悪の魔法使い   作:アルパカ度数38%

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1.

 

 

 

「父様、怖いよう」

 

 エヴァンジェリンは、膝を抱きしめながら言った。

広い談話室、久しく父が家族の時間を持とうとしたが、外は生憎の雨であった。

よって談話室の暖炉の周りで過ごす事となったのだが、外では雷さえもが落ち始めたのである。

稲光。

一瞬の後に、轟音。

エヴァンジェリンは飛び上がり、尻から落ちて痛そうな顔をした後に再び膝を抱きしめ、ぶるぶると震え始めた。

 

「エヴァ、淑女たるもの、雷如きに怯える物ではありませんよ?」

「まぁまぁ、まだ子供だ、いいじゃないか……」

 

 厳しい声を上げる母に、父はそう告げながらエヴァンジェリンの元へと歩いてくる。

エヴァンジェリンの体をその両腕が抱きしめ、暖かな体温がエヴァンジェリンの体を包んだ。

暖炉の暖かさとは別種の、眠りを誘うような、とても安心できる暖かさであった。

 

「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫……」

 

 エヴァンジェリンを抱きしめながら、父はずっとそう唱える。

エヴァンジェリンが泣き出して止まらない時は、父が何時もこうしてくれた物だ。

エヴァンジェリンは、家族の中で父が最も好きだった。

エヴァンジェリンを厳しく教育する母と違い、父は何時もエヴァンジェリンに優しかった。

だから、たまにこうやって構ってもらえる時は本当に嬉しくて仕方が無くて、顔がにやけてしまうのである。

自分は父が大好きで、もうこんなに安心したんだから大丈夫だよ。

そんな風に自分の顔を見せたくて、エヴァンジェリンは自身を抱きしめる父の方に振り向いた。

 

「……え」

 

 エヴァンジェリンを抱きしめているのは、父ではなく茶々であった。

目を丸くすると同時、エヴァンジェリンの脳から霞がかった部分が消えていって……。

 

「……ぁ」

 

 小さく声を漏らし、エヴァンジェリンは目を瞬いた。

不快な感覚に視線をやると、窓から降り注ぐ陽光がエヴァンジェリンの顔に差している。

吸血鬼となった時から日光を克服しているエヴァンジェリンだが、未だに日光が体に当たる感覚はあまり好きになれない。

夜の終わりを告げる朝日であるのなら尚更である。

目元をこすりながら上半身を持ち上げると、隣のベッドでは軽い寝息を立てて茶々が眠っていた。

その顔をぼんやりと眺めながら、エヴァンジェリンは思案する。

 

 エヴァンジェリンは、久しく父の夢を見た。

優しくおおらかで、エヴァンジェリンに血を吸い尽くされて死んだ父。

そこから茶々に自身の過去の話をした事を連想し、エヴァンジェリンは眼を細める。

 

 エヴァンジェリンが知っている茶々の過去は、さほど多くない。

父に日本人を、母にフランス人を持つハーフで、父から薬学を、母から人形繰りを習った事ぐらいか。

茶々は不思議なぐらいに過去を臭わす事を言わなかったし、時折何か口にしそうになっても、すぐにそれを飲み込んでしまう。

確かに、差別を受けながら旅をし続けてきた事は暗い話にしかならず、わざわざ口にするでもないかもしれない。

しかし彼にも少年時代はあり、楽しかった時代はある筈だ。

でなければ、彼ほどに正義感のある人間にはなり得ない。

 

 知りたい、というのがエヴァンジェリンの本心であるが、暗い部分も含まれるだろう彼の過去に足を踏み入れるのに躊躇していた。

何せエヴァンジェリンは、吸血鬼化するまでは殆ど両親としか話したことが無く、吸血鬼してからはコミュニケーションは絶無、殺し合いぐらいしかした事が無い。

研ぎ澄まされた心は欺し合いに敏感になり、嘘偽りを見抜けるようになったが、円滑な人間関係という名の経験はまるで無かった。

要するにエヴァンジェリンは茶々を傷つける事を恐れていたし、傷つけずに過去を問う自信が無かったのだ。

故にエヴァンジェリンは、未だに茶々の過去を聞けていない。

 

「……我ながら、格好悪い事だ」

 

 言ってエヴァンジェリンはベッドから抜け出した。

ネグリジェ一枚の肌に、朝の空気は刺すように冷たい。

自然素早くなる動きで茶々のベッドに近づき、エヴァンジェリンは茶々の顔に手を伸ばした。

難しそうな表情をしている顔に手を伸ばし、その頬に触れる。

毎朝切っているヒゲは起きる前が一番伸びており、その感触は、茶々が童顔ながらも20代半ばだったという事を思い出させた。

少しジョリジョリする顎を撫でていると、エヴァンジェリンは今一度父の事を思い出してしまう。

 

「お前は……何時になったら自分の過去を教えてくれるんだろうな」

 

 思わず零してから、エヴァンジェリンは自信の言葉の自分勝手さに愕然とした。

問いたくても問えない事を、茶々がくみ取って話し出してくれる事を期待する言葉。

それ単体ならただの甘えだが、相手が茶々であるという事がその意味を変える。

エヴァンジェリンは、茶々と父を重ねていた。

目の前に居るのにその人の事を見ないで会話するのは、礼を失する行為だと、誰よりもエヴァンジェリン自身が思うのだ。

何時も気づけばそうしてしまっている自分に、エヴァンジェリンは思わず歯を噛みしめた。

大きく息を吐き出し、続ける。

 

「いや……、何時の日か、私の方から聞くさ」

 

 言って茶々の顔から手を外し、窓の外を見た。

そこそこの金を払った宿だけあって、窓の外の眺めは悪くなく、陽光の輝きが街を照らす様が目に見える。

眩しく不快で、それでいて何処か手を伸ばしたくなるような光。

それに照らされながら、エヴァンジェリンは小さく溜息をつき、己のベッドへと戻って行く。

 

 エヴァンジェリンと茶々が出会ってから、1年の時が過ぎていた。

 

 

 

2.

 

 

 

 街での人形劇は上手く行った。

演目は奇しくもエヴァンジェリンが初めて見たあの勇者と悪い竜の話である。

相変わらず今一気持ちよくできない劇を終え、地面に落ちたお捻りを拾い集めると、2人は屋台の並ぶ区画へ向かった。

 

「今日は私も、少しは役に立てたか?」

「あぁ、勿論。お陰で最近は劇をやるのも楽になってきたね」

「ほ、ほう、そうか……」

 

 思わず俯き顔を赤らめてしまうエヴァンジェリン。

すぐに、これではまるで自分が嬉し恥ずかしで顔を赤らめているようではないか、と我に返る。

両手で顔を押さえて顔の熱を吸収しようとするも、そんな事関係ないとでも言わんばかりに顔の熱さは収まらない。

次善の策として、慌てエヴァンジェリンは小走りになって屋台へと駆ける。

 

「は、早く行くぞ!」

「そんなに急がなくともなくならないだろうに」

「お腹減ったんだ!」

 

 言ってから、もしかして淑女がお腹が減ったなどと言う事の方が恥ずかしいのでは、と思うエヴァンジェリンであったが、頭を振って過去の事は忘れた。

墓穴を掘る、という言葉が浮かんできたが、それも振り払い屋台にたどり着く。

遅れてやってきた茶々と共にハムとチーズのガレットを頼み、できあがるのを待っている間に互いに財布を取り出した。

金銭はエヴァンジェリンと茶々で別々に管理しており、こういう時は一人ずつ出すのがいつものところだ。

不思議そうな顔をする店主を尻目に小銭を選んでいると、甲高い子供の悲鳴。

 

「あぁ、物取りっ!」

 

 声に思わず視線をやると、叫んだ子供の元から走り去る影が一つ。

エヴァンジェリンがちらりと視線を茶々へやると、首肯が帰ってくる。

正義感の強い、茶々らしい許しであった。

 

「ただし、他の人に怪我させないようにね」

「あぁ」

 

 言ってエヴァンジェリンは魔力糸を生成。

足音から物取りの歩幅や逃走経路を推測し、足に引っかけるように魔力糸を張り巡らせる。

直後、物取りが悲鳴と共に転げ、子供の財布を取り落とした。

すかさずエヴァンジェリンが財布を拾うと、物取りは立ち上がりながら声を荒げようとするも、硬直。

疑問に思ってエヴァンジェリンが視線をやると、凍てついた視線の茶々が物取りを睨んでいた。

その視線がこのまま捕まれば不味いという現実を思い出させたのだろう、物取りは舌打ちし人混みに紛れ姿を消す。

遅れて、財布を盗まれた子供がエヴァンジェリンの元へ。

金髪を揺らし、その間から青い瞳で不安げにエヴァンジェリンを見やる。

 

「ほれ、お前の財布だろ? もう無くすなよ?」

「あ、ありがとうっ」

 

 言って受け取る子供を尻目に、エヴァンジェリンは屋台からガレットを受け取った。

同様にする茶々が、心配そうに声を。

 

「それにしても、大分重そうな財布だけど、親御さんからお使いでも頼まれたのかい?」

「そ、その……」

 

 困り果てた顔で、子供は視線を自らの靴へと落とす。

何やら深刻そうな事態に、エヴァンジェリンは茶々を顔を見合わせた。

開口一番、茶々が一言。

 

「長くなりそうなら、そこベンチでどうだい?」

 

 アリアという子供曰く。

片親である父アドルフに兄ダニエルの家族で行商をしながら暮らしていたが、この町にたどり着いてすぐ、父が病を発症しまったのだそうだ。

しかし病は流行病の一種で薬が高騰しており、とても買える値段では無い。

と言うのも、アドルフは最近大きな仕入れを行ったばかりで、さほど手元に金が残っていなかったのだ。

ならせめて自分たちが薬草の類いを取ってこようと、民間療法に使われる薬草を採りに行く事にしたのだ。

されど病気の父を一人で置いていく訳にもいかず、兄は薬草を採りに、妹は父の世話をするという事にしたのだそうだ。

現在はそのための買い出し中で、慣れぬ買い物に戸惑っていた所でスリにあってしまったのだと言う。

 

「なるほどねぇ……」

 

 言いつつペロリとガレットを食べ終えた茶々は、思案顔になった。

それを尻目に、エヴァンジェリンが口を開く。

 

「で、ダニエルとやらが薬草を採りに行って、どれぐらい経ったんだ?」

「その、丸一日、まだ帰ってきて無くて……。お兄ちゃん……。すぐ近くの山の低い所で、そんなに時間はかからないはずなのに……」

「わー、こら泣くなっ、なんか私が悪いみたいだろうがっ!」

 

 顔をくしゃくしゃにし始めたアリアに、慌てるエヴァンジェリン。

このタイミングで目の前で泣かれると、自分が泣かせてしまったみたいでばつが悪い。

あの手この手でエヴァンジェリンが必死でアリアを慰め始めるのに苦笑しつつ、茶々が告げる。

 

「さて、どうだろう。私は薬の作り方には心当たりがあるんだけれども」

「えっ!?」

 

 弾かれるように、泣きそうだった顔を上げるアリア。

あまりにも簡単に泣き止むアリアに、エヴァンジェリンは顔をひくつかせた。

自分がせっかく必死で慰めたというのに、茶々の言葉ならすぐに泣き止むのか。

それは勿論、茶々の正義感による行いには年季が入っているし、慰め方も上手いのだろうが。

胸の奥にもやもやとした物をためるエヴァンジェリンに気づかず、茶々はいつも通り、人好きのする笑顔で続けた。

 

「あぁ、けれど手元に材料が無いから、もし依頼されたら採りに行かなきゃいけない。そしたら、偶然君のお兄ちゃんと出会うかもしれないな」

「あっ!」

 

 ぱぁっ、と明るくなるアリアの顔に、茶々。

 

「偶然出会ったら、一緒に帰るぐらいはしてあげてもいいかなぁ」

「い、依頼! 依頼します、お父さんを治す薬、くださいっ!」

「受けたとも。さ、病気を診てみない事には始まらないからね、君のおうちに案内してくれるかい?」

「はいっ!」

 

 言って先導しようとするアリアについていこうとして、エヴァンジェリンが静かなのに気づき、茶々は視線を彼女へ。

視線に、子供っぽいことにムスッとしてしまっている顔を治そうとするエヴァンジェリンだが、そう簡単にはいかない。

せめてもの抵抗として、エヴァンジェリンは茶々から顔を背ける。

そんなエヴァンジェリンの頭に、ぽん、と茶々が手を乗せた。

暖かな体温に反射的に相好を崩しそうになるエヴァンジェリンだったが、それもなんだか何かに負ける気がして、素直にできない。

必死で不機嫌さをアピールするという、先の考えからすれば本末転倒なエヴァンジェリンに、しかし優しげな顔で茶々。

 

「私じゃあダニエルくんを上手く探せそうにないからね。外に出たら、エヴァが頼りだ」

「……まぁ、確かにそうなるか」

 

 人形繰りでも人形をばらまけば人海戦術で迷子を捜すことぐらいできるが、それだと茶々がその間無防備になる。

対しエヴァンジェリンの魔法でダニエルを探せば、どちらも無防備にならずに迷子捜しをできる。

当然魔法の波動は出てしまうが、追っ手はここ1ヶ月ほど出ておらず、完全に撒いた状態であった。

納得するエヴァンジェリンに、更に茶々は頭に手を置くだけではなく撫で始める。

 

「ぬ……」

「君だけが頼りなんだ。お願いするよ?」

「……あとで、果物買え」

「あぁ、勿論ですとも、お姫様」

「宿に帰ったら抱っことかしろ」

「承知しました、お姫様」

「よし、分かった」

 

 謙った物言いをする茶々に、腕を組んで頷くエヴァンジェリン。

そんなやりとりをする2人に、少し先行していたアリアが叫ぶ。

 

「こっちだよ、茶々さん、エヴァちゃん!」

「あぁ、今いくよ」

「っていうか、私はちゃん付けなのかっ!」

 

 吠えた後、エヴァンジェリンは靴裏で街の石造りの地面を蹴る。

苦笑顔の茶々がそれについてゆき、2人はアリアに先導されていった。

 

 

 

3.

 

 

 

「……あそこだ」

 

 言って、エヴァンジェリンが崖を指さす。

その事実に眉をひそめ、茶々は森から崖へと歩み寄り、視線を崖下へ。

しかし崖は途中が盛り上がったような作りになっており、下の光景は視界に入らない。

水が流れる音はするので、川があるのだろうが。

 

「どうする、降りるか、回り道か」

「降りよう。先に行ってくれ、魔力有りの魔法無しで。行けるね?」

「あぁ……って、この場合は”はい”の方が良かったか?」

「修行の一環って言っても、別にきちんとした時間を取っている訳じゃあないし」

「分かった、行ってみる」

 

 言ってエヴァンジェリンは、手近な木々数本に糸を張り巡らせた。

それを命綱にした上で魔力で糸を伸ばし、ゆっくりと下へ降りて行く。

念のため茶々は助ける準備はしておくが、金髪を揺らしながらのエヴァンジェリンの降下は危なげなく、手助けは要りそうにない。

みるみるうちに育って行くその技量に、茶々は薄く微笑みを漏らす。

 

 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは天才だった。

一を聞いて十を知るですらまだ不足、一を聞いて百を知ると言わんばかりの習熟の速度。

加えて、茶々の方針で自身での試行錯誤を何度も試させているので、基礎も応用力も満ちあふれんばかりである。

茶々があの領域に達したのは、糸繰りを修行し始めてから5年近くを費やした頃か。

目を見張るような速度で糸繰りを習得するエヴァンジェリンは、茶々が自信を喪失しかける程の才能であった。

 

 惜しむらくは、師が茶々である事だろうか。

実力こそ師であった母を超えたと自負している茶々であったが、今一厳しくしきれない性格の自身は師匠向きではないと断じている。

加えて、既に魔法有りとすれば戦闘能力はエヴァンジェリンの方が上という事もあった。

幸いエヴァンジェリンは戦闘能力で劣っている茶々を尊敬してくれる良い弟子だったが、それでも師としてこちらが不足気味である事は確か。

時たま茶々は、己の不甲斐なさに本気で落ち込んでしまう事さえあった。

辛うじて、未だエヴァンジェリンにそれを悟らせてはいなかったが。

 

「お~い茶々、降りたぞ」

 

 結局茶々の手を借りずに降りたエヴァンジェリンが、声をかけてきた。

思案事を頭から押しやり、茶々は空中に透明な気の滑車を固定。

透明に限りなく近い糸を併用し、崖を数度蹴りながら下へと降りる。

己の半分程の時間で崖下に到着した茶々に、尊敬の視線を向けるエヴァンジェリン。

 

「今のは?」

「空中に気で滑車を作ったのさ。まだ戦闘用に使える強度は無いけど、一々人形を使わなくても済むから便利なのさ」

 

 出会った時の戦闘で茶々が用いた小人形を用いた滑車は、頑健だが場所が一瞬でばれてしまい対処されやすい。

対し今の技法を昇華すれば、決闘場のような障害物の無い場所で敵と向かい合ったとして、相手を瞬く間に肉片に変えるも捕縛するも自由である。

その事実に気づいたのだろう、きらきらと目を輝かせるエヴァンジェリンに、肩をすくめ茶々。

 

「で、ダニエルくんの物と思われる魔力は……あっちかな?」

「あ、ああ。まぁ、微妙に血が続いているからな、道理だろう」

 

 言ってエヴァンジェリンが行く道には、血の飛沫が点々と続いている。

切り傷かなにかを、飛沫の大きさからすれば恐らく上半身に負ったのだろう。

推測をエヴァンジェリンに伝えつつ、茶々はエヴァンジェリンと共に崖下の川沿いを行く。

 

 川沿いの道は狭く、外から黄色がかった白砂、黒岩と続き、中心を川が流れ、反対岸には同じような光景が並んでいる。

暫くは砂を踏みしめる平坦な道であったが、すぐに道は上り坂になり始め、次第に黒岩が占める面積が増えてきた。

岩の坂は段差が大きく、強化無しのエヴァンジェリンであれば上れないかもと思える程大きな物すらある。

とは言え当然のように自身を強化している2人である、易々とそれらを乗り越えていった。

次第に崖だった両端はどんどんと左右に離れて行き、代わりに緑が差してくるようになる。

気づけば森の中の川を上って行く次第となっていた。

 

「これだと血だけではなく、魔力を辿らねば追うのは不可能だったな……」

「まぁね。でも血を嗅ぎ付けた獣がダニエルくんを追っているかもしれない、心配だね」

「あぁ、急ごう」

 

 言って2人が駆け足になろうと屈んだ、次の瞬間である。

ずどぉぉおん、と。

大砲を撃ったかのような轟音が響き、野鳥が空へと羽ばたく音が遅れて聞こえた。

方向は魔力を追った先である。

視線を交わし合い、同時に頷くと、2人は最大強化した身体能力で一気に音の元へと駆けた。

 

「う、うわぁぁっ!」

 

 変声期前の男の子の悲鳴。

エヴァンジェリンが歯を噛みしめるのと同時、茶々の耳は、肌は、脳髄は捕らえた。

音の元と思わしき幼い人体を。

その前に立ちはだかる、黒き巨体の熊を。

己の瞳の温度が下がって行くのを感じつつ、茶々は糸を放った。

人形使いとしての高い空間把握能力に従い、糸が伸長。

繊細な指使いに従い、熊の全身を絡め取り、周囲の木々を支点にし捕らえる。

 

「無事かっ!」

「大丈夫かっ!」

 

 茶々とエヴァンジェリンの声が重なると同時、2人は森の中の開けた場所に飛び出た。

茶々の手によって静止した熊と、その数歩前で尻餅をついた黒髪黒目の少年が視界に入る。

幸い熊はぶるぶると震えるばかりで最早動けず、目前の少年も熊から怪我を負ったようではない。

崖から落ちた割りには軽傷で、所々に痣はあるが、骨折や酷い切り傷などは無かった。

 

「えっ!? ……え!?」

 

 茶々は混乱する少年へと、ピンと張った糸を避ける道を通ってたどり着く。

腰が抜けた様子の少年の頭をそっと抱きしめ、可能な限り暖かな声で告げた。

 

「大丈夫、もう熊はやっつけたから、もう心配は無いよ」

「え、でも、まだそこに……」

 

 震えた声のままの少年に、茶々はにこりと微笑みながら外套を持ち、それから指を微細に動かした。

ぶつり、という鈍い音。

耳が痛くなるような静謐の後、重い物が落ちる音が続く。

同時、噴水のように血が吹き出すのを予期し、茶々は用意していた外套で血飛沫を防いだ。

血が収まるのを待ってから茶々が糸を回収、外套を下ろすのと殆ど同時、首を失った熊の巨体が後方へと倒れる。

どずん、という地震と間違うような重量感のある音。

茶々は少年の肩に手を置き、体を離し微笑んだ。

 

「ね、大丈夫だろう?」

「…………!」

 

 かくかくと首を上下させる少年に、続け問う。

 

「所で君が、ダニエル君で良かったかい?」

 

 目を丸くしてから、驚きで声が出ないままなのだろう、再び首を上下させるダニエル。

思わず笑みを漏らし、茶々はエヴァンジェリンと視線を合わせ共に親指を立て合うのであった。

 

 そこからはとんとん拍子に話が進んだ。

解体し血抜きをした熊肉を3人で手分けして持ち、山をさくさくと下る合間に薬草も手に入った。

街では真っ直ぐにアドルフの宿――偶然にも茶々とエヴァンジェリンと同じ宿であった――にたどり着き、エヴァンジェリンに子供達の相手を頼み、茶々はアドルフに薬を作るのに専念。

幸いアドルフの病は流行病に似ていただけで違う類いの病気であり、特定の薬効が無ければ治りにくい代わりにそれがあればすぐ治る類いの病気であった。

汗も下痢も変な咳も無くなったアドルフは静かに夕暮れまで眠った後、起きると立ち上がれる程にまで回復していた。

とは言え病人である、茶々は恐縮するアドルフを無理矢理ベッドに押し込み、世話を焼くのであった。

 

「申し訳ない、ダニエルとアリアを救っていただいた上に薬を作っていただいて、ばかりか看病まで」

「何、物のついでですよ。この街では人形劇がやたら人気でしてね。大道芸人は余り儲けすぎると睨まれるんで、公演回数を自粛していて、暇だったのです」

「おお、茶々さんは人形劇を営んでおられましたか。回復したら、是非見せていただきたいものですな」

「面白さはあの子達の保証済みですよ。ほら」

 

 と言って茶々が指さすと、エヴァンジェリンが短い人形劇をしており、それを真剣な目で見入っている兄妹が視界に。

まだまだ茶々から見れば拙い手際ながらも、1年間隣で見て来たエヴァンジェリンの人形劇は、致命的なミス無しに続いて行く。

暫く無言でそれを見やる2人。

エヴァンジェリンへの指導内容を吟味している茶々に、不意にアドルフが声を漏らす。

 

「人形繰りは、茶々さんがエヴァンジェリン嬢へとお教えに?」

「えぇ、不肖の弟子ですよ」

「そうですか……、師弟というより、兄妹に見えるぐらい仲が良く見える物ですね」

「……え」

 

 茶々は、心臓が跳ね上がるのを感じた。

脊椎に氷柱を差し込まれたかのような悪寒。

心臓が跳ね回り、凍てついた冷血を全身に巡らせる。

かじかんだ四肢が質の悪い人形のようなぎこちない動きを見せ、ゆっくりと茶々はアドルフへと視線をやった。

黒髪黒目の、恐らくは茶々より一回り年上の中年は、怪訝そうな顔をしてみせている。

 

「あぁいえ、家の子はちょうど、兄が黒髪黒目で妹が金髪蒼眼でしょう。なので茶々さんとエヴァンジェリン嬢が重なってしまいまして。……その、気に障ってしまったでしょうか?」

「い、え……、とんでもない。私は見ての通り異国の顔立ちですから、少し意外でして」

 

 言って、茶々は表情筋を意識して統制。

動揺する事なんて無いじゃあないかと自身に言い聞かせ、微笑みを作ってみせる。

そんな茶々の表情に、何を勘違いしたのか、微笑みと共にアドルフ。

 

「確かにそうですが、2人ともとても仲が良くて、思わず兄妹のように見えてしまったぐらいだったのですよ。もしかしたら、本当に兄妹なのかも、と思えるぐらいでしたとも」

 

 茶々は、己の内心が重くどす黒い何かに覆われていくのを感じた。

どろどろと殺意と憎悪がうねりあげるのに、今すぐそれらを吐き出したい衝動に駆られるが、どうにかそれを押し込める事に成功する。

代わりに四肢を支配した冷血の芯にまでどす黒い感情が染み渡り、全身が統制された憎悪に満ちて行くのを感じた。

行き場の無い感情に蓋をしながら、茶々は微笑み、告げる。

 

「いやはや、そう言われると何だか恥ずかしい物ですねぇ」

 

 病み上がりの体調も重なってか、アドルフは茶々の激情に気づかず、にこにこと微笑んでいた。

 

 

 

4.

 

 

 

「茶々、大丈夫か?」

「あぁ……」

 

 言いつつも茶々は横になってばかりおり、何処か遠くを見ているようだった。

心ここにあらずと言わんばかりの茶々は、酷く弱っているようにエヴァンジェリンには見えた。

アドルフが治ってからは、夕食の筈であった。

2人は狩ってきた熊の一部を宿に渡していたので、夕食は豪勢な物になったのだが、茶々は気分が優れないと言って夕食を固辞した。

エヴァンジェリンが知るここ1年で、茶々が食事をとれないなど、初めての事である。

心配するエヴァンジェリンだったが、茶々に勧められアドルフ達と共に食事をとった。

戻ってきても茶々は横になっており、かといって眠りについている訳ではない。

時折エヴァンジェリンが声をかけても、虚ろな返事が返ってくるばかりであった。

仕方ない、とエヴァンジェリンは、聞くにしても明日以降にしようと心に決める。

 

「それじゃあ、蝋燭は消すぞ……、おやすみなさい」

 

 言ってエヴァンジェリンは明かりを消し、自分のベッドに横になる。

漏れる月明かりが室内を照らしており、完全な闇とは言えない空間であった。

うっすらと青みがかった天井を眺めながら、瞼が重量を増して行くのを感じる。

エヴァンジェリンが今日一日の様々な事を回想しながら、眠りへと歩み寄っている最中の事である。

エヴァンジェリンは、ふと視界が暗くなったのに気づいた。

寝ぼけ眼で辺りを見回すと、茶々がベッドの脇に立っている。

 

「…………?」

 

 疑問詞を声に出そうと思ったエヴァンジェリンだったが、眠気で霞みがかった脳みそはストライキを起こしており、声が出る事は無い。

ただぼんやりと眺めていると、不意に茶々はその両手を伸ばしてきた。

硬い指がそっとエヴァンジェリンの肩に触れる。

強ばった手は、震えながらゆっくりとエヴァンジェリンの首へと動いていった。

どうしたんだろう、と呑気にエヴァンジェリンが思った、その瞬間である。

 

「…………っ!」

 

 押し殺した茶々の声と同時。

エヴァンジェリンの首が、締められた。

 

「……や」

 

 思わず手を伸ばし抵抗するエヴァンジェリンだが、抵抗しきれない。

幸い気を使っていない茶々だったが、それでも万力を込められた手は凄まじい力であった。

茶々自身も必死の形相、歯を噛み砕かんばかりの力で噛みしめ、顔は鬼のような形相である。

口からは、ひゅ、ひゅ、と短い息が勢いよく漏れ出ている。

 

「や、め……」

 

 しかし、首を絞められながらもエヴァンジェリンは、茶々が可愛そうで仕方が無かった。

恐ろしい表情の茶々は、しかし涙をこぼしていたのだ。

親に置いて行かれた子供のような、大粒の涙をだ。

それが哀れで絞首を続けさせたくなくて、エヴァンジェリンはどうにか言って見せた。

 

「やめて……!」

 

 はっ、と茶々は目を見開き、エヴァンジェリンの首を手放した。

けほ、けほ、とエヴァンジェリンがむせるのを尻目に、茶々は自身の手を、信じられないと言わんばかりの目で見つめ、数歩後ずさりする。

吸血鬼の再生能力がエヴァンジェリンの首の跡を無くした頃には、茶々はその場で膝をつき、頭を垂れていた。

 

「茶々、どうして……」

「すま、ない……」

 

 茶々の声は、嗚咽で途切れ途切れであった。

何が何やら分からなくて、エヴァンジェリンは困り果てた顔で茶々を見つめている事しかできない。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 壊れたテープレコーダーのように、謝罪を連呼し続ける茶々。

エヴァンジェリンは暫く茶々に好きにさせていたが、他の言葉に変わる様子が見られないのに、口を開く。

 

「謝罪はもういい、それより……何でなんだ?」

「…………」

 

 茶々は、両手を下ろした。

深い深呼吸。

震えながら視線をエヴァンジェリンのそれに合わせ、たどたどしい口調で話し始める。

 

「……私には、妹が居るんだ。私と同じ日本人とフランス人のハーフだが、あの子は、エリゼはフランス人らしい顔立ちで、金髪に青い目で……。そう、エヴァンジェリン、君にそっくりだった」

「私に……?」

「あぁ。最もエリゼは足が不自由でね、そのために私は出稼ぎに出ているんだが……。君を最初追い回していたのはただのお節介だが、顔を見てから君と一緒に居ようと思ったのは、妹にそっくりだったからさ。人形繰りを教えようと思ったのも……、人形繰りを覚えたい理由が、妹と似ていたからだ」

 

 エヴァンジェリンは、己の胸の奥が呻くのを聞いた。

初対面のエヴァンジェリンにあそこまで優しかったのに理由があるのは、当たり前の事だ。

けれど、もしかしたらと、何の理由も無く天啓のように自分への優しさが沸いてきたのでは、と思いたかったエヴァンジェリンの儚い思いは、今切り捨てられたのだ。

そんな都合の良い事があってたまるか、とエヴァンジェリンは自身を慰め、再び茶々の言葉に意識を集中させる。

 

「妹さんが、大切だったんだな」

「……いや」

 

 震える手を、力強く握りしめる茶々。

匂いで血が滲んでいるのが、エヴァンジェリンには分かった。

 

「私は、エリゼが愛しくも憎かったんだろう。妹として守ってやりたいと思うと同時に、なんであの子だけ西洋顔で生まれてきたんだ、と妬ましかった。何故私は村の子達に石を投げられるのに、あの子はみんなに可愛がられていたんだ? とな」

「……あ」

「大体、本当にエリゼが大切だったなら、私は村のすぐ近くを旅して頻繁に戻っていただろうな。エヴァも、ここ1年私がエリゼと顔を合わせていないのを知っているだろう?」

「うん……」

「私が君と旅をしてきたのも、優しさなんかじゃあない。代わりだったんだ」

「代わり……」

 

 エヴァンジェリンの脳裏に、父の顔が浮かんだ。

エヴァンジェリンの父の映像は茶々と重なっており、今正に茶々と同じように罪の告白をしているかのよう。

代わり。

誰かの代わり。

 

「私は、エリゼと一緒に居れば憎まざるを得ない。だから、エリゼと似ていながらも、私と同じく迫害されるエヴァ、お前と旅をして、エリゼに償っている気になっていたんだ。違いない、そうなんだ」

「でも……」

 

 遮り、エヴァンジェリン。

父の幻影と重なる茶々へ向け、か細い声を伝える。

 

「でも茶々は、少なくとも優しい人だ。アドルフ達にも優しかったし、私の事も、代わりだけじゃあなくって、きっとその優しさでも見てくれた」

「……違うんだ」

 

 呻くように言って、茶々は己の手を見つめる。

絞り出すような声で、続けた。

 

「私は優しいから人に優しく接するんじゃあない。それが正義だから人に優しくすべきだと判断して、優しくしているんだ。私の優しさは……そう、自然の物じゃあない。人工的なんだ。私の行いは、社会にとって正義の行いでなければならない。そう言うことなんだ」

 

 今度こそ、エヴァンジェリンは告げる言葉が見当たらなかった。

何が茶々をそうさせるのかは分からない。

父母の教育か、異邦人である事か、妹を妬んだ負の念故にか。

何にせよ、茶々はその正義感を等しく誰にも振りかざしているのだろう、とエヴァンジェリンは思った。

社会悪には刃を。

社会弱者には優しさを。

 

 ならば異邦人に対してはどうなのだろう、とエヴァンジェリンは思った。

茶々はその正義感を己に対してはどういった形で向けているのだろうか。

それは茶々の物言いからして明らかであった。

茶々の正義感は、矢となりてその手を離れ、翻り茶々自身を射貫いてもいるのだった。

そしてそれに気づきながらも正義を手放せず、次々と矢を射り、そのいくつかは茶々自身を居抜き続けている。

茶々はもう傷だらけだった。

 

「君が私のような醜い男を信じる程、純粋で、善い心の持ち主なのに。なのに、私は妹の代わりとして見て、義務感の優しさしか向けられなくて……。もう、胸がいっぱいで苦しいんだ。だから……、戻りたかった。エヴァ、君と出会う前の私に。正義だけをより所に、妹から逃げ切れていた頃の私に。だから私は、正義に従おうと……、吸血鬼たる君を、殺そうとした……」

 

 懺悔を終え、茶々は再び項垂れた。

月明かりだけの暗い部屋の中だ、髪が垂れた彼の顔色は最早判別がつかない。

エヴァンジェリンは、ベッドから下り立った。

頭を垂れたままの茶々へと両手を伸ばし、その肩に手をやる。

強く、少し痛いだろうぐらいに茶々の両肩を握りしめた。

 

「……私もだ」

「えっ?」

 

 告げるエヴァンジェリンに、茶々は顔を上げ目を見開く。

微笑み、震える視線を真っ直ぐに茶々へと合わせ、続けた。

 

「私も茶々、お前を代わりにしていた。私の父様の代わりに」

「私を……?」

「あぁ。顔は全然似ていないけど、優しい所はそっくりだ。私が何かを怖がると、抱きしめたまま大丈夫大丈夫って唱えてくれたっけ」

「私は、優しくなど……」

「自然だろうと人工だろうと、優しさは優しさだと思う。だって、とっても嬉しかったから……」

 

 言って、エヴァンジェリンは跪いた茶々を抱きしめた。

頭と頭が交差し、互いに耳裏が温度を交換する。

むずがゆい暖かさに、エヴァンジェリンは薄く微笑んだ。

 

「ずっと独りぼっちだった私だから、自然と人工の区別がついていないだけかもしれない。でも、どっちにしろ私は現実に嬉しくて、父様みたいだって思ったんだ」

「……父、代わり? 私が……?」

「あぁ。父様の、代わりだ。だから、茶々……」

 

 エヴァンジェリンは、大きく息を吸った。

肺にたっぷりとためた空気を吐き出すのと同時、凜と声を響かせる。

 

「私を、エリゼさんの代わりだと思っていいんだ」

 

 茶々が息をのむ音が、聞こえた。

体が強ばり、震えるのが伝わってくる。

エヴァンジェリンは続けて言った。

 

「だから私も、茶々を父様の代わりだと思っていいか?」

「つまり……互いに互いを、代わりとして見る……?」

「そう。約束しよう? そうしていいって」

 

 茶々の体が一気に脱力するのが、エヴァンジェリンには分かった。

代わりに緩やかな速度で腕が回され、茶々もまたエヴァンジェリンを抱きしめる。

互いの体温が交換され、血と肉がそのまま溶け合いそうな距離であった。

吐き出すように、茶々は告げた。

 

「……あぁ、約束しよう」

「うん、約束だ……」

 

 不実な約束であった。

互いを正面から見ず、誰かの代わりを通して見る。

誠実さの一欠片も無い行為を、しかし誠実さが要となる約束として2人は認めていた。

 

 いつかは、とエヴァンジェリンは思う。

いつかはこの約束を破り、茶々を正面から見るべきなのだろう。

茶々もまた、妹と向き合い、エヴァンジェリンとも向き合うべきなのだろう。

だけど、神様、とエヴァンジェリンは願う。

存在していても己には加護を与えてくれないだろう、憎い神に、それでも祈る。

神様、ほんのちょっとでいいんです、私たちに時間をください。

互いに向かい合う為の時間を、ほんの僅かな時間でいいから、ください、お願いします。

 

 祈りながら、エヴァンジェリンは茶々を抱きしめ続けていた。

茶々もまた、無言でエヴァンジェリンを抱きしめ続けていた。

2人はそのままずっと、互いを抱きしめ続けた。

互いを離さぬよう、その約束のごとく強固に。

ずっと。

ずっと。

 

 

 

 

 




屋台やらガレットやらが時代に即しているのかは、調べてみた所不明でした。
なので簡潔に言えば、私の中のファンタジー脳の産物でしたり。

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