「・・・・・・朝か・・・。」
いつもと変わらない朝、けど今日はいつもとは少し違うようだ。
「ほらスミレ。朝だぞ。起きろ。」
龍牙はその犯人である狐耳を起こす。
「ん?、むぅ・・・まだ寝てたいのじゃ・・・。わしは健康第一に考える神でのぉ・・・、しっかり寝ないと健康に悪いのじゃ・・・。」
「健康第一ならこの時間ぐらいに起きることをおすすめするぞ。ほら、早く起きないと朝飯抜きにするぞ。」
「それは困る!。」
スミレはガバッと起き上がった。
「だったらさっさと起きた起きた。」
「このなぁ?、べっどという素晴らしい寝具がわしを惑わすのじゃあ・・・。」
「はいはい、愛しのオフトゥンってやつと一緒だろ。」
因みにこれは父の入れ知恵である。龍牙はスタスタとリビングへ行った。
「ま、待つのじゃあ!」
それを追うようにスミレも出ていった。
「さて、朝飯どうするか。スミレ、なんかリクエストある?」
「ふむ、わしは少し軽めがよいぞ」
「そっか。少しのカルメ焼きね。まってて、すぐ作れるから。」
「まてまてまて!。わしはカルメ焼きなぞ頼んでおらん!。胃に優しいものということじゃ!。」
「ふふっ。冗談だよ。お茶漬けでいいかな?。」
「な、冗談か・・・。わしで遊ぶでない!。」
「ごめんごめん。すぐにお湯沸くから。」
少し経ち、お湯が沸いた。龍牙は昨日予め炊いておいたご飯をよそり、茶漬けの元をふりかけ、お湯をかけた。
「おまたせスミレ。出来たぞ。」
「すまぬの龍牙。ではいただきます。」
「いただきます。」
こうして天野家の1日が始まった。
「ところで龍牙よ今日はなにをするのじゃ?。」
「まぁ特には決めてないよ。そうだなぁ・・・。服でも買いに行くか?。」
「服など気にせんでよい。わしはこの着物だけで十分じゃ。」
因みにスミレの服は着物である。
「いや、流石にずっと着物は不自然だぞ。神とはいえ、自然に社会に溶け込まないといけないんだ。それに普通の服の方がゆったりできるぞ。」
「そ、そうか・・・。わかった。では服を買いに行こう。ご馳走様。」
「ああ。ご馳走様。」
龍牙は普段着に着替え、ふと思い出した。
「そういえば服買うまでどんなふうに誤魔化せばいかな。もう初夏だし、七五三の季節でもないし・・・。」
「そういえばそうだの。どうするのだ?。」
「うーん。母さんあたりに相談しようかな。」
「ほう、龍牙の母は何かそこに関した職業にでも就いているのか?。」
「いや、父さんには2人秘書がいてね。母さんがその内の1人なんだ。おしゃれにも乏しくないし、同じ女性だからいい服を見つけてくれると思うんだ。」
龍牙はスマホで電話をした。
「もしもし?。」
『あら龍牙?。久しぶりね、元気にしてた?。』
「うん元気だよ。しっかりご飯も食べてるし。」
『そうなのね、よかったわ。まぁ龍牙だしそこを気にする必要はないかしらね。』
母・・・
「それで、母さん。少し用があるんだけど。」
『あら、何かしら?。何でも手伝うわ。』
「知り合いの子供を預かってるんだ。それで服を買いたいんだけど、俺じゃサイズとかよく分からないから、母さんに手伝って欲しいんだけど・・・。今大丈夫かな?。」
『それってどうゆうこと!?。・・・まぁ詳しい話は会ってからにしましょう。会社で待ってるわ。』
「分かった。すぐに行くよ。父さんとも会えるかな?。」
『大丈夫よ。そろそろ
龍牙はありがとうといい、電話をきった。
「龍牙、連絡は済ませたかの?。」
「ああ、大丈夫だ。すぐに行くぞ。」
龍牙は普段着に着替え、顔を洗い、歯を磨いた。すると。
「龍牙よ、わしの歯ブラシはあるかの?。」
「ちょっと待ってて、確か買い溜めしたやつがあったはず。」
「すまぬの。」
「気にしなくていい。ほら、あったぞ。」
「ありがとうなのじゃ。」
(そっか・・・。もう1人じゃないのか。)
改めて、家族が増えたことを確信する龍牙であった。
「そろそろかな。よし、出発だスミレ。」
「了解だぞ。」
2人は車で両親の会社へと向かった。
「しっかし暑いのう・・・。冷房が無ければわしは溶けてしまいそうじゃ。」
「東京は気温自体それなりに暑いだけなんだけど、車が多く通るからね。余計暑く感じるんだ。」
「そうなのか。何だか辛いの、都会というものは。」
「ま、辛いこともあるかな。けど、慣れだよ慣れ。それに涼しい建物も多いし、交通機関なんかは田舎に比べると圧倒的に便利だからね。」
「慣れ。か・・・。お主も疲れておるの。」
「そうかもね。」
スミレの一言に龍牙は自虐的な笑いをした。
しばらく車を走らせていると、両親の会社が見えてきた。
「そろそろ着くぞ。」
「了解じゃ。」
「そういえば名前どうする?。」
「わしはスミレじゃぞ?。」
スミレは何をいまさらと言っているかのような顔をした。
「一応お前は知り合いの子っていう立ち位置にいるんだ。名前はあっても苗字は必要だろ?。」
「ふむ、そうじゃの・・・。では苗字は
「ここみ?。書き方は?。」
「狐と耳じゃ。」
「安直だな。」
「それでいいのじゃ。」
2人はふふっと笑った。
非常に遅くなりましたが。1周年本当にありがとうございます!。皆様のお陰でこの作品が続いていると過言ではありません。今後ともよろしくお願いします!。エタらないように頑張ります!。