悪役お姫様でゴメンあそばせ   作:れべるあっぷ

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4話:F組の作戦

「で、作戦はどうするワケ?」

 

 迫り来るガイコツ兵を撃退しながらリアは私に訪ねてきた。

 

「ふっ、大将とは本陣にどっしり構えているものなのです。京、説明を……」

 

「姫、自分で知将とか言っていなかったっけ?」

 

「つまり自分は作戦なーんにも考えとらんということやな?」

 

「やれやれ、前途多難だね。これは……」

 

「シャラップ!もう一度ビンタしますよ?」

 

「なんで僕だけ!?」

 

 愛が篭っているのであれば許されるはずだ。 

 

「私の作戦では沢山の犠牲が出そうなので説明しなかっただけですー。別にそれでいいのなら実行しますー」

 

「なんで半ギレなのよ……」

 

 例えば、私の作戦なら強行突破で屋敷に突入するとしよう。屋敷内にある怪しげに起動している魔方陣がガイコツ兵の出所だと京は気がつくだろう。それさえ破壊すれば屋敷内から骨たちは溢れることはない。あとは残党を一掃して、メガネ君の氷結魔法やら他の生徒の中に硬化能力に優れた魔法で篭城を作り、限られた出入り口しか侵入できない包囲壁を作ればいい。一点集中、バレー選手ばりのアタックを見せてくれた生徒たちのような過激な魔法で一掃している間に<小時限式死霊魔法(タイムズ・ネクロマンス)>の効力も切れるだろう。

 もちろん、彼らに時限式とはわかるはずもなく、戦いが続く中での本格的な町へ進行するための作戦会議を早急に開く形で説明するのだが。問題は篭城を築き上げるための労力と時間と犠牲だろうか。屋敷の防御を上げるような魔法を覚えていそうな生徒はC~F、リストを見た中で十数名。氷結、土壁、硬化、変色、干渉……いや、そもそもその中で生き残っている生徒がどれだけいるのだろう。この乱戦の中で探している余裕もないし、もしかすれば私のような他人に言えない事情があるかもしれない……なので、私の口から「貴女、素晴らしい魔法使えますよね?」なんてマヌケな質問もできない。彼らから挙手してもらえなければこの作戦は成立しない。なにかと面倒でリスクも高い作戦だ。

 それに屋敷の中にはネロを配備させていたことを忘れていた。<SR(スーパーレア)>の駒だ。京に対処されるわけにもいかないが京以外の生徒で手に負える相手でもない。リアならあるいわだか。

 いや、もしかすれば、私の目から逃れている誰かとすでにぶつかっているかもしれない。

 

「それよりも京の方がずっと素晴らしい作戦を立ててくれそうなのです。妖怪退治屋という肩書きをお持ちになる貴女なら。ね?」

 

「あんまりウチを買いかぶらん方がええで~」

 

「ですが、隠し玉ぐらい持っていそうなものですよ」

 

 例えば、私の知らない誰かさんとか……

 

「何でそう思うんや?」

 

「もちろん勘ですが、なにか!」

 

「あっはっはー、自分ほんまおもろいなー」

 

 ここで下手にあれこれ言い訳を述べるよりずっとシンプルで誰もが納得してしまうお決まり文句を述べればいい。こちらを詮索する時間を与えない。骨たちはさらに活発に動く時間帯だ。

 

「クラリーの言うとおり隠し玉は持っとるで」

 

「本当なの?京」

 

「そやな、仕込み入れるからちょい待ってや~」

 

 そう言って京はスマホを取り出した。銀色の魔法を使うわけでもなく、マップを開いたわけでもなく、私の読みが当たったようでどこぞの誰かに電話をかけだした。

 

「え、ここ電話繋がるの?」

 

「ココ限定なら繋がるらしいで。現実(あっち)には繋がらんかったけどな」

 

 いつの間にか隠し玉と確かめていたようだ。抜かりないというか侮れないというか……ここまで誰にも教えなかったあたりが京らしい。その事実に驚くリア達であるがアチラに繋がらないとわかって落胆の色を隠せないようだ。もちろん、誰か助けを呼んでしまっては面白くないだろう。

 

「もしもしー?ウチやウチー。そっちはどないやー?」

 

『あーもしもし?ウチやウチーって、ウチウチ詐欺ですか?そうなんですか?それはあきまへんでー』

 

「違うわ!京や!!つーか、おんどれのケータイに電話すんのウチしかおらんやろ!!」

 

『あー若ですか。もー何なんですか?こんな忙しい時にー……』

 

「お、おぉう、そりゃ堪忍や……って、なんでウチが謝らなあかねん!?いや、違うやろ。自分、屋敷の中はどないやつってんねん?」

 

 やはり屋敷の中か。

 

『わっはっはー、どうもこうも骨だらけで前へ進めませーん。他の生徒もほぼ全滅でーす。しかもヤバイのに目ぇつけられちゃってー。なので若、助けてくだs……』

 

「あ、切れてもうた………」

 

 どうやら通話が切れてしまったらしい。

 駄目や、ウチの作戦も失敗するかもしれん……と珍しく京が弱音を吐いた。というか、電話越しの相手に苦戦している様子だった。相当アクが強い生徒のようだ。

 妖怪退治屋、これで本当に大丈夫なのであろうか。あぁ、見てみなさい、リア達のあの不安そうな顔。

 

「あ、かけなおしてきたみたいや……」

 

 ふむ、相手の方からかけ直してきたみたいだ。しかし、戦闘中に電話しながら片手で骨達の対処するとか妖怪退治屋ってのはマジぱねー。

 

『もー若ーーー!電話切らないでくださいよー!ぷんぷんっ!』

 

「今日はウザさマックスやな自分。それと電話切ったんはウチと違うで?自分やからな??」

 

『あららバレてしまわれましたかー、いやちょっとヤバイのがパナくてービュビュッとブルってープッツンしてまいましたわー。わっはっはー』

 

「自分ウザイし早口やし、それ以前にそれって日本語なん?擬音語か?何言ってるかさっぱりやねんけど……もっと落ち着いてもの喋られへん?今は非常事態や」

 

『わっはっはー。若、これだけは言っておきますよー……誰もがアンタみたいに電話しながら敵と戦えると思うなよ!!』

 

「わ、なんかキレられてぷっつんされたわ」

 

 要訳したら電話切られたらしい。てへぺろした京にリアも我慢の限界を越えたようだ。言ってはならない一言を突きつけてしまう。

 

「妖怪退治屋がこんなんで大丈夫なの……?」

 

「う、うっさいわ!いつもこんなんやけど、それでもなんとか解決しとる!!」

 

「それって京が優秀なだけで隠し玉の人はあまり役に立っていないってオチなんじゃ……?」

 

「そんなことない!そんなはずない!あいつだってちゃんと役に立っとる……ん?いや、待てよ。あいつ、役に立ったことあったっけ?」

 

 衣鶴の追撃に身内を庇おうにも庇えきれない京。それを見かねたメガネ君が……

 

「皆、木船さんが困っているじゃないか!今は隠し玉が使えるかどうかじゃなく、ここを切り抜けられるかどうかじゃないのかな!僕はそう思うな!」

 

「メガネ君はウチの隠し玉を信じてくれるんやな?」

 

「う、うん、勿論!僕は木船さんを信じるよ!」

 

 うわー……

 私がリア達の心の声を代弁するのであれば、不安要素しかない隠し玉を肯定するとかメガネ君おもしろすぎー。この二人くっつけたら、きっともっと面白くなるだろなー、だ。ならば、もっと二人がくっつけるプランをこちとら考えようじゃないか。

 そのためにも、まずは目先の問題だ。

 

「京、貴女の作戦では隠し玉が必ず必要ですか?真面目に答えてください」

 

「い、いたらウチがいくらか楽できるやろな」

 

「じゃあ、作戦を決行する際には隠し玉の人にメッセージ送っといてください。電話ができるのであればチャットもできるでしょう。それを見て行動してもらいましょう」

 

「お、おっけーや」

 

 あらやだ、あのクラリーがいつにもなく本気だわ。素敵、という熱い眼差しを向けてくるリア達はスルーして。

 

「とりあえず作戦を話してください、京」

 

「ああ、ウチの作戦はこうや……」

 

 結論から言うと屋敷全域に陰陽術による結界を張るという作戦内容であった。なるほど、アンデットも妖怪も似たような類いなのは間違いない。ガイコツ兵に効果あるかは確認済みだそうだ。

 

四方封陣(しほうふうじん)って簡単なやつでな……敷地内の四隅みでええ、ウチが即席で書いたこの御札を貼り付けてきてほしいねん。あとはウチが屋敷に乗り込んで隠し玉の代わりに核となる御札貼って詠唱するさかい。それでしまいや」

 

「随分とシンプルですね……」

 

 大掛かりな結界の類を使えるものが一年生にいるのであれば京しかいないだろう。少々手間がだが私の計画の数倍も良い。スピーディーでリスクも最小限に抑えられるだろう。尚且つ、裏切り者は絶対に手を出せない状況下を作ったのだ。

 深読みし過ぎているかもしれないが、そこまで考慮してもいいだろう。この御札はガイコツ兵達が触れれば浄化されるらしいが、人には害がなく簡単には破くこともできれば張り付けた御札を剥がすことも簡単にできるそうだ。それ故に、私達は京の作戦を聞いてしまったがために必ず成功させなければならない。不自然な動きや失敗は裏切り者とみなされるだろう。

 勿論、京が私を睨んでいようが疑ってまいが関係なく、作戦中に怪しい動きをするものは者は、たとえ京が屋敷の中に入っても手出しをしてはならない。この作戦はすでに生徒全員に広まっていて、生徒全員によって監視されるシステムになっていた。

 

「隠し玉がちゃんと仕事していてくれたら衣鶴の代わりできてんけどな。堪忍やで」

 

「こ、これくらい屁のカッパだよ!」

 

 明らかに荷が重いだろうに。作戦を聞き付けた他の生徒に代わってもらっても誰も責めやしない。だけど、この子はそういう子なのだ。

 

「あー、じゃあ、アタシの所は護衛いらないわ。衣鶴とクラリーの所にほとんど回してもいいわよ」

 

「男前過ぎますよ、リア」

 

 この作戦が実行すれば嫌がおうにもガイコツ兵達も勘づくだろう。そのための護衛を買ってでてくれたクラスメートや他のクラスの生徒たち。ロクに魔法が使えない私達はVIP扱いだ。なにより、御札を託された私達の誰が倒れても護衛が後を引き継げる。

 

「僕の所からも少し西条さんとフォーレさんにおすそわけするよ」

 

「ありがとう、二人とも」

 

「ありがとうなのですよ。それと、メガネ君。私のことはクラリーとお呼びくださいまし」

 

「じゃあ、僕のことは……」

 

「いえいえ、メガネ君はメガネ君ですよ」

 

「あ、あっそう……」

 

 さて、メガネ君いじりもほどほどに。一番大変なのはやはり京だろうか。確か4枚の御札を貼った時にそれぞれを結んでできる交点が核になるらしく、神経削って屋敷内から探し当てて詠唱もしないといけない。隠し玉を先に潜伏させたのも、あらかた骨の排除して数をなるべく減らす目的もあったのかもしれない。

 まーなんにせよ、私達が4隅に御札を貼らないことには核の御札は貼れず時間との勝負になってくる。

 

「じゃあ、さっさと貼りに行くわ。4人とも、気を付けてね」

 

「あ、掛け声がまだですよリア!」

 

 ああん、つれない。リアはその場を駆け出し裏門の方へ去っていった。

 

「じゃあ、僕も行くよ。木船さん達も気を付けて」

 

「メガネ君もな」

 

 あーん、京とメガネ君も掛け声を忘れて行った。

 

「ふ、2人だけじゃ締まらないしね?」

 

「いづるぅううううううううううー」

 

 そんな……モグリーズの絆はその程度のものでしたか。後で私の気が済むまでおっぱい揉んで足腰ガクガク言わせてやろう。なんてふざけている場合じゃなかった。

 

「さ、私達も行きますよ。(しもべ)たち」

 

「「「「誰がしもべだ!??」」」」

 

 嘘泣きもそこそこに、クラスメイトの童貞野郎共を引き連れて屋敷の正門側、左隅へ向かった。戦場を横切るなど素人にとっては自殺行為に等しいが、もうやるしかない。これしか方法がないとわかっているからこそ、彼らも必死になって私を守った。目の前を立ちふさがるガイコツ兵と対峙し先を促すおチビの木林(きばやし)。のっぽの奈須(なす)が私の手を引いて庭園迷路の中に連れ込んでいく。なるほど、一見血迷った行動に見えるが<MOGU×HIME>のゲームプレイヤーならここの地形ぐらい頭に入っていてもおかしくないわけだ。私にもわかる。ここの別れ道は左が正解だ。右は最終的に行き止まりでマジックアイテムが置いてあるがな。

 やるじゃないか。大方メガネ君だけに良い格好させたくなかったのだろう。

 しかも、敵が前方から現れようが狭い通路だ。一対一であれば素人でも銀色魔法のアプリで対処できるわけだ。後方も他の護衛たちが対処してくれる。あ、上からズルしてくる敵には対処が遅れるがな。列を成して進軍する私達の間を割って飛び込んできたあげくに私のお尻に手をかけた不届きなガイコツ兵は無慈悲に御札を額に当ててやった。主人にセクハラする駒など成仏すればいい。はっはっはー。

 後方にいた1人、おデブの円谷(つぶらや)が「俺は触らなくてよかった……」などとドン引きしていたがスルーして。そんな円谷が肉体強化と硬化+御札の力を借りて、前方が詰まりがちになっていた骨たちを突進して吹っ飛ばしていく。よし、出口が見えた。円谷は律儀に御札を返してくれて、奈須と共に強行突破していく。

 彼らはA組にもB組にも引けを取らない勇敢な心があった。オンラインゲームでは<キラブレイカー>とかいう中二病をこじらせたパーティーで<モグリーズ>と上位ランクで争っていたが、彼らの内に秘める正義がこの作戦を成功させる。F組が使えないだって?侮っているのはA組たちだ。見くびっていたのは私だ。Fランクだが彼らは立派な<英雄の卵>だ。

 出口を抜けた。目的地まであともう少しだ。

 

「F組が来たわよ!!ここが踏ん張りどころよ!!皆頑張って!!」

 

「さあこっちだ!!周りは気にするな!!とにかく走れっ!!」

 

「おい!!あの女子、何歩いてんだ!?走れ走れ!!」

 

「のっぽが達成感満面の笑みで倒れたぞ!?」

 

「いや、まだ何も達成してないし!!」

 

「おデブも座り込んでいるわ!!」

 

「もーあとちょっとなのに!!」

 

「体力無ねーな、F組!!」

 

 いや、引きこもりには辛い。




だから戦闘中におしゃべりは・・・
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