「此処が公爵家当主。エルトレア公爵殿下の御屋敷に御座います。」
リドルトを出発して5日。…遂に俺たちは、目的地に到着した。
しかし…本当にデカイ家だな。流石王族と言うべきなのか、やはりと言うべきなのか。さっきからエストとイリアが顔を引きつらせている。…緊張してるんだろうな。
「くれぐれも粗相のない様に。まぁ、これまでの皆さんの行動を見てきて、そんな事は無いと分かってますけどね。」
俺は大丈夫だけど…二人はどうだろうか?まぁ、信頼されてるみたいだし大丈夫…かな?
「あんま緊張してると、大事なとこでやらかすぞ?もうちょっと俺みたいに落ち着きをだなぁ…」
と俺がからかうと、
「逆にヒロトさんが落ち着きすぎてて怖いです。」
とエストが、さらに
「相手は公爵様だぞ!?ヒロトが落ち着いてる理由が分かんねーよ!」
とイリアも。…まぁ偉い人というのは分かっているが、神様と会話した事があるからそこまで緊張は無い。
「…それでは、どうぞ。」
「エルトレア様。霧島ヒロト様一行が到着なされた様です。…広間の方へ向かわれますか?」
「ああ、今行こう。彼らを屋敷の皆で出迎えよ。」
「承知致しました。」
…リオナを助けた冒険者。話を聞けば、大量のリザードマンを瞬殺したとか。…アリエの襲撃も凌いだとなれば相当な腕なのであろうか。
「お父様。何処かへ行かれるのですか?」
「リオナよ、広間へ降りるぞ。お前を助けた冒険者達が、到着した様だ。」
「本当ですか?…これで、やっとお礼ができますね。」
「そうだな。…先に降りていなさい。私は少し用意がある。」
「分かりましたわ、お父様。」
…彼等なら、我々の抱える問題を解決できるやもしれん。
中に入ると、そこには沢山の使用人達が整列し、執事やメイドは深々と頭を下げ、護衛の騎士達は剣を顔の前で揃えている。…なんか凄い歓迎だ。
すると一人の執事がこちらへやって来て、
「私、エルトレア公爵家の家令を務めて居ります、ヴィル・テリオラスと申します。以後お見知り置きを。」
と言い、深々と頭を下げる。
「いえいえ、こちらこそ。こんなに歓迎していただいて光栄です。」
と、落ち着いて話す。
後ろでは、エストとイリアがガチガチになって礼をしている。
緊張するな、という方が酷なのだろう。
暫くヴィルさんと話していると、奥の階段から一人の少女が駆け下りて来て、その後ろからゆっくりと男の人が歩いて来た。
すると、顔を上げていた使用人達がまた深々と頭を下げる。
後ろを見ると、エストとイリアがさらにガチガチになっている。
となると、あの男の人が公爵様か。
なんて、思考を巡らせている俺の元へ、リオナが駆け寄って来た。
「お待ちしておりました!…改めて自己紹介を致しますね。」
と言うと、コホンッと咳払いをし、
「私はエルトレア公爵家の令嬢、リオナ・クレウス・ハルバートです。」
そして、よくアニメとかで見る姫様の挨拶を。…こう見ると、やっぱ可愛いなぁ。
あ、俺にロリコン趣味はないからな!
「君達がリオナを助けてくれた冒険者か。」
と、後ろの男の人が。…やっぱりこの人が。
「はい。俺は霧島ヒロトと言います。…初めまして、公爵様。」
うーん、さっきまで余裕だったけど若干緊張するなぁ…まぁ、しっかり挨拶できたから良いか。…するとエストが深呼吸をして、
「初めまして、公爵様。エスト・シルヴィアと申します。今回はお招きいただき感謝します。」
と、一礼。…うわっ、なんか良く分からないけど完璧な気がする。
「ご丁寧にありがとう。ん?…話だと、二人と聞いていたのだが、その子は?」
あ、イリアのことはまだ知らないのか。すると、イリアがガチガチのまま前に出て来て、
「あ、あの!あた、あたしは、イリア・ミテラストと言います!こ、此処に来る途中でヒロト達の仲間にしてもらいましたです。」
おいおい、落ち着けよ。しかも、語尾おかしかったろ。
「そうか、君の新しいお仲間か。そんなに緊張しなくてもいいぞ?君達は娘の命の恩人なのだからな。」
と緊張をほぐそうと、公爵様はエストとイリアに言う。
あ、この人めっちゃいい人だ。
「さぁ、彼らに部屋を用意しなさい。長旅の疲れを癒してもらうのだ。」
あー…どこまでもいい人だ…!?
「え!?い、いいんですか?俺達、どこの誰とも知らない冒険者なのに、そんな、公爵様の屋敷に泊めていただくなんて…」
俺が慌てて尋ねると。公爵様はニコリと笑って、
「君達はリオナの命の恩人。それだけで十分信頼出来るからね。」
「此処が、ヒロト様のお部屋にございます。何かご用があればそちらのベルでお呼び下さい。」
「は、はい。」
「それでは失礼します。」
…結局、公爵様は俺たち全員分の部屋を用意してくれて、食事までご馳走になってしまった。それも、今まで見た事も無い様な豪華な食事を。
…正直、豪華すぎてあまり食べられなかったが。
そんな事を考えていると、
『ご苦労様じゃなぁ、ヒロトよ。』
と聞き慣れた声が。…ったく、お気楽だなぁ。
『しかし、エルトレア公爵は親切な方じゃの。客人として、暫く滞在しても良いなんて言ってくれるとはなぁ。』
そう、それである。
公爵様は、俺たちの疲れを癒すために、暫くの間滞在してくれても良いと言ってくれたのだ。…なんか気が引けるが。
(確かに嬉しいんだけど、慣れない環境すぎて落ち着かないんだよなぁ。)
『それは仕方の無い事じゃ。初めての異世界での夜もお主は落ち着かんかったじゃろ?人間、慣れないところでは落ち着けんと言う事じゃ。』
…言ってる事がジジくさいなぁ。まぁ言ってることはまともだけど。
(…取り敢えず明日にでも上手く理由を付けて帰らせてもらおう。)
『上手くいくと良いがなぁ…』
…ダメだ、全然寝れない!ベットが逆にフカフカすぎて落ち着けない。
やっぱリリーブのちょっと硬めのベッドが丁度いいや。
…いつまで経っても寝られないので屋敷のバルコニーで少し夜風に当たる事にした。
「…夜なのに街明かりが付いてる。一般人エリアの方だな。」
リドルトの街では、このくらいの時間帯になると路地裏にある大人のお店以外全て灯が落ちる。…そのおかげでよく星空も見えていたけど、王都はさすが都会というところだろうか?真夜中になっても灯が付いている店の方が多い。
…ちょっと気になるな。
『ワイドセンス!』
…うーん、良く見えない。前に神様に聞いた時、ワイドセンスの有効範囲が100メートルらしいし、あんな遠くの人達が見えるわけもないか。
…あれ?誰かが屋根を飛び付いでこっちに来てる。あ、降りた。
「…何だ?忍者か何かか?」
いやいや、忍者がいるわけ無いよなぁ。…いや、ここは異世界だ。忍者の一人や二人居てもおかしくないのか?
…怪しいし、取り敢えず敵感知かけてみるか。
『エネミーサーチ』
あ、引っかかった。…これってマズイよな。
…よし、仕留めに行くか。
「…作戦通り行くぞ。」
「了解だ。…ん?何かがこっちに来ている。潜伏だ。」
「分かった。『サイレント』」
おお、ワイドセンスのおかげでこいつらの会話がめっちゃ聞こえる。…これで悪い奴ら確定だな。
っと、ここら辺だよなぁ。…あれ?敵感知から反応が消えてる。じゃあ一応これも。
『サイレントサーチ!』
…やっぱりか。此処から約十数メートル、敵は二人。潜伏してるからこっちが気づいてないと思ってるな、多分。
『サイレント!』
「!?気配が消えた?」
「相手も潜伏持ちで…」
よしよし、気づいてないな。…拘束して屋敷に連れて行くか。
『ナムネス!』
「な!?か、体がぁ!」
「だ、誰…グッ!」
俺は剣の鞘で二人の後頭部を殴打し、気を失わせる。…取り敢えず一件落着でいいか。意識が戻ったらこいつらに聞こう。逃げられると面倒だしなぁ、取り敢えず拘束して護衛の人に任せよう。
その後、奴らは王城の牢にブチ込まれたらしい。まぁ当然の報いである。
「昨日はすまなかったね。実はこの頃、私達王族を狙って何者かが動いているようなのだ。」
うーん、つまり公爵様達を暗殺しようと目論んでる奴が居る訳か。
と、考えていると、イリアが俺の袖を引っ張る。…何だよその、何とかしてくれって目は。
「物騒な話ですね。…護衛の方を増やすことはできないのでしょうか?」
とエストが、すると公爵様は困りきった顔でこう言う。
「王族を対象とした襲撃だから、他の王族にも護衛をつけんといかん。かと言って兵力が落ちてもいけないのでな、この数が限界なのだ。」
「そうですか…ヒロトさん。何とかできないですか?」
いやいや、俺だって考えてるけど…
「あ、あの!あたしにいい考えがありますです!」
おい、また語尾おかしいぞ。…でもいい考えの方が気になる。
「あたし達に護衛をさせてください!」
「「え?」」
次の瞬間、俺と公爵様の声がバッチリ被った。
話が雑になってきている。
どうにかして改善しなきゃだけれども、どうにも改善出来ねぇ。