梁山泊
武術を極めてしまった達人の集う場所
ここには9人の達人が共に暮らしている。
ケンカ百段の空手家 逆鬼 至緒!!
哲学する柔術家 岬越寺 秋雨!!
あらゆる中国拳法の達人 馬 剣星!!
裏ムエタイの死神 アパチャイ・ホパチャイ!!
武器と兵器の申し子 香坂 しぐれ!!
そしてそれらを束ねる梁山泊の長老
無敵超人 風林寺 隼人!!
長老の息子にして活人拳と殺人拳を極めし達人
一影 風林寺 砕牙
更にその娘
風を切る翼 風林寺 美羽
最後に梁山泊最初の一番弟子にして凡人ながら達人の領域に入った者
史上最強の凡人 白浜 兼一
「・・・あれから、3年か」
「どうしたんだね、逆鬼君」
真昼間の梁山泊で逆鬼はビールを飲み、秋雨は地蔵を掘り、馬はエロ本を読み、長老と砕牙は囲碁を打っていた。
「いやよ、じじい。あの戦いから3年、ケンイチがここを旅立って2年かと思うとよ。随分と経ったと思ってよ」
「こらこら、いくら寂しいからって柄にもなく浸る者じゃないよ」
「うるせえぞ!!秋雨!」
ごく平凡な梁山泊の日常の中逆鬼は呟いた。
弟子である白浜兼一が世直しの旅に出てだいぶ寂しがっていた。
「しかし、兼ちゃんには驚かされたね。まさか、一影九拳からも師事を受けたいとわ」
一影九拳
長・一影と"拳"と名の付く異名を持つ9人の達人が所属している。全員が闇の十武術最強と言われる武人であり、各々が自身を象徴する一文字のエンブレムを持っている。九拳は自分こそが最強であると考えており、仲間意識は一切ない。しかし、彼らの弟子がケンイチと嘗て闘い、僅かな接触であったが彼を認め、昔のような闇の統率者の集まりではなくなった。
「『あんな素晴らしい武を殺人拳にすべきじゃない。僕が活人拳に変えてみせます!!』・・・俺たちが考えもしなかったことをアイツは実現しようとしてやがる」
「全くだ。凡人の彼が達人になれたのだけでも奇跡なのに・・・」
秋雨はため息を吐きながら呟く。
ケンイチは弟子になった最初から才能がなかった。
心技体全てにおいて常人よりも下。
修業の度に逃げ出し、苦労して連れ戻す。
しかし、悪徳・悪行を憎み、己が信じた正義に徹することを信念としている。時にその行いは偽善・愚行と非難されることもあるが、彼の人間愛に触れ、救われてきた者は数多い。
梁山泊のメンバーも彼のおかげで救われたケースもある。
しかも、才能がないと言ったがケンイチは修業の中で異端の才能を開花させた。
それはあの無敵超人でさえビックリするほどである。
「まぁなんじゃ。将来、美羽の夫になるならそのくらいのことはできて当然。
最終的には儂と砕牙を倒してからじゃからの。のぉ、砕牙!」
「その通りですね、父上」
祖父と父親の目が怪しく光り、笑いあう。
美羽がケンイチに好意を示しているのは明らかで
もし交際するなら二人を倒してからだと旅の前に宣言した。(全力の殺気を放って)
それでも生きる伝説無敵超人と元とは言え闇の武術の頂点だった一影の二人に勝つなど無理難題にもほどがあり、
そのことを知っている人間は大人げないと思っている。
「・・・先月はドイツのリュベックで闇の殺し屋からドイツ軍の将校を守ったんだろ、今どこにいるんだ?」
「さぁね、ケンイチ君も達人としての自覚が出てきたし、まぁ大丈夫だろう」
そんな雑談をしていると、
「みなさ~ん!!大変ですわ~!!」
台所から美しい金髪の女性、風林寺 美羽が慌てて出てくる。
「どうした、美羽?」
「お父様、皆さん!こんなところでだらけていないで手伝ってください!」
「なんだね?騒々しい」
「ケンイチさんが緊急帰国するそうですわ!」
「「「「「ッ!!」」」」」
それを聞いた瞬間、全員が驚愕する。
「マジかよ!帰ってくるんか!」
「全く、サプライズのつもりかね」
「兼ちゃんも大人げないねぇ」
「今日は宴会ですね」
「兼ちゃんももう二十歳じゃし、久しぶりに朝まで飲むぞ」
聞いてすぐに喜びの顔になる。
「その為にも手伝ってください。秋雨さんとお父様は掃除、逆鬼さんは買い出し、馬さんは料理の準備ですわ」
久しぶりに想い人が帰ってくると知って美羽もウキウキしている。
「そう言えば、アパチャイとしぐれはどうした?彼らもも知っているのかね」
「しぐれさんはいつもの仕事、アパチャイさんは公園で子供たちと遊んでますわよ」
「早く、二人にも伝えないとね。特にあの二人は寂しがってたからね」
「そうですわね・・・特にしぐれさんに」
香坂しぐれは梁山泊に来た当初は梁山泊の他の師匠連とも目を合わせず、隙を見せることを嫌って食事も屋根裏で取っていたが、兼一が弟子となってからは徐々に他人に心を開くようになり、食事も皆と共にするようになるなど変化している。自身の秘密を「兼一になら話していい」と言って周囲を驚かせたこともある。そして、兼一にだけにははっきりとした笑顔を見せるなど彼女もまた兼一に対して恋に似た感情を持っている。
美羽もそれを察していてしぐれをライバルの一人だと認識している。
「さぁ、皆さん!キビキビ動くですわ!」
「はい、それでは明日お会いしましょう」
今、俺の目の前にいる男の人・・・白浜兼一さんは誰かと電話をしている。
この人に出会ったのは1週間ほど前。
父親の仕事でヨーロッパの方に行った時だった。
父親が出席するパーティーでテロリストが襲撃してきた。
もう、正直ダメだと思った。
自分はここで死ぬ、そう感じた時、この人は現れた。
たった一人で30人以上いた武器を持ったテロリストに立ち向かった。
~回想~
「な、なんだ。この小僧から尋常じゃねぇ気当たりは!」
ほとんどの者が兼一の気当たりに押されている。
「今からでも間に合います。こんなこと辞めて、自首してください」
「な、舐めんな!構え・・・」
ゴキッ!バコッ! ずどどど~ん!
僅かの時間で周りにいたテロリストは車に引かれたかの如く四方八方に飛んで行った。
一人を除いて・・・
「この手ごたえ・・・達人級か」
「ッ!やるじゃねぇか小僧!」
「俺は闇の武器組ガターシャ。武器は大剣。悪いが命を貰う」
ガターシャと名乗る男は信じられない速度で体験を振るう。
兼一もそれを避け、対応する。
「ッ!(こいつ何をした!先読みされ、動きを操られているように対応される!?)何なんだお前は!?」
「梁山泊の一番弟子!白浜兼一!」
「き、貴様が!「終わらせるぞ!」何!」
刃剣切り!
兼一は強力な蹴りで大剣をへし折り
前蹴り!
空手の基本技である前蹴りを放つ。達人になれば基本技の威力は必殺技となる。
ガターシャを上に吹き飛ばし空中にジャンプする。
人越拳ねじり貫手!
ジャンプの勢いと腕にかけた強力な回転により放たれた貫手はプロテクターを破壊し強力な衝撃を与えた。
開始から3分ほどでテロリストは壊滅した。
~回想終了~
俺はその時見てしまったんだ。
理不尽を破壊してしまう力。
俺は小学校の仲間から軍師と呼ばれている。
策を立て、仲間を守ることに誇りがあるが同じ位力が欲しかった。
もっと仲間のために誰かを守るための力が。
だから、事件の後兼一さんに言ったんだ。
「自分に武術を教えてほしい」と。
帰ってきた答えは
「今は答えは聞かないけどもし君に覚悟があるなら一緒に日本に行こう。そして、ある場所で覚悟を示してほしい」
だから、俺は一緒に日本に帰った。
「じゃあ、行こうか。大和君」
「はい!」
この時は唯武術を学びたいそれだけだった。
それから、3時間後俺は今後の人生を左右される重大な場所に連れてこられるなど思いもせずに。