悪の魔法使い   作:アルパカ度数38%

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投稿がやたら早いのはやたら頑張ったからです。
こんなに頑張れるのは四つ葉のクローバー並にレアな事なので、多分次はもっと遅いです。




 

 

 

1.

 

 

 

 月下の夜の草原。

目前に立つ茶々は、エヴァンジェリンの視線で己の顔の汚れに気づき、立派な魔法使いの死体から剥がした布きれでぬぐっている。

エヴァンジェリンは、己が凍り付いたかのような感覚に陥っていた。

心臓はうるさいぐらいにバクバクと動いているが、それが幻聴ではと思える程、エヴァンジェリンは欠片も動けない。

そんなエヴァンジェリンに、茶々が目尻を下げる。

 

「その……私は怖かったかい?」

「違う!」

 

 反射的に、言葉ははき出せた。

自身の動きに驚きつつも、エヴァンジェリンは自身の中に浮かぶ不思議な感情を確かめる。

 

「その、というより、吃驚しちゃってだな……。茶々が一瞬、別人のように見えて。あぁいや、今はもう大丈夫なんだけど……」

 

 言ってから、エヴァンジェリンは自身の言葉が茶々を傷つけうる言葉だった事に気づいた。

確かに敵を前にした茶々は冷酷な顔をしており、まるで別人ではないかとエヴァンジェリンは思った物だ。

しかし、正当防衛をしただけで別人のようだった等と言われて、気持ちのいい筈が無い。

何か言葉を重ねようと思うエヴァンジェリンだったが、己の中からは言葉が生まれてこなかった。

できたのはただ、こみ上げてくる涙を必死で飲み干しながら、茶々の目を見る事だけである。

潤んだ目で上目遣いに何やら必死になるエヴァンジェリンに、苦笑する茶々。

 

「そうか、怯えられたんじゃあないなら良かったさ」

「……って、そんな事ぐらいで私が怯えるものかっ!」

 

 子供扱いされたように感じ、エヴァンジェリンが思わず吠えると、茶々はぽん、とエヴァンジェリンの頭に手をやった。

何時もの茶々の手の温度が伝わり、一緒に安心も伝わってきたかのようであった。

己の心が落ち着いてくるのを感じつつも、更なる子供扱いにエヴァンジェリンは顔を真っ赤にし、茶々の手を払いのける。

睨んでくるエヴァンジェリンの顔に気づいたのだろう、ごめんごめん、と茶々が謝るが、今一心がこもっていない。

ジト目で睨み付けるエヴァンジェリンに、茶々はかがみ込み視線を合わせた。

口を開こうとして、僅かに顔をしかめる茶々。

 

「……とりあえず問答は後にして、死体の方を片付けよう。獣が寄ってくるならまだしも、仲間に寄ってこられると面倒だ」

「……あ、うん」

 

 言われてみれば、血の臭いが強かった。

見れば茶々の相手をした男は、四肢を切り落とされた上、腹に槍で突かれたのだろう穴が2つも空いている。

自然大量の血液が流れ出ており、辺りにこびり付いていた。

死体は埋め、人形や茶々にこびり付いた黒血はエヴァンジェリンが魔法で生み出した水で洗い流す。

流石に魔法を見た時に茶々は目を見開いていたが、追求せずに黙々と処理を続けた。

 

 2人がたき火の方に戻ると、不幸中の幸いと言うべきだろうか、たき火は辺りの草原に燃え移る事無く燃え尽きようとしていた。

急ぎ薪を足してエヴァンジェリンが魔法で火をつけると、すぐにたき火は復活する。

暖かな温度に、今までの自身の体が冷えていた事に気づき、エヴァンジェリンは身震いした。

この冬に戦いの汗を拭っていなかったのだ、当然と言えば当然か。

ちらり、とエヴァンジェリンは視線を茶々へ。

ちょうど身震いした辺り、茶々もまた体を冷やしているのだろう。

エヴァンジェリンが近づこうとした、その時であった。

 

「私からは、君の事情を聞かない」

 

 暖かな、それでいて硬い意思の籠もった声。

エヴァンジェリンはまずタイミングに驚き、それから内容について驚いた。

目を瞬き、叫ぶ。

 

「馬鹿な、命の危機だったんだぞ!? 何の事情も知らずに巻き込まれていいのかっ!?」

「そうだねぇ……」

 

 と、呑気そうな声と共に、茶々は夜空に視線をやった。

つられて見るが、いつも通りの星空である。

疑問詞を込めた視線を下ろすエヴァンジェリンに、茶々。

 

「ま、エヴァが話したくなったらでいいよ。急かさないから、君が一番だと思ったタイミングで……」

「それは、今だ」

 

 言い切るエヴァンジェリンに、茶々は目を丸くした。

視線を下ろし、エヴァンジェリンのそれとぶつからせる。

腹腔に渦巻く静かな怒りを隠そうとせず、エヴァンジェリンは告げた。

 

「事情も知らせず、追っ手を撒いたと油断し危険な旅路に茶々を同行させたのは、私だ。これ以上私に恥を欠かせないでくれ」

「……そう、か」

 

 眼を細め、茶々は僅かに歯を噛みしめる。

瞬き。

瞼を開いた時には、茶々もまた真剣な目になっていた。

頷き、エヴァンジェリンは続けて言う。

 

「私は……」

 

 瞬間、殺気。

同時にエヴァンジェリンと茶々は跳躍、直後に光の矢がたき火を穿った。

爆音と共に薪が消し飛んで行くのを尻目に、エヴァンジェリンは眼を細める。

 

「ラッキー! 先を越されたと思ったけど、まだ生きていたか!」

 

 狂気の笑みと共に現れる立派な魔法使い。

黒髪黒目に歪んだ笑みを浮かべ、若草色のローブをはためかせながら空中を飛んできた。

杖無しの浮遊術か、とエヴァンジェリンは独りごちた。

高難易度の魔法をたやすく使っている辺り、先の襲撃者よりは強敵か。

エヴァンジェリンが魔力を高めたその時、茶々が一歩前に出る。

 

「エヴァ、ここは私に任せてくれないかい? 私が君の足手纏いにならない程度の強さを持っているのを、見せておきたくてさ」

「……っ!」

 

 引き留めようと思った所でそう言われ、エヴァンジェリンは歯を噛みしめた。

確かにエヴァンジェリンにとって茶々の実力は未知数だ、足手纏いなら別れる選択肢が濃厚になる。

逆に茶々にとってもエヴァンジェリンの実力が未知数なのだが、狙われているのがエヴァンジェリンである以上、主体となり相手を評価するのはエヴァンジェリンであるべきだ。

 

 理性では、エヴァンジェリンもその通りだと分かっていた。

それでも、茶々が傷つくのも、先ほどのように冷酷な顔をするのも、嫌だ。

しかしそれが子供の我が儘に過ぎない事を自覚した今、エヴァンジェリンは駄々をこねられない。

故に、エヴァンジェリンは上空へと身を翻し、言う。

 

「……危ないと思ったらすぐにでも介入するからな」

「あぁ、その時は頼りにしているさ」

 

 思った以上に細く頼りない声になってしまったが、茶々はしっかりと返事を返した。

見守っていた敵の”立派な魔法使い”に意識を集中させ、指輪をした十指をだらりと垂らす。

勝手に分断してくれる2人に、戦術的有利の為に黙っていたのだろう青年は、ニヤリと口元を曲線に。

 

「ひひひ、やれやれ。お涙ちょうだいな最後のお別れはやっと終わったのかい?」

「君は下品な笑い方をするなぁ」

 

 肩をすくめ、茶々は冷え切った瞳で青年を見下す。

瞬間、茶々の両手が霞んだ。

恐るべき速度でその辺に転がっていた人形達が跳ね上がり、手に凶器を持ち青年へと襲いかかる。

 

「なっ、人形使いかっ!」

 

 目を見開き叫びつつも、青年は無詠唱で身体強化魔法を使い、人形の包囲の隙間から抜け出した。

が、直後悲鳴を。

何かとエヴァンジェリンが瞬くと、青年が蹴りを放ち、草むらから隠れていたのだろう人形が空中へ投げ出される。

青年の足には、出刃包丁が半ばまで刺さっていた。

 

「糞ったれがっ!」

 

 叫びつつ青年は杖を手に、魔法の射手を発動。

51条の光の矢が散乱するも、足の痛みで意識が乱れるのだろう、軌道はお粗末でぶつかり合う矢すらある。

対し茶々はすぐさま懐から小さな人形を放り投げ、気で空中に固定。

両手を振り小さな人形達を支点にして糸を空中に張り巡らせ、糸の面結界を作り出した。

直後魔法の射手が面結界に炸裂するも、結界は揺るぎもしない。

しかし魔力の微細な煙は現れてしまい、土埃と相まって煙幕となる。

 

「ヤナ・ヨロ・イェヤークト……」

 

 煙幕の中でわざと詠唱を始める青年であったが、エヴァンジェリンはすぐさまその意図を看破。

青年は音声転写魔法を使い、煙幕の中で音を出す馬鹿を演じ、自身の位置を誤認させているのだ。

念のためエヴァンジェリンが介入の為の魔力を貯めると同時、茶々は酷薄な視線を煙の中へとやる。

 

「……やれやれ」

 

 茶々が呟くと同時、煙の中の詠唱が悲鳴へと変わった。

絶叫する青年に向かい、溜息交じりに茶々。

 

「そもそも、魔法の射手を受け止めた時点で、私の人形もお前も煙の外に居たんだよ? それで隠れたつもりか?」

「ば、馬鹿な……、何故俺の場所がっ!?」

「だから、人形が見たのだと言って居るだろうに」

 

 言って茶々が指を動かすと、断末魔が響き渡る。

エヴァンジェリンが魔法で煙幕を吹き飛ばすと、生首と首無し死体とが草原に倒れていた。

それを尻目に、肩をすくめる茶々。

 

「なんていうか、実力を見せられるレベルの相手では無かったね……」

「いや、十分凄かったぞ……」

 

 茶々は何でも無く言うが、先の青年の魔法の射手に込められた魔力は莫大であった。

魔法の練度も無詠唱の戦いの歌を見れば相当錬磨されていると分かる。

防御力と速度を上げ距離を開ける為に調整されており、魔法使い型として弱点も十分に補っていた。

それでもエヴァンジェリンには及ばないだろうが、苦戦するのは間違いない。

それを、相手の戦術ミスがあったとは言え、たやすく始末するとは。

そして。

 

「茶々、さっきの人形で見ていたっていう事だけど……」

「あぁ、気を使って人形を操作するんだけど、ただ糸で操るだけじゃあなくて、命令を与えて自己判断させる事もできてね。これが命令を組み間違えると面倒なんだけど、上手く行くととても使いやすいんだ」

 

 絶句。

エヴァンジェリンは、あまりにも美しい茶々の人形繰りに、視界が開けたかのような気さえもした。

景色が鮮明さを増し、まるで今まで灰色の風景を見ていたかのよう。

体中を沸騰しそうな程熱い血が巡り、今にも爆発しそうだった。

腹腔の内側から上ってくる熱意に、エヴァンジェリンは全身に力を込める。

熱に浮かされたかのような頭の中は、深く考える事なく、気づけばその願望を吐き出していた。

 

「茶々……」

「うん? 何だい?」

 

 小首を傾げる茶々に、エヴァンジェリンは勢いよく抱きついた。

たたらを踏む茶々に、エヴァンジェリンは回した両腕に力を込め、意外に筋肉質な茶々の体に己の体を密着させた。

興奮も相まって汗の香りに僅かに顔を赤らめながら、エヴァンジェリンは茶々の顔を見上げ、叫ぶ。

 

「わ、私に……人形繰りを教えてくれっ!」

 

 

 

2.

 

 

 

 踏み固められた道の外れ。

夜の帳が降りようとする空は、紺に朱が差した見事な色合いであった。

できあがったたき火の前で、エヴァンジェリンと茶々は隣り合って座り込んでいる。

エヴァンジェリンは茶々の肩に頭を預けており、2人はローブ越しに体を触れ合わせていた。

冬近い外気は触れれば切れるような寒さであり、たき火に当たりながら触れ合っていても、尚肌寒さは残る。

エヴァンジェリンは、半ば無意識に茶々の腕を抱きしめ、彼への密着具合を大きくした。

茶々は少し困ったような顔をしたが、すぐにいつもの脳天気な笑顔に戻る。

 

 追っ手を撃退した翌日。

昨夜は追っ手を警戒して夜を越し、今日は魔力的デコイを撒いた上で2人で強化した足で山を乗り越え、違う街道にまで進んで見せた。

ようやくのこと一息つける状態になった2人は、夜を越す準備を終え夕食を取る事にする。

と言っても、塩スープとパンに干し肉が少しという、貧相な食事ではあったが。

そうした後、2人は何をするでも無く、寄り添ってたき火を見つめ続けていた。

 

「60年と少し、前のことだ」

 

 前触れ無く、エヴァンジェリンは口を開く。

しかし茶々は慌てること無く静かに、何も問わずエヴァンジェリンに視線をやった。

まるで100年も前からこうなる事を知っていたかのようだな、とエヴァンジェリンは思う。

 

「当時10歳となる女の子は、幸せの絶頂に居た。優しい領主である父。厳しいが、とても愛してくれた母。2人によくされ、その子は幸せで幸せで、毎日が楽しくて仕方が無かったよ」

 

 エヴァンジェリンは、視線をたき火の中にやった。

思い出す度に涙を誘う、かつてのエヴァンジェリンの自室が脳裏に走る。

 

「人形の好きな女の子だった。部屋中ぬいぐるみだらけで、一人で寝るようになってからは、いつもぬいぐるみを抱き枕にして寝ていたぐらいだ。病気になった時だけは、ぬいぐるみに移しちゃいけないからって一人で寝てたっけ。領主の娘だからな、中々友達ができなくてひとりぼっちの時間が多かったけど、ぬいぐるみが居たから、その寂しさは幾分紛れていた」

 

 チャールズ、ルシウス、ブラッド……。

もっと沢山のぬいぐるみに名前をつけていた筈だったが、今のエヴァンジェリンが姿と名前を一致させる事のできるぬいぐるみは、それぐらいだった。

特に仲良しだったその3つのぬいぐるみは、よくエヴァンジェリンと共にベッドで寝た事であった。

郷愁に胸が切なくなるのに、エヴァンジェリンは眼を細める。

 

「勉強は苦手だったけど、ダンスとか礼儀作法とかは得意だったな。と言っても、父様は何というか、過保護な所があってな。中々その子を社交の場に連れて行こうとはしなかったよ。女の子は随分不満に思って、お抱えの占い師に愚痴をこぼした物だった」

 

 それが、悪かったのだろうか。

何が切欠だったのか。

エヴァンジェリンには、未だに理由は分からない。

しかし。

 

「そんな日々が続いていくうちに、女の子の10歳の誕生日になった。その日、お抱えの占い師についてきてくれ、って言われてな。私は何かサプライズでもあるのかと思ってついていって、そしたら急に意識を失ってな。気づいた時には……」

 

 エヴァンジェリンは視線を空へ。

最後の輝きを見せる太陽が、紺色の空に、何処か不吉な朱を差していた。

朱。

赤。

血の色。

 

「女の子は……、私は、父様の首に噛みつき、血を吸い尽くしていた」

「……っ!?」

 

 息をのむ音。

これまで仕草だけで黙って聞き役に徹していた茶々であったが、流石に驚いたらしい。

この後茶々の表情は、同情のそれに変わるのか、それとも嫌悪のそれに変わるのか。

結果を見るのが怖くて、エヴァンジェリンは話を途切れさせるのが怖くなり、早口に続けた。

 

「父様は骨と皮だけのしわしわになってしまっていて、私が驚いて離れると、床に落ちてしまった。私は目の前のそれを父様だと認めたくは無かったが、肌身離さぬ装飾品を見れば一目瞭然だったよ。そして当然だが、父様は死んでいた。見開いた目がガラス玉みたいになっていて、とても怖かったのを覚えている」

 

 光無き目が眼窩に収まっているその光景は、無機物と有機物が融合しているかのような、奇妙な光景だった。

今でもエヴァンジェリンが瞼を閉じれば、その裏に父の死に顔が浮かび上がってくる。

無念に満ちた顔はまるで巨木のような深い皺に満ちており、まるで風船から空気を抜いたかのようであった。

その瞳は何故、とエヴァンジェリンに問いかけ続けている。

あの日から60と数年、ずっとだ。

そんなエヴァンジェリンを、茶々は何も言わず自由な方の手を伸ばし、抱きしめた。

驚いて目を見開くエヴァンジェリン。

 

「あぁ、ごめん、急だったかな。ただエヴァ、君が……震えていたから」

「あ、うん、ありがとう……」

 

 言って、己が震えていた事に自分より先に茶々が気づいた事に、エヴァンジェリンは軽く頬を染めた。

何だか、恥ずかしかったのだ。

誤魔化すように咳払いをし、続けるエヴァンジェリン。

 

「母様も同じように死んでいた。私は怖くなって逃げ出して、城中を探し回った。メイドも執事も全員同じように死んでいて、私は怖くて泣きながら、誰か生きている人は、と探し回った。そして、唯一の生き残りだった、お抱えの占い師と出会った。良かったと言う私と距離を取りながら、占い師は言った」

 

 一息。

エヴァンジェリンは茶々の腕を抱きしめる力を強くしながら、告げた。

 

「城のみんなを殺したのは、私だった」

 

 思わず、と言った様相で茶々は小さいうめき声を漏らした。

そんな茶々に眼を細めながら、エヴァンジェリンは続ける。

 

「占い師は吸血鬼化の研究をしていて、その実験には一定以上の魔力を持った子供が必要で、その点私は優秀な素材だったらしい。私は、真祖の吸血鬼という類いの吸血鬼になったのだそうだ。そして生まれたて特有の強い吸血衝動に負け、城のみんなを皆殺しにする程血を吸い続けたらしい。私は怒りで頭が真っ赤になって、気づけば占い師を殺していたよ」

「殺せた、のかい?」

「あぁ、何でか、あっさりとな」

 

 拍子抜けする程、あっさりとした最後であった。

あの男は何故自身が殺される可能性を計算に入れていなかったのか、今でも不思議に思うことはあるが、その答えは闇の中である。

そう続けるエヴァンジェリンに、茶々も不思議そうな顔をしつつも、視線で話の続きを促す。

 

「それからは今に至るまで、ずっと放浪の旅だった。当然吸血鬼の私は爪弾きにあっていたし、魔女として追われる事も少なくない。特に、どうやら”立派な魔法使い”という奴らは吸血鬼が大嫌いなようで、魔法を使って私を殺そうとしてきた。最初の魔法を覚えるまでに、一体何回殺された事かな。まぁ、その度に復活したんだが」

 

 苦笑しつつ言うエヴァンジェリン。

幸い魔力と才能だけは溢れんばかりにあったエヴァンジェリンは、ほぼ独学で魔法の射手を会得するに至った。

その後は襲ってきた魔法使いを撃退した時に残した魔法書を使い、現在に至るまでの魔法を会得している。

今に至ってはオリジナル・スペルですら作り上げる程のレベルに達しており、恐らく魔法使いとしての練度は上の中程にまで至っているだろう。

と言っても、その評価は今まで戦ってきた魔法使い達の名乗りと実力を見て、エヴァンジェリンが勝手につけている自己評価であり、今一信憑性に欠けるのだが。

 

「さて、これが私の……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの事情という奴だ。そんな訳で、私は吸血鬼で魔女扱いされやすく、更に魔法使いに追われている。60年以上もだ」

 

 言って、エヴァンジェリンは茶々を手放し立ち上がった。

数歩距離を取ると、外套を翻らせながら180度回転。

茶々に体を向き直らせ、立ち上がって混乱した目でこちらを見据える茶々と、視線を交わす。

 

 エヴァンジェリンの目には、茶々の葛藤が目に見えた。

茶々はエヴァンジェリンに対し、殺意と愛情の両方を持っているよう見えたのだ。

当たり前か、とエヴァンジェリンは内心独りごちた。

茶々は迫害されながらも街々で人々の助けをするほど、優しく正義感のある男だ。

その優しさはエヴァンジェリンを助けようとするだろうし、その正義感はエヴァンジェリンを排除すべきだと告げているだろう。

 

 何故なら、吸血鬼は生きているだけで人間社会に害する存在だからだ。

既に吸血鬼が悪だと人間社会の正義で定められている以上、これからも魔法使いがエヴァンジェリンを殺しに来るのは間違いない。

しかし強者となりつつあるエヴァンジェリンを殺せる魔法使いなど滅多に無く、これからも彼女に挑み命を散らす魔法使いは少なくないだろう。

実際にはエヴァンジェリンは吸血鬼にされた被害者であり、真実を知って彼女を害するのは悪とされる行為だ。

だがエヴァンジェリンを殺そうとする魔法使い達は己の行為を正義だと信じており、富や名声を狙っての者も居るだろうが、同じぐらい民衆の為を思い正義を成そうとする魔法使いも居る。

彼らは勘違いでエヴァンジェリンを殺そうとしているだけで、性根は善なのだろう。

もし彼らが生き残れば、矢張り勘違いで何人もの人を殺すだろうが、その数倍の人々の命を助ける事は予想できた。

この場でエヴァンジェリンを殺す事に成功すれば、未来に命を散らす魔法使い達は減るに違いない。

エヴァンジェリンは、生きているだけで悪なのだ。

先日茶々の劇で出てきた、勇者に殺される悪い竜のように。

そして茶々は、先日の”立派な魔法使い”との戦闘を見るに、彼らとの戦闘経験があるのは確か。

であれば、この程度の事は予想が付いている筈だった。

 

 だが、茶々は何か理由があっての事なのだろうが、エヴァンジェリンに優しかった。

数日だが街での茶々の言動を見るに、確かに彼は女子供にも優しいが、エヴァンジェリンに対する優しさは一際大きな物であった。

エヴァンジェリンの知らぬ彼の過去にその理由はあるのだろうが、何にせよ、彼はエヴァンジェリンに優しくする理由がある。

加えて10日にも満たない時間だが、互いに過ごし情が沸いてきているのだろう。

優しい彼がそんな相手を容易く殺せるとは、エヴァンジェリンには思えなかった。

 

「先日の、人形繰りを教えて欲しいっていうのは、もう気にしなくてもいいぞ。そもそも、お前が私と一緒に旅をするつもりが無ければ、教えてもらう訳にはいかないしな」

 

 続けるエヴァンジェリンに、茶々は一瞬目を見開き、すぐに悩ましげな表情に戻る。

数瞬俯いたかと思うと、何時もより真剣さを帯びた目で、エヴァンジェリンと視線を交わした。

 

「一つ、質問がある」

「何だ?」

「君は……何故、人形繰りを覚えたいと思ったんだい?」

 

 予想外の質問に、エヴァンジェリンは目を見開く。

質問の意図を考え、一緒に旅をするのだと暗に言って居るのかと思うが、茶々の目の触れれば切れるような真剣さを見るに違うだろう。

混乱しつつも、エヴァンジェリンは素直に答える事にする。

 

「そうだな、慣れれば前衛として使えそうだし、昔っから人形好きだったというのも言ったな。そして何より、お前の人形繰りは美しかった」

 

 事実、茶々の人形繰りは芸術と言っても良いぐらいの物であった。

胸の奥に爽やかな風が吹き込み、堆積していたドロドロとした物を吹き飛ばしてしまう程の感動。

生まれてから最大の感動であったと言っても過言では無いだろう。

そう茶々に告げた後、エヴァンジェリンは続けて言った。

 

「それに、小さい頃からの夢だったんだ」

「……何がだい?」

「こう……手で動かすんじゃあなくて、人形と一緒に走り回る事。勿論手とか気とかで動かしているんだっていうのは分かるんだけど、手で動かしていたら、一緒に動けないだろ? だからだよ」

 

 にこりと微笑むエヴァンジェリンに、茶々は虚を突かれたかのように、目を丸くする。

それから両手を開き、視線をその両掌へ。

眼を細め、口元に笑みを浮かべると、茶々は笑顔でエヴァンジェリンへと視線を戻した。

今まで見たことも無いような暖かな笑顔に、エヴァンジェリンは思わず目を瞬く。

そんなエヴァンジェリンに、笑顔のまま、茶々。

 

「そっか……。じゃ、仕方が無いな」

「へ?」

 

 言ってエヴァンジェリンとの距離を縮め、膝を突く茶々。

エヴァンジェリンが何か言う暇も無く、その手を取り、告げる。

 

「エヴァ。私を、君の旅に同行させてはくれないか?」

「……なっ!? 本気なのか!?」

「あぁ、勿論。人形繰りも教えるさ」

 

 絶句するエヴァンジェリンに、茶々は確固たる自信を込めた声で答えた。

その瞳もまた揺れぬ意思に充ち満ちており、嘘や迷いの欠片も見えない。

何が決め手になったのか今一分からないエヴァンジェリンであったが、正直言って嬉しい事この上ない事だ。

エヴァンジェリンは、故に一瞬瞼を閉じると、ありったけの意思を込めて目を開く。

視線が交錯。

互いの意思を確かめ、それから微笑んだ。

 

「あぁ、分かった。これから長くなるだろうが、宜しく頼む」

「こちらこそ宜しくね、エヴァ」

 

 言って、茶々はエヴァンジェリンの手の甲へと口づける。

愛おしげに手の甲に吸い付く茶々の唇の感触に、エヴァンジェリンは何故か父が額や頬に口づけを落としてくれた事を思い出し、涙ぐみそうになってしまった。

 

 

 

3.

 

 

 

「まずは、気や魔力を使わない人形繰りをできるようにならなくちゃね」

 

 言って、茶々はのっぺらぼうの木目がそのまま出ている粗末な人形をエヴァンジェリンに渡した。

不思議そうな顔をしながら受け取り、首を傾げるエヴァンジェリン。

 

「これを使って練習するのか? ……あ、いや、するんですか?」

「宜しい、修行中だけは敬語を使うようにね。普通人形使いは自分で作った人形で練習するものだけど、その位階に達するまでは師匠からこういう仮人形を借りて練習するものなのさ」

「茶々……マスターもそうだったんですか?」

「あぁ。私は母に人形繰りを教わったんだけど、その時もそいつを使って練習したのさ」

 

 言いつつ、茶々は指輪をはめた十指を動かす。

するとエヴァンジェリンが抱えていた仮人形がむくりとおき、飛び降りたかと思うと、くるりくるりと踊り始めたのである。

これには吃驚して、エヴァンジェリンは目を見開いて固まってしまった。

数秒して始動、もの凄い勢いで茶々に視線をやると、苦笑気味に茶々。

 

「流石に糸付けは気でやってるけど、操作自体は素でやっているよ?」

「す、凄い……」

 

 ぽかんと口を開けるエヴァンジェリンに、茶々は人形を拾い上げ、懐から取り出した十字の板から伸びる糸を要所に取り付ける。

飛燕の速度で行われた作業にエヴァンジェリンが呆然としていると、はい、と茶々が仮人形を再び差し出した。

しずしずと受け取り緊張に唾をのむエヴァンジェリンに、茶々は流れるような動きで背後に回る。

エヴァンジェリンが気づいた時には後ろから抱きしめるように両手を伸ばし、エヴァンジェリンの両手を柔らかに包むよう握っていた。

ふと父が自身を後ろから抱きしめてくれた時の事を思い出し、エヴァンジェリンは目を潤ませたが、瞬きで強引に涙を引っ込めさせる。

気づかず、続ける茶々。

 

「最初はこうやって、エヴァの手を動かして人形の動かし方を教える。見計らって自分でやってもらうようになるから、きちんと覚えてね」

「は、はい」

「じゃ、行くよ。まず、姿勢の作り方から……」

 

 茶々は、優れた人形使いであるだけでなく、優れた師匠でもあった。

優しく語る理論は非常に整然としており、しかもよく段階を踏んでいて、人形繰りが初めてのエヴァンジェリンにも分かりやすいようかみ砕かれている。

そのお陰か、数時間後エヴァンジェリンはどうにか一人でも仮人形を動かせるようになった。

とは言え十字板はまだ必要だし、複雑な動きをさせると糸が絡まってしまう事もある。

悪戦苦闘するエヴァンジェリンに、つきっきりの時間を終えた茶々はにこやかに告げた。

 

「じゃあ、仮人形から糸を外して、仕舞ってご飯にしようか。準備は私がするよ」

「は、はい……疲れたぁ」

 

 と言って肩の荷が下りたと言わんばかりのエヴァンジェリンに、茶々は微笑みと共に告げる。

 

「ただし午後は自分で糸を付けてもらうから、きちんと仕組みを理解しながら外すように」

「え゛」

「あ、でも料理が出来るまでに外し終わらないとお昼ご飯は抜きだね」

「え゛」

「そして午後一人で糸付けできなかったら晩ご飯が抜きだね」

「え゛」

 

 淑女が出してはならない類いの声を出すエヴァンジェリンに、茶々はニコニコと微笑んでいた。

何かの間違いかとエヴァンジェリンが祈るような目で見上げても、張り付いた笑みであるかのように微動だにしない。

まるで重力が茶々の方から押し寄せてくるかのような、圧倒的な何か。

そんな無言のプレッシャーに負け、エヴァンジェリンは涙ぐみながら作業に没頭するのであった。

その横で茶々は、明るい声で続ける。

 

「あ、罠に兎がかかってた。ラッキーだね、今日のお昼は兎のスープだよ」

「うぐぅ……」

「いやぁ、あったまりそうだなぁ……。うんうん、中々良い兎だ、柔らかく煮込んでおこうっと」

「ぐぬぬ……」

 

 エヴァンジェリンが顔を真っ赤にしながら作業をする横で、茶々は楽しそうに料理を作った。

今料理にありつこうとすれば夕食が食べられず、夕食にありつこうと丁寧に理解しながら解けば昼食にありつけない。

そして配分をミスしてしまえば、最悪両方とも食べられない事すらも有りうる。

視線をちらりとやれば茶々の調理は最終段階に来ており、タイムリミットは間近。

慌ててエヴァンジェリンは最後の方の糸を外し、駆け足で仮人形を仕舞い、駆けつける。

直立不動の姿勢で涙目になりながら見てくるエヴァンジェリンに、にこりと茶々。

 

「うん、ギリギリだけどご飯食べてもいいよ」

「やった!」

 

 思わず両手をあげて喜ぶエヴァンジェリンに、しかし茶々は笑みの形を崩さぬまま昼食となった。

兎のスープにパンという豪華な食事であるが、超人的な力を持つ2人にとって野生動物を捕まえる事は容易く、珍しい食事ではない。

それでも頭も指も使いに使った後の食事である、不味い筈が無かった。

茶々も人並みに料理ができる人間であるのもそれに拍車をかける。

 

 食事と食休みを挟み、2人は再び修行に入った。

エヴァンジェリンは仮人形に糸をつけようと悪戦苦闘している。

茶々の指摘は、やってしまっては不味い類いの間違いを犯しそうになった時だけ。

後はさっきの授業を思い出せば出来るはずだよ、と告げ、彼はゼロの制作に取りかかっていた。

 

「むぅ……、放任じゃないですか?」

「無理なら止めても良いんだよ?」

「誰が止めるなんて!」

 

 良いように扱われていると自覚しながらも、エヴァンジェリンは作業の手を止めない。

最初はともかく、それ以外は自分で試行錯誤する大切さを知っているからだ。

エヴァンジェリンの場合、魔法の射手を覚えるまでの悪戦苦闘がそれ以降に貴重な財産となっている為であった。

黙々と続けるエヴァンジェリンであったが、それでも気が散ってしまったのか、ふと呟く。

 

「そういえば、ゼロはどういう人形を目指して作っているんですか?」

「ん、こいつは機能的には戦闘特化だね。このぐらいの大きさと重さが無いと、刃物を上手く振り回せないからね」

 

 言って茶々が持ち上げるゼロは、エヴァンジェリンの膝ほどまでの背丈があった。

とは言え人形である、頭が大きい為等身は低く、体がしめる割合は低い。

そういえば、とエヴァンジェリンは数日前の夜の茶々の人形達が、剣術の類いを使えていなかった事を思い出す。

ただ振り回して切りつけるだけで対処できる敵はそう多くない、茶々はそれを人形の数で補っているが、特化した一体もあったほうが良いという事か。

そう理性では分かるも、エヴァンジェリンは思わず呟いた。

 

「戦いの為の人形……何だか、寂しいですね」

「まぁね。だから機能的にはって言っただろう? 私には目指している人形があってね、それにたどり着く為の作品でもあるのさ。このゼロは」

「目指している人形?」

 

 思わずエヴァンジェリンが返すと、茶々は視線をエヴァンジェリンの手元へ。

あ、と自身の手元が完全に止まってしまっている事に気づくエヴァンジェリンだったが、渋い顔をしつつも茶々は続けた。

 

「まぁ、先に私の到達点を知っておくのもいいか。いいかい、人形とは何だと思う?」

「えっと? ……人の形をした物」

「正解。なら、究極の人形とは何だと思う?」

 

 言われ、エヴァンジェリンは思案する。

人間と見分けの付かない、最高に精密な人形だろうか?

しかしそれだと、先のゼロがそこにたどり着く為の人形という話から外れる。

ならば人間そのものではなく、すると……。

そこまで考え、エヴァンジェリンは目を見開いた。

ぱくぱくと口を上下させ、呻く。

 

「まさか……」

「魂のある人形さ」

 

 絶句。

茶々の言葉は、この時代の欧州においてあまりにも冒涜的な言葉であった。

魂とは神のみが作り出せる物とされている。

魂のある人形を作るというのは、すなわち魂を作る事に繋がり、神に挑む事に匹敵するのだ。

死者蘇生やホムンクルスの制作に匹敵する、神を冒涜する所行であった。

言葉も無いエヴァンジェリンに、茶々は苦笑しつつ続ける。

 

「と言っても、魂を作る方法っていうのは、別に冒涜的な手段を使おうっていう訳ではないさ。東方に伝わる、異国の伝説に習ってみるっていうだけの事さ」

「い、異教の……? そんな、異端審問とかされ……って、私は吸血鬼だし、一緒に旅しているマスターも今更か」

 

 混乱するエヴァンジェリンに微笑みつつ、茶々は辺りに視線をやった。

既に先日の戦闘があった草原は通り過ぎ、木々がまばらに生える林の中である。

少し開けた場所の中心は火をおこした為、土が露わになっていた。

 

「東方……日本という国では、古くから森羅万象に神が宿るとされていてね。要するに、神様がいっぱいいるとされているんだ。その中の一つの考え方に、長い年月を経たり長く生きた依り代に、神や霊魂が宿ると信じられているんだよ」

「神様が……いっぱい?」

 

 今までキリスト教以外の教えを知らなかったエヴァンジェリンは、目をぐるぐると回しながらも何とか話についていく。

それを確認しつつ、茶々。

 

「特に大切に心を込めて扱った物はそういう付喪神っていう物になりやすいとされていてね。そこで私は、ゼロをこれ以上無く頑丈で長持ちして、それでいて肌身離さずに持つ人形として作っているんだ。ま、他はともかく戦闘用なら手放せないだろう?」

「う、うん……」

「そして出来たゼロに心を込めて使い続けていれば、何時の日か付喪神として魂が宿った、究極の人形になり得るんじゃあないか……。そう思って、私はゼロを作っているんだ」

 

 まぁ、世間には悪魔憑きの人形って見られちゃうだろうけどね。

そう締める茶々の目は、エヴァンジェリンの目にもとても輝いて見えた。

吸い込んだ光を何倍にもして吐き出しており、見る者の心を輝かせるような、希望に満ちた目。

エヴァンジェリンもまた、その輝きに魅せられ、心を弾ませる。

自分もこんな輝きを得たい、そう思わせるような輝きが茶々の目にはあった。

 

「私も……」

「うん?」

「私も、作る!」

 

 目を瞬く茶々。

対しエヴァンジェリンは、胸の奥に生まれた光を口にしたくて、しかし容易く言語化する事ができない。

もどかしくさに身を捩らせながらも、彼女は話した。

 

「私も何時か……魂のある人形を、作ってみせる! だってその、とても凄い事だと思うし、それに……」

 

 言って、エヴァンジェリンは両手を己の胸に当てた。

吸血鬼となってもまだ鳴り続ける心臓が、己の命の鼓動を響かせている。

 

「それに、私と同じ時間を生きられる、友達になってくれるかもしれないから……!」

 

 茶々は虚を突かれ、目を見開いた。

瞬間、空間は暖かな希望に満ちていた。

夢が持つエネルギーが圧力となって感じられる程で、しかしそれは外から押し込める物ではなく、内側から弾けるぐらいの強さであって。

エヴァンジェリンは、それが茶々にも伝わっているのだと信じていた。

確信していた。

それほどまでにその瞬間は素晴らしく、エヴァンジェリンは、きっと私はこの一瞬の事を生涯忘れないだろう、と思った。

対し茶々は僅かに硬直したかと思うと、すぐに相好を崩し、暖かな笑みをエヴァンジェリンに向ける。

数瞬、希望に満ちた視線達が交錯した。

くすり、と口元を笑みの形にし、茶々。

 

「そっか、それならまず、仮人形の糸付け、頑張らないとね。間に合わないとご飯抜きだよ?」

「あっ!? そ、そうだった、ごめんマスター!」

 

 と、現状に気づいたエヴァンジェリンは涙目になりつつ作業に舞い戻る。

茶々は暖かな目つきで、じっとそれを見守っているのであった。

 

 

 

 

 




ちなみに、エヴァの敬語やマスターはもうそんなには出てこないです。
だらだら修行風景ばっかりやる気は無いので。

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