もう片方の作品のハードルを上げすぎたかな……?
無事両者を(偶々)気絶させた俺は、たまたま出会った第一ハンターと共同して捕獲する事にした。幸い俺のポーチには捕獲用道具一式が揃っていたので難無く成功した。
そして俺はクエスト達成した彼女に一緒にユクモ村まで送ってもらえるよう頼み込んだ。
今までの植生や
無事共に行く事を許された俺は、ガーグァの引く荷台に揺られながら嘆息する。この世界に来てまだ間もないが、奇天烈なことが起こり過ぎて疲労困憊であった。
(それにしても、話を聞くたびますますモンスターハンターだなぁ、これは………)
先ほどのモンスターに加え、この荷台の動力源となっているガーグァ、それを指揮するシロと呼ばれるアイルー、時折ちょっかいをかけてくるブナハブラ、見れば見るほどこの世界に入り込んでしまったのだと認識する。
そして、隣に座る少女……いや、ハンターから聞く話もその様なものであり、俺のヘルム内では顔芸を披露していた。
「…ぁ……うぅ……」
隣のお胸ムネムネな黒髪ポニーテールの少女を見ると比喩なしの茹でタコの様に顔を真っ赤にしながら顔をうつむかせていた。
そして彼女はこの世界の名刺であるギルドカードを渡してからさらに悪化していた。
因みにこのギルドカードは、初めて事態に気付いた時にポーチに数枚入っていたのを見つけたものだ。時間が無く、細部まで確認する事は出来なかったが、目に付くところだけは見て、そこで気付いた事実があった。
【名前】ゼロ
–––––あ、これモンハン内での自作キャラや。
よくよく確認すると今装備している『ディアブロX一式』も、この『剛角剣ディアブロス』も、全て俺が床に就く前にプレイしていた装備だった。
となると、私は自作キャラに憑依したのかという事になるのだろうか。神の気まぐれか何なのかは分からないが、意図しての行為では無いのでどうしようもない。最悪、これは胡蝶の夢と思い込むしかない。
軽く状況を再確認したが、少なくとも自分がどういう存在となってしまったのかは把握出来た。
総合的に謎は謎を生み、今の俺はただ流れに身を任せるしかない様だ。
因みにギルドカードによると彼女は『ユクモ村専属ハンター』ということが分かった。先ほどの
(なら、目的地まで寝ていますかね……)
女性ハンターことアーニャは茹でタコ状態、クロは生真面目に周りを警戒している、シロはガーグァの指揮をしている。ボッチと化した俺の行動は既に決まっている様なものだった。
寝てからしばらく経つと、俺の嗅覚が反応した。
温泉などでよくする、ツンと鼻に付く独特の腐卵臭––––––––硫黄の匂いだ。
(ようやくユクモ村でひと息つけそうだ……。とにかく温泉入ろう温泉に)
待ち焦がれる温泉の匂いが段々と強まり意識を覚醒させる。そしてそれが最高潮に達し、道を曲がるとソレは見えた。
溢れる紅葉の合間にそびえ立つユクモ村は木造と赤が絶妙なコントラストを奏でる温泉街。湯気と匂いが強いが、それこそが俺に癒しを与えた。
(––––––絶景かな〜絶景かなっと)
やがて荷車は門の前で止まり、反動で身体が少し浮く。俺は荷車から降り、軽く背伸びをした。
(ふぅ……確か入浴料自体は掛からないし、気軽に入れるだろう。あ、入浴用具どうしようか––––––––ん?)
ふと思い出した様にアーニャを見ると、既にその姿は無く、瞬く間にアラアラまぁまぁな竜人族の村長の元へと走って行くのが見えた。
目を凝らすと、アーニャの手には私のギルドカードが有り、それを見せながら会話をしていた。
さすがの俺もこの様子を見れば不審に思う。
もしかしてこのギルドカードに何か不備があったのだろうか。その不備が原因で早々タイーホされるのは勘弁願いたい、最悪記憶喪失とでも言えば執行猶予がもらえるだろうか。
(そう言えば俺もよく見てなかったな)
もしかしたら何か分かるかもしれないと、残り数枚のギルドカードを手にして俺は注意深く見てみた。
▼
(最近はモンスター達が活発化しています、アーニャ様が無事で帰ってくると良いのですが……)
絶えない村人達からの恐怖の声を聞いた村長はクエストを発行したのは良いものの、誰がそれを引き受けてくれるのかが問題だった。
被害者達の証言は『真夜中に狼の遠吠えが聞こえる』と言うものと『正体不明の泡が散在している』という二種類に分けられた。前者は前例があるから理解ができるものの、後者はまるで分からない。結果、明確な詳細が分からない以上クエスト内容は『脅威の確認』としか明記されていない。
本来なら厳密な捜査の上クエストが発行されるのだが、被害にあった村人が大勢存在しており、これ以上被害を被るのは危険の域に達するという名目でギルドマスターの承認を得た
そしてこれは繋ぎのクエスト。
既に本部であるロックラック地方のハンターズギルドには通達済み、送られてくるハンターに少しでも状況が優位に立てるようにという
流れ着くハンターはお世辞にも適正とは言えない。その殆どが武者修行中のハンターだからだ。
そして消去法で白羽の矢が立ったのが、このユクモ村専属ハンター、アーニャであった。
だが、彼女の力量でもこのクエストは適正ではない。
先ず彼女は前者の証言の元凶である『雷狼竜ジンオウガ』と対峙した事がない。しかし、これはある程度の情報がある為対処は可能、加えてこのクエストはあくまで脅威の確認、謂わば偵察の様なもので余程のことが無い限り大丈夫であろう。
問題は後者、これに関しては全くの無知である。被害者も「泡が纏わり付き上手く立てなくなる」というもので重大な被害には見舞われていない、しかしクエスト中のハンターは足を取られる事は死活問題、その隙を取られて強烈な攻撃を受ける事が有るからだ。
せいぜい彼女が受けた高度なクエストでも『アオアシラ二頭討伐』ぐらい、同時狩猟は経験していてもそのモンスターの格が違う。
苦渋の選択だったとは言え、彼女が拒否すれば引き下がるつもりだった。しかしそれでも彼女は「それがこの村の為となるなら」と笑顔で受諾した。
まるで人柱を送る気分であった。
この時の村長には、ただ無事で帰ってきて欲しいと願うばかりであった。
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––––––
––––
––
アーニャが出発して約6時間後、事態は急展開を迎えた。
門の前に一台の荷台が止まった、そしてそこに乗っていたのは、なんとアーニャであった。
(あぁ……良かった、無事に帰ってきてくれましたか……)
装備の傷み具合からどれだけ困難だったかを想像させる。しかし、そんな死地から無事生還してきた事に村長は涙を流しそうだった。
すぐさまその身体を休めるよう提案しようとすると、アーニャがやけに意気揚々としているのが目に止まった。
何か良い事があったのかと不審に思うが、それはアーニャから発せられる言葉で判明した。
「脅威と判断される二体のモンスターの捕獲が完了しました!」
「………え?」
それは到底信じられない言葉であった。
確かに討伐ではなく捕獲ならある程度モンスターを弱らせて罠にかけ、捕獲用麻酔玉というもので眠らせれば良く、討伐よりは難易度は低い。しかし仮にそうだとしてもジンオウガと未知のモンスター相手に彼女が出来るとは到底思えなかった。
これは何か訳がある、そう感じた村長は先ほどの提案を鵜呑みしてさらなる事情聴取を行おうとした時であった。
「そ、それよりも、これ、これを見てください!」
「えっと……これはギルドカードかしら?」
アーニャから差し出されたのは年季の入ったギルドカード、軽く見積もっても数年前のものであるソレを村長は訝しく見ると、何故アーニャがここまで狼狽えているのかが分かった。
【名前】ゼロ
(––––––え?)
それは到底見逃せない名前であった。
ハンターを目指す者なら誰もが知っているこの名前、何故なら彼は
達成したクエストは数知れず、機転を効かせたその技はモンスターを翻弄し、加えて様々なカテゴリーの武器を免許皆伝するという武芸百般な側面を持つ。
まさに童話に出てくる存在だが、それがまさしくゼロであった。
しかし、彼はここ数年表舞台に立っていない。
理由は分からず、周りは武者修行やら療養やらと様々な噂が飛び交っており、今でもその熱は冷めることは無い。
そんな彼が、まさか––––––?
恐る恐る振り返ると、確かにゼロと思われる風格の者がこちらに向かって歩いていた。
装備は見た感じ、ディアブロスの素材を使っているからだろうか、その足取りはまさに暴君の如く威圧感を与えてくる。
何かと突っかかる門番もその気圧に思わず呆然とし、老巧な鍛冶屋の竜人族とモミジィも目が据わる。
やがて彼は村長の元へと来た。
この時彼女は歓迎の言葉を言わないという失態に気付き、慌てるように言った。
「よ、ようこそおいでなさいました、ゼロ様!」
「……突然の来訪失礼します。一つ伺いたいのですが、この辺りで宿はないでしょうか?」
「で、でしたら宿とは言わずにあそこの空き家をご使用下さい、最低限の設備は整っていますので生活には困らないかと。貴方はこの村の恩人なのですから、どうぞ遠慮なく……」
「……それではご厚意に甘えて、失礼します」
(あぁ、彼がアーニャをお手伝いなさったというのなら納得です。きっと彼女も恐れ慄いているのでしょうね)
村長も長い年月をかけて様々なハンターにクエストを依頼して来たが、そんなハンター達とはまるで格が違う。流れ者のハンター達と比べるのは不粋かも知れないが、素人でも分かるように歴戦の風格が漏れ出ていた。
村長が風格の余韻に浸っているとゼロがその歩みを止め、再び村長の元へと行き、村長にだけ聞こえるような小声で言って来た。
「できれば、この事は内密にお願いします……」
内密に、というのは恐らく彼の来訪の事だろう。
彼が何故このタイミングで姿を現したのかは定かでは無いが、伝説のハンターが来訪したというのは必ず思わぬ波乱を生む。
きっと、このユクモ村に要らぬ余計事が入らないよう配慮してくれたのだろう。
「もちろんでございます。しかしギルドマスターと言った最低限の方にはご報告しないと行けませんが……」
「……えぇ、分かりました」
その言葉を最後に今度こそ彼は与えられた空き家にへと入っていった。瞬間、重圧が一気に解き放たれた。
『な、何だったんだあのハンターは!?』
『アーニャと一緒に来たけど……彼女の関係者か?』
『いや、それよりもあの村長が取り乱すって相当だぞ?』
村人達が一斉に囀り始める。
それほどの重圧がこの空間を支配していたのだ。
ポーカーフェイスを保っていた村長もホッと溜息を吐くと、すぐさまギルドマスターのいる集会浴場へと向かおうとした。
「アーニャ様、申し訳無いのだけど少しこの場の事態の収拾つけさせてもらっても良いかしら?」
「ひゃ、ひゃい!」
動揺したように裏返った声で返事をするが、彼女は私達以上に彼の威圧を間近で受けていたのだ。少し心とも無いが、仕方ない事だった。
(彼の来訪だけでこの騒めき、ギルドマスターに報告したら一体どれだけの波乱を生むのやら………)
彼の配慮を蔑ろにするのは失礼に値するが、どう足掻いても必然的に波乱が発生するだろうと村長は踏んでいた––––––––。
▼
この世界に来てまだ一日も経っていないのに、まるで一ヶ月ぶりにベットに入った気分だった。
疲労困憊のため、睡魔が即座に襲ってくるが一旦それを振り払う。その前に俺はもう一回ギルドカードを確認した。
分かったのだ、何故アーニャ達が私のギルドカードを凝視していたのか。
訂正のしようが無いのだが、少なくとも心構えだけはしておきたかった。もう少し始めの時点で内容を把握してたらここまで憂鬱な気分にはならなかっただろう。
ハァ、と溜息を吐きながら俺は問題の箇所をもう一度凝視した。
【称号】不滅の覇者
(––––––––ウボァァッ!!?)
何度見ても血反吐を吐きそうな『
想像して欲しい、真面目だと思われた転校生の自己紹介が明らかに中二病発言だったのを。要はそれと同じだ。
アーニャが赤面していたのも、村長が少し歯切れが悪かったのも全て理解した。いや、むしろ理解したくなかった。
村長とアーニャには後ほど誤解を解くとして、とにかくこの黒歴史がこれ以上流出しないよう村長に懇願した。あの穏やかで優しい村長の事だ、破るような事はしないだろう。
それよりも問題はギルドマスターの方だ。
仕方ないとは言えギルドカードは所謂名刺、上司に伝わるのは致し方ない事だ。ギルドカードの誤植という会社ではブチ切れ当然の案件をどうやって説明しようか。正直気が滅入る。
いや、そもそもゲームではギルドカードの称号は変更出来たし、再発行ができるのかも知れない。
常に最悪を想定していく俺は取り敢えず叱られる覚悟で渡り廊下からギルドマスターのいる集会浴場へと向かう。
どうやら運命はまだ俺を寝かせてはくれないようだった。
……最後の説明も中二病っぽくね?
もうそろそろ夏休みが終わるので更新速度が遅れることを明記します。
そんなことよりも来年発売される『モンスターハンター:ワールド』がめっちゃ期待すぎる。
だが俺はその前にPS4購入という壁を乗り越えなければ成らない……!