも分からない。

 さて、ここで一つ、君に質問がある。

 君は、僕のこと、結城ミズハのことを何か知らないかな?

 僕は幽霊であると同時に、記憶喪失なんだ。

 

 

「あなたのことなんて、私は知らないわ」

 

 

 まさか、返答があるとは思わなかった。

 幽霊の言葉に、今まで誰も応えてくれなかったからだ。

 声のした方向を見ると、たたずむは一人の少女。

 

「迷い人の気配がしたと思えば、記憶喪失なんて。関わらなければよかった」

 

 迷い人?

 

「幽霊ことよ」

 

 なるほど、死に迷ってるということかな。

 確かに僕は死んでも死にきれていないといえる。

 

「私は一(ひと)瀬(せ)和(かず)音(ね)。気付いているだろうけど、死者が見えるの。そういう力を持っている」

 

 そう。和音というのか。

 君は僕が怖くないのかな?

 

「一々幽霊なんて怖がっていられないわよ」

 

 そういうものかな。

 和音は、霊感というのだろうか、そういう能力を持っていて、幽霊と会話をしているのだ。

 僕以外の幽霊とも会話してきたとしたら、確かにそれは今更かもしれない。

 

「私はこの能力をもらったの。そしてあなたに話しかけたのには、理由がある」

 

 理由?

 

「あなたは誰かに、声を届けたくないかしら?」

 

 和音はそう言った。

 声を届けるとは、どういうことだろうか。

 

「そのままの意味よ。あなたの声が生きている人に届くように出来るの。一分間だけ、一度だけ、ね。それが私の仕事なの」

 

 生者に声を届けることが出来る。

 それは、幽霊である僕にとって確かに魅力的に聞こえた。

 だけど。

 

「だけどミズハ。あなたは記憶がないのよね。それなら、誰にどんな声を届けるか、決められないわよね」

 

 そうなのだ。僕には生前の記憶がない。唯一記憶しているのは名前だけ。

 結城ミズハ。この名前しか記憶していない。

 

「あなたの記憶、取り戻してあげようか?」

 

 和音はそう提案した。

 僕の記憶を取り戻す?

 いいの?

 

「いいのって何がよ?」

 

 迷惑じゃないかな?

 

「迷惑ね。だから気が変わらないうちに返事してちょうだい」

 

 ……迷惑はかけられないよ。

 僕は断ることにした。

 

「じゃあこうしましょう。私はさっきも言ったけど死者の声を生者に届ける仕事をしているの。私はあなたの記憶を探す。その代わりミズハには私の仕事を手伝ってもらうことにするわ。それならいいでしょ?」

 

 和音はすかさず代案を用意してくれた。それならば断る理由はこちらにはなさそうだ。

 …………ありがとう、ございます。お願いします。

 

「私は伝(でん)霊(れい)士(し)。だから、よろしくねミズハ伝霊士助手」

 

 助手って。間違っちゃいないけれど。

 こちらこそよろしく。

 僕はそう答えた。

 

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