梁山泊前
「さぁ、最終確認だ。本当の武術を習うなら正直ここしかない。覚悟がないなら今すぐ家族の下に帰るんだ」
兼一さんはとても真剣な表情で俺の方を掴んで話してきた。
でも俺は・・・
「俺は本気です。本気で強くなりたいんです」
「・・・分かった。ただ、この中に入ってそれが言えればの話だよ」
兼一さんがここまで言うんだからきっと物凄いところなんだな。
住宅街の中に建つ日本家屋、歴史を感じさせる、見上げるほど巨大な門が優一の前に聳そびえ立ち、一種の威圧感を放っている。門に備え付けられた年季を感じさせる厚い木の看板には達筆で『泊山梁』の文字が書かれている。
壁を見る限りでは修繕はされているがあちこちボロボロで人が済んでいるかも疑わしい。
「じゃあ、行くよ」
巨大な門を遂に開けた。
ゴ、ゴ、ゴ ゴォ~!!
開けた瞬間物凄い突風のような風圧が襲ってきた。
だけど、風などではなく門の前に立つ7人の人影から放たれている。
兼一はそれに一瞬圧されるが
「かぁああ~!!」
兼一も気当たりをぶつけ相殺する。
「へぇ、俺らだけじゃなくジジイも合わせた気当たりを相殺するか」
「全くだ。技の覚えは遅いが気の扱いだけは上達が早いね」
「でも、2年で確り達人としての雰囲気が出てきたね」
「アパパ!ケンイチだいぶ変わったよ。スゴイヨ!」
「・・・う・・・ん。スゴイ、スゴ・・・イ」
「だいぶ扱かれた様だね。彼の色が見えたよ」
「兼ちゃん、久しぶり」
逆鬼、秋雨、馬、アパチャイ、しぐれ、砕牙、長老の順に話されるが兼一は
「何するんですか~!!」
「な、何じゃ?せっかく歓迎しようと思ったのに」
「どこの世界に達人級7人の気当たりぶつける歓迎がありますか!!」
「それより、兼一・・・そいつ大丈夫か?」
「え?って、大和君!」
大和は白目をむき、口から泡を吐いて気絶していた。
「・・・こ、ここはどこだ?」
俺は確か、兼一さんと一緒に屋敷に入ろうとして・・・そこからの記憶がない。
見たところ、屋敷の中だけど・・・ッ!
な、なんだ?さっきから、何か視線を感じる。
俺は良く部屋を見渡すと襖が少しだけ空いていた。
俺は体を起こし、襖を開けてみるとそこには
2mを超える筋肉の塊のような褐色の巨人がいた。
「やあ!アパチャイだよ!」
「デタアァぁぁ~!!」
俺は思いっきり廊下を飛び出し全力で走り出した。
な、なんだあれは!あんな生き物見たことないぞ!
あ、あそこに光が見えるぞ!助けを・・・
「す、すみません!誰か助け・・・」
「アァ!おう、起きたかガキ」
「ぎゃぁああ!マヒィアだ~!!」
未確認生物の次はマヒィア!なんだあのデカい傷!
「と、兎に角出ないと!あ、そこの人」
今度は小さいおじさんがいた。よかった、この人はまともだぞ
「お、坊や。起きたのかね、どうしたねそんなに慌てて」
「じ、実は「ヒュ~、ドス!」・・・へ?」
助けを求めようと思ったら、目の前に手裏剣が飛んできた。
俺は恐る恐る飛んできた方を見るとそこには日本刀を携えたくノ一格好をしたお姉さんがいた。
「馬、さっき風呂に入ってる時何を取っていた?」
「い、いやぁ~。しぐれどんがいつもより少しだけ無防備だったから今日は成功すると思って」
おじさんがそんなこと言っていると手裏剣がいくつも飛んできた!!
しかもこのおっさん手裏剣の間の通って避けてるぞ!
と、取りあえず逃げよう!
もう一つ光が付いてある扉を最後の希望に僕は開けた。
「「「・・・」」」
巨大な爺さんと二人の男が仁王立ちして立っていた。
その日俺は2度目の気絶をした。
「・・・くん・・・や・・・くん・・・大和君!」
「・・・け、ん、いちさん!」
俺は勢いよく起き、兼一さんにしがみ付いた。
「は、早くここを出ましょう。すんごい危険なにおいがします」
「・・・大和君、実はね。此処こそが君が武術を習う場所でさっきのは僕の師匠たちなんだ」
「えぇぇえ~!!」
さっきの人達が!!
「目覚めましたか、ケンイチさん」
そこからエプロンを着た金髪の女性が現れた。
「美羽さん、もう大丈夫ですよ」
「そうですか。皆さん来ていいですわよ」
さっき来た人たちが全員来た。
「さてと、まずは自己紹介だね」
梁山泊、武術を極めてしまった達人の集う場所。
ケンカ百段の空手家 逆鬼 至緒!!
哲学する柔術家 岬越寺 秋雨!!
あらゆる中国拳法の達人 馬 剣星!!
裏ムエタイの死神 アパチャイ・ホパチャイ!!
武器と兵器の申し子 香坂 しぐれ!!
そしてそれらを束ねる梁山泊の長老
無敵超人 風林寺 隼人!!
長老の息子にして活人拳と殺人拳を極めし達人
一影 風林寺 砕牙!!
更にその娘
風を切る翼 風林寺 美羽!!
最後に梁山泊最初の一番弟子にして凡人ながら達人の領域に入った者
史上最強の凡人 白浜 兼一!!
闇の武術に殺人拳と対を成す、活人拳を極めし元たちが集う場所。
「(聞いてないよ~!!)」
心の中で大和は叫び続けた。
「まさか、この俺達に弟子入りしたい命知らずが兼一以外に現れるとわな」
「しかし、大丈夫かね彼。まるで昔の兼一君以上にビビってるじゃないか」
「まぁ、これより審査に入るからのそれに合格すれば入門を許可しようじゃないか」
「大和君。君は難のために武術を学びたいんだい」
今までにないくらい真剣な空気が流れる。
自分のすべてを曝け出さなければいけない。
笑われても構わない言うんだ。
「・・・力が欲しいんです」
俺はそれからすべてを話した。
俺は小学校で数人の友達で風間ファミリーというグループでつるんでいる。
毎日、遊んでバカやって毎日が楽しかった。
そんなある日のことだった。
ある少女が俺たちのことうらやましそうに見てたんだ。
その子は家族がらみの関係で学校で苛めにあっていて毎日周りに怯えながらひどい顔してたんだ。
俺達は・・・俺はそんなことは知っていてずっと知らないふりしてた。
俺自身がいじめの対象になりたくないばかりに目立たず余計なことに関わらないようにしてたんだ。
ある日金魚が死んだ。それを周りはその子が憂さ晴らしにやったと勝手に決めつけた。
彼女が犯人じゃないことは分かっていた。
その子は泣きながら埋葬しているとクラスの男子が死ねと言ってきた。
だがそんな状況に偶然俺は駆けつけた。
らしくないと思っても体に勝手に動いてこのまま助けなければ自分の罪を悔いることの出来ない汚い人間になる。
そう思うのが嫌でそいつらからその子を守った。まぁ、仲間に途中助けられたけど。
それが終わった後、金魚を殺したのはその子じゃないと判明し、その子も仲間になった。
だが、その事件の後でも俺の中である感情が出てきたんだ。
世の中には知恵や言葉じゃどうにもならないことがある。
そして、兼一さんを見て思ったんだ。
正しいと思う事を口にすることは今の俺でもできる。
でも、それをただ口にしただけじゃ何も変わらない。
だから、自分の正しいことを実現するためには力がいるんだ。
「「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」
な、何だこの静寂は?
やっぱり、子供っぽくて心の中で笑っているのか?
「では、審査の結果を発表しよう・・・合格じゃ!」
・・・・え、
「今、なんて?」
「聞こえなかったんか?合格じゃ、直江大和君!今日より我が梁山泊の弟子として向かい入れよう」
「まさか、嘗て兼一君が言った言葉がそのまま反ってくるとは」
「僕も驚きですよ」
俺が兼一さんと同じことを?
「まぁ、明日から修業に入るとして今日は兼ちゃんお帰りの会と大和君の歓迎会を開かんとの」
その日梁山泊には新しい声が加わり夜遅くまで騒いだとさ
大和が眠りについて兼一が動き始めた。
「長老」
「うん。分かっておる。みんなちょっと止まっておくれ」
「これより梁山泊緊急豪傑会議を行う!!」
先程の宴会モードは一旦なくなり正座をして会議を開き始めた。
「それで、兼ちゃん。旅の間に儂と砕牙に相談していたことを皆に話しておくれ」
「はい・・・闇の武器組がこの1年で再び動き始めました」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」」
「この1年ヨーロッパを拠点に僕が担当した仕事34件の中で武器組の残党や傘下の達人が関わっていました。1週間ほぼ前、大和君と関わった仕事にも武器組の達人がいました」
「なんということだ。3年前の久遠の落日阻止から目立った動きを見せなかったが」
「しかも、今回は2つの点で変化があると分かりました」
「2つの変化だぁ?」
「1つは奴らは薬物の製造や密売に力を入れ始めたことです」
「薬物?資金造りでも始めたんかね」
「いえ、何でも。その薬物、身体能力を比較的上昇したりと色々噂があるんですよ。馬師父どうですか?」
「なるほどね。確かに中国の漢方にも内項を強靭にしたり、基礎代謝を上げることで筋肉を活性化させる物など数多く存在するね。しかし、配合や飲み合わせを間違えるだけで薬物のような禁断症状を引き起こす場合が多い」
「・・・毒にも・・・薬にもなる・・・か」
「しかし、解せない。それほどの密売をやっているのに我々の網に引っ掛からないとは」
「それがもう一つなんですが・・・世界的な企業が彼らと手を組んでいるかもしれません」
「それは本当かね!そうなると厄介だな」
「アパ、何でよ?」
「奴らは表と裏の壮大な権力を手に入れた。強力な証拠を掴まない限り、我々の動きを止めるきじゃ」
「引き続き捜索を依頼していいかな兼一君。大和君のことは我々で責任を持って育てよう」
「分かりました。しかし、奴らの拠点が日本で有る事が変わらないならその時はお願いします」
「任せな!久しぶりに暴れたいと思ってたところだぜ!」
「大丈夫よ!アパチャイが軽く皆殺しにしてあげるよ!」
「・・・本当に大丈夫なのか」
大和育成計画と同時に新たな戦いが幕を下りたのである。